2人のプレイボール(12)
修羅聖斗(ザ・ドクター)




 「代打………遠山 和葉!!」
 源さんのその言葉に 双方のチーム 共に驚きの表情を隠せなかった。

 しかし 最も驚いたのは和葉本人ではなかったろうか。

 「エ?エ?う………ウチぃぃぃぃぃっ!!?」
 「あぁ……頼むよ 和葉くん」
 源さんが和葉にそう言っているのを尻目に平次は既にグローブを填めていた。

 「くぉら」
 和葉がそう言いながら 平次の頭を がしっ と掴んだ。

 「なんや 平次?ウチが信用出来へんか?ウチの力を信じられへんのか?」
 和葉のその問いに平次はあっさりと首を縦に振った。

 「………ほぅ………」
 和葉の拳には力が込められていた。

 きしゅっ、きしゅっ と肉が擦れ合う音が聞こえる。

 「死ねぇぇぇぇぇっ」
 「はぶぅぅっ」

 和葉の拳が平次の顔に突き刺さった。そのまま和葉は連続コンボにいった。

 「うわぁぁぁっ 源さん 助けてくれぇぇぇっ!」
 平次は 先程とは違う意味で泣きながらそう懇願した。プライドを捨てて。


 10分後。
 まだ 平次は殴られていた。和葉の連続コンボはまだ終わりそうになかった。
 その時だった。

 「ふぅ〜っ スッキリしたぁぁぁ………」
 和葉はサッパリとした顔でそう言った。

 そして打席に立つ和葉。右打席だ。右打席で強敵・氷室を迎え撃つ。


 ボロボロになった平次は和葉を見ながら呟いた。

 「ダ……ダメや………あれじゃ確実にゲッツー凡退する………オレまで回って来ぃへん………この試合 本当に負けや……」
 それを聞いた快斗は いぶかしげに尋ねた。

 「それ どういうことなんだ?」
 「わからへんか………?和葉は怒れば怒る程その実力を発揮するタイプ………」
 「その証拠に さっきから男のオレに抵抗させずにシバキ倒しとるやないか………」
 それを聞いた快斗は納得したように呟いた。
 「あぁ……なるほど……それで………」
 「分かったか オレが和葉を挑発するのにもそれ相応の理由があったんや………」
 そう言いながら 平次は威張った。当然のことながら威張れることではない。

 マウンド上の氷室は思っていた。
 (このチーム……何を考えていやがる?女ごときにオレの球が打てると重うのか?元プロの球を?)

 (………だとしたら オレも随分 舐められたモノだな………)
 氷室のその思いを酌み取った真壁は思った。

 (分かるぞ……オマエの考え……ド真ん中2つの後内角低めでアウト……もしくはゲッツーチェンジだ……)

 (いいだろう)
 そう思いながら氷室は うなずいた。


 1球目。

 「ズバ――――――ン」
 ド真ん中に氷室の速球が突き刺さった。ストライクワンだ。

 「ヘイ どうしたどうした! バットに当てへんと打つこともできないで!!」
 ヤジが和葉に飛ぶ。そのヤジの発信源はもちろん平次だった。


 2球目。

 氷室が足を上げ そのまま投げた。ド真ん中だ。
 しかし それを見極めていた和葉は迷い無くバットを振りにいった。

 「ヒュオ」
 バットが風を切り裂く音が聞こえて来た。

 「ドォ――――ン」
 またもや氷室のボールはミットに収まった。ストライクツー。

 しかし 次の瞬間 平次は目を疑った。
 バットが平次めがけて勢いよく飛んできたからだ。

 「ドカ――――ン」

 「ガランガラン…………」
 ベンチの壁にバットが衝突した。

 さすがは和葉。空振りの際にバットを平次めがけて飛ばしたか。
 そのバットを平次は和葉の足下めがけて投げて返した。

 「こらぁ!バットを飛ばしてどうするんや!飛ばすのはバットや!いや ボールや!しかも前にだ 前に!」
 平次はそう文句を言った。和葉はその文句に怒り 既にキレていた。


 3球目。

 氷室は 今度は慎重に内角低めに投げた。これも速球だ。

 「ビシュ」
 「オラァッ! しっかり打つんやでぇっ 狙いを定めて! それとも その胸の筋肉はコケ威しかぁぁぁっ!」
 その平次の叫び声がキレた和葉は叫んでいた。

 「これは筋肉やあらへんわ バカ平次ぃぃぃっ!」
 次の瞬間 和葉の怒りのバットがボールに炸裂した。

 「グワァラゴワガキィィン」
 「ィよっしゃ 打った〜〜〜〜〜ッッ!」
 平次はそう叫んだ。

 氷室は バカな と言いたげな表情でボールの行方を見る。
 センターとライトの間を突き破る2塁打。しかし 快斗は3塁で止まった。

 快斗の足ならホームまで帰れるというのに。
 「………どうした………?快斗……?」
 源さんがそう言うと 快斗は返答した。

 「敢えて オレはここで止まって………氷室にプレッシャーをかける……それに………」
 「………それに………?」

 何がなんだか分からない源さんに快斗は横を見るように指示した。
 「………横?」

 そこには平次をボコボコにしている和葉の姿があった。
 いくら1塁まで行ったとはいえ そこから平次をボコボコにしに来るなんて。

 「誰の胸が筋肉じゃぁぁぁあいっっ!もっぺん言ぅて みぃぃぃっ!おるらぁぁぁっ!」
 「これは筋肉やない!ましてや ゼイ肉でも…………!!」

 和葉の攻撃はそこで止まった。女の胸はゼイ肉なのか そうじゃないかで 戸惑ったからだ。
 それを不審に思った平次は尋ねた。

 「どうした 和葉?やはり筋肉やったんか?」
 「ちっがぁぁぁぁう!」

 「げしっっげしっげしっ」
 和葉は叫びつつ 平次を踏み続ける。

 「とにかく!これは 筋肉やあらへん!わかったかぁ!バカ平次ぃぃぃ!」
 「あ……あぁ………分かった……」
 平次は息絶え絶えにそう言った。和葉が1塁に戻る姿を見て平次は思っていた。
 (アホンダラ………オレをこんな風にしてどうすんじゃい………せやけど………
  せやけど……これで……これで………オレまで回った………)


 しかし マウンド上の氷室は余裕の笑みを浮かべていた。平次を抑える術があるのか?




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ザ・ドクター様の小説第12弾!!
わはははは和葉(笑)・・あ・・ごほっごほっ
和葉と平次コンビは最強やなやっぱし(笑)この勢いで平次に打席がまわった・・・どうなる次号?? by あっきー

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