■ カードキャプターさくら 第3のカード編 ■
作:雅波瑠 様
第2章 さくら「ありがとう、小狼君。」 うれしさのあまり、さくらは自分を助けてくれた小狼に思わず抱きついた。 しかし、今はそんな事をしている場合でない。2人はすぐに離れ、真顔に戻った。 さくら「でもどうして日本に?」 小狼「クロウカードに良く似た気配が日本に集まっていくのを感じた。だから戻ってきたんだ。」 さくら「そうだったんだ…」 小狼「ひとまず、ここから離れた方がいい。これだけの騒ぎだ。外の人たちも気づくだろう。そうしたら警察や消防の人たちが集まってくる。 その時に、もし、ここで何があったかを聞かれたら、魔法のことを隠しきれなくなるかもしれないしな。」 さくら「そうだね。」 そして2人は、同時にある方向を振り返った。 そこには、つい先程さくらが魔法を使って助けた男の子がいる。 男の子は地べたに座り込み、少しおどおどした様子で2人の方を見ている。 さくらは、男の子の傍まで歩み寄り、かがみ込むと、微笑みを浮かべながら男の子に話しかけた。 さくら「大丈夫?怪我ない?」 男の子「うん」 さくら「私はさくら。あなたのお名前は?」 男の子「祐一(ゆういち)」 さくら「一人で来たの?」 祐一「ううん。パパとママと」 さくら「そう…」 さくらと小狼の表情が曇っていく。 さくらと小狼と祐一以外に遊園地に来ていた人たちは全員金属に変えられてしまった。それはつまり祐一の両親も金属に変えられてしまったという事を意味しているからだ。 さくら「ねえ小狼君、この子どうしよう?」 さくらは小狼に耳打ちした。 小狼「救助隊に保護してもらうしかないだろう。けど、一人で待たせる訳にもいかない。」 小狼も、祐一に聞かれないように小声で返す。 さくら「じゃあ…」 小狼「俺たちも救助隊がくるまで、傍に隠れながら待つんだ。」 しかし… さくら「来ないね。」 小狼「ああ…」 3時間過っても、遊園地には救助隊はおろか、一般客すら一人も入ってこなかったのだ。 さくら「どうして誰も来ないの?遊園地のすぐ外の人たちも、何で気づかないの?」 小狼「…おそらく、あの銀色の女の魔力のせいだ。魔力の結界のような物で外の人たちが友枝遊園に近づけないようにしているんだ。 だから多分、このままここで待っていても、誰も来ない。」 さくら「そんな…じゃあ祐一君は…」 その後、祐一が一人っ子であること、親戚の家がもの凄く遠いことも判明した。そのため祐一は、小狼と一緒に小狼のマンションに行くことになった。 マンションにはすでに偉(ウェイ)が来ており、すぐにでも生活が出来る状態になっている。 祐一の面倒は、偉が見ることになった。 一方、さくらも自宅へと帰り着いていた。 そして、真っ直ぐに自分の部屋へあがっていく。 さくら「ただいま…」 目の前には、TVゲームに興じているケルベロス(仮)の姿がある。 ケルベロス(仮)「おう、おかえり」 ケルベロス(仮)は、ゲームを続けたまま、さくらの方を見もせずに挨拶を返してきた。 しかし、いつまで経っても、さくらは部屋の入り口から動こうとしない。その様子が少しおかしいことに気づいたケルベロス(仮)はようやくゲームを中断し、さくらの方に向き直り、言った。 ケルベロス(仮)「何や、元気ないな。何かあったんか?」 さくらは、うつむいたまま何も言わずに、グーに握りしめていた右掌を開いて見せた。掌には、真っ二つに折られた星の鍵が乗っている。 折られた鍵を見たケルベロスは、血相を変えてさくらの掌へと飛んでいった。 ケルベロス(仮)「星の鍵が!!何でこんな事に?」 さくらは銀色の女の事を説明した。遊園地で突然銀色の女が現れた事を。遊園地内にいたほとんど全ての人々が鋼鉄に変えられてしまったことを。 そして他の一般の人々が誰一人、遊園地のことに気づいていないということを。 その話を聞き終わったケルベロス(仮)は、窓の所まで飛んでいき、外を向いて目を閉じ、全身を黄金色に数秒間輝かせ、そしてゆっくり目を開け、言った。 