A red comet 〜前編〜

                                       by,ruka

 

“蘭、逃げろ!”

新一が戻ってこなかった頃に一度だけ聞こえたような気がした言葉。

あれ以来全くそんなこともなく、新一は元気な姿であたしの前に戻ってきたんだけど・・・・。

今考えると、あの言葉がきっかけで・・・・あたしたちはこんな風に会話できるようになったのかもしれない。

 




―東京駅―

  「ハァハァ・・・・遅くなって悪ぃ、蘭は無事だったか?」

  「ん・・・・あたしは大丈夫よ。新一・・・・ずっとここまで走ってきたの?大丈夫?」

  「あぁ、俺は大丈夫。奴等が来る前にさっさと行こうぜ?」

  「んっ、そうね」



あたしたちは、大阪方面に向う新幹線に飛び乗った。

あたしと新一を狙ってる何者かから逃れるために。



  「ねぇ・・・・でも、どーしてあたしまで狙われてるの?」

  「俺をおびき出す罠にでもすんじゃねぇか?にしても・・・・奴等一体・・・・」

  「相手のこと新一も見当ついてないの?」

  「あぁ、わかんねぇんだよなぁ。おそらく、俺がコナンだったときに関わった奴だとは思うんだけどな?」

  「そっか・・・・これからどーするの?」

  「とりあえず、服部に連絡入れといたから・・・・向こうで落ち合ってそっから相手を探るしかねぇな」

  「服部くんなら、力になってくれそうだもんね」

見えない敵に追われてる不安と、新一と暫く一緒に居られる安心とで複雑な気分だった。

 


―新大阪駅―
  「ま、これから何が起こるかわかんねぇし・・・・のんびりもできねぇかもしんねーけどな?」

  「・・・・新一と・・・・あたしの・・・・家・・・・」

思わず呟いたあたしを見ながら笑う、服部くんと新一。

とあるマンションの一室・・・・そこは2DKの広さで何もかも揃ってる所。



  「結構広いところ借りられたんだな?服部の名前だろ?」

  「そやで?工藤の名前使ぉたら敵にバレバレやろ」

  「だな・・・・で、宮野から連絡あったのか?」

  「おぉ、コレ・・・・預かってんで?」

服部くんが持ってるニ錠の薬。

  「・・・・どーゆーことだ・・・・?」

“pipipi・・・・”

ちょーどいいタイミングで新一の携帯にかかってくる志保さんからの電話。

  “大阪には無事ついたのね?”

  「あぁ、で?・・・・奴等のこと何かつかめたのか?」

  “えぇ・・・・相手はあなたと黒の組織を探りに行く途中でたまたま起こった事件に関係する組織よ。

   あの時、事件を解決したのは小五郎さんではなく蘭さんと江戸川君だったわよね。相手の今の目的

   は蘭さんと江戸川君の確保・・・・”

  「んじゃ・・・・まさか、この薬・・・・」

  “そのとおり・・・・アポトキシン4869・・・・薬の効き目は一錠6時間。でも、今のあなたの体では二錠

   飲んでしまったら元に戻れなくなるかもしくは・・・・”

  「死ぬ恐れがある・・・・か?」

  “えぇ、蘭さんのことを思うなら・・・・一錠で決着をつけるか、飲まないことね。あなたは、絶対しない

   だろうとは思うけど・・・・もう一つ、方法があるわ・・・・”

  「・・・・なんだよ?」

  “薬を蘭さんに飲ませる方法よ。・・・・ま、あの苦しみを知ってるあなたなら、そんなことはさせないで

   しょうけどね?”

無言になって、あたしを見る新一。



  「んで?その組織って・・・・」

  “組織のカラーは赤、組織名はGIONよ”

  「赤・・・・俺が、蘭の声で推理した・・・・あの、組織か?」

  “そうよ、江戸川君はともかく、蘭さんは組織のトップに相当気に入られたようね・・・・トップの男は

   かなり手強そうよ。また情報があれば連絡するわ”

  「あぁ、頼むよ」

携帯のスイッチを切りながら、あたしたちを見る新一。



  「工藤より蘭ちゃんを守るほうが先っちゅーことやな」

  「だな」

  「・・・・でも、どーしてあたしなのかな・・・・あの現場に居たのたまたまだったし・・・・」

  「蘭ちゃんにとっては、たまたまでも奴にとっては、えぇ女っちゅー解釈だったんちゃうか?」

  「もっ・・・・もぉ、服部くんっ?!」

笑いながら言う服部くん。



  「蘭の力を必要としてるか・・・・もしくは、蘭自体を必要としてるか・・・・どっちにしても、おめぇは

   逃げるしかねぇってことだよ」

新一まで、真剣にそんなこと言って・・・・。

  「どっちにしても、敵の頭は厄介な相手だぜ、相手の動き読めちまうらしいからな・・・・」

  「超能力者なんか?」

  「その類なんだろーな」

 



相手の見えない敵を相手にあたしたちの大阪での生活が始まった。

外に買い物なんかで外出する時は、必ず服部くんか新一が一緒でそれ以外はマンションにこもってる

生活。

時には、和葉ちゃんが来てくれたり・・・・。

そんなことが2週間続いたある日のことだった。

アイロンをかけてるあたしの頭に一瞬ズキッと痛みが走る。

  「痛っ・・・・」

  「蘭?」

  「あ・・・・何でもない、ちょっと頭が痛かっただけよ」

  「疲れてんじゃねぇか?休んでろよ」

  「ん・・・・」


その瞬間だった。






  『何処だ・・・・何処にいる、隠れてもムダだぞ』

えっ・・・・誰?・・・・頭の中に響いてくる男の人の声・・・・。







  『何処かで私の声が聞こえてるハズだ・・・・毛利蘭、何処にいる』






あたしを呼んでる声・・・・。

どーゆーことなの?

