グラップラー蘭〜RAN THE GRAPPLER〜3
ザ・ドクター様


  抽選日の翌日。この話題はスポーツ新聞紙の一面になった。
 内容は以下の通りであった。

 「ルールはただ1つ!素手である事!!」
 「エクストリームスペシャル2000の組み合わせ決定!!」
 「毛利 蘭(空手)VS 北斗 晶(プロレス)」
 「佐伯 純(新相撲)VS 九篠 麗華(空手)」
 「紅 栞(柔術)VS 藤堂 茜(全日本柔道)」
 「松原 葵(総合格闘技)VS 来栖川 綾香(来栖川流拳法)」

 全日本女子プロレス道場。
 晶がリングに上っていた。

 「オラァァッ 来ォいィィィッ」
 「ズドォンッ」
 タックルされた晶。晶は動かなかった。そのまま相手の腰を掴み 持ち上げる。
 「もっと腰を入れてタックルしやがれェェッ」
 そう叫びながら。
 そして背中から叩きつける。
 「ドォォォンッ」
 リングが揺れ ロープが軋みの声をあげた。
 「わかってるの?しっかりやらないとリングの上で命を落とすこともあるのよ?」
 晶は そう言いながら投げ飛ばした相手の髪の毛を引っ張りながら立たせた。
 「これから気をつけなさいよォォッ」
 そう叫びながら晶はビンタを放った。
 「バシィィッ」
 叩かれた女子レスラーはそのまま吹っ飛んだ。
 そして晶がリングを降りようとした時 1人の女性が拍手した。
 「パチパチパチ………素晴らしい演説だな 晶」
 「あぁ……大野さん……来ていたの……?」
 ブル大野は全日本女子プロレス総統であり 北斗 晶に敗れ引退を決意した怪物(モンスター)。
 「他の者はどうだか知らないけど オマエが言うと妙に説得力があるな」
 「あぁ………アタシは首に『爆弾』抱えてるんだからな」
 晶はそう言うと自分の首をピシャピシャと叩いた。

 晶の『爆弾』。それは頚椎に折った損傷。
 新人時代に頭から落とすパワーボムで受け身を取り損ねたのだ。その後プロレスは二度と出来ないと思われた。
 しかし 彼女はそんな状況の中にあって這い上がってきた。不死鳥のように。
 そして 今 メーンエベンターを努めている。言うなれば大トリというところか。

 「………ところで大野さん 頼んだことはやってくれた?」
 「……えぇ 切符の手配でしょ?やっておいたわ」
 それを聞いた晶は ニコ〜〜 と晴れやかな笑みを浮かべて言った。
 「……今夜が楽しみね…………」

 その夜。
 コナン達は東京ドームで全日本女子プロレスを見物していた。
 「………いきなり こんなチケットが送られて来て……来てみたらリングサイド席……」
 「このチケットを送ってきた人は どういうつもりかしら………?」
 送られて来たチケットは3人分。
 本当ならば 小五郎 蘭 コナンが来るのが当たり前なのに小五郎の姿が無く 代わりに平次の姿があった。
 平次が小五郎を酔わせて行けなくした事は想像に難くないだろう。
 「いけェ――――ッ そこやァァッ」
 平次は平次でプロレスに夢中になっている。コナンは考え込んで居る。
 「……どうしたの?コナンくん?」
 蘭がコナンの顔を覗き込むように そう言った。
 「いや……ちょっとね………誰がこんな場所のチケットを送ってきたのかな〜……とね……」
 「それもそやなァ 今 オレも気づいたわ」
 プロレスに夢中になっていて判断能力が鈍くなっている平次であった。
 「ここはマニアの間じゃ 数十万は下らない値で取引されるんや………それがポンッ と毛利のオッサンところに来た……」
 「それだけでも疑わしい………おまけに ここのメインエベンターを考えると……………」

 「ワァァッ」
 その時 外国人レスラーが入って来た。歓声と共に。
 そのレスラーは リングに上がらずに鉄柵越しに蘭達の前に来た。そして鉄柵を飛び越え 椅子を蹴散らす。
 「ガシャ――――ンガシャ――――ン」
 それを見た蘭は慌ててコナンに叫んでいた。
 「コナンくん 逃げて!」
 それを聞いたコナンは観客達の中に逃げた。
 「………服部くんも!」
 そう言った蘭だったが 平次は既に逃げていた。逃げ足だけは早いようだ。