ケルベロス(仮)「ほんまや…クロウカードによう似た魔力を感じる…」 さくら「でもどうして?クロウカードも封印されていたカードも全部さくらカードに変えたのに…」 ケルベロス(仮)「わいにもわからん…けど…クロウに関係してそうやってことは間違いないやろ…何とか連絡取れへんか?」 さくら「エリオル君に?」 ケルベロス(仮)「ああ。」 さくら「国際電話の番号なら分かるけど…」 ケルベロス(仮)「ホンマか?じゃあ今すぐ電話するんや!!」 さくら「う、うん…」 そう言うと、さくらは、ロンドンのエリオルの家へ国際電話を掛けようとした。 と同時に、さくらの携帯電話の着メロが鳴り響いた。 さくら「もしもし…」 エリオル「もしもし、柊沢です」 さくら「エリオル君!!」 その名前に反応し、ケルベロス(仮)はさくらの傍にもどり、電話の音に聞き耳を立てる。 エリオル「…クロウカードに似た魔力を持つ者と遭遇しましたね?」 さくら「うん…今日、友枝遊園で銀色の女の人に。…遊園地の中がみんな金属にされちゃったの。」 ケルベロス(仮)「そいつは一体何者なんや?クロウ!!」 エリオル「私にも分かりません。」 ケルベロス(仮)「分からんって…あんなクロウカードそっくりな気配してんのにか?」 エリオル「…ええ、まるで心当たりがないのです。私自身にも、クロウリードの記憶にも…」 さくら「そんな…」 エリオル「おそらくは、クロウカードを模倣して造られたものだと思います。今日本に向かっていますので、到着し次第、確認に向かうつもりですが。」 さくら「日本に?」 エリオル「ええ。実はすでに飛行機の中なんですよ。あと8時間ほどで日本に到着します。」 さくら「でも、4日前にイギリスに帰ったばかりなのに…」 『無』のカードの騒ぎの時、エリオルはさくらの事を心配して、電話の後すぐに日本に向かってきてくれたのだ。 夏の旅行シーズンで飛行機のチケットがなかなか手に入らず、友枝町への到着が、さくらが『無』のカードを封印した日より1日遅れになってしまったのだが… そして到着後すぐ、さくらのことと『無』の事を確認し、ホッと胸をなで下ろすのだった。 5日間だけエリオルは日本に滞在した。 歌穂、奈久留、スピネルもエリオルよりさらに1日遅れて到着し、4日間の日本滞在を楽しんだ。 それからまだ4日 エリオル「仕方ありません。これは私にも関係している事なのですから。ところでさくらさん。星の鍵に何か起きましたか?」 さくら「うん、さっき言った銀色の女の人に杖を折られて…」 エリオル「そうですか…」 ケルベロス(仮)「どうやったら直せるんや?」 エリオル「…方法はあります。だが…」 ケルベロス(仮)「だが…何なんや?おいクロウ」 エリオル「さくらさん。すみませんが、少し外してもらえますか?少しケルベロスと2人で話したいので。」 さくら「うん…」 ケルベロス(仮)に携帯電話を渡し、さくらは1メートル半程、後ろへ下がった。 ケルベロス(仮)「もうさくらには聞こえへんで…なんなんやクロウ?」 エリオル「…さくらさんと永遠に別れる覚悟はありますか?」 ケルベロス(仮)「え?」 エリオルとケルベロス(仮)は1分あまり話し続けた。その後、ケルベロス(仮)は電話をさくらに返し、ベッドの方へ力なく飛んでいった。 さくら「あ、あの…」 エリオル「さくらさんなら1〜2年もすれば無から新しい鍵を生み出せるようになるでしょう。 しかしそれまでにどうしても鍵が必要になったときには、ケルベロスに尋ねてください。ケルベロスに鍵の修復方法を伝えておきましたから。」 さくら「何で?どうしてわたしに直接言ってくれないの?」 エリオル「気流が乱れてきたようなのでそろそろ座席に戻らなければなりません。ではまた日本でお会いしましょう。」 さくら「ちょ、ちょっとエリオル君!!」 しかし、さくらが止める間もなく、エリオルからの電話は切れてしまった。 