この人・・・・あたしが聞こえてるってこと分かってる・・・・。






  「蘭?まだ痛むのか?」

新一の声で我に返った。

  「・・・・んーん・・・・もぉ、大丈夫よ。ちょっと・・・・疲れてるのかもしれない」

  「そっか、そばについててやっから、ゆっくり寝ろよ」

  「ありがと」

優しそうに微笑む新一ににっこり笑って返す私。

でも・・・・怖い。

目を閉じても聞こえてくる男の声が耳から離れない・・・・。

助けて・・・・新一・・・・。






 

次の日のお昼頃、訪れた服部くんの話であたしの不安は更に高まった。

  「どーしたんだよ、服部。そんなに慌てて」

  「来てるで奴等の手下。大阪まで手広げとる」

  「何か・・・・あったのか?」

  「コナンと蘭ちゃんの写真持っててな、『この2人見たことないか?』ってあっちこっち当ってんねん」

  「まさか・・・・」

  「俺もさっき聞かれたところや」

  「新一・・・・」

  「大丈夫だ、蘭だけは絶対守ってやっから・・・・な?」

  「でもっ・・・・まだ、何も解決策ないんでしょ・・・・?昨日だって新一、ずっと悩んでたじゃないっ・・・・」

新一と服部くんが顔を見合わせる。

  「蘭・・・・何言ってんだよ」

  「わかるのよっ、新一の考えてることが・・・・何かわかっちゃうのよ・・・・」

それ以上は何も言えず、黙り込んだ。

何を聞かれても答えずに・・・・。



 

そんなあたしを見かねた服部くんがあたしの側に来る。

  「なぁ、蘭ちゃん。・・・・どーゆーことなんか説明してくれへんか?・・・・何で工藤の考えてることがわかる

   んや?」

  「・・・・・・・・・・」

  「蘭ちゃんが教えてくれへんと、守りたくても守られへんやろ?・・・・今蘭ちゃんが辛いことはよぉ、わかっ

   とるつもりやで?そやから、俺もココに毎日のように来てるんやろ?」

その言葉に、泣きそうな顔で服部くんと新一を見るあたし。

新一も無言でやりとりを見てる。

  「・・・・聞こえてくるの・・・・あたしを呼ぶ声が・・・・」

  「蘭ちゃんを呼んでるんか?」

  「・・・・ん・・・・誰だかわからない男の人の声で・・・・頭の中に響いてくるの・・・・」

  「工藤・・・・コレが奴の狙いなんちゃうか?」

  「あぁ・・・・チキショウッ・・・・一体どーすりゃいいんだよ・・・・」

2人が真剣に話してる間も、あたしの頭の中に響いてくる謎の声。




  『隠れてもムダだと言ってるだろう、さぁこっちへ来るんだ』





  「来る・・・・新一、探してるわ。もぉ、近くにいるかもしれない・・・・行って?あたしは

   大丈夫だから。ここで待ってるから・・・・ね?」

  「蘭・・・・」

  「迷ってるヒマはなさそうやな」

  「あぁ・・・・蘭、すぐ戻ってくっからな?動くんじゃねぇぞ?」

  「んっ・・・・」

出て行く新一を見送って、あたしは声に答えてみた。








  『あなたは・・・・誰なの・・・・?何故、あたしを探してるの?』

  『そこか・・・・そこに居るのか』

  『お願い、答えてよ。何故?何故なの?』

  『私は、お前が欲しいのだ。毛利蘭お前がな』

 




数十分後・・・・・。

  「きゃーーーーーーっ!」

 






                                      つづく♪

 

 

☆ あとがき ☆

遊んじゃいました。えぇ、おもいっきり(笑)

あまりに収集つかなくなって前・後半に分けてしまいました。

ホント少しだけだけど、夏の新一(あっきーさん)とのオフの内容も含んでたりもしてる・・・かも

しれないです(おぃ)

多分、分かる人少ないんじゃないかと思いますが・・・・今回は分かる人だけのお楽しみ内容

かもしれません(笑)

そして、この元ネタを分かってしまった人・・・・ホント、ごめんなさい(苦笑)

でも、一度これ・・・・やってみたくって(笑)

後編も付き合ってくださる方、読んで下さいね。

                                      流香

どひーーっ流香様から凄い小説を戴いてしまったっっ
合作は本を作って以来だったからとても懐かしい感じで←何ぃ?!(笑)
じつににくい御方が出演(ファースト?)されておりました(言うな/笑)
ああ・・・もっと小説に見合う画力とスピードが欲しいと思う今日この頃です。
そして後編もどうぞお楽しみくださいっ
byあっきー



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