コナン&金田一final
漆黒のモレンド 第20章
作:Gahal様
午後9時

コナン達5人は救助艇に回収され、救助艇はついに東京港へ寄港した。
小五郎、美雪、フミは程なく意識を取り戻した。
念のため1日入院し、翌日検査を受けることになった。

蘭もすぐに米花不動総合病院に搬送され、すぐに輸血が施された。
担当医師によると、2〜3日で退院できるらしい。
コナンも、面会に来た英理と園子も心底ホッとした。

先に搬送された平次と和葉も意識を取り戻し、見舞いに来た両親と談笑している。
佐藤も精密検査を受け、異常なしの判定を受けていたが、念のため1日だけ入院することになった。
高木と白鳥と千葉をはじめ、警視庁の警官達が大挙して押しかけ、由美ら数人の婦警も見舞いに来た。


ただ一人、守だけがまだ意識不明だった。

歩美、光彦、元太、哀、阿笠が集中治療室の前に集まっていた。
あの後、守の容態が急変したという連絡が阿笠の家に入ったため、急遽見舞いにやってきたのだ。
そこにコナンも合流した。

守は集中治療室のベッドの上に横たわり、いろいろな機器を接続され、点滴と酸素吸入を受けていた。
心電図の波形が激しく波打っている。

そこに守が暮らしている施設の施設長が到着した。
集中治療室から出てきた担当医師が「今夜が山」だと告げた。
それから、しばらく重苦しい沈黙が続いた。


歩美「守くん死んじゃうの?」
涙を浮かべながら歩美が尋ねた。

光彦「そんなことありませんよ、多分…」
元太「多分って何だよ…」
3人はどんどん暗くなっていく。

光彦「せめて、キッドに会わせてあげたかったですね。」
歩美・元太「・・・」

コナンは思い出していた。客船の薬品庫で爆発に巻き込まれたキッドのことを…
コナン(キッド…お前があのくらいでくたばるはずがねえ…)



その時、守は夢を見ていた。
夢の中で守は、白く深い霧が立ちこめた広い場所にいた。
守のほかには誰もいない。見渡す限り白の世界。
守は言いしれぬ不安を感じていた。


コツッコツッコツッ…

静寂を破ったのは、その足音だった。

足音が近づくにつれて霧に映るその人物の影が次第にハッキリとしてくる。
それはシルクハットをかぶり、マントをつけている人物の輪郭になった。

守「ひょっとして…」

その人物は、さらに守に近づき、やがてその姿がハッキリ見えるようになった。

守「やっと会えた…怪盗キッド」
守の顔に満面の笑みが広がった。

キッドも笑みを浮かべながら守の前に立っていた。


キッド「よう守。大丈夫か?」
守「うん。大丈夫だよ。」
キッド「そうか。じゃあ行こう。みんなのところへ。」
そういってキッドは右手をさしのべた。

守「うん。」
守はキッドの手をとり答えた。


それを確認するとキッドは左手の人差し指を立て、唱えた。
キッド「ワン!ツー!!スリー!!!」

と同時に、守は目を覚ました。
そこは集中治療室のベッドの上。

守「夢だったんだ。じゃあさっきのキッドは…」
しかし目の前に本当にキッドがいた。

キッド「よう」
守「キッド!!」
守はキッドに抱きついた。

担当医師「な、なんだね君は。一体どこから入ってきたんだね?」

守「本当にキッドなんだね。」
キッド「ああ、もちろん。」
守「ずっと探してたんだ。会いたくて…言いたかったんだ…」

守「助けてくれて、ありがとう。」
キッドは微笑み、そしてやさしく守の頭を撫でた。

数分後、守は再びベッドに戻り、担当医師の検査を受けた。

担当医師「信じられん。」
医師は集中治療室のドアを開け、外にいたコナン達の入出を許した。

担当医師「もう大丈夫です。あと1〜2日で退院も可能でしょう。」


そして少年探偵団を先頭にコナン、哀、阿笠らが集中治療室に入ってきた。
歩美・光彦「守君!!」
元太「守!!」
歩美「よかった元気になって!!あ、怪盗キッド!!」
光彦「ついに会えたんですね」
守「うん。みんなのおかげだよ。」

