「あさみちゃん。またねー」

「うん。またねー」

その日の放課後に別れのあいさつをした後、あさみと呼ばれた少女は帝丹小学校の女子トイレに入った。

少女の友達たちは急用があったらしく先に帰ってしまい、あさみは一人で女子トイレに入ったのだった。

なんとか用を終えた後、洗面台の鏡の前で手を洗うあさみ。

「あれ?」

不意に鏡にちらっと白い影が映ったような気がして、あさみが振り返る。しかし、そこには誰もいなかった。

「気のせい……だよね」

あさみが不安そうにつぶやく。夕方の薄暗い雰囲気のせいもあり、不安を紛らわそうとついつい独り言を言ってしまう。

「うん。気のせい。気のせい」

何度も何度もあさみは自分に言い聞かせる。

その時…

また鏡の中に白い影が映ったような気がして、あさみは再び振り返った。

あさみのつんざくような悲鳴が校舎内に響き渡ったのは、そのすぐ後だった。


魔法少女 マジカル☆哀 幽霊を捕まえろ!! 前編


「そういえば、コナンくん! 灰原さん! 知ってる? この学校で幽霊が出たんだって!」

『幽霊?』

歩美の言葉を聞いて、コナンと哀は異口同音につぶやいた。

学校の授業が終わり、放課後。いつもの5人が集まって話をしていると歩美が幽霊話を切り出したのだった。

「あ、ボクも聞いてます。なんでも2階の女子トイレに出たらしいですね」

「オレは音楽室にも出た、って聞いたぞ」

元太と光彦がそれぞれ聞いた話をしゃべり、歩美の話を補う。

「そうなの!なんでもA組の藤川あさみちゃんが、その2階の女子トイレで幽霊に出会って気を失ったって!」

「へー。そうなんだ」

(アホらし)

相槌を打ちつつ、コナンは心の中で呆れていた。

(なにが幽霊だっつの。そんなもんただの見間違いかなんかだろ?)

