グラップラー蘭〜RAN THE GRAPPLER〜16
ザ・ドクター様



 「な……なんなの………?この闘いは………?」
 紅 栞と藤堂 茜の試合を見た蘭はそう思っていた。
 
 『あ……圧倒的な試合だ〜〜〜〜〜〜ッッ』
 『柔術VS柔道ッ その雌雄が今 決しましたッ 時間において僅か2分ッッ』
 『僅か2分で決着がついたのですッ』
  『驚嘆するべくは柔術ッ 柔術の後雨滴強さッッ 我々も柔術がこれ程の強さとは………』
  『思いもよりませんでした―――――――――ッッ』
  『これこそが本当の柔よく柔を制すッッ』
  『軍配は柔術 紅 栞に挙がったのですッッ』
  『柔術の勝利ッッッッッッ』

  それを聞いた蘭は思っていた。
  (な………何を言っているの?………あの解説者………?)
  (見るべきはそんなところじゃないわ………)
  「そうね」
  欄の背後から声が聞こえてきた。その声の主は綾香だった。

  「注目すべきは 栞の足元……あの少女は全くと言っていい程動いていないわ……」
  「………これが どう言うことか……あなたならわかるわよね?蘭?」
  綾香は笑顔で蘭に そう尋ねた。
  「………えぇ…………まだ その柔術の真髄を見せていない……ということ………」
  「………なるほど………アタシも同意見だわ……それに関してはね……」
  「エ?」
  蘭は綾香のその言葉にきょとんとし 綾香を見た。
  「アタシは今まで あらゆる格闘技と遭遇し それら全てを薙ぎ倒してきたわ……そのアタシが………
    そのアタシが…………」
  「………初めて感じた思い…………あの柔術を見て 初めてこう思った………」

  「底が見えない」

  「………底…………?」
  「………そう………底………あらゆる格闘技には限界がある…………鍛えられる限界が………」
  「例えば空手なら拳や蹴りを鍛え……プロレスならその肉体を鍛える………
    しかしッ 柔術では何を鍛えるのか……?」
  「見たところパワーはなさそう………と なれば攻撃力は皆無………しかし あの茜が朽ちた………」
  「アタシは この試合茜が勝ち上がって来ると思っていたのよ………それがッ………」

  「予想が覆ったのね」
  蘭が そう呟いた。

  「……そこ…………どいてくれない?」
  綾香の前から声が聞こえてきた。栞の声だ。
  「………栞………」
  そう呟いた綾香は蘭に合図をして道をあけた。
  そこを栞が通り そのまま控室への帰路につこうとした時 彼女は思い出したように振り返った。

  「そう言えば……蘭さん 貴女は まだ残っていたんでしたよね………」
  「え………えぇ………」
  「会えたらいいですね 決勝で」
  栞は普通にそう言い 控室に足を向けた。
  その言葉を聞いた綾香は思っていた。

  (決勝で………?つまり アタシのことは眼中にないってワケ?)
  そう思いながら 彼女は身体をブルブルと震わせた。
  そして 彼女はそのまま闘技場入りした。
  『オオォォォ 来栖川 綾香ですッ』
  『格闘の女王 来栖川 綾香が闘技場に降り立ちましたァ』
  『その目には闘争の炎が静かに燃えているッ』
  『実に不気味だッ』