その後さくらはケルベロス(仮)にもそのことを尋ねてみたのだが、ケルベロス(仮)は部屋の隅で、黙り込んでしまい、さくらと一言も口を利かないまま、就寝してしまうのだった。 午後10時 李小狼は自分の寝室にいた。 偉が作った夕食を祐一と一緒に済ませ、早々に自室へと戻り、銀色の女のことを調べるために、李家に古くから伝わる古文書や魔術に関する文献を読み漁っていた。 といっても手元にあるものは香港から持ってきた十数冊だけである。李家にある文献の量からすればほんの一部でしかない。 すでに香港にいる母・夜蘭には報告済みだが、夜蘭にも分からず、文献にも載っていないという。 香港の膨大な文献や夜蘭でさえ解らなかったものが、日本に持ってきたわずかな文献に載っているとは到底思えなかったが、それでも小狼は調べずにはいられなかったのだ。 食事が済んでから約2時間、ちょうど最後の一冊を調べ終わったところだが、やはり一切手がかりはつかめなかった。 小狼「やはりダメか…」 コンコン… ちょうどその時、小狼の部屋のドアを誰かがノックした。 誰だろうと思いながら小狼はドアへ近づき、開けた。すると、祐一と偉が並んで立っていた。 祐一は何も身に着けていない、つまり丸裸だった。髪が少し湿っているので風呂上りのようだ。 祐一「僕、何を着たらいいの?」 小狼「え?今日着ていた服はどうしたんだ?」 偉「それが、間違えて洗濯してしまいまして…」 小狼「偉が?らしくないミスだな。」 小狼「すみません。それで、代わりになる服があればと思いまして…私の服では大きすぎますし…」 小狼「分かった。」 小狼は偉にそう言った後、続けて祐一に言った。 小狼「俺の服を貸してやるから、中でちょっと待っててくれ。」 祐一はうなづき、小狼の部屋に入った。それを見届けると、偉は 偉「では、よろしくお願いいたします。」 と言って、厨房の方へ戻っていった。 小狼の部屋は、スーツケースの荷物だけがまだ片付いていなかった。部屋の片付けを後回しにしたまま古文書や文献を読んでいたためである。 しかも、一番底に入れていた本を引っ張りだしたため、スーツケースの中身はぐちゃぐちゃになっている。 小狼はおもむろにスーツケースを調べ、間もなく、下着と半袖のTシャツ、半ズボンをそれぞれ1枚ずつ見つけ、取り出した。 そのとき、奥のほうに入っていた“何か”がシャツに引っかかって出てきた。そして重みでシャツから離れ、コロコロとそばに転がった。 それを拾うのは後回しにし、小狼は祐一に衣服を手渡した。 小狼「ちょっと大きいと思うが今夜はこれで我慢してくれないか?」 祐一「うん。」 受け取ってすぐ着込んだその服はやはりブカブカだったが、祐一はいやな顔ひとつせず、 祐一「ありがとう、おやすみなさい。」 と言い、彼が今夜泊まる客間へと走っていった。 一人残された小狼はふと足元を見た。そこには、先ほどシャツに引っかかって出てきたものが転がっている。 それは、クロウカードの在処を探すための道具、羅針盤だった。 午前0時 木之本家の明かりはまだ消えていなかった。さくらの父である木之本藤隆、兄の桃矢がまだ、仕事や課題に勤しんでいるのだ。 一方、さくらの部屋の明かりはすでに消えている。部屋の主であるさくらが寝てしまっているからである。 しかし、この部屋のもう一人の住人であるケルベロス(仮)はまだ眠っていなかった。 さくらが完全に熟睡していることを確かめたケルベロス(仮)は、音を立てないようにそっと窓を開け、夜の街へと飛び出していった。 向かった先は月城家、クロウカードのもう一人の守護者である月(ユエ)の仮の姿である雪兎の家である。 雪兎もまた、まだ起きていた。どうやら桃矢と同じ課題を行っているらしい。 ケルベロス(仮)は、雪兎の目の前の窓をコンコンコンコンといきなりノックした。 目の前に突然現れた物体と、通常なら聞こえてくるはずのない場所からのノック音で2重に驚いた雪兎だが、 すぐに気を取り直し、窓を開け、ケルベロス(仮)を部屋の中に招き入れた。 ケルベロス(仮)「すまんなこんな夜中に。」 