コナンは胸の中でそうひとりごちる。

そんなコナンの内心を把握していたかどうかは知らないが、光彦がコナンの心境を代弁して言った。

「まあ明らかに見間違いかなんかだとは思いますがね。この科学万能の時代に幽霊なんてナンセンスです」

「えー。光彦くんはいないと思うの?」

「いませんね」

歩美の質問に光彦がきっぱりと否定する。

「そうかなー。灰原さんはどう思うの?」

「さあ? たぶんいないんじゃないかしら?」

歩美の問いかけに、哀は冷静な態度でそう答えた。

「そ、そうですよね!!灰原さんもボクと同じ意見ですよね!!」

哀と同じ意見だったのがうれしかったのか、光彦が同意を求めてくる。

「ええ。まあね」

「そうですかー。灰原さんとボクが同じ意見……」

光彦はしみじみとつぶやくと、感動したような面持ちになる。

「むー。元太くんはどう思うの?」

「オレか? オレはいるかもなー、とは思ってるぜ」

「そうだよね!やっぱりいるよね!!」

歩美が自分と同じらしい元太の意見を聞いてうれしそうな顔をする。

その笑顔を見て、光彦が歩美と違う意見を言ったことを少し後悔したが、そんな胸中も知らず歩美がコナンにたずねる。

「で、コナンくんはどう思うの?」

「え?」

歩美たち4人が一斉にコナンを見た。

今の幽霊に対する意見は、光彦と哀がいない派、元太と歩美がいる派の2対2である。当然のことながらコナンの意見でどちらの派が多いか決定する。

もちろんコナン自身の意見としては、幽霊なんかいるわけねーと思っている。そんなのがいたんじゃ殺人事件が起きるたびにこの世は幽霊で溢れかえってしまうだろう。

だが、なぜか今はその意見をただ言えばいいという雰囲気ではない気がした。

歩美が期待のこもった目でコナンを見る。その目からは、自分と同じ意見であってほしい、という期待があふれているように感じる。

元太はコナンが歩美と同じ意見を言って多数派になりたいが、歩美と二人きりの意見でいたいとも考えているようでややにらみつけてくる。

光彦も歩美と哀という違いこそあるが同様の考えのようだ。

哀の方を見ると別にいつもの淡々とした表情ながら、この状況を面白がっているようだった。

コナンは答えた。

「んー。ボクはどっちでもないよ。いるような気もするし、いないような気もするし……」

「なんだよ!コナン!そのあいまいな意見は!!」

「そうです!!ここははっきりと決めるべきでしょう!!」」

コナンが言った中途半端な意見に元太と光彦が怒り出す。コナンの中立の意見で、歩美や哀と二人きりの同じ意見になれたことも忘れて食ってかかる。

「でも、ボクにはいるかいないかよくわからないから」

だが、コナンはそう言ってあいまいな意見から変えようとしなかった。

「あー!なんだよ!これじゃ勝負がつかないじゃねーかよ」

元太が大きく不満をもらす。どういうわけかいつのまにか勝負になっていたらしい。

「勝負は決まってます!!いないに決まってます!!」

「なんだと!いるに決まってるだろ!!」

光彦が元太に自分の意見の方が正しいと宣言する。それに対し、元太も自分の意見の方が正しいと負けじと言い返した。

「もー。二人ともケンカはやめてよー」

そんな二人の口ゲンカを歩美が止めにかかる。

そんな様子を見ながらコナンはため息をついた。コナンに近づいてきた哀がおかしそうに微笑みながら小声でつぶやく。

「あなたも案外典型的日本人なのね。ちゃんと言えばよかったじゃない。幽霊なんかいるはずないって」

「うるせ」

なんとなく雰囲気に負けて中途半端な意見を言ってしまったコナンは哀の笑うような視線から目をそむけた。

「いるに決まってるだろ!!」

「いないに決まってます!!」

元太と光彦の言い争いはヒートアップしてますます止まらなくなっていく。

歩美はそれを止めようとするが、一度ついた炎はなかなか消し止められない。

(まあいずれ二人の頭も冷えて落ち着くだろ)

コナンが二人のケンカを放っておいて、帰り支度をしようとしたその時、

「おーし!じゃあ!今日の夜、この学校に出るっていう幽霊を捕まえてやる!!それでいるって証明してやるぞ!」

「いーですとも!!ボクもそれに同行して幽霊なんているはずがないって証明します!!」

「は?」

元太と光彦の言葉を聞いてコナンの体の動きが固まった。

「歩美ー! オレが幽霊を捕まえて、いるって証明してやるからな!! だから、一緒に来いよな」

「灰原さん! ボクが幽霊なんていないってことを証明してあげますよ!! だから、一緒に来てください」

元太と光彦がそれぞれ歩美と哀に声をかける。

それから、元太と光彦は同時にコナンの方を向くと大きく叫んだ。

「もちろんオメーも来いよな。コナン!」

「そうです!! 絶対に来てくださいね!!」

「へ? なんで?」

間の抜けた声がコナンの口から漏れる。そんなコナンに対し二人は、コナンに来てほしい理由を告げた。

「決まってるだろ!オメーはいる派でもいない派でもねー」

「そうです。だから、勝負の審判として来てもらいます!!」

「マジ?」

元太と光彦の言葉に事態が面倒な方向へ向かったことを理解して思わずつぶやいてしまったコナンだった。

 

夜の黒闇の時間。一度自宅に帰って準備をした後、人がいなくなったのを見計らって、コナンたち5人は帝丹小学校に忍び込んだ。

電気の明かりをつけると、忍び込んでいることがバレてしまう為、五人は持ってきた懐中電灯で暗闇の小学校の中を進む。

「こうやって忍び込むのって2回目だね」

「おう!たしかこの小学校の美術室と保健室の呪いの謎を解こうとして忍び込んだんだよな」

「ふーん。前にも忍び込んだことがあるのね……」

哀が歩美と元太の会話を聞いてつぶやく。

「うん!灰原さんがまだ転校してくる前のときのことだよ」

「まあその時の呪い騒ぎの元凶は人間だったんですけどね」

歩美と光彦が哀にそれぞれ説明する。

「当然、今回の幽霊騒ぎの元凶も見間違いか、人間によるものに決まってます!!」

「バカッ!光彦!今回は、本物の幽霊に決まってるだろ!!」」

「ちがいますね!」

「もー、二人ともまたー。ケンカはやめて!」

元太と光彦が今までと同じような言い争いを始める。それをみて歩美は、ケンカを止めにかかる。

「はあ……やれやれだな」

そんな口ゲンカを見て、コナンはあきれたようにため息をつくと、ふわーとつまらなそうにあくびをする。

「あまり興味がなさそうね? あなた……」

哀がコナンに近づくとそんな声をかけてきた。

「当たり前だろ? 幽霊なんているわけねーだろーが」」

小声でコナンが哀に話を返す。中立派ということになっているコナンはおおっぴらに自分の意見を言うわけにもいかず声を低く抑えた。

「そうね。それが常識よね。だけど、ちょっと聞いてみたのだけど、あの変な生物によるといるそうよ? 幽霊……」

「は? なんだって……」

哀の口から出たとは思えない言葉にコナンの思考が思わず止まる。

「ええ。ちょっと気になってね。ここに来る前にあの変な生物に聞いてみたのよ」

 