 その外人レスラーはモーガンと言った。
 「………レスラーとケンカしたいんだって?カラテガール」
 それを聞いた蘭は呟いた。
 「近づかないで……近づくとこっちも動くわよ……」
 モーガンは歩みを進めて呟いた。
 「どういう風に動くの? カラテガール」
 その瞬間だった。蘭が動いたのは。いきなりの左下段蹴り。
  それがモーガンの右スネを強烈に叩く。
 「ビシィッ」
 「オッオォォッ」
 モーガンはそう叫びつつも 蘭の肩を両手で掴んだ。しかし蘭はそれを腕で振り解き モーガンの足に下段蹴りの嵐。
 一発。二発。三発。四発。五発。
 次々とヒットする。そして モーガンがぐらついたその時 蘭は腹に左正拳突きを突き入れる。
 「ズドォッ」
 間を置かず 一発。二発。三発。四発。連続で突き入れる。そして モーガンが両ヒザをついた。
 それを見た蘭は本能的に左廻し蹴りをモーガンの顔に放つ。
 「ドカァッ」
 入った――――……。その一瞬 蘭の動きが止まる。モーガンはその一瞬を狙っていた。
 蘭の蹴り足を掴み――――そのまま 後ろに投げ落としに行く。
 「ゴォァッ」
 (しまったッッッ)
 蘭はそう思いながらも片手で地面を叩き そのまま背中から大地と激突する。
 「ズダァァン」
 威力を最小限に抑えた。

 観客達は叫んでいた。
 「すッげェェ〜〜〜ッ 真剣じゃん これッッ」

 そして 両者が向き合った。まだやる気だ。
 その時であった。
 「待てッッッ」
 その声が会場に響き渡り 彼女が現れたのは。彼女は「美獣」という刺繍を縫いつけたガウンを着ていた。
 その主を会場の人々は知っていた。知らない人は居ないという全日本女子プロレスのエース。
 「北斗 晶ッッ」
 モーガンは 思わず呟いていた。
 「北斗さん」

 晶の出現で観客達は一斉に大人しくなった。
 『華』。そう言う言い方がある。
 歌舞伎の役者や俳優等が持つ 言葉では表せないような魅力。
 人を引きつける磁石のような物。エネルギー―――。それを『華』と呼ぶ。
 晶は その『華』を有していた。

 晶はモーガンに去るよう 目で命令して居なくなったのを確認してから口を開いた。
 「強いわねェ 貴女……またやりたくなったらいつでも言ってきて良いわよ……リングはこっちで用意するから……」
 「いいの?私 台本通りには出来ないわよ?」
 蘭は 晶の目を見つめながら そう言った。
 「どういう意味なのかな………?台本てのは………?」
 「八百長といえば分かる?」
 蘭は笑みを浮かべながらそう言った。そして 言葉を続ける。
 「ねェ 晶さん 貴女と真剣でやりたいわね」
 その時であった。晶の目が睨め付けるように光ったのは。
 蘭の『真剣』と言う挑発で冷静だった晶の目に殺気が籠もり その鋭い視線は刃となって蘭の身体を貫いた。

 晶が蘭の肩に手を乗せた瞬間に蘭は気がついた。晶は短く呟いた。
 「面白い女だわね……毛利 蘭……」
 そして 晶は蘭に背を向け そのままダッシュしてリングに登り 勢いよく 右手を突き上げた。
 それと同時に会場中から歓声が沸き起こった。
 「ワァァッ」
 平次も そう叫んでいた。
 それを見た蘭は呟いた。
 「か…………片手一本で会場を1つにまとめた………ア……アタシは………アタシは勝てるの!!?この女に!!?」

 晶は 思っていた。
 (今大会の出場選手に あの京極が一枚噛んでいるという噂があるが……果たして それが誰か――――……)



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ザ・ドクター様の格闘小説3話
うわー・・・・闘い直前のピリピリとした空気がぁぁぁぁ(;^_^A
そして顔を揃え始めた選手・・・・ん?京極さん?・・・・・まさかっっbyあっきー

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