第3の予告状 〜After〜(後編)
作:Gahal様


(服部平次へ、お前の彼女はもらった。帰してほしければあの時計を開ける2つ目の鍵を持って一人で図書館へ来い。/0717)


午後11時50分、平次は図書館に到着した。

館内は月の光によって青く照らし出されていた。

そして正面の大時計の前には八坂の姿があった。

平次「八坂!!」
八坂「やあ、早かったね。服部平次君」
平次「和葉は?和葉はどこや!!」
八坂「心配はいらない。ちゃんと無事に返してやるよ。ただし、お前がこの時計を開けてくれたらだが。」
平次「わかった。1つ確認しとくけど、エターナルブルーは持ってるんやろな?」
八坂「ああ、このとおりだ。お前こそ2つ目の鍵は持ってきたのか?」
平次「…いや」
八坂「何だと?貴様!!あの女がどうなってもいいのか?」
平次「勘違いするな。第2の鍵はな、触れることが出来ひん物なんや。」
八坂「な…いったい何なんだ?その第2の鍵というのは?」
平次「まあ順番に教えてやるから、まずエターナルブルーをそのくぼみにはめるんや」
八坂「分かった!!」
と、八坂はエターナルブルーをはめながら言った。

平次は続けた。
平次「…その時計の針をよう見てみい。短針が丁度数字と数字の半分、つまり全体の24分の1ずれてるやろ。」
八坂「だ、だからそれがなんなんだ!!」
平次「つまり、その時計の針をちゃんと合わせればこの時計は開くんや。そして、その針を動かすのが第1の鍵、エターナルブルーなんや。」
八坂「何、それじゃあこのエターナルブルーをまわせば…」
八坂はガチャガチャとエターナルブルーをねじ回そうとした。が、びくともしなかった。

八坂「びくともしない。おい、いったいどういうことなんだ!!」
平次「そう、確かにこのままじゃエターナルブルーは動かへん。
が…もう一つの鍵、つまり第2の鍵があればそのエターナルブルーを動かすことが出来るんや。」
八坂「だから何なんだ。いちいちじらしやがって。」
平次「…第2の鍵のヒントは、この時計が開くのが今日だということ、夜だけ開くあの天窓。
そして、その時計の作者香坂喜一の作品には光で動く仕掛けがある…といえば分かるんちゃうか?」
八坂「な…そうか!!」
といって八坂は窓の外の上空を見た。

八坂「満月の光!!」
平次「そうや。それもただ満月じゃあかんのや。」
八坂「どういうことだ、それは?」
平次「月齢って知ってるか?」
八坂「ああ、確か月齢が0のときが新月で月齢が15のときが満月だ」
平次「そう、しかも月齢が15になるとき、つまり月が完全な円形になるときはほんの一瞬なんや。」
八坂「なるほど、要するにまん丸お月さんの光を集めればいいんだな。」
平次「話はそんなに簡単やないんや。」
八坂「何?」
平次「月は約28日で満ち欠けしてるんやけど、でもキッチリ28日や無いから、月齢が丁度15になる時間はどんどんずれてくるんや。」
八坂「そうか、つまり月があの天窓のところに来たときに丁度月齢15にならなければいけないのか。」
平次「そう。あの天窓は真南にある。だから満月が真南に来る時刻、つまり午前0時に月齢15になる日やないと、
いくら満月の晩でもその時計は開かんのや。今夜はたまたま午前0時に月齢15になる日やったんや。」
八坂「午前0時?じゃあもうすぐじゃないか。」
平次「そうや。あと10秒9,8,7…3,2,1,0!!」


その瞬間
時間は午前0時丁度になった。


天窓から青白い光が差し込んできた。
その光は先がだんだん細くなり、そしてエターナルブルーへと差し込んだ。
平次「先が細うなってるっちゅうことは、あの天窓のガラスは凸レンズになってるんやな。」
そして、すぐにエターナルブルーが光り輝きだした。
平次「あのくぼみの奥には鏡がはめられてるんや。だからその反射光もエターナルブルーに集まってるっちゅうわけや。」
そして…
徐々にエターナルブルーが回転し始めた。
ゆっくりと、確実に…
そしてエターナルブルーが半回転したとき、時計の短針が正規の位置に合わさった。


ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン…
鐘が24回鳴った。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
轟音と共に時計が沈んでいった。そして、足元の床が変形し、地下へと進む階段が出現した。