哀の話によるとこうだった。

阿笠博士の家に帰ってきた哀は、変な生物こと、魔法少女マジカル哀のマスコット、黒ヒョウのヒョウちゃんに幽霊を捕まえるために夜学校に忍び込むことを告げた。

そこで哀はふとヒョウちゃんに「幽霊は存在するのかどうか」を聞いてみたところこんな答えが返ってきた。

「幽霊か。居るぞ」

「ほんとに?」

疑わしげな声で哀が聞き返す。それに対し、ヒョウちゃんは不満そうな表情をした。

「なんだ。信用ないなあ。いるぞ。幽霊は。まあ居ると言うよりは在るという方が正しいかな」

「どういうこと?」

「ああ。全ての生き物は魔力を持っていてさ。その魔力の残余現象がいわゆる幽霊って言われてるモノなんだよね」

ヒョウちゃんの説明によると、こうだった。

全ての生き物は魔力を持っている。その魔力で生き物は動いているわけだが、その中でも高レベルの魔力が集中していると、まれに魔力の余りが空間に残ることがあるらしい。その魔力の切れ端が、人の目に幽霊として見えるのだという。

「特に学校は、子供の魔力が昼間に集中するから、その残余現象が起きやすいんだよね。まあ幽霊って言っても、意思はないただの魔力の残りカスみたいなもので、それがふわふわと空間上をただよっているだけなんだけどさ」

 

「と、いうことらしいのよ。だから、幽霊のような現象はあるみたいね。信じたくないけど」

「いやいや。ちょっと待てって……」

話を締めくくった哀にコナンは頭を抱えた。

(幽霊はいないが、幽霊のような現象はあるって?)

それが本当なら、今回の幽霊騒動も見間違いというのではなく、その現象であるということも考えられる。

なら、噂の少女は本当に幽霊らしきモノを見た?

(いや、そもそもオレは探偵であって、魔法とかオカルトとかそういうのは管轄違いなんだよ!! オレにどうしろってんだ!!)

幽霊なんているわけないと考えていたが、幽霊のような現象が魔法がらみであるかもしれないという事実を知って、悩んだコナンの足が止まる。

「コナンくーん! どうしたの? 早く行こうよー」

考えるあまり置いてきぼりにされたそんなコナンを、歩美が不思議そうな声で呼びかけた。

 

5人は幽霊が現れたという噂の現場、2階の女子トイレの前にたどりついた。

(ここが噂の幽霊が現れたって場所か)

コナンが見たところ、外側から見た限りでは特に変わったところは感じられなかった。

(まあいい。とにかく、ここまで来た以上、オレに出来るのは、この幽霊騒動が人や科学的現象によるものかどうかを見分けることくらいだけだな)

魔法的現象で幽霊騒動が起きているかどうかは考えないことにして、コナンは女子トイレの中へと足を進めようと、

「ちょっとあなた」

したところで哀に呼び止められた。

「何だよ。灰原」

「あなた、まさか入るつもりじゃないでしょうね?」

「入っちゃ悪いのか?」

不思議そうな顔をするコナンに、哀はおかしそうに笑ってみせた。

「まああなたがそんなに入りたいというなら止めはしないけど、一応そこは女子トイレなのよ。それでも、入りたいの?」

哀の言葉を聞いて、コナンの顔が赤くなる。

(そ、そういえばここは女子トイレだったっけ……)

