夏の幻

第三章


 



〜〜〜〜〜最初の挨拶〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

高鳴る鼓動・・・・無限の想い・・・・・。

決して報われない悲しい恋でも・・・なかなか届かない空しい恋でも・・・・。

恋をした女の子は男の子を振り向かせちゃう程綺麗になれる・・・。

この想い・・・・誰にも譲れない!

〜〜〜〜〜始まりはココから〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

東京都某区米花町の一角に三階建ての建物がある。

一階は「CAFFE ポアロ」。

二階は「眠りの小五郎」で名高い迷探偵・毛利小五郎の「毛利探偵事務所」。

三階は「毛利家自宅」がある。

その毛利家長女である蘭はいつものように5時半起床、身支度を整え朝食の準備をする。

この小説の読者である方なら御存知だと思うが、毛利家には母親なる人物がいない。

詳しくは映画第二段「14番目の標的」に詳しく記されているが現在別居中。

「妃法律事務所」の名弁護士として大活躍しているのが蘭の母親・妃英理である。

ちなみに 左手の薬指から指輪を外そうとしないからお互い嫌いではないと見る。

それはさておき もちろん小五郎に料理の腕前なんぞある訳がない。

だから 蘭が毎食(昼食は不明だが恐らく作り置きだろう)父親に食事を作るのだ。

「あ、私料理とか結構得意なんだ。」と趣味でしている女の子とはレベルが違うのだ。

彼女が一ヶ月近く風邪を引いたら 小五郎の餓死は決定的である。





さて 蘭が家を出るのは朝7時10分頃。

出発直前まで本を読んでいる「大バカ推理之助」と仲良く登校するのが毎朝の日課だった。

ピンポーン ピンポーン ピンポーン ピンポーン ピンポーン ピンポーン 

「新一〜〜〜〜〜〜〜〜〜早くしないと先に行くわよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」

しばらくすると眠たそ――な顔をした新一が鞄を持って出て来た。

世間を騒がせている日本警察の救世主とまで謳われた名探偵でも今は普通の人間だった。

ネクタイは緩んでいて、ボタンは上まで止まっていなく、大〜〜きな欠伸をしている。

「んも〜〜・・だらしないわね〜〜・・そんな格好見たらファンの娘泣くわよ。」

「推理は自分の趣味でやってるような物なんだからファンが出来ようと関係ねぇよ。」

新一は嫌味な笑みを浮かべ蘭の肩に手を掛けた。

「でもな・・・・おめぇーに嫌われるなら考え直してやってもいーぜ?」

「ちょっ・・・・何よっっ、〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っバカ!!//////」

これも説明するまでもないが今、新一と蘭はCHO→ラブラブなのだ。

ただし、お互いの両親にも友達にも、ましてや阿笠博士にも内緒の清いお付き合い。

とにかく今、新一は蘭にゾッコンだった。



〜〜〜〜〜台風〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



現在時刻12時30分。

昼食も終わり昼休み開始を告げるチャイムが鳴る。

いつも通りなら、昼食を終わった者順に廊下に出て友達との会話を弾ませる。

しかし、なんと、関東中心に大型台風が接近している為多くの生徒は教室に戯れていた。

雨は道路を覆う水溜りを作り、雷は太鼓の如く大きく轟き、風は狂ったように吹き荒れる。

ほとんどの女子は、大きく鳴る雷に悲鳴を上げているが、園子は楽しんでるようだ。

もちろん、蘭も雷に怯える女子の一人だが、蘭の怯え方は尋常ではない。

なにしろ、遊園地のオバケ屋敷に入れなく新一をガッカリさせた程の怖がりな蘭だった。

そんな蘭を園子が見逃す訳がない。

「し・ん・い・ち・くぅ〜〜〜〜〜ん?」

新一は一瞬、背後に物凄い気配を感じた。

「なっ・・何だよ、園子・・・・・・・・・・・・。」

昔から、こんな感じの口調で近付いて来る園子には何か裏がある事を新一は知っていた。

「『何だよ』じゃないわよ!蘭ってば雷に怯えててカワイイわよ〜〜〜〜〜〜〜〜☆」

「バっ・・・・・・・ンな事俺には関係ねーよ・・・・・・。////////////////」

「あらっ、顔赤いわよ?探偵サン♪」

「おい工藤・・・お前まさか過去に蘭が雷で怯えてるのをいい事に・・・・・・・・。」

「だ〜〜〜〜っ!うっせぇ!うっせぇ!!おめェら飲み掛けの牛乳ぶっ掛けるぞっ!!」

こんな、超一般的な会話を繰り返す園子達を他所に、蘭は一人机にうつ伏せていた。