キッドは、守の嬉しそうな姿を見て笑みを浮かべた。
そして窓の外を見ながら一言つぶやいた。
キッド「サンキュー紅子」

紅子「どういたしまして」
病院の窓から見えているBJCタワーの天辺で紅子はそう返事した。

鈴子「守くん…」
その時、池羽鈴子が集中治療室内に駆け込んできた。

守「誰?」
そこには誰一人、鈴子のことを知る人物はいなかった。
鈴子は側に二人の人物を伴っていた。

白馬探と、服部平次だった。
平次は車いすに座っている。

平次「この人、探偵の池羽鈴子さんや。」
コナン「この人が。」
白馬「池羽というのは旧姓で、今は赤島鈴子さんだそうですが。」
キッド「あなたですね。守くんのお父さんが、守君を捜してほしいという依頼をした赤島探偵は。」
鈴子「ええ。」
コナン「でも、その探偵さんがどうしてここに?」
白馬「守君についていろいろ調べている内に分かったんですよ。守君のお母さん、佐智子の旧姓も“池羽”だということが。」
コナン「それって…」
白馬「ええ。佐智子さんと鈴子さんは、血を分けた姉妹だったんです。」
平次「つまり鈴子さんはそのボウズの叔母さんにあたるっちゅうわけや。」

守「おばさん?」
鈴子「そうよ…」

キッド「さて…」
キッドは窓を開け、ハンググライダーを組み立てた。

守「もう行っちゃうの?」
キッドは答えない。

守「また会える?」
キッド「ああ」
守を振り返り、キッドはほほえんだ。
そして窓に片足をかけ、飛び立とうとした。

守「バイバイ快斗お兄ちゃん」
キッド「うっ?」
キッドは凍り付いた。大勢の前で本名を呼ばれたのだから。

光彦「違いますよ守君。怪盗兄ちゃんではなくて怪盗キッドです。」
全員から笑いが起こる。

どうやら正体はバレていないようなのでキッドはホッと胸をなで下ろした。
そして
キッド「それではみなさん。いずれまたお会いしましょう。」

そういい残してキッドは飛び立った。夜空へ向かって…


数日後、コナンたち少年探偵団と阿笠が上野駅の東北新幹線ホームに集まっていた。
鈴子とともに仙台の赤島探偵事務所で暮らすことになった守を見送りにきたのだ。

元太「元気でな。」
歩美「いつかまた一緒に遊ぼう。」
光彦「手紙出しますね。」
コナン「じゃあ、またな。」
灰原「風邪ひかないようにね。」
守「うん。みんな、ありがとう。」

ジリリリリリリリ

新幹線の発車の時間になった。
鈴子と守が乗った新幹線はスピードを上げる。
守「さよなら、みんな。さようなら〜」

コナン・歩美・光彦・元太「さようなら〜」
新幹線は、仙台へ向けて走り去っていった。

















































































































































































































































































守が仙台へと行ってしまってから数日後、5648が留置場から脱走した。
その日は、客船の沈没現場から2208と思われる遺体が発見された日だった。
脱走の際、5648は仲間だった5010を毒殺したという。

そして、その後1時間以内に、まだ残っていた本部と東海支部の建物が相次いで爆発した。


その頃コナンは阿笠博士の家に向かっていた。
灰原にあることを尋ねるためだ。
コナンはわざと灰原に声をかけないで地下室へと下りていった。

灰原はパソコンの前に座り、DVD-ROMから開いたPDFファイルを読んでいる。
コナンは灰原の後ろにそっと近づき、横からそのDVD-ROMのケースを取り上げた。

ケースには、NCTX8982と書かれている。
いきなりだったため、灰原はびっくりして振り向いた。

灰原「く、工藤君。いつからそこに?」
コナン「今、来たところだ。守が初めて5010の名前を出したときのお前の反応が気になってな。」
灰原「そう…」
コナン「やっぱりお前、知ってたんだな。奴らの組織のことを。」
そしてDVD-ROMケースに目を落とし、続ける。

コナン「8982って確か北海道支部長のコードネームだったよな。それに毒を表す"TX"がついてるってことは、このディスクは、8982が守の血液から作った毒薬のデータじゃないのか?」
灰原「…たしかにそのディスクは8982が開発したネクトキシン8982(nectoxin8982)のデータよ。ちなみに、"彼らの組織を知っていたのか?"という質問の答えもYESよ。
私がまだ(黒の)組織でアポトキシンの研究を行っていた頃、5648と名乗る男が取引のために何度も(黒の)組織を訪れていたから。」