深く思考の海に潜り込んでいたコナンは、哀に指摘されるまで自分が女子トイレに入ろうとしていたことにまったく気づいていなかった。

「コナンくん……」

「いくら何でも女子トイレに入ろうとするのは良くないと思いますよ」

「さすがになあ。オレもそう思うぞ」

ふと歩美たちの方を見てみると、みな呆れたような、少し引いたような表情をしている。

「じゃ、じゃあどうすんだよ!! 幽霊がいるかどうか調べるんだろ!! これじゃ、調べようがないだろーが!!」

恥ずかしさのあまり焦った口調になるコナンに、哀が冷静な声で一つの提案をする。

「ええ。だから、ワタシと吉田さんで中を調べてくるわ」

「え!わたし!?」

哀の提案に歩美がびっくりした顔をする。そんな様子を見ながら哀が理由を説明する。

「ええ。幽霊が居る側と居ない側からそれぞれ一人ずつ出して、中を調べるのよ。これなら公平でしょう?」

「そうですね。灰原さんの言うとおりだと思います」

「おう。オレもそれでいいぞー」 

光彦と元太が哀の意見に同意する。

「だから、あなたたちはここで待っていてもらえる?」

哀はコナンたち男子勢に女子トイレの前で待つように促した。

「おい、灰原……」

コナンが哀に近寄って耳元で小声で話す。

「言っておきたいことが……」

「わかってるわ」

哀はコナンの言いたいことが分かっているかのように言葉を遮った。

「あなたの代わりに中を調べてくるわ。幽霊騒動が魔法によるものにしろ、人間によるものにしろ何か痕跡があるかもしれないものね。それなりにワタシもそれなりに観察力はあるから、あなたと同じレベルとはいかないにせよ、変わった物があればわかるはずよ」

「そうだな。任せる」

「まあ、いくらあなたでも女子トイレの中は調べられないものね。それとも、調べたい?」 

哀がからかうようにコナンに言う。コナンは頬を赤らめて、首をブンブン振った。

「それじゃ調べてくるわね。行くわよ。吉田さん」

「う、うん」

哀が歩美に一緒に女子トイレに入るよう促すと、先に女子トイレに入っていく。その言葉に、歩美は不安そうに答えると、後をついていった。

 

女子トイレに入った二人は、周りを見回した。

そこには、ピンク色のドアがある個室が並び、小さな鏡がつけられた洗面台が二つあった。どこにでもあるような普通の女子トイレである。

今のところ特に変わったものは見つからなかった。

「では、調べるとしましょうか」

「う、うん。そうだね」

哀の言葉に、歩美が不安そうに答える。歩美の表情は、恐怖のせいか、少しこわばり固かった。

「やはり怖いのね?」

「うん。やっぱり怖いよ」

昼間とは違い、薄暗い小学校の女子トイレは不気味な雰囲気をただよわせており、気の小さい者にはそれだけで悲鳴を上げてしまいそうな雰囲気があった。

「じゃあ、さっさと調べましょう。音楽室に出たっていう方も調べないとならないしね」

「そ、そうだね」

二人はゆっくりと進む。その時、哀の視界に洗面台の小さな鏡が入った。

(相変わらず慣れないわね)

そこには、自分の姿が写っている。違和感しか覚えない自分の顔だった。

(ホント、イヤになってしまうわ)

哀は鏡を視界に入れないよう進む。歩美がそれについてくる。

「じゃあ調べるわよ」

哀が一番端にある手前のトイレの個室を調べようと、ドアに手をかけた時、

「は、灰原さん!!」

歩美が大きく声を上げた。

「どうしたの?」

「う、うん」

ぴとっ

歩美が哀の体に身を寄せてくる。その体は震えており、歩美がとても怖がっていることが哀に実感できた。

(ふふっ)

そんな歩美の姿にほほえましさを感じた哀だったが、気を取り直してトイレのドアを開ける。

歩美がビクッと体を震わせた。

「何もないわね」

「うん。何もいないね」

哀たちがトイレの個室の中を確認する。そこは、洋式トイレが一つ置かれていて、そばにトイレットペーパーを取る用具がついているごく普通のトイレだった。

当然、誰もいなければ、怪しいようなものもない。

「ハズレだったようね」

「うん。よかったあ」

歩美がほっとした顔をする。哀は中を隅々まで見て調べてみたが、特に何もなかった。

「じゃあ、次に行くわよ」

「う、うん」

二人は、トイレの個室を次々と確認していく。ドアを開けるたびに歩美がビクッと震えたが、特にどのトイレの個室の中にも変わったことはなかった。

「これで、最後ね」

「う、うん」

哀が一番奥の最後の個室のドアに手をかける。歩美は今までよりぎゅっと力を入れて哀にしがみついた。

ドアが大きく開かれる。

そこで、二人が見たものは……

「やっぱり何もないわね」

「うん。そうだね」

今まで見たものと変わらない様子のトイレだった。

「まあいいわ。じゃあ、トイレの前にいる江戸川くんたちと合流して、音楽室を調べるわよ」

「そ、そうだね〜」

歩美があきらかにほっとした笑顔を見せる。そんな歩美に哀は問いかけた。

「吉田さんは、幽霊が居たほうがいいんじゃなかったの?」

「そ、そうだけど、やっぱり出会ったら怖いよ」

「ふふっ」

哀が微笑する。そして、二人が個室から出て、女子トイレの前にいるコナンたちと合流しようとした。

その時……

ガタッ!

