甘いブラック・ラヴⅤ後編

悲しい思い出

辛い思い出

悔しい思い出

胸が張り裂けそうな思い出・・・・・

それらは時に、恐ろしい事態をまねくことになる。

何年もの時を越えて・・・・・・・・・・・・・・

甘いブラック・ラヴⅤ～後編～

新一「ああ・・・おそらくここが奴の居る場所だ！」

そう言うと新一は、その扉を勢いよく開けた。
新一が中に飛び込んだ。その後ろに３人が続く。

いきなり視界が開けた。
何もない、とても広い部屋・・・・いや、その部屋の中心に小さな机と鏡があり、机の横には新一達と同じくらいの歳の女性が立っていた。

そして、その隣には蘭がいた・・・・・・

新一「蘭！」

新一が叫んだ。しかし、蘭は表情１つ変えず、ただ新一を見つめている。
その瞳には、光が無かった。

新一「蘭・・・何してるんだ！蘭！！！」

新一が蘭の方へ駈け寄ろうとした。それをキッドと志保が止める。

新一「はっ・・・離せよっ！蘭っ！蘭ぁ～～～～～～～～～ん！！！！！！」

キッド「お、落ち着けよ新一！」

志保「あなた、いつからそんなに無鉄砲になったのよ・・・・ってか前からだったわね」

何とか２人が新一を押さえ込んでいる間に、紅子が蘭の隣に立っている女性に近づいて行った。

女性が口を開く。

女性「あら・・・・お久しぶりね。」

紅子「そうね・・・・あれから５年は経つでしょうから・・・・」

新一達には、２人が何のことを言っているのかちんぷんかんぷんだった。
ただ、この短い会話から分かったのは、２人が５年前に一度、会ったことがあるということだ。

新一「てめえ・・・・蘭に何しやがったんだ！」

新一の言葉に、女性はクスっと笑う。
さらに新一の怒りのケージが高まっていく。

女性「見てのとおり。ちょっと魂をいじくってみたのよ。・・・・まあ簡単に言えば催眠術みたいなものかしら・・・・
この子のあなたへ対する気持ちをね。」

新一「ふざけんじゃねえ！！そんなことして何が楽しいんだ！！（まだキッドと志保に押さえつけられている）」

すると、（新一を完璧無視して）紅子がずいと前に進み出た。

紅子「あなたの目的は工藤君ね。野澤茄呑（のざわかのん）さん？」



そう。彼女の名は・・・・・・・・・野澤茄呑・・・・・・・・・



茄呑はくすっと笑うと紅子を見据えた。

茄呑「あら・・・・覚えててくれたの？」

紅子「あなたは忘れようがないわよ。丁度中学３年の時・・・・私の正体を見抜いたのはあなただけだったからね。」

その時、必死に止める２人（キッド&志保）をふりはらって新一が立ち上がった。

新一「俺の・・・・俺の何が目的なんだ！」

すると、茄呑は一瞬悲しい目をした。
光の消えた、暗闇のような目だった。

茄呑「中学３年になったある日、私はあなたと同じクラスになったわ。
私は最初は男の子に関して興味をもったことはなかった・・・逆に男の子にはかなりもててたけどね。
でも、あなたに対しては特別だった。いつのまにか私はあなたに夢中になっていたわ。」

茄呑は深く息を吸い、また話しはじめた。

茄呑「でもあなたの隣にはいつもある人がいた・・・―――誰のことだかは分かるわね？
―――そう、毛利さん。私にとって、あなたは近づきたくとも近づけない存在になっていた・・・」

新一は何も言わない。ただじっと茄呑を見ている。

茄呑「そしてある時私は、あるうわさを聞いた。どんな人でも虜にしてしまうという、美形の持ち主が居ると。
私はその人に会えば何か工藤君をふりかえさせる方法が見つかるかもしれないと思って、その人の家を訪ねた。」

