2人のプレイボール(6)
修羅聖斗(ザ・ドクター)




 平次達が同点に