グラップラー蘭〜RAN THE GRAPPLER〜26
ザ・ドクター様


  『強い強い強〜〜〜〜い!!!』
  『底が見えませんッッ』
  『達人 紅 栞ィ〜〜〜〜ッッ』
  『157cm 42kgの体格………ッッ まさに子供並と言って差し支えないでしょうッ』
  『しかし 人は武道により 斯くも強くなれるのですッ』
  『お見事 紅 栞!!』
  『ブラボー 日本武道ッ』

  その時 蘭が溜息を吐きながら言った。
  「古流柔術対策……本気で考えなきゃね………」

  平次は呟いた。
  「極めてはる………」
  「実現不可能と思われてはった合気の理論をああまで完全に体現できるモノとは……」
  「それをやられちゃァな……誰も勝てへん 勝てる道理があらへん」
  「ねぇ……平次お兄ちゃん………合気って……どういう技なの?」
  「簡単に言えば “返し”やな」
  「“返し”……?」
  「せや 危害を加えようとする敵の力に対し 己の力を加えて敵に返すんや」
  「そして 敵の加える力が強大であればある程……敵自身に返る力は強大になってしまう」
  「これが合気の理屈……言うのは簡単だが 実際にやるのはとてつもなく難しいんや……そして これは………」
  「………完璧な武や……」
  「あの女……優勝持ってっちまうわ」

  仰向けにダウンしている綾香は一言呟いた。
  「……なるほどねェ……」
  その顔は血塗れだった。
  「堪能したわ」
  「相手の攻撃力に応じて反撃の度合いが変化する……」
  そう言いながら 綾香は立ち上がろうとしている。
  「10の力で攻撃されれば10+己の力で反撃できるってコトね………」

  『立ち上がる気か 格闘の女王ッ』

  「でもね……アタシが敵じゃなくなったらどうするの?栞?」

  『立った!!』

  「立ったわよ……トドメを刺さなきゃ 試合は終わらないわよね?ねぇ?栞?」
  そう言いながら綾香は笑みを浮かべていた。不気味な笑みを。

  『立ち上がりはしましたが――――――………』
  『一体 これ以上何をしようというのか!!?』
  『達人の技は完璧です 余りにも完璧過ぎます』

  「攻めないわよ」
  綾香が一言そう言った。綾香はその場に立ち尽くしている。

  『動かないッ』
  『双方動かなくなってしまいましたッ』

  それを見た茜は呟いた。
  「考えたな……綾香め………」

  栞は綾香の周りを円を描くようにして歩き始めた。
  「理想的だわ……」
  「何もしてこない相手には何もする必要はなく……従って……」
  「そこには争いが生まれようもなく――――――……」
  「勝ちも無ければ負けも無い………」
  「理想の世界ですね」
  そして 栞の歩みが綾香の背後で止まった。
  「ただし これは試合……貴女の技と私の技……どっちが上でも構わないと言うにはこの紅……」
  「若過ぎる………!」
  そう言いながら紅がダッシュした。
  背中にパンチを浴びせる気だ。その瞬間 綾香の顔に笑みが浮かんだ。
  綾香が振り向きざまに栞の顔めがけて拳を繰り出した。
  「カッ」
  『当たった〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ』
  綾香の拳が栞の顔に強烈にヒットしたのだ。
  そのまま 栞は吹っ飛び 背中から強烈にダウンした。
 
  『破れたりィィィィィッッ』
  『紅流柔術アンタッチャブル(触れない)の神話が今 崩壊したァ〜〜〜〜』
  『完全無欠の護身術がッ』
  『綾香流の執念の前に今 クリーンヒットを許しました〜〜〜〜!』

  茜は呟いた。
  「……当てやがった……」

  『さァ〜〜〜トドメを刺さんと 今 格闘の女王がッ』
  『歩みを進める〜〜〜〜〜』

  そして 栞は昔のことを思い出さんとしていた。
  昨年のエクストリームで綾香に敗れた直後………。
  栞の顔を 拳が襲う。その拳の主は綾香………!!
  「グワキィッ」
  「ッヒィィィィィッ」
  そう叫びながら 栞は跳ね起きた。
  「ハァッ ハァッ ハァッ ハァッ」
  「……また……あの夢か……」
  栞は悪夢に苛まれていた。そのせいか トレーニングにも身に入らなかった。
  「どうした……?栞………?」
  「あ……わ………若先生………」
  「さっきから見ていると気合が入っていないように思えるが?そんなに先の敗戦がショックだったのか?」
  「………まだ 先の敗戦を引きずっているとは……とろけそうな程に甘っちょろい」
  若先生と呼ばれる青年はそう呟いた。この若先生の本名を「赤木しげる」と言った。
  「まぁまぁ……そのくらいにしておきなさい……」
  「……………ご老公………」
  栞と赤木の師匠である黒田秀晃(くろだ・ひであき)。年は70を軽く超えるだろう。
  「……どうかね……?久々にワシと立ち会ってみるかね?」
  「こう言う時には戦って気晴らしをするのが最も良い………やりなよ?栞?」
  「分かりました 若先生」
  そう言いながら 栞は構えた。それを見た黒田は構えない。
  ノーガードの状態。つまり 相手を誘っている。
  「いきます」
  そう叫びながら栞がダッシュ。と 同時に拳を放つ。
  黒田は落ち着き払って それを掴んだ。と 同時に栞の足が浮き次の瞬間には大地に叩き付けられようとしていた。
  しかし転回して足から着地。と 同時に黒田の腕を掴んだ。間を置かず黒田の足が浮く。
  「ズダ――――――ン」
  黒田が大地に伏した。
  「……見事……」

  その夜遅く、黒田は栞の家を訪れた。
  正装だった………。
  わけもわからずに栞は接待した。そして 黒田は栞に小さな包みを手渡した。
  それを開いた栞は驚愕の表情を浮かべた。
  「……師の利き手…………!!」
  黒田の手首から先がそこにあった。
  「肩の荷が……降りた………」
  師の引退………。免許皆伝………。
  黒田は言った。
  「感情を捨てて闘いなさい……。そうすれば相手の攻撃を理解できるようになる」



続きへ

ザ・ドクター様の格闘小説26話
なんと昨年綾香に負けていた???栞の今回の試合へのいきごみは
尋常ないとは思ったけど・・そんなことが・・・・・・
く・・黒田先生???手・・・・手がぁぁぁぁぁぁぁぁΣ( ̄□ ̄;)by あっきー

戻る

TOPへ

E-list BBS Search Ranking Playtown-Dice Go to Top