紅子さんのことだな・・・と新一は思った。

茄呑「そしてその時に・・・」

茄呑は紅子を見た。

茄呑「いいえ・・・これは小泉さんに話してもらった方がわかるかしら。」

紅子が頷く。紅子が口をあけた。

紅子「野澤さんは、私の家を訪れてきた。そして私に、これだけ多くの人にもてる理由を聞いてきたわ・・・・だから私は・・・」




―――回想（５年前の紅子の家）―――

紅子「私がもてる理由？」

茄呑「はい！教えて欲しいんです！」

紅子「そんなこと言われても・・・・」

茄呑「お願いですっ！」

茄呑の頼みを断り切れず、紅子は仕方なく机の引出しの中から黒い宝石のようなものを取り出した。

茄呑「な、なんですか？これ・・・」

紅子「黒魔術の秘宝よ。私の家に江戸時代末期から先祖代々受け継がれてきた。これをあなたにあげるわ。」

茄呑「え・・・・」

紅子は真剣な目で茄呑を見た。

紅子「いい？野澤さん。これに毎朝、起床したらすぐに触れて。これがあなたに力を与えてくれるわ。」

茄呑「あ・・・ありがとうございます！」

―――回想ここまで―――






茄呑「そして私は魔法という力を手に入れた。」

紅子に変わって、茄呑がまた話しだした。

茄呑「私は中学最後の月に、工藤君に告白したわ。でも・・・断られてしまった・・・毛利さんが居たために・・・だから思ったのよ。
毛利さんを消してしまえばいい。そしてその前に彼女と工藤君の仲を壊さなくてはならないと思ったのよ。」

新一「それで・・・・博士達を巻き添えにして、ジンとウォッカの脱獄を成功させた。
あの警察官を操って、ジン達の牢の扉のカギを開けさせたんだろ？」

茄呑は一瞬驚いた表情を見せた。

茄呑「あら・・・どうして分かったの？」

新一「警察官の目撃した現場の状況とその警察官の行動だよ。まず牢獄。見れば分かるが、牢獄には隠れる場所なんて無い。
天井に張り付くことも可能だろうが、見つかる可能性もゼロじゃない。ジンがそんな運任せの脱獄なんかしないと思ったんだよ。
そして警察官の行動。普通ならカギを開けて中に入る前に、仲間の警察官を呼ぶはずだ。
この二つのことから、脱獄の原因は二つに絞られる。一つ目は警察官がなんらかの理由でカギを開けた場合。そして二つ目は・・・・・」

新一が茄呑を見る。

新一「人を操ることができる今回の事件の犯人が警察官を操ってジンとウォッカを逃がした場合・・・・・
そして可能性が高いのは犯人がジン達を逃がした場合だけど、一つ目の警察官が何らかの理由でカギを開けたっていう推理を除外した
１番の理由は警察官がジンたちに怪我を負わされたからだ。
わざわざ襲われるために殺人犯の入ってる牢獄のカギを開けるバカはいねーからな。」

新一はふうと息をついた。

新一「これがジン、ウォッカの脱獄事件の真相だ。」

茄呑がふっと笑った。

茄呑「まさかそこまでバレてたなんてね・・・・これじゃ、毛利さんを消してもあなたは振り向いてはくれないか・・・・・」

新一「あったりめーだ。俺はそこまで甘くねーぞ。」

新一のムッとした顔を見て茄呑はまたクスッと笑う。

茄呑「毛利さんはお返しするわ。本当は毛利さんを使ってあなたを襲うつもりだったんだけど・・・・・やっぱり私はあなたに合わないわ。
それに、たったこれだけのことでこんなことをする私を見て失望したでしょ？」

と、茄呑は新一を見て驚いた。新一が笑っている。中学生の頃と変わらないような、冷め切った心を温めてくれるような笑顔で・・・・・

新一「バーロ。おめーはまだやり直せるぜ。」

茄呑は、新一に笑い返した。そして、蘭の顔の前に手をかざして、何か呟いた。・・・・・蘭の目に光が戻った。
蘭がはっとしてあたりを見回す。

蘭「え・・・？あれ・・・？新一・・・？それに・・・・・茄呑ちゃんに・・・・キッドに志保さんに紅子さんも？！
ど・・・どうなってるの・・・？」

どうやら蘭は、今までのことを全然覚えていないらしい。

新一「蘭っ！」

新一が蘭のところに駈け寄ろうとした。その時・・・・・



バ――――――ン！！




突然、部屋に銃声が鳴り響いた。新一がはっとして自分の足元を見た。地面に小さな穴が空いている。どうやらそこに弾が当たったらしい。
新一は部屋の入り口を見た。そこには、ジンとウォッカが立っていた。

