グラップラー蘭〜RAN THE GRAPPLER〜5
ザ・ドクター様


 
 
 東京・五獄ヶ山部屋。
 「ウッシャァァァッ」
 その叫び声と同時に柱が揺れる。
 「ズドォッ」
 体当たり………。エクストリーム選手の中でこれほどの体当たりの出来る者はただ1人………。

 新相撲・佐伯 純。

 「ッシャァァァッ」
 そう叫びながら 純は柱に連続で体当たりを繰り返す。正確にはブチかましだが。
 立ち会いからの――――……ブチかまし…………!!
 それを見た同じ相撲部屋の仲間達は呟いた。
 「………すっげェ〜〜〜………純さん 気合いが入っているわ………」
 「やっぱりエクストリーム出場が原因だわね………」
 「………それもあると思うけど……一番の原因はこれじゃない?」
 「………ああ…………それね………」
 仲間達は原因となったと思われる新聞を見た。そこには こう書かれていた。

 「麗華 新相撲をザコ扱い!!」
 「『99% 勝てる』と 言い切る!!」

 「………確かになァ………新相撲が設立されてから2年………歴史はまだ浅い………」
 「しかし その新相撲に命を懸けて来た人なんだよ……あの人は……」
 「新相撲への侮辱はあの人を侮辱するより はるかに重い………」
 「………殺されるぜ………この九篠 麗華という女………」
 そう言いながら彼女達は新聞に映っている麗華の顔を見た……。

 純は思っていた。
 (新相撲をバカにするとは許さん………許さんぞ 麗華!!)
 (新相撲のプライドに賭け………新相撲最強の名に賭け……絶対に勝つっっ!!!)
 (………覚悟しろ………九篠 麗華!!)
 「ズド―――――――――ン」
 柱に思いっきりブチかましを浴びせた。
 「グラ………グラ………グラ………」
 それまでとは比にならない程に 柱が揺れ……!いや。そこまでではなかった。建物自体も揺れていた。

 東京。藤原流柔術道場。

 2人の人物が座っていた。
 「今……何と言ったのですか………?」
 藤原流の師範代である藤原 明恵は呟いた。
 「………柔術を教えて欲しい……」
 明恵はその眼をその言葉の主から逸らさないで見つめている。
 「………名前は?」
 「九篠 麗華」
 明恵のその問いに言葉の主はそう答えた。
 「…………いいでしょう………柔術の強さを見せて差し上げましょう………」
 明恵は そう良いながらゆっくりと立ち上がった。それを見た麗華もゆっくりと立ち上がる。
 そして 構えた。両者とも。
 麗華はいつでも攻撃に行ける構え。明恵は受けの構え。
 柔術は常に守主攻従の体勢を取る。何か特別なことがない限りは。

 守主攻従……守りを中心とし こっちからはあまり攻撃に行かない事。

 数分 見合う2人。何も動かさずただ ただ 見合っていた。
 その膠着状態を先に破ったのは麗華だった。
 いきなりの右上段正拳突き―――――……。寸分違わず明恵の鼻を捕らえた。
 …………と思った。しかし わずかにかわされた。
 麗華の右ミドルキック………。
 「ザウゥッ」
 しかし 明恵はかわす。またもや紙一重で。
 れおぁはローキックを放ち そこから右中段正拳突きにつなげる。
 ………これも紙一重でかわされた。
 (な………な………なによォォッ 全てが紙一重でかわされる……ッッ!!)
 その時 1人の少女が道場にやって来た。その少女は表情を変えずに呟いた。
 「私闘は禁じてあったハズ……これは どういうことですか?」
 少女は低い声で呟いた。それを聞いた明恵がビクッと身体を震わせ硬直した。
 「………………説明なさい」
 低い声が響いた。
 「え……あ……あの………」
 明恵は動揺を隠せない。また 麗華も。
 「………貴方は……麗華さんですか……トーナメントの………」
 その少女はトーナメントに参加している1人の少女のだった。

 そう。紅 栞であった。

 「………この状態から見ると……麗華……貴方の方から きっかけを作ったみたいですね………」
 「いいでしょう」
 そう短く言った栞は構えた。先程 明恵がした構えと同じ構え。
 しかし 雰囲気が違う。明恵がした構えは柔術家らしい構えだったが栞のそれは違う。
 達人らしい構え。神々しさがその構えから滲み出ていた。
 麗華は その神々しさに押されていた。
 「いつ やりますか?」
 麗華のその問いに栞は呟くように答えた。
 「……もう始まっている」
 その声と同時だった。栞の神々しさがはじけたのは。弾けるように一気に放出された。
 (………ッッ………ふ……踏み出せ無い………ッッ!!)
 麗華は放出された瞬間に構えた。
 そして 攻撃しようとしたが見えない何かに押されているかのように足を踏み出せない。
 それ…………。それこそが栞の『強さ』。威圧感と言い換えても良いだろう。
 「………どうしました………?来ないのですか………?」
 その言葉と同時に栞がジリッと麗華に少し歩み寄った。
 「ウォォッッ」
 そう叫びながら麗華は後ずさる。
 ―――――………恐怖。今 麗華は栞に恐怖を感じている。
 (な………なんだ………コイツ……ッッ!!とてつもなく強い………ッッ!!)
 (………早く………早く逃げ出したい………!!こんなところから――――――――――ッッ)
 その時 栞が動いた。それを見た麗華は後ずさった。しかし 栞は止まる様子もなく追いかける。
 後退するスピードより前進するスピードの方が速い―――――…………!!
 「お………追いつかれ……ッッ!!クゥゥゥッ!!」
 そう叫びながら麗華は左中段正拳突きを放った。
 「ボリュッ」
 が 栞はそれをかわし 瞬時に麗華の鼻をつまんだ。麗華は動けなかった。
 (な………ッッ!!)
 「初めての敗北……イヤ………2度目か」
 栞は そう呟いた。

 鼻をつままれただけで何故 敗北となるのか。
 それは 鼻をつままれたと言うことは眼を潰したのと同意であるからだ。
 鼻をつまむことが出来るならば眼をも潰せる。自分で試してみたらわかりやすいだろう。

 この日を境に 麗華はトーナメントの日まで姿を消すことになる―――――………。

 


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ザ・ドクター様の格闘小説5話
なんと・・・あの麗華が・・・・・・・・この栞(しおり)さん何者???
今回の勝負は前回のとはレベルが違う!!蘭ちゃんの実力はいったいどこまで通用するのか??
本格的になってきましたっ待て次号!!(笑)がんばれドクター(私は鬼か)(笑)byあっきー

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