『!?』

哀が振り向く。歩美が驚く。歩美があわてて、哀に声をかけた。

「い、今、音が聞こえなかった?」

「ええ。今、物音がしたわね」

二人が物音がした方を確認する。そこは、トイレの掃除用具などが置いてある用具入れの部屋だった。

「そういえば、あそこはまだ調べてなかったわね」

「え! まだ調べるの!?」

歩美が泣きそうな顔をする。しかし、哀はクールな顔を崩さず、淡々とした表情だった。。

「ええ。今の物音が気になるしね」

「そ、そんなあ。もうやめようよ。もう十分だよ」

歩美が懇願する。そんな歩美に哀は冷静に言った。

「じゃあ、吉田さんは、先に江戸川くんたちと合流して。ワタシ一人で調べるわ」

「えっ!」

そうして、哀が一人用具入れに近づいた時、

「ま、待って! 灰原さん!」

不安そうな顔の歩美が哀に待ったをかける。哀は不思議そうな顔で歩美を見た。

「どうしたの?」

「う、うん」

歩美が哀にしっかりと体を寄せる。そうしてから、歩美が決心したように言った。

「うん! いいよ!」

(ふふふ)

哀はまた微笑した。

「一人で戻らなくていいの?」

「うん。だって、一人で戻るの。怖いもん」

「そう」

哀が用具入れのドアに手をかける。歩美の顔が緊張した。

「開けるわよ」

「うん」

哀がゆっくりと用具入れを開ける。

そこに哀に向かって倒れ掛かってきた物影があった。

「きゃあ!」

「!?」

歩美が悲鳴を上げる。哀も驚いて、顔をこわばらせた。

倒れ掛かってきた物影を哀が身をかわす。カランっという物音を立てて、それが床にぶつかり、乾いた音を立てた。

「どうした! 何があった!!」

歩美の悲鳴を聞き、トイレの外からコナンが声をかける。今にも入ってきそうな緊迫した声だった。

「う、ううん! 大丈夫! コナンくん!」

「なんでもないわ! モップが倒れてきただけよ!」

歩美と哀がコナンに向かって大きく声を出す。

そう。哀に向かって倒れ掛かってきた物影は、トイレ掃除に使うモップだった。

「なんだ。驚かせるなよ!」

「う、うん! ごめん! コナンくん!」

コナンの少し責めるような言葉に歩美が謝る。その間に、哀は用具入れの中を覗いて調べてみた。

掃除に使うモップ、ホウキ、雑巾やバケツがその中に入っており特に怪しいものは見つからなかった。

「何かの拍子にさっきのモップが倒れたんだね。さっきの物音もきっとそのせいだよ」

「そうね」

薄暗い用具入れの中を懐中電灯で照らしながら哀が答えた。

「じゃあ、江戸川くんたちと合流して音楽室の方を調べましょう」

「うん」

二人は、その場から離れるとトイレの外に居るコナンたちの方へ歩いていった。

 

しかし、哀は気づいていなかった。暗闇のせいで哀は見過ごしていたのだった。

用具入れの部屋の天井にへばりついていたその影は、用具入れの地面へとぬるっとした音を立てて降りる。

そして、その影は声にならない音を上げると、その白い体を動かしはじめる。

やがて、その白い影はゆっくりと哀たちの後を追いかけていったのだった。

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あとがき

はっはっは!探偵k、参上!!(ちゅどーん)

ということで、マジカル哀の新作をお送りします。

さて、帝丹小学校の女子トイレで起こった幽霊騒動。その白い影の正体はいったい何なのか!?

といったところで次回に続く!



ちゅどぉぉん!!(爆風に巻き込まれた)
カハッ(吐血)久しぶりっす探偵k様ぁぁぁ 新作ありがとー!!!
女子トイレの謎! 白い影・・・・・きゃあ!!!こわっ←待てい(爆)
次気になりますねみなさん。さっそく中編へをポチッとどうぞ!!(4/20以降)by akkiy