雪兎「気にしないで。もう一人の僕に用事でしょ?すぐ変わるね。」 ケルベロス(仮)「いや、今日はゆきうさぎとユエ、両方に用があるんや。だからそのままの姿でいてくれ。」 ケルベロス(仮)の真剣な顔を見て、一抹の不安をおぼえる雪兎だったが、それでも彼は笑顔をうかべ、ケルベロスに話しかけた。 雪兎「初めてだね。僕と話してくれるなんて。」 ケルベロス(仮)「そうやな。・・・すまん」 雪兎「なんで謝るの?」 ケルベロス(仮)「初めての話が、ものすごくつらい内容になるからや。」 雪兎「え?」 同じころ、ペンギン大王公園に、やはりマンションを抜け出してきた小狼の姿があった。 式服を着込み、手には先ほど見つけた羅針盤を構え、そしてそれに向かって呪文を唱える。 小狼「玉帝有勅 神硯四方 金木水火土 雷風 雷電神勅 軽磨霹靂 電光転 急々如律令」 この羅針盤は元々クロウカードを探すためのものであるため、もしかするとクロウカードによく似た気配を持つ銀の女の居所を見つけられる のではないかと踏んでのことだったが、その予想は見事的中した。 羅針盤から一本の光が立ち上った。その光はある場所指し示す。 小狼「友枝小学校か…」 羅針盤を片付け、代わりに剣を持ち、小狼は学校へと駆けていった。 夜中なので門は閉まっている。そのため、塀を飛び越えて中に侵入しなければならない。 だが、小狼にとっては学校の塀くらい問題ではなく、ひとっ飛びで塀に乗り、あっという間に飛び込んだ。 その瞬間、銀色の女は激しく光線を撃ってきた。 小狼は右へ左へとジャンプしながら回避し、時々隙を見て反撃を試みた。 小狼「火神招来!!」 お互いに避けては撃ち、避けては撃ちの繰り返していく。やがて両者の術が同時に発射され、光線と雷撃は激しく衝突した。 均衡状態は長く続く、と思われたが、そうはならなかった。 小狼が繰り出した炎が先端からみるみる金属化をはじめたのだ。金属化は次第に速度を上げながら小狼に迫ってくる。 とっさに避けたものの完全には避けきれず、小狼の左手は金属に変えられてしまった。 ケルベロス(仮)「小僧!!」 月(ユエ)と話していた時に気配に気づいたケルベロス(仮)は、月(ユエ)と共に、友枝小学校に急行したのだった。 小狼「なんでケルベロスがここに?」 ケルベロス(仮)「ゆきうさぎんところにおったら気配を感じたから飛んで来たんや。」 小狼「あいつは…さくらは?」 ケルベロス(仮)「大丈夫や。さくらは家で寝てる。そんなことより、お前なんで一人でこんな無茶なことを?」 小狼「…俺は李家の人間だ。杖が折れたときの修理方法も知っている。」 ケルベロス(仮)「・・・」 月(ユエ)「・・・」 小狼「そんな思い、もうあいつにはさせたくないんだ。」 小狼「だからこいつは、おれが止める!! ケルベロス(仮)「小僧…」 小狼「すぐにでも杖が必要な状況さえなければ、何年か後、増大したさくらの魔力だけで鍵を再生することが可能だからな。雷帝招来!!」 しかし雷撃は効かず、小狼は弾き飛ばされ、壁に激しくたたきつけられた。その衝撃で壁に大穴があいた。 小狼のダメージは大きく、ヨロヨロと立ち上がるのがやっとだった。 銀色の女の攻撃はそれでも止まらない。今度は右手を剣のように変え、小狼に切りかかってきたのだ。 小狼「ぐっ…うわっ…」 壁にたたきつけられたダメージがあまりに大きく、避けることもままならない。小狼に体は次々と切りつけられていった。 銀色の女に切りつけられると、その切り口はすぐに金属化する。 左手の金属化もさらにすすみ、まもなく肩から心臓に到達しようとしている。小狼の体の金属化部分の面積は、どんどん大きくなっていった。 ケルベロス(真)「こいつ、これでも食らえ!!」 真の姿に戻ったケルベロスは、口から火の玉を撃とうと構え、同時に月(ユエ)も光の矢を射ようと弓を構えた。しかし… 月(ユエ)「何?」 月(ユエ)の手から弓が消え、ケルベロスの口元に集まりかけていた火の玉も消滅した。 