2人のプレイボール(15)
修羅聖斗(ザ・ドクター)


 


 イチローにヒットを許してしまった平次だが 1番を三振にとってワンナウト。
 ここで あの男が動き始めた。
 「オイ 氷室……代打だ オレが出る………」
 そう言いながら 1人の男がバットを持って出てきた。
 その男を見た平次は思わず呟いていた。
 「あ……あれは…………まさか………?」

 「代打………落合!!」
 真壁の口からそうコールされた。

 「落合やと!!?」
 平次が そう叫んだ。ムリもない。落合といえば『平成の打撃の神様』。
 イチローと並ぶ打撃の天才。イチローを柔とするならば この男は剛。
 その肉体。引退してからも鍛え抜いていた。その力は現役の頃と比べても遜色無い。
 落合が。右打席に立った。そしてバットを横に水平に構える。神主のような構えだ。
 そう。これこそ神主打法。

 「ズズズズズズズズズズ…………」

 落合の発する異様な雰囲気が平次を包み込んでいた。
 (バ……バカな………お……落合が…………巨大(おおき)く 見える…………!!)

 平次の感覚。平次の感覚では落合が己を見下ろしていた。
 平次はロージンバッグをパタパタとやりながら頭の中で考えていた。落合をどう調理するかを。
 (内角高め…………ダメ………やな……ならば 外角低め…………ムリや………)
 (内角低め………外角高め…………ド真ん中…………ダメだ………ことごとく打たれる………)
 (………ここは……落合の……現役時代の 弱点にかけるしかない……あの弱点が今も克服されていなければ………)
 (討ち取れる!!!!)
 そう思ったと同時に平次はロージンバッグをマウンドに叩きつけた。
 「バサッ」

 落合の弱点……それは………腹………!!突き出た腹が邪魔で打てないコース……ズバリ 内角の真ん中…………。
 腹が邪魔で打てない。打てたとしても凡ゴロ、凡フライに終わる。確実に。

 そして 平次の第1球。またもやザトペック投法からのストレート。剛速球。
 それを見た落合は冷静に思っていた。
 (152……いや……154、5くらいか……………)
 「ズド―――――ン」
 勢いよくミットに収まった。ミットから煙がもうもうと出て来た。
 「ィよしッ ノッて来たでェ〜〜〜〜ッッ!!」
 (フフ………元気が いいな………)
 落合は そう思いながら笑っていた。

 第2球。先程と同じ場所に勢いよく投げ込む。
 (これを打ってみィやァァァ!落合ィィィ!)
 (また………同じコースか……ン?スピードが上がっている……?156km………!!?)
 (しかし………オレの弱点がいつまでもあると思うな)
 そう思うと同時に落合はスィングを開始した。寸分違わずバットの芯でボールを捕らえる。
 「カキ―――――ン」
 落合の打球はそのまま青い空に吸い込まれ 消えた。
 「スゥ………」
 「ホ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ムラ〜〜〜〜〜〜ン!!!」
 主審がそう叫んだ。その叫び声を聞いた平次がガクッとヒザを突き うなだれていた。
 そんな平次を見ながら落合は言った。
 「平次とか言ったな………現役時代 オレの弱点といわれた腹の近くを攻めてきたのは見事だよ……見事……
  …………しかし その弱点をそのままにして置くヤツのコトを天才とは言わない………
  その弱点を無くしたヤツのコトを………弱点をそのままにしておかないヤツのことを天才と言うんだよ」
 落合のツーランで2点入った。5−4。平次達に後1点と迫った。
 
 そして 3番・氷室を迎えた。
 「フン……服部……最後の対決だな…………」
 「………そやな………」
 平次はそう言った。
 平次が投げた。内角をえぐる剛速球。ストレートだ。
 それを見た氷室は瞬時に判断して振りに行く………!!
 「ギャオオオオオ………」
 「ギィン」
 ボールがバットの上に当たった。
 「ファウルファウル!!」
 「フ…………当てるとはな…………目がついていっていると言うワケやな………」
 「その通りだ」
 そう言いながら 氷室はバットを短く持った。それを見た平次は言った。
 「ほぅ………なんや 自分?謙虚やなぁ………?」
 (しかし その謙虚は裏目に出ることになるで!)
 そう思いながら 平次は氷室に対して第2球を投じた。
 「ビッシュゥッ」
 「ガギン」
 氷室は打った。打ちはしたがキャッチャーフライに終わった。
 「フン……良い考えだったがバットを短く持てば打ち返しにくくなるんやで………力ではな!」
 キャッチャーが捕ったと同時にアウトの宣告がなされた。
 「アウト アウトォォォ」

 そして 次打者 真壁の打席を迎えが 平次は感じていた。
 恐怖を…………………!!
 真壁からではない。敵ベンチの中から感じる。まさか あの中にまだ誰かがいると言うのか。
 賢明な読者諸君には その正体が誰かすぐに分かるだろう。

 「ズゴゴゴゴゴゴゴ……………」

 ベンチから異様な空気が流れ出し 一瞬だが空間がグニャリと曲がった。
 その異様な空気を察している者は2人だけだった。
 快斗と平次。この2人。
 当然 その異様な雰囲気の前に平次は耐えられるはずもなく……………!!
 「ボール」
 「ボール」
 「ボール」
 「フォアボール!!」
 ………………歩かせてしまった………。
 そして出してしまった。同点のランナーを……………!!
 この時 落合が動いた。
 「代打………清原!!」
 落合がそう叫んだと 同時に平次達は驚いた。
 「な………なんやてぇぇぇっ!!!?」
 「き………清原………?ま………まさか………あの………?」
 そして 清原がベンチから出て来た。異様な効果音と共に……………。

 「ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………」

 清原は黒色のバットを握っていた。
 今 ここに平次達の試合はクライマックスを迎えた―――……。

最終章へ


ザ・ドクター様の小説第15弾!!
焦る平次・・・・ランナーを出してしまった・・・・でも平次の投げる球ってすでにプロ並・・・
いよいよクライマックスの戦いがここに!!!あの清原がついに出てきた・・・・・
へいじぃぃっ><;←平次FAN(爆) by あっきー

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