平次「へ〜っ、なんや思ってたよりすごい仕掛けやな。」
八坂「おおおおっ」
平次「さあ約束や。和葉の居場所教えてもらうで」
八坂「おおおおおおおおっ」
八坂は一目散に地下へと走っていった。
平次「おい!ちょっと待てこら!!」
仕方なく平次も後に続いた。

階段を下りていった平次は長い廊下に出た。
その廊下の両端にはずらっと鎧が並べてあった。
その鎧はすべて正面に真剣を構えていた。
その廊下はとても長く、突き当りには扉が1つあった。
その扉の奥は大きな部屋だった。
その部屋の中央には、宝箱がひとつあり、その中にはいっぱい金塊が詰まっていた。
そして部屋の一番奥の壁には1枚の絵がかけられているようだが、よく見えなかった。

八坂「金だ…金だ…へははは…」
平次「おい」
八坂「へひゃひゃひゃひゃひゃ…金だ…」
平次「こら」
八坂「ひゃーひゃひゃひゃひゃ…全部俺のだ!!」
平次「聞いとんのかコラ!!」
八坂「ひゃ…アン?なんだ貴様まだいたのか?」
平次「和葉はどこや?」
八坂「和葉?ああ、あの女か。心配無用だ…少なくともこれから死ぬ人間にはな」
といって八坂は6連のリボルバー式拳銃を平次に向けた。
八坂「じゃあな」
八坂は引き金を引いた。

カチッ

八坂「何?弾切れ!?」
平次「残念やったな」
カチッカチッカチッカチッ
平次「無駄や、やめとき」

ドン!!

その1発は平次の左肩に命中した。
平次は後ろにに倒れこんだ。

平次「ぐっ…」
八坂「なんだ、1発だけ残ってたのか…」
八坂は拳銃を捨てながら言った。

そのころ和葉は…
図書館の3階をさまよっていた。
後ろ手に縛られ、猿轡までされていたのだが、もがいているうちに手を縛っていた縄が切れたのだ。
和葉「も〜う、ここどこなん?本ばっかあるから図書館やとは思うんやけど…さっきの音何やったんやろう。」
和葉はさらにさまよい続けた。


再び宝の部屋…
平次はかろうじて起き上がろうとしたが、八坂に銃身で頭を殴られ、そのまま気絶してしまった。
八坂「さて…」
といって、八坂は金塊を袋に詰め始めた。

その後、再び平次が意識を取り戻したとき、そこに八坂の姿は無かった。
そして、金塊が入っていた宝箱も空になっていた。
平次は慌ててその部屋を出た。
すでに鎧の廊下にも八坂の姿は無かった。
平次は1階へと出た。
とりあえず和葉を捜すため、階段から2階へ上がった。

平次「和葉〜!! 和葉〜!!」
平次は必死で探し回ったが、2階にはいないようだった。

しかしそのとき

キン!!

和葉「キャーッ!!」
上から金属音と和葉の悲鳴が聞こえてきた。
平次はとっさに3階へと駆け上がった。
平次「和葉〜!!」
平次は3階の奥の方に和葉を見つけ、駆け寄った。

が…
和葉「へ、平次!!アカン!!」

バシュ!!

その直後、平次は何かに切りつけられた。
八坂「やあ、生きていたのか。」
平次「ああ、俺はしぶといんや」
その八坂の手には日本刀が携えられていた。おそらく、地下の鎧の廊下のものだろう。
八坂「だが、それもこれで終わりだ。」
八坂はすぐ側で腰を抜かしている和葉のノド元にその刀の先を突きつけながら言った。
八坂「君たちには死んでもらうよ」
八坂はいきなり平次に切りつけた。
平次「和葉!!逃げるんや!!」
平次は刀を避けながら言った。だが、刀相手では手も足も出ず、平次は避けるのが精一杯だった。

その後も八坂の執拗な攻撃は続き、ついに平次は階段のところまで追い詰められていた。
八坂はさらに平次に切りつけた。
平次はその刀も何とか避けたが、足を踏み外し、階段を1階まで転げ落ちていってしまった。