ケルベロス(真)「何でや?」 その時2人はまったく魔法が使えなくなっていたのだ。小狼がボロボロになっていくのをただ、見ているしかできなかったのだ。 さくら「小狼君!!ケロちゃん、ユエさん!!」 ケルベロスたちと同様、さくらもまた気配を感じて駆けつけてきた。 小狼「さくら…」 さくら「小狼君!!」 さくらは、小狼のそばに駆け寄った。 小狼「逃げろ…」 そういうと小狼は気を失った。体のすでに90%は金属化している。 しかしさくらは逃げなかった。そして折れた鍵を構え、呪文を唱えた。 さくら「星の力を秘めし鍵よ!!真の姿をわれの前に示せ!!契約のもと、さくらが命じる!!封印解除〈レリーズ〉!!」 が、やはり鍵が杖に変わることはなかった。 さくら「そんな…どうして…このままじゃ小狼君も知世ちゃんも山崎君たちもみんな…」 うな垂れるさくら、そんな様子を見ていたケルベロスは、ついにあることを決意した。そして同意を得るために月(ユエ)の方を振り返った。 月(ユエ)も、ケルベロスの意図を解し、うなずく。 それを確認したケルベロスは、ふたたびさくらの方へ向き直り、力強く言った。 ケルベロス(真)「さくら、ワイとユエを鍵に吸収するんや。それで鍵は直る。」 さくら「え?」 ケルベロス(真)「今すぐに鍵を直すには、それしかない。」 さくら「で、でもそれじゃケロちゃんとユエさんは?」 ケルベロス(真)「ああ、LIGHTとDARKん時とは違い、今回は、ワイらの魔力が鍵の核として使われる。だから二度と戻られへんようになる。 もちろんワイの仮の姿も、ユエの仮の姿であるゆきうさぎもな。」 さくら「そんな…ダメだよ。そんなの絶対ダメだよ。」 ケルベロス(真)「けどこのままやったら、もう知世達らと会えへんようになる。小僧ともや。あのままやったらもうすぐ完全に金属化してしまうやろからな。それでもええんか?」 さくら「ヤダ…でもだからって…」 今、鍵を直したら、小狼や知世たちを助けられる。だがケルベロスと月、雪兎にはもう会えなくなる。 鍵を直さなかったら、ケルベロスと月、雪兎とは分かれなくてすむが、小狼や知世たちを助けられなくなる。 さくら「わたし、小狼君や知世ちゃんたちを助ける。」 ケルベロス(真)「そやったらすぐにワイらを吸収するんや」 しかし さくら「ううん。わたし、小狼君や知世ちゃんたちを助ける。ケロちゃんたちとも別れたくない。だから、わたし一人で助けるの。」 ケルベロス(真)「そんな、杖も使えへんのに無茶や。」 さくら「大丈夫。なんとかなるよ。絶対大丈夫だよ。」 その瞬間、さくらが持つカードの中の一枚が、強く光り輝いた。 それは、HOPE(ホープ)、希望だった。
『希望』のカードはそのままさくらが持つ鍵のところへ移動し、鍵に吸い込まれるように消えていった。 そして鍵は黄金色に輝き… さくら「鍵が…直った?」 ケルベロス(真)「何や?あの鍵は?」 さくら「新しくなってる…」 新たな鍵へと生まれ変わったのだ。 外形はほとんど星の鍵と変わらない。星が円形の枠から少しはみ出るようになったくらいだ。そして色はピンクから金色に変わった。 そして鍵はひとりでに発動し、黄金の杖になった。 さくら「…あたらしい杖」 ケルベロス(真)「よっしゃ!!これでカードが使える。さくら、あの女を封印するんや。そしたら金属にされた人も元に戻るはずや!!」 さくら「封印って?」 月(ユエ)「あの女はカードだ。おそらく、クロウカードを模して作られたもの。」 ケルベロス(真)「ああ。しかも、このカードを作った奴、クロウほどやないが、ごっつい魔力の持ち主やで。」 さくら(クロウさん…) ケルベロスが言ったその名前から、さくらはある人物のことを思い出した。 さくら(そうえいばエリオル君、どうしたんだろう?もう日本に付いているはずなのに、まったく連絡がないなんて…) 上空にいた銀色の女は、さくらが着いてからいままで、なぜか一切の攻撃をやめていた。 