グラップラー蘭〜RAN THE GRAPPLER〜25
ザ・ドクター様


  闘技場。
  その中央に栞がいた。
  そして 綾香がフェンスまで吹っ飛ばされていた。
  『あ………ッッ 合気ですッッ』
  『古流柔術の奥義 合気が炸裂したァァァ』
  『冴え渡っているぞ 達人!!!』

  茜は呟いた。
  「明治時代以降近代武術界100年の歴史………」
  「その中で本物の合気を身につけた武術家は恐らく10人にも満たない」
  「しかし それらの使い手は全て“お約束”の中でしか合気を使用出来なかった………」
  「実戦の場で合気を使用したのは………この女……紅 栞が初めてだろう」

  綾香が片ヒザをつきながら起きあがって来た。そして構える。
  右手を高く 左手を腰のところに置く。
  『出たぞ 格闘の女王 来栖川綾香 天地上下の構えだァ〜〜』
  対する栞は動かない。それどころか両手をダラリと下げたまま構えを全く見せていない。
  そして 綾香がその構えのまま動いた。前へ。
  そこから連続で攻撃を放つ綾香。無数の拳が栞を襲う。
  しかし 栞の目には“ホンモノ”と“ニセモノ”の区別が付いていた。
  (ニセモノばかり…………)
  そして 綾香が蹴りを放つ。それこそが多重の“ニセモノ”に隠された“ホンモノ”―――……。
  虚の中の真実。多重の虚の中から真実が繰り出された。
  しかし 栞はそれを読んでいた。
  (これッッ)
  そう思いながら 足首の下に自分の手首を引っかけ上に持ち上げる。
  綾香の身体が宙で半回転し 顔を栞に掴まれた。
  次の瞬間 頭から大地に叩きつけようとする。
  しかし 綾香の好転のスピードが早まった。
  綾香が頭から叩きつけられるのを防ぐために自ら速めたのだ。
  着地したと同時に綾香は正拳突きを放つ。素早い動きだ。
  綾香のそれが栞の腹にヒットしようとした瞬間 綾香の顔が潰れた。
  「グチィッ」
  頭突き。栞が自らの頭を綾香の顔に叩きつけたのだ。

  『ずッ 頭突きだァァァッ』

  観客達は叫んだ。
  「柔術で頭突きィィィ!!?」
  その瞬間 綾香が 手刀を繰り出した。
  しかし それは 栞に当たる寸前で止まった。

  『な……何が起こった―――ッッ』
  『綾香が繰り出した起死回生の手刀が直撃寸前でストップッッ』

  それを見た茜は呟いた。
  「じッ……実戦であれを使うの………?」
  「な……何を使っているの!!?」
  そう尋ねたのは葵だ。

  『一体 何が起こったのかッ』
  『達人の闘いは難し過ぎる――――――ッッ』

  「な……何が起こったの?平次お兄ちゃん?」
  すっかり工藤はコナンの姿に戻っている。
  「見てみ……あ……足や……」
  「足?」
  そう言ってコナンは栞の足を見る。栞が綾香の足を踏んでいた。人差し指と親指の付け根を。
  「……あれで数瞬 動きが止まるんや………つまり 足の指一本で綾香の動きを封じたワケやな」
  「めっちゃ ごっついでェ………」
  「でも 平次お兄ちゃん……あのお姉さん ほとんど表情を見せないね?どうして?」
  「あぁ……確かにな……しかし どうしてあぁなったんか………?」
  「ホゥ………キミ達……かなり鋭い眼をしているな」
  その声が平次達の背後から聞こえて来た。
  「何者!!?」
  そう叫びながら2人は後ろを向いた。そこには精悍な顔つきの男が立っていた。
  「ハハ 驚かせてすまなかったな 私は『月刊グラップラー』記者の紅 涼(くれない・りょう)と言う……」
  「確かに 栞は昔は感情があった……感情があったんだよ……これが昔の写真だ」
  そう言いながら 涼は自分の手帳から1枚の写真と名刺を取り出し 平次達に渡した。
  そこには 笑顔を浮かべている栞が写っていた。
  「……ごっつぅ可愛えぇやないか………なァ……コナン……?これやったら そこらへんの女よりもめっちゃ上やで」
  「そうだね……平次お兄ちゃん……可愛い……」
  「エッ!!? オレがッ!!?」
  コナンの言葉に 平次はそう慌てていた。
  「違うよー その写真の女の子が」
  コナンの その言葉を聞くと 平次は胸を撫で下ろし ほっと安心していた。

  「あの栞が 感情を失ったのは 今から1年前………丁度 去年のエクストリームの真っ最中でした」
  「当時 栞は優勝候補に数えられていたにも関わらず 1回戦で綾香に惨敗しました」
  「その時からです 栞が感情を捨て格闘のトレーニングに励んだのは……」
  「許せなかったんでしょうね 綾香に負けた自分が……それからは血のにじむ……いや 血を伴うトレーニングの毎日でした」
  「それからでした 栞が めきめきと頭角を現し 強くなったのは………」
  「栞は……栞は……感情と引き替えに“強さ”を手に入れたのです…………!」
  「………そして……そして 栞が感情を取り戻すきっかけがあるとすれば この大会以外には無いでしょう………」
  それを聞いた平次は呟いた。
  「自分……なんで そんなコト知ってるん……?そんなの このオレでも聞いたコトあらへんで………」
  「ね……ねぇ……平次お兄ちゃん………この人の名前って…………」
  「名前……?………紅……?紅って………?ア……アンタ………まさか………!!」
  「そう……私は 紅 涼………紅 栞の………」
  「兄です…………!!!」

  次の瞬間 綾香の左ローキックが栞の足を襲った。
  栞はローキックの足首を掴み 上に放り投げた。綾香の身体が一瞬 宙に浮く。
  「な…………………ッッ」
  次の瞬間 栞が跳び 綾香のノドを踏み潰した。
  「ドガァッ」
  気管への衝撃の影響で綾香は大量の血を吐いた。
  それは普通の量ではない。尋常ならぬ量の吐血…………!!
  そのまま 綾香は再びダウンを喫した。

  『こんな女の子は どこにもいな〜〜〜〜〜〜〜いッッッ』



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ザ・ドクター様の格闘小説25話
強い!つよすぎる栞!!あの綾香が・・・・・・・・・
そして登場した栞の兄と名乗る男・・・・・なんか複雑に絡む過去が原因?・・・・・決勝はこの栞と闘うのか?by あっきー

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