グラップラー蘭〜RAN THE GRAPPLER〜20
ザ・ドクター様



  「すッッ すっげェぞ 2人ともッッ」
  観客達がそう叫んでいた。

  平次は呟いた。
  「なるほど………綾香が天才とするなら葵は努力家やな………」
  「綾香は天賦の才能だけで強くなっていった……そして 葵はもともとの才能の上に“努力”という才能を積み重ねていった」
  「この闘い――――……努力VS天才の構図が成り立つ………ッッ!」

  その瞬間 綾香が動いた。体勢を低くしてのダッシュ。そこから葵に攻撃をくわえにいく。
  「ギャォッ」
  低空のローキックだ。それを跳んで避ける葵。と 同時に綾香は大地に手を突き そのままロケットキックに移行。
  両足を揃えてのロケットキック………!!
  「ドキュゥッ」
  それをブロックの上から喰らった葵はとっさに綾香の足を掴む。
  「パシッ」
  それを見た京極は思った。
  (葛(かずら)を仕掛ける気か)
  葛………。それは京極流に於ける関節技の名称……!

  それを見た綾香は思った。
  (関節技――――……しかし アタシには通用しないッ)
  綾香は身体を回転させて葵の関節技から脱出。そして着地と同時に葵にダッシュ。
  ……その時 葵もダッシュしていた。
  「ギャッ」
  葵の左正拳突き。綾香の右ローキック。同時にそれは放たれた。
  「ボッ」
  「ミシィッ」
  綾香は寸前で葵のそれをかわしていた。綾香のローキックが葵の足にヒットし葵の足が軋む。
  「ボリュッ」
  綾香の正拳突き。それを葵はかわして懐に飛び込む。そこに綾香のヒザが………!!
  (ヒザッッ)
  葵はそう思ったと 同時に腕を十字に組んでブロック。
  (くッッ)
 
  その時 京極が叫んだ。
  「いかんッ 葵 それは―――――……」

  次の瞬間 葵の後頭部に衝撃が走った。鈍痛な……それでいてずくんずくんと内から湧くような痛み。
  (な…………?)
  そう思いながら葵はダウンした。うつ伏せに。
  「ドォ……ッ」

  コナンは呟いた。
  「へ……平次お兄ちゃん……何が起こったの?」
  「………ヒジや………」
  「綾香のヒザ蹴りを葵は両手でブロックに行った……確かにヒザはそれで完璧に防げるやろう……せやが それが拙かった……」
  「綾香は無防備となった葵の後頭部にヒジを叩き下ろしたんや……結局……最後は経験の差が明暗を分けた……」

  「勝負あ―――……」
  審判が叫んだその時 葵が動いた。
  綾香の足を掴み そのまま倒した。アキレス腱固め……!!
  「ガキィッ」
  それを見た審判は叫ぶのを中断した。
 
  関節技を極められた綾香は思っていた。
  (な…………ッッ どッ どこにこんな力がッ……!!)
  「ビキ ビキ」
  綾香の足が悲鳴をあげている。極められている左足が。
  その瞬間 綾香の右足が葵の右肩の付け根を強烈に叩いた。
  その衝撃で葵の動きは一瞬止まり 力が抜けた。
  「フッ……」
  それをついて綾香はその技から抜け出した。
  「なかなかいい技だったわ……そうね ちょっと筋を違えたくらいかしら」
  そう言いながら綾香は笑みを浮かべていた。

  『な……何が起こったァ』
  『極めていたはずの関節技を葵が自らッ 外してしまいましたァ』

  「何を言ってやがる あの的外れの解説者め………」
  「自らや無いで あの綾香がそうさせたんや」
  「綾香が今 叩いた場所……そこは人体に走るツボの一つ……そこを攻撃されれば一瞬やが動きは止まる………!!」
  平次が そう呟いた。
  「……と……言うことは……あの……綾香お姉ちゃんは人体のツボを全て知り尽くしているかも しれないと………?」
  「いや……さすがにそこまでは無いやろ……だがほとんどのツボは知り尽くしてるかもしれへんなァ……ホントに………」
  「ホントに怖い女やで!!!」

  『綾香が前に出たァァァッ』
  それを見た葵はダッシュし そのまま綾香の足に直蹴り……!
  真っ直ぐ突くように蹴りを放った。綾香は己の足を前に上げてかわした。
  そこから綾香の叩きつけるような踵落とし。
  「ドグァッ」
  それは大地を叩いた。かわした葵は いったんバックステップし 再び懐に飛び込む。
  
  が それは成らずッ………!綾香の裏拳がまともに葵の顔に―――……。
  「グッチャァッ」
  葵の顔が歪んだ。歪み 吹っ飛んだ。
  『葵ッ 吹っ飛んだァッ』
  「ザンッ ザンッ」
  宙で展開し 大地に右足から順に着地した。その顔は紅に染まっていた。
  葵は口の中を舌で探り当て折れた歯を発見し 吹き出す。
  「カラカラ……プッ」
  折れた歯が大地にコロンコロンと転がった。

  それを見た皇は思った。
  (………まだまだ 甘いわね………)

  次の瞬間 葵が迅速のスピードで綾香の懐に飛び込んだ。綾香はそれを迎撃に行く。
  「ッドゥッ」
  その音が発された刹那 1人の人間がフェンスを突き破り 観客席に飛び込んだ………。

  それを見た平次は叫んだ。
  「な……なんや あの技はァァァッ!!!」



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