  控室を出た葵はゆっくりと呼吸をしながら闘技場に向けて歩みを進める。
  (………や………やっと………やっと目標としていた綾香さんと戦えるんだ………)
  (悔いの無い戦いをしよう………)
  その時 葵の前に1人の男が立ちはだかった。
  「………京極……さん」
  「よぅ 体調は万全のようだな 葵」
  京極は笑いながらそう言った。
  「ハイ これも京極さんのおかげです」
  それを聞いた京極は笑いながら言った。
  「クックック 嬉しい事を言ってくれるねェ……別に俺は何もやっちゃいない」
  「ただ技を教えただけだ………それを磨いたのは葵……オマエの才能だよ」
  「………京極さん セコンドについていただけませんか?」
  「セコンド………?この俺が……?………一番近くで試合を見れる……となれば 
    この話OKしたいところだな……」
  「………しかし 葵よ 残念ながらそれは出来ん」
  「何故ですか 京極さんッッ」
  「オレをセコンドにつけたら確実に負けると言ってもか?」
  「どう言う意味です?京極さん?」
  「わからないのか 葵……」
  「オレは 過去に綾香と対戦している その時に“虎王”も出している」
  「“虎王”は………1回限りの技………2度は通用せぬッッ………だからだ………」
  「もし オレがオマエのセコンドについたとすれば 綾香は確実に“虎王”の存在を常に頭に置くだろう」
  「もう1度言う……“虎王”は1度しか通用せぬ技ッッ しかしッッ」
  「綾香に俺がオマエのバックについていないと思わせる事が出来れば 立派に通用するッッ」
  「しかし試合は見ているからな この闘技場のどこかから………オマエの勝利を心から祈っている………」
 「あ………そうそう 技の組み合わせによっては綾香に勝てるだろうよ…………頑張りな」
  そう言いながら京極は そのまま控室の奥に姿を消した。
  消え行く京極の姿を見ながら葵はその闘志を胸に秘めていた。
  (京極さん……アタシ………頑張ります!!)

  『青コーナー 松原 葵!!!』

  「ハイッッッ!」
 そう叫びながら 葵は一歩を踏み出した。

 観客席に向かう京極の前に1人の女性が立ち塞がった。
 「………お久しぶりね……京極さん……」
 「皇(すめらぎ)…………」

 京極が皇と呟いた女性。その女性はスタイル抜群だった。そして格闘家に必須の“柔らかい”筋肉……。
  それも兼ね備えていた。
  「……皇 響子………何をしに来たんだ?」
 「……あら………ひどいわねぇ………私を悪役に仕立て上げるつもり?前はそんな人じゃなかったのに………」
 そう言いながら皇は目を潤ませる。
 「オイオイオイッ 前はって何だよ 前はってッ!オレァ オマエと1回しか会った事無いだろうがッッ」
 「くす……」
 皇は薄い笑みを浮かべた。
 「大丈夫よ 別に何もする気は無いんだから……ただ観戦に来ただけなんだし……」
 「観戦……そうか………この日本一を決める大会を前に大人しく見ているとは思えないがね」
 「ひどいッ この澄み切った目が信用出来ないの!!?」
 「どこが澄み切った目だよ ドロドロに汚れているクセに」
 そういいながら京極は溜息を吐き 言葉を続けた。

 「ま……とりあえずは信じてやるが………この大会を邪魔するようだったらオレは確実にオマエを止めるからな」
 止める。京極は確かにそう言った。“倒す”のでは無く“止める”。この言葉の違いは何を意味しているのか?

 『出て来ましたッ 松原 葵ッッ この闘技場に天才格闘少女・松原 葵が見参だァッ』
 『対するは格闘の女王 来栖川 綾香!!!』
 『思えば 松原 葵は1年前 エクストリーム優勝を果たした綾香を見て格闘士への道を志したのです』
 『そして 今 その綾香と激突…………!!』
 『ここまでわずか1年ッ わずか1年でエクストリーム出場レベルとなったのですッ』
 『何という才能だッ』
 『16歳VS17歳!!!』
 『この試合 どっちが勝つのかッ 興味は尽きません!!!』

 松原 葵(総合格闘技)
 168cm 57kg
 パワー:7 スピード:8 ディフェンス:7 テクニック:7 ????:10

 来栖川 綾香(来栖川流拳法)
 172cm 62kg
 パワー:9 スピード:10 ディフェンス:9 テクニック:10 ????:10

 さすがは女王。全てのバロメーターがMAXか それに近い。しかし 闘いは何が起こるかわからない。

 (綾香さん……アタシは貴女を倒します!!!)
 葵はそう思っていた。そして それを感じたかのように綾香は呟いた
 「………出来るかしら?」

 その時 審判が叫んだ。
 「始めッッッ」
 と 同時に綾香が構えた。次の瞬間 葵が体勢を低くして綾香めがけてダッシュした。
 それを観客席から見ていた京極は思った。
 (いきなり“虎王”!!!?)




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ザ・ドクター様の格闘小説16話!!
なんとっ葵のいきなりの虎王!!!!
京極さんが見守る中で葵は勝てるか?・・・ってこの技が決まれば・・・・・・・
綾香の実力はいかに????? by あっきー

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