ジン「フン・・・感動の再会を邪魔して悪かったな、工藤新一・・・・」

新一はさっと蘭の前に立った。
一瞬にして、その場の空気が凍りついた。

ジン「だが・・・感動しようが喜ぼうが俺たちには関係ない・・・・消えろ。」

そう言うと、ジンはさらに発砲してきた。新一は紙一重でそれをかわす。

新一「キッド・・・・―――皆をつれて・・・・―――逃げろ・・・・・！！」

新一が叫んだ。
キッドは新一に向かって頷くと、一瞬にして蘭と茄呑の前まで行った。

キッド「お嬢さん達！早くこっちに・・・・」

新一「わざわざ敬語使わなくていい！さっさと逃げろ！！」

新一は足めがけて飛んできた弾をリズムよく避けながら言った。

キッド「うっせー！とにかくお前は死ぬなよ！」

キッドの言葉が新一の言うことに反抗しながらも完全に敬語でなくなっているのは気のせいだろうか。

新一「ゴタゴタ言ってねえでさっさ行け！！」

新一が言い終わる前に、キッドは蘭と茄呑を抱えると、扉に体ごと突っ込んだ。
――――――――――――――――が、




バッター―――――――――ン！





キッド「イッテ～～～～～～～～～～～～～～～～～～～ッッ！！」

突然扉が開き、キッドはいやというほど扉に顔面から激突してしまった。

平次「工藤！大ジョブか～！？」

和葉「蘭ちゃん！志保ちゃん！大丈夫かいな？！」

探「キッド！紅子さん！」

入ってきたのは外に取り残されていた平次と和葉と探だった。
でも新一にはそんなことはどうでもよかった。新一はだんだんジンに追い詰められていた。

蘭「新一～～～～～～～～～～～～～～～っ！！」

どうしよう・・・・と蘭は思った。相手は拳銃を所持している。そして今、ウォッカもジンと一緒になって拳銃で新一を狙っている・・・。
とその時、茄呑が蘭に何かを手渡した。

蘭「え・・・・・・・？」

茄呑「毛利さん。これを使って。」

茄呑が蘭に渡したのは、紅子が茄呑に渡した、黒魔術の秘宝だった。

蘭「え？でも・・・どうやって？」

茄呑「それを両手にのせて、『星よ　我に望みを　月よ　我に光を』って唱えるのよ。そうすれば、あなたは工藤君を救えるわ。」

蘭「私が・・・？新一を・・・？」

蘭は手の上に載っている黒い宝石（宝石かどうかは分からないが）をじっと見つめた。

―――――これで・・・・・私が新一を救える・・・・？―――――

蘭「うん。分かった。やってみる！」

その時、蘭は茄呑が気まずい顔をしているのに気が付いた。

蘭「ど・・・どうしたの・・・？」

茄呑は、仕方なく口を開く。

茄呑「実はその魔法、決して使ってはいけない禁断の魔法なの・・・・その魔法を使うことができるのは、その守る人を、心の底から愛している人だけ・・・」

蘭「心から愛してる人・・・？」

そして茄呑はさらに続けた

茄呑「そして・・・もしその魔法が成功すれば、その秘宝は石となり、永遠にその魔力を失う・・・・そして、その魔法が失敗すれば・・・・」

蘭「し、失敗すれば・・・？」

蘭の声が少し怯えている。
茄呑が言った。

茄呑「その人は石になり、永遠に目覚める事はない・・・・・・・」

蘭「そ・・・・そんな・・・・・・・・・・」

蘭は両手で口を覆った。
今自分は、生死の境に立っているなんて・・・・・・・・・



バー――――――――――ン！！




銃声が鳴り響いた。蘭が振り返った。
新一が、部屋の隅に追い詰められている。近くには、バレーボールくらいの大きさの水晶が転がっていた。

ジン「さあ・・・・そろそろ諦めたらどうだ？」

ジンの拳銃の銃口が、新一に向く。
蘭は立ち上がった。

茄呑「毛利さん！！」

蘭には、もう覚悟ができていた。
蘭は両手に秘宝をのせ、そして唱えた。

蘭「星よ　我に望みを　月よ　我に光を！！」

蘭はぎゅっと目をつぶった。
ジンの持つ拳銃の銃口から、弾が発射された・・・・・・・・・・・・





パリ―――――――――ン！！






突然、新一の前でガラスが割れるような音がした。
そして次の瞬間・・・床には拳銃の弾が転がっていた。

ジン「何・・・・・・・・・？！」

その隙を、新一は見逃さなかった。

新一「これでも・・・くらえぇぇぇっ！！」

博士に新一用として改良してもらった『キック力増強シューズ』で、床に落ちていた水晶玉を、ジンめがけて蹴った。
ジンは、とっさに対応ができなかった。キック力増強シューズで勢いのついた水晶玉が、ジンの顔にあたり、跳ね返ってウォッカの顔の真横に命中した。
ジンとウォッカは、その場で倒れて動かなくなった。