コナン「…そのディスクもその時に?」

灰原「いいえ。確かに5648は、NCTX8982のデータを持ってきたことがあるわ。ネクロトキシン。ネクはネクローシス。
アポトーシス(プログラム細胞死)の対極と考えられているもう一つの細胞死のこと。
ミトコンドリアなどの細胞内小器官の膨大化から始まり、細胞自体の膨化、最後には細胞溶解が起こりその細胞は破裂。
その作用を利用し、特定の脳細胞だけを死滅させ、相手を自分の理想通りの人物、例えば、他人の命令を100%拒否せず実行するロボットのような人間や、
筋力のリミッターを外し、常に最大限の力を発揮することが出来るモンスターに作り替えてしまう毒薬がNCTX8982よ。
(黒の)組織が目指している物とは違う薬だったため、その毒薬は納入されることはなかったけどね。」

灰原「このディスクに入っているデーターはネット上に公開されていた最新のものよ。アポトースとは対極の作用を、アポトキシン4869の解毒剤に利用できないか考えていたんだけれど、
無理だったみたい。そうそう、あの子の事は心配しなくていいわよ。
この最新版のデータにも、あの子の特殊な血液が必要だと言うことは、書かれていないから。」

コナン「そうか…疑ったりして悪かったな。」
灰原「気にしなくていいわ。」
コナン「そういえば黒の組織と5648達の組織との取引はどうなったんだ?」
灰原「すぐに取引中止になったわ。さすがのジンたちも、一応謎に包まれた組織が相手だったために、"(黒の)組織の事を知る者は全て消去"とは行かなかったみたいよ。」




脱獄した5648が向かったのは、東京湾に面した、今は使われていない漁港だった。
コンテナの残骸に挟まれたせまい通路を進んでいと、その先に一部分だけ広くなっている場所があった。
そこにその男はいた。

ウオッカ「よう、待ってたぜ。」
黒の組織のウォッカだった。

5648「(2208の)組織を壊滅させてきた。約束通りオレをあんたたちの組織の一員にしてくれ。」
しかしウォッカはニッと笑みを浮かべたまま答えない。
そのとき、5648の真後ろからコツッコツッ…という足音とともに、聞き覚えのあるもう一人の人物の声が聞こえてきた。
ジン「残念だが、そいつは出来ねえ相談だな。」

5648は振り返った。
5648「ジン!!どういう事だ!!約束を破るつもりか!?」

ジン「(黒の)組織の事を知る者は全て消去する。それが我々のやり方だ。」
5648「だ、だましたのか?口封じにオレを利用したのか?」
ジン「ああ」

ドン!!

そうジンが答えると同時にウォッカが5648を撃った。

その弾は、確実に5648の心臓を貫いていた。
5648はその場に、うずくまるように膝を曲げ、体を前に倒し、最後にはうつぶせに倒れ込んでいた。

5648「ちくしょう…」

その胸からはおびただしい量の血が噴き出している。
5648は悔しそうに地面に指を立てた。
そして執念でジンの元へ這っていこうとする。
しかし、ついに力尽き二度とその体を動かすことはなかった。

それを確認すると、ジンとウォッカはくるりときびすを返し、歩き始めた。
ジン「これで、当初の予定通り、2208の組織は完全に消滅した。行くぞウォッカ」
ウォッカ「ヘイ!!」
最後にウォッカは振り返り、いま使った銃を5648に向かって投げた。

ウォッカ「この銃、お前の忘れ物だったな。返すぜ。」

ジンとウォッカは、漆黒の闇へと姿を消していった。



<あとがき>
ついに、ついに、
漆黒のモレンドが完結いたしました!!!!!!!
長すぎて、詰め込みすぎて、書くのにもかなり手間取り、
気がつけば2年以上かかってしまっていました。
書くのが遅くて申し訳ありませんでしたm(__)m

何章か前の後書きで「あと2人登場させる」と言っていたキャラは・・・ジンとウォッカだったんです!!

今回は、いつものようなハッピーエンドとは少し変えてみました。

「コナン&金田一」を全部書き終えるのに5年近くかかるとは、思ってもいませんでした。
長い間、本当にありがとうございました。

Gahal様小説ありがとうございました☆
漆黒のモレンドの完結お疲れ様でしたっ
手に汗握る展開、謎解き、金田一作品とコナンとのコラボと色んな要素をまとめて小説にするのはとても大変だと思います。
完成度の高い素敵な小説ありがとうございましたっしょぼいイラストまたつけてますが見流してください(待て)
byあっきー

戻る

TOPへ