グラップラー蘭〜RAN THE GRAPPLER〜11
ザ・ドクター様



 晶が 蘭の首を 左手だけで絞めていた。
 「グ………グググ………ググ………」
 絞められている。絞められているのに蘭はピクリとも動かなかった。
 手も。足も。


 「はぁ……?……えぇ 確かにありませんでしたよ 反応は………」
 「あれで 誰もが【反応が無い=死】と考えるでしょう……?」
 「実際に観客達もざわめいてましたからね………えぇ………」

 「………あれ………死んでんじゃないか? 息……止まってるよ………と言う会話が交わされていましたね」
 「何よりも それにいち早く気づいたのは晶自身でしたね」
 「絞めるのをやめたんですよ 自ら………………」

 「その時でしたよ 蘭の右上段蹴りが晶の側頭部をまともに捕らえたのは」
 「……一撃……?エェ 一撃でしたね 一撃で晶がヒザをつきダウンしましたね えぇ」

 「蘭は息を潜めて待っていたんですよ。己の息も反応も殺して。えぇ。それが当たったと言えますか」
 「が 晶は立ち上がってきた プロレスの名に賭けて プロレスのプライドが負けることを許さなかったんでしょうね」
 「そして 繰り出しましたよ 大技を」
 「バックドロップ………でしたか あの技は。プロレスでは基本となる技ですな」
 「叩きつけたんですよ 頭から大地に」

 「プロレスのリングでは投げ技の威力が格段に弱められているってホントだったんですね」
 「とてつもない苦しみようでしたよ えぇ 頭を抑えてバタンバタンと転がってましたよ」
 「それもそうですわ 空手だけやってきた人が受け身なんて知っているハズが無いんですから えぇ」
 「空手の弱点は投げ技 それは定義ですよ 定義」

 「しかし 見たこと無いんですよね 空手が投げ技に破れたのを 強烈な打撃で掴む前に倒すんですから」
 「それは普通の人の場合ですよね でも相手はプロレスラーです」
 「蘭は投げられないように抵抗しましたよ モチロン」

 「しかし その抵抗は実らなかった……そして捕まりましたよ 足を掴まれました」
 「そのまま パワーボム………。蘭の体重に晶の体重が加わり 全力で頭から叩きつけられました」
 「えぇ 受け身は取れてませんでしたよ」

 「完璧に全体重が首にかかりました もう少し打ち所が悪けりゃイッてましたね」
 「エェ 首が………大したモノですよ あの晶という女(ひと)は………」
 「首が破壊されれば普通は そこで格闘技をやめようとする……諦めて別の道を探そうとする」

 「しかし 彼女はそうしなかった………それ程プロレスが好きだからです プロレスしか生きる道がないからです」
 「えぇ それ程の人が簡単に負けると思いますか?否応にも負けられないでしょう?」

 「そして 引き起こしました 首を押さえながら呻いている蘭を」

 「蘭の頭を左脇で抱え込みましたよ そして 蘭の背中で両手をクラッチしました ダブルアームです」
 「ダブルアームスープレックス プロレスで有名な大技の1つですよ」

 「そして それは放たれた 勢いよく」


 「ドカァッ」
 「したたかに叩きつけられましたよ しかし 叩きつけられたのは大地ではなかった」
 「フェンスですよ フェンスに叩きつけたんです」
 「かなり効いていたんでしょう 背中を押さえて呻いてましたから」

 「しかし 晶の攻撃はこれでは終わらなかった またもや 晶は蘭を引き起こしたのです」
 「ムリヤリ立たせたと言った方が適切でしょうか」 
 「次の瞬間 晶の両手が蘭の腹の前でクラッチされました」