雷が鳴る度に体がピクリと動き、横から見れば泣いてると一目瞭然で分かる。

こんな姿、新一だけではなく日本全国の毛利蘭ファンに見せればイチコロだろう。

すると、新一の「飲み掛け牛乳攻撃」を避ける為か、園子が近付いて来た。

「蘭・・・・・・蘭ってば・・・・・・しっかりしなよ、雷なんてすぐ止むって!」

園子の呼び掛けに顔をあげた蘭を見て、園子を眼で追っていた新一は牛乳を噴き出した。

「(かっ・・・・かっ・・・・・・・・・かわいいっ・・・・・・・・。/////////////////)」

確かに蘭は可愛かった。

眼は少し腫れ顔は真っ赤になり、まさに今の蘭には「可憐」と言う言葉がピッタリだった。

「そっ・・園子ぉ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

「ちょっと何よ!蘭らしくない・・・新一君だって心配してるわよぉ?」

「だっ・・・だってぇ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

一方、こちらは1b程離れた新一はと言うと・・・・・・・・・・・。

「くっ、工藤っ、鼻血っ!鼻血ぃっ!!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・出血していた。



やっぱり、高校生名探偵工藤新一は、幼なじみの毛利蘭にゾッコンだった。



〜〜〜〜〜帰宅〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

結局その日は、安全性を保つ為そのまま下校になった。

とにかく部活も補習も全部ナシで・・・言わば一斉下校と言った奴だ。

しかし、そんな先生の心配を払うように雨は降り続け、しかし雷は止んでいた。

「新一君っ!ちゃんと最後まで男らしく蘭を送りなさいよン☆じゃあねン♪」

「(――ったく、今日、蘭がウチに夕飯作りに来る事も知らねぇで・・・。)」

どうやら今夜は、新一の理性が試せる夜になりそうだった。

側では蘭が鳴りもしない雷に震えていて・・・・廻りには面白いくらい誰もいない。

思わず、今度はマジで蘭の肩に手をかけようとしたその瞬間っ・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・しばらく鳴らなかった雷はまた鳴り出した。

しかも、作者の趣味の為(笑)花火のように思いっきり特大のすげぇ奴だった。

もちろん蘭の顔色は一瞬にして青ざめ、新一も手を止めて、微妙な格好の二人になった。

しばらくして、蘭はゆっくり顔をあげ、新一に助けを求める小動物のような顔で見詰めた。

「しっ・・・・・しっ・・・・・・新一ぃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜・・。」

「・・・・・・・・ったく、しゃーねーなぁー・・・!!//////////」

新一は顔が熱くなるのを感じたが、蘭の手をギュッと握り突然走り出した。

「ちょっ・・・・ちょっと・・・・・新一?!」

「台風なんて滅多に来ねぇじゃねぇか!どーせ濡れるんだから派手に濡れようぜ!」

グラウンドの水溜りも関係なくバチャバチャ入って行った。

とにかく走り続けて全身ビショッビショだったが、握った手だけは濡れなかった・・・。

〜〜〜〜〜直撃〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「も〜〜〜〜〜〜・・い〜っつもやる事メチャクチャなんだから〜〜・・。」

結局家に着いた頃には濡れていたが、工藤家玄関で学校では泣いてた蘭は笑ってた。

新一は、急いで洗面所からバスタオルを2つ持って来た。

「おじさん、今日仕事だろ?」

拭ける限りの部分を拭きながら、新一は当たり前のように尋ねる。

「そっ、仕事。別名麻雀っ。」

「台風の日に麻雀なんて・・・・相変わらずすげーな、おい。」

新一がそう言うと蘭は相槌を打つように鼻で笑う。とにかく幸せな光景だった。

「あ・・・・一応風呂沸かしといたけど・・・・・入るだろ?風邪ひくし。」

「『入るだろ』って・・・新一は入らないの?」

「俺は大丈夫だよ。」

「またそんな事言って・・・それで結局風邪ひいちゃうんだから入りなさいよ。」

「だってよ――・・俺が入ってる間に雷が家に落ちたらどうすんだ?」

嫌味たっぷりに、決してありえない事を言って蘭の反応を楽しもうとする新一。

しかし、標的の肝心の蘭は・・・・・・・・・・・・・。

「そっ・・・・・・そうね・・・・・・・・。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・信じていた。