平次「うっ!!」
平次は立ち上がろうとしたとき、右足に強い痛みが走った。
階段を転げ落ちたときにくじいてしまったらしい。
そこに八坂が降りてきた。

八坂「はあっ!!」
八坂はまた刀を振り下ろした。
平次は再び避けようとしたが、足が動かなかったため、肩に食らってしまった。
平次「うがっ!!」
八坂「ハッハッハッハ…もう避けることも出来まい!!」
平次「ぐっ…」
八坂「これでおわりだぁぁぁっ!!」
八坂は平次の頭めがけて刀を振り下ろした。
そのとき
和葉「平次〜ぃ!!これ、使い!!」
和葉は平次のほうに刀を一本投げた。

キィィィィン…

八坂「何!?」
八坂の振り下ろした刀を平次が刀で受け止めたのだ。
平次「このまま俺らを殺して口封じしよ思ったんやろうけど、相手が悪かったな!!」
平次の刀が八坂の胸を切り裂いた。
八坂「何だと!!この死にぞこないが!!」
八坂は再び刀を振り下ろした。

バシュッ
平次の刀が八坂の胸を切り裂いた。

ドサッ

八坂が倒れた。
その八坂に向かって平次がつぶやいた。
平次「安心せい、峰打ちや。」

和葉「平次!!」
和葉が駆け寄ってきた。
平次「和葉!!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…

轟音があたりに響き渡った。
和葉「え?何?何なん?」
そして、時計は元のように完全に閉じてしまった。

翌日
2人は再び図書館を訪れた。
カウンターの司書に津村の事を聞いてみたが…

司書「津村?この図書館にはそういう者はおりませんが」
平次「何やて?」
司書「そういえば、津村といえば、今から約100年前、ここがまだ美術館だったころの初代館長がそういう名前だったはずですよ。
ほら、そこの大時計、その館長が香坂喜一という人からもらいうけたらしいんですが…まあこんな話は関係ありませんよね。」

平次「だったらあの人は…」
平次と和葉は言葉も出なかった。
そういえばあの絵、よく見えなかったけど確かに津村さんの絵だったように思える。

その後、2人はあの湖のほとりに来ていた。
和葉「なあ、本当にええの?」
平次「ああ、ええんや」
平次は湖に向かってエターナルブルーを投げた。
エターナルブルーは湖の底へと沈んでいった。

しかし…

その翌日の夜
平次はコナンと電話で話していた。
コナン「へえ〜」
平次「へえ〜って…なんや冷たいなあ、俺は死にかけたんやぞ!!」
コナン「よく言うぜ、オメエはそう簡単に死ぬやつじゃねえだろ。」
平次「なんやと!!」
コナン「それはそうと、目暮警部から事件のことを聞いてさ、ちょっと一つ気になったんだけどよ…」
平次「…良博さんが殺されてたときのナイフの指紋のことか?」


コナン「ああ、普通指紋を消す理由は自分の犯行を隠すため。だが奴はわざわざ0717って書いたカードを添えていた。」
平次「しかもあいつは一度逮捕されて前科カードに指紋が残ってるしな。…これはおれの仮説やけど、ひょっとしたらあいつのほかに
まだ誰かおるんかもしれんな…」
コナン「…そうだな」

ほぼ同じ時刻、ある森の奥で…

八坂「ハァッハァッハァッ…くそっあの野郎…」
そのとき八坂の後ろから一人の男があらわれた。
5648「またしょうこりもなく逃げ出してきたのか」
八坂「お、お前は…」
5648「全く、わざわざエターナルブルーの持ち主を殺してやったというのに、使えない奴だ」
5648は八坂の眉間に銃を突きつけた。
八坂「ま、待ってくれ!!もう一度だけチャンスを。」

ドン!!

5648の拳銃の弾が八坂の頭部を貫いた。
5648「奴らは、俺が消してやるよ。まああの世からゆっくり見物してな。フフフフフフッ…フフフフフフッ…」




おわり

Gahalさまのあとがき
あとがき やーっと終わりました。 すみません、ものすごく時間がかかってしまいました。
しかも一度書き終えたあとで、9割近く修正する羽目になってしまいました。
ではこの続きは新小説になります。

Gahal様小説ありがとう☆
うわ・・・平次が撃たれたぁぁっΣ(=□=;)←やかましい(笑)
にしても・・・・やっぱりまだまだ敵がいる気配・・・・・・・
そして・・・満月の光とは・・・・くぅぅっそこまで思い浮かばなかったです。
修正ご苦労様でしたっ。すごく見応えあって目が離せなかったです。 by あっきー

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