新一「蘭！」

新一は蘭に駈け寄った。
蘭は、床に座り込んでいた。

そして蘭の手には、一つの小さな石ころが握られていた・・・・・・・・














―――数日後（工藤邸）―――

蘭「新一～！早く準備しなさいよ～！快斗君達先に着いちゃうよ～っ？」

新一「うるせー！今準備してんだよ！」

工藤邸に二人の声が響く。そして数分後に、二人が工藤邸から出てきた。

蘭「まぁったく・・・・もう少し時間に余裕をもって行動しなさいよ～！」

新一「だ――――――っ！もうっ！うるせーなっ！そろそろその説教癖直せっ！」


あの事件はあの後、紅子と茄呑が片付けてくれた。
（一体何をやらかしたのかは知らないが）二人のおかげでフサエ・キャンベル・木之下も佐藤刑事も無罪放免になり、二人とも今は職場に復帰しているそうだ。
もちろん、好きな人ともうまくいっている。

蘭「なによー！新一なんてあの時土手からすべり落ちて川に落ちてたくせに～！」

新一「あれはおめーがふざけて俺を突き飛ばしたからだろーがっ！」

いつのまにか喧嘩の内容が変わっているのに、二人は気づいているのだろうか。
そうこうしている内に、二人はとある喫茶店に着いた。中にはもうすでに待ち合わせ相手達が勢ぞろいしていた。

平次、和葉、快斗、青子、探、紅子、志保、園子・・・・そして蘭と新一の計10人だ。

平次「よぉ！工藤＾＾」

快斗「相変わらず仲いいねえ」

新一「うっせーな///」

そんな他愛のない会話。その時、蘭が口をはさんだ。

蘭「そうそう。あのね、イギリスの方に行った茄呑ちゃんから手紙がとどいたの！」

全員「ええっ？！」

蘭「じゃあ読むね・・・・・・・」








―――あの事件でお世話になった皆様へ―――

元気にしていますか？

全て元通りになり、皆さんが楽しい毎日を過ごしていることを祈っています。

私はあの事件のすぐ後から、イギリスでの新しい生活を始めました。

日本とは全く違う雰囲気の中で暮らすのは、オドロキと発見の連続で、まるで暗い洞窟を探検しているかのようです。

また、新しい出会いも見つけました。

機会があれば、いつか皆さんにその人を紹介してみたいと思っています。

今思えば、私は皆と離れて暮らすという決心をした時の悲しみをすっかりと忘れていました。

もっとも、それ以前にこっちの言葉を身につけるのに忙しくて、悲しんでいる暇がなかっただけかもしれません。

まだあなたたちのいる日本に帰る気にはなれないのが現状です。

でも、いつかはまた、あの中学生の時のように、笑顔で、日本に帰りたいと思います。


それでは、またお会いしましょう。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　野澤 茄呑







　　　　　END








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♂あとがき♀

第４章からずいぶん遅くなってしまいました・・・すみません＞＜；

今回で、この事件の犯人の名前が明らかになっています。
そして今回の章でも明らかになっていない謎・・・紅子と茄呑が何をやらかしたか・・・については、みなさんのご想像でおねがいします（爆）

そして今、本体は名探偵コナン&まじっく快斗の江戸時代編を企んでたり・・・（ぉぃ
でもその前にキッドと青子のその後の様子の小説が出てくるかもしれないし・・・・・まあお楽しみということでd（＾。＾）（ぉぃ）

それではまた会う日まで～～～～ぇえええええええっ！！（←転倒/爆死）

☆――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――☆

みさきさま
素敵な小説ありがとうございました！！！
まじ快・コナンの主役メンバーが勢ぞろいで凄く楽しかったです♪
そして意外な結末・・・紅子と茄呑ちゃんてばもしかして最強タッグ？？(笑)
蘭の事であの新一が珍しく取り乱してたりいい感じでした♪
また次回作の構想も練られてるみたいですので是非是非頑張ってください♪byあっきー

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