「・・・・・・・・・だろ?だからお前入れよ。俺は着替えるくらいで大丈夫だから。」

「でも・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

「だぁい丈夫。だぁい丈夫。風呂覗いたり突然襲ったりなんかしねーから安心して入れよ。」

「な”っ・・・・・・バカ!違うっ!!///////////」

その後も、蘭は遠慮するが、新一は大切な蘭に風邪を引いて欲しくない為説得を続けた。

結局蘭は、着替えは有希子の起きを借りて入浴する事にした。




―10分後―

「あれっ?新一?」

風呂から出た蘭は、リビングに新一が居ない事に気付いた。

「も〜〜〜〜〜〜〜・・何処行っちゃったのよ〜〜〜〜〜・・。」

すると、キッチンからガタッと物音がした。

少し不安になりキッチンに向かうと、新一が何か作っていた。

「んぅ?もう出たのか。」

「うん。ありがと。ねぇ、何作ってるの?」

「スープだよ。スープ。」

「スープゥ〜〜〜?」

「何でそんなに驚いてんだよ。夕飯がてらにいいだろ。」

「だって・・・・新一、今まで自分から料理とかしようって全然思わなかったじゃない。」

「今まで蘭に作ってもらってばっかだったからな・・・。」

「ちゃんと出来るのぉ?」

「たまには俺の手料理を味あわせてやろうと思ったんだけどいらねぇならいいぞ。」

「あっ、ゴメンゴメン。手伝うよ。」

「いいよ、お前は座ってろ。」

「お風呂にも入れてもらったし・・・どうせ今日は夕飯作る予定だったから手伝わせて。」

「だけどもう出来るぞ?」

「でもこのスープ・・・黒いわよ・・・・・。」

「だっ・・・だからそれはっ・・・・普通のスープなら面白くねぇだろ?な?」

「・・・・・面白いスープなんて飲みたくないわよっ。面白くないスープに変えてあげる。」

そう言うと、蘭はテキパキと調理を始めた。

情けなくも、新一は何も手出しが出来ずただ見てるだけだった。

わずか十分たらずで、新一特製「真っ黒スープ」は、普通のスープに変身した。

「・・・・・・・相変わらずだな。料理の腕は。」

「味はあんまり変えてないわよ。少〜〜しだけ調味料を加えただけ。」

「へ〜〜〜〜・・。」

とりあえず、食器を並べて二人だけの夕食が始まった。

「いっただきます。」

「おぅっ。」

それから、会話は弾んだ。

雨はしばらく止んでいたが、また振り出してた。

スープの出来は上出来で、蘭の味付けもふまえてだろうが食べられる物になっていた。

「でも本当にごめんね。お風呂に入れてもらって、服とかも借りちゃったし・・・・。」

「服は母さんの若い頃の奴だよ。でも結構似合うぜ?」

「えっ・・・・・・・・・・・・・。///////////////」

「ウソ。」

「な”っ・・・・も〜〜〜・・何よ〜〜〜〜〜〜〜・・。/////」

もちろん、これは新一の照れ隠し。

蘭は風呂上りの為、キチンと髪が乾いてなく少し濡れていた。

その姿がカワイくて溜まらず、蘭と眼が合う度に顔が真っ赤になっていた。

すると突然、恐らくこれも作者の趣味だろうが雷が鳴り町内中一斉に停電が起きた。

「キャッ・・・やだ・・・・・停電・・・・・・・・・・?」

「はっ・・・・博士ン家もなってるみたいだぜ?この辺一帯落ちたんじゃねぇ?」

「雨に停電なんて最低ね〜・・ちょっとロウソク取って来るっ・・・・・。」

「あっ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

新一は思わず、蘭の腕を掴み、自分の方に引き寄せて抱き締めてしまった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・暗闇の中に蘭が消えてしまいそうで怖かった。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・行くな。」

「ちょっ・・・ちょっと新一?!離してっ・・・もうっ・・・ばかぁっ・・・・。////////」

しかし蘭の抵抗は脆くも新一の両腕に遮られてしまった。

思ったより力強い新一に、蘭は驚きと恥ずかしさを隠しきれなかった。

「なっ・・・何でこんな事するのっ・・・・・・よっ・・・・・・バカッ・・・・・。」

すると、蘭を抱き締めた力を緩める事なく、ゆっくりと口を開く。

「俺の事・・・・・・・・・・・・・・嫌いか・・・・・・・・・?」

「えっ・・・・・・・・・・・・・・・何でそんな事っ・・・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・答えてくれ。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っ。」

一瞬戸惑ったが、蘭は正直に答えた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・す・・・・・・き・・・・・・・・・・っ。」

この言葉を境に、新一の抱き締める力はドンドン強くなる・・・・・・・・。

「(えっ・・・・・ちょっ・・・新一・・・・・・・重くなって来てる・・・・・っ?)」

そのまま新一は・・・・・・・・・・・・・蘭と一緒に倒れ込んでしまった、

                                    つづく
〜〜〜〜〜あとがき〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お久し振りです、飛鳥です。
「夏の幻 第三章」如何でしたでしょうか?
さて、今回は我らが王子:工藤新一が御乱心の用な終わり方でしたね。
あくまで「つづく」ですが決してヤバい系じゃありませんので御安心を。(笑)
どんどん駄作率を加速して行く「夏の幻」ですが、小説を読んだ友達に褒められたので嬉しかったです。
もし良ければ掲示板等に「やめろ!」とか「ウザい!」とかでも構いませんので感想聞かせて下さい。
しっかしま〜・・今回の新一は荒れてるなぁ・・・・・。(笑)
では、長くなりましたが次回作で逢いましょう。
 

飛鳥様から戴いた投稿作品です!!
すっかりアップが遅れてすいませんっっ
前回よりもパワーアップ??の新一が積極的〜〜〜(笑)
雷怖い蘭ちゃんてかわいいな〜〜〜
うちも雷あかんから「ぎょええええっなんじゃこりゃー」って叫んでるでー←いやあんたは怖いわ(爆)byあっきー

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