グラップラー蘭〜RAN THE GRAPPLER〜28
ザ・ドクター様


  『勝負ありィィ〜〜〜〜〜ッッ』
  『来栖川 綾香VS紅 栞』
  『完全無欠の達人対決 ここに決着ッッ』
  『齢17歳!!柔術家 紅 栞先生に凱歌が上がったのです!!!』
  そして 栞は呟いた。大の字に仰向けにダウンしている綾香の頭の先に正座しつつ。
  「立ち会いと言うものに…………」
  「空手というものに―――――敵と言うものに―――――……」
  「久々に畏怖したわ………」
  「来栖川綾香という武士(もののふ)を心底 怖いと思ったわ………」
  「……もし―――――……私が昨年のエクストリームで負けた後 悪夢に苛まれていなければ――――……」
  「今頃 私の顔面が客席にスッ飛んでいたことでしょう………」
  そうして栞が立ち上がりながら言った。
  「敗北に関わった時間が……そのまま 明暗を分けた……」
  そして闘技場を立ち去ろうとする栞。その背中に声がかかった。
  「甘いわね」
  その言葉と同時に栞の歩みが止まった。
  「トドメは刺さないの?栞………」
  「これは真剣勝負よ?」
  「審判がどう判定しようが知ったことじゃないわ………」
  「完全に息の根を止めて決着ってのが武道家同士の勝負ってモノでしょう?」
  「ねェ 栞」

  それを聞いた京極は呟いた。
  「……やめ……」
  「やめろ 綾香……それ以上は………!!」

  次の瞬間 栞が飛び 綾香の顔を踏んだ。その衝撃で綾香の状態が仰け反る。
  「ドキュッ」
  綾香の顔を叩いたと思った。しかしそうではなかった。
  綾香の顔から僅かにずらして大地を叩いていた。
  「……私から生き甲斐を奪わないでよ」
  そう言いながら栞が笑みを浮かべた。
  「私はまだまだ闘い続ける………還って来なさい 綾香」
  そう言いながら栞は去った。

  それを見た栞の兄―――……紅 涼は泣いていた。
  「あ……あぁ……ひ……久しぶりに栞が……笑った………」
  「綾香さん ありがとうございます」
  そう言いながら 涼は闘技場にダウンしている綾香に頭を下げた。

  控室。
  蘭がウォーミングアップしていた。
  連続で突きを繰り出し 蹴りを放つ。
  「ボァッ」
  「調子よさそうやな 工藤のねーちゃん」
  平次の声を聞いた蘭は振り向いて笑みを浮かべながら言った。
  「えぇ……絶好調よ……今なら誰にも勝てる気はしないわ」
  「そうか……」
  蘭の言葉を聞いた平次は そう言いながら安心して控室から去った。
  (ま……待て………今 工藤のねーちゃん……)
  (誰にも勝てる気がしないわ……っつってたな……まさか 工藤のねーちゃん!!?)
  そして 蘭は闘技場に向かった。

  その頃 栞は控室で免許皆伝の翌日の事を思い出していた。

  道場に2人の男女がいる。
  1人は紅 栞。もう1人を黒田と言った。栞の師匠である。
  栞が叫んでいた。
  「真の武とはッッ!1?」
  「真の護身とは!!?」
  「ご教授ください 師匠ッッ」
  「我の進む道ッッ」
  「栞よ………落ち着きなさい……」
  「護身の完成が富士の頂とするならば――――……このワシにしてからが麓を踏んだばかり」
  「お主程の才能を以ってして生涯を武に費やし――――……」
  「八合目までを踏めるかどうか………」
  「………そもそも突かれたらこうかわす……蹴られたらこう捌く………」
  「このような些末な技術に捕らわれている様では下の下………」
  「真の護身を身につけたならば 技は無用………」
  「真の護身が完成したのなら……栞………」
  「危うきには出逢えぬ……己の危機に気づくまでもなく―――――……危機へ辿り着けぬのじゃよ」

  「お供させて下さい 栞さん」
  そう言ったのは茜。
  そして 闘技場に向かう栞。その時 栞が手をついた。
  「とと……」
  「大丈夫ですか?」
  「ハハ 情けないわね これから闘おうって者がこんなところでコケて」
  「恐れながら栞さん……いいモノを見せていただきました……」
  「栞さんの転ぶ姿など見ようったって そうそう見れるものじゃありませんからね」
  「………行きましょうか………」
  「勝ちをもらいに―――――………」
  「ツル」
  また栞が滑った。

  「危機に出会えぬ」

  「栞さん………」
  栞は なんとかコケるのを避けた。そして また1歩を踏み出す。

  「己の危機に気づくまでも無く―――――……」

  そして また栞がコケる。何かに操られているかのように。

  「危機へ辿り着けぬのじゃよ 栞」

  それを見た茜が呟いた。
  「……栞さん………」
  「……ハハ……お見苦しいところをお見せした……構わず先に行って下さい」
  (とんだところで―――――……護身完成ってか………)
  そう思いながら栞は壁を支えにして闘技場まで歩みを進める。
  「あ〜〜あ……これはは極め付きだわ………」
  「こんなモノまで出る………」
  そう言う栞の目には見えていた。闘技場への道を阻む強固な門が。
  「坊主でもやってれば ここで引き返しも出来るんだろうけどねェ………」
  そう言いながら栞は門に手をかけ ゆっくりと開ける。
  「ギィィィ………」
  音がした。栞の耳にだけ。
  「ここが武道家の辛いところね…………」
  そう言いながら 栞は歩みを進めた。


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ザ・ドクター様の格闘小説28話
そしていよいよ蘭と栞の決勝戦?!
さああなたはもう目がはなせな〜い〜(催眠術か??)(笑)by あっきー

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