だが、突然銀色の女は攻撃を再開してきた。 ケルベロス(真)「来たで!!」 それらの攻撃を華麗にかわし、さくらは杖とカードを構えた。 さくら『霧(MIST/ミスト)!!』 たちまちあたりが酸性の霧で覆われた。 シューッと音を立てながら、銀色の女の表面が少し溶け始める。が、ほんのちょっとだけで、あまり効いていない。 それどころか却って怒らせてしまったようた。 銀色の女は先ほどまで以上に光線を手の中にため始めた。そして直径2メートルに達したその球を、銀の女は全力でさくらに向かって投げつけた。 そのスピードは、小さな光線だったときと変わりない。 その大きさとスピード故、さくらにももう避けることができなかった。そして球はさくらの元に到達した。 ケルベロス(真)「さくら〜!!」 これでこの街、いや世界は終わりだと、ケルベロスも月(ユエ)もさくらもそう思った。 が、そのとき… ポシェットに残っていた全てのクロウカードが、さくらの回りをドーム状に囲み、結界を作った。 光の球は結界にはじかれ、さくらの周辺、半径10メートルの範囲内に拡散した。 光が収まったとき、その中にあったものは全て金属化していた。さくらの傍にいたケルベロス(真)も月(ユエ)も、小狼も… さくらカードも例外ではなかった。結界となり、光線を受けたカード達は全て金属化し、さくらの周りにパラパラと舞い落ちた。 さくら「ケロちゃん…月(ユエ)さん…カードさん…小狼君…」 残ったのはさくらと、その手の中に残ったたったの1枚のカードだった。それは先ほど使用したために、手に持っていた『霧』のカードだ。 空を見上げると、銀の女が、すでに次の光の球を作り始めていた。魔力が足りなかったと判断したのか、すでに先ほどのよりさらに大きい。 そして自分の手に目を落とした。そこあるのは『霧』のカード。そのカードに向かってさくらはやさしく語りかけた。 さくら「『霧』さん…わたしに、あなたの力を貸して。まだ目覚めていない力を…」 その瞬間、カードが淡く光を放つ。カードはさくらの手を離れ、浮かび上がり、杖の上部数センチメートルのところに留まった。 さくら「『霧』の名を与えられしカードよ、真の力を解き放ち生まれ変われ!!汝、新たなる名は…」 さくら『溶(MELT/メルト)!!』 その瞬間、『霧』のカードは黄金色と真鍮色のツートンカラーの新たなるカード『溶(MELT/メルト)』へと生まれ変わった。 『溶(MELT/メルト)』のカードは発動し、『霧』の時以上に濃い霧を放出した。 霧はあっという間に銀色の女を包み込み、銀色の女は瞬時に溶かされ、四角い光と姿を変えた。 さくら「汝のあるべき姿にもどれ!!ハーディカード!!」 四角い光はカードへと姿を変えた。 クロウカードと同じデザインだが、色だけが違う。 赤と金色ではなく緑と銀色のカードだ。 そのカードはひらひらと飛び、さくらの手のひらにすっぽりと収まった。 さくら「このカードは…『鋼(METAL/メタル)』」 と同時に杖は星の鍵(折れたところは直っている)と『希望』のカードに分かれ、『溶』のカードも『霧』のカードに戻った。 そして金属化された街や人々も次々と元に戻っていった。友枝遊園で襲われた人々も、知世たちも… さくらカードも元に戻ると、全てさくらの手に集まってきた。 ケルベロス(仮)「さくら〜」 金属から元に戻ったケルベロス(仮)と月(ユエ)が飛んでくる。 そして同じく、金属から戻り、傷も治った小狼も。 さくら「ケロちゃん…月(ユエ)さん、小狼君!!!」 第3章へ
<あとがき>
ようやく第2章完成!!いきなり長くなってしまいました。
次からはもうちょっと短くなるはずです。
新たなカード・新たな杖に新たな展開!(新たな衣装?!/笑)
さくらの世界観そのままの迫力のストーリーで凄く引きこまれましたっメタルのカード欲しいです(待て)
第3のハーディカードがどんな活躍になるのか楽しみです〜
そして銀色の女の行動がちょっと気になりつつ・・・・by akkiy