 「えぇ 投げ技を放つ気でしたよ」
 「そのまま 後ろに放り投げましたよ。えぇ ジャーマンスープレックスです」
 「これも プロレスでは有名な大技の1つです」

 「型は綺麗でしたよ えぇ これは確実に決まると思いましたね そして決着が着くとも」
 「しかし そうじゃ無かった」

 「引っかけたんですよ えぇ 蘭が 足を晶の足にね」
 「それで 晶はバランスを崩した?」
 「えぇ 綺麗だったジャーマンが崩れたんですよ オシャカになったんです」
 「あれが 大相撲で言う河津落としなんですかねぇ だと したら咄嗟にやるとは末恐ろしいと思いましたよ」

 「しかし その技は終わっていませんでした まだ投げられている途中だったワケですよ」
 「何をやったと思います?蘭がそこで………?」

 「晶のアゴに手をかけたんですよ」
 「晶のアゴに全体重をかけ 潰す気でしたね えぇ その時 晶の顔は青ざめてましたよ」
 「こんな手があったのかとでも言いたげな表情でした ハイ」
 「そして潰されましたよ 晶が………………首に完璧に来ましたね 衝撃が」

 「そこで決着が着いたのかと思いましたよ 誰もが」
 「格闘技好きなら晶の首の負傷は誰でも知っている事実ですからね」

 「誰もが 首が破壊されたと思いました えぇ それ程 晶の首は深刻な状態だったんですよ」
 「しかし 立ち上がって来た 誰もが立ち上がれないと思っていた晶が立ち上がって来たんです」
 「そして 蘭がトドメの正拳突きを放とうとしました」

 「しかし 止まりました それは…………」
 「えぇ 決着は既に着いていたんですね…………」
 「立ってたんですよ 気絶したまま…………」

 「プロレスのプライドが晶を立ち上がらせたんでしょうねぇ…………」
 「間髪入れず 審判のコールがそこに響きましたよ………」



 「勝負ありッッッッッ」
 審判はそう叫んだ。
 決着が着いた。毛利 蘭の勝利である。

 蘭は血を流すべく シャワールームでシャワーを浴びていた。
 (晶さん ありがとうございました)
 そして シャワーを浴び終わった蘭は新しい胴衣を身につけ シャワールームから出た。
 そこに 1人の女がいた。晶である。
 「………晶さん……」
 晶が勝負の判定にまだ納得していないのか 殴りかかって来た。それを見た蘭は思わず身構える。
 「………ポン」
 晶が 蘭の両肩に軽く手を乗せた。
 「あ……晶………さん?」
 蘭は 戸惑いながらもそう言った。
 晶は ニコリと笑いながら言った。

 「負けちまったなァ 17歳の小娘によォ」
 「こんなヤツに負けるなんてなァ 確実にアタシの力も衰えてきているのかも知れねェなァ」
 それを聞いた蘭は笑いながら言った。

 「そんな事ないですよ 晶さん」
 「貴方があそこで気絶していなかったら……勝負はどう転んでいたか分からなかったですよ」
 それを聞いた晶は笑いながら言った。
 「………ハハ………そう言ってくれるのかい………アンタと闘えて良かったぜ………」
 「……そう言えば 久しぶりだな……………あんな試合をやることが出来たのは久しぶりだ………」
 「アリガトよ………」
 そう言いながら晶はペコリと頭を下げた。

 「そうそう…………蘭………アンタはこのアタシに勝ったんだぜ………」
 「最後まで勝ち抜かなけりゃ承知しねェからよ………」
 晶は にぃっ と笑みを浮かべながらそう言った。
 「……分かりましたよ 晶さん」
 そう言いながら蘭も笑みを返す。


 『一回戦第2試合!!!』
 『新大相撲・佐伯 純VS!!!』
 『空手・九篠 麗華!!!』



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ザ・ドクター様の格闘小説11話
蘭ちゃんやばかったです・・普通の人ならもう・・・←普通じゃないのか蘭はΣ( ̄□ ̄;)
勝ち進む蘭。ドクター様からわかりやすいトーナメント表を戴いた(無理やり奪った?(笑))ので
早速使わせてもらいました♪おっ わかりやすいぞ!!ありがとーー(*^▽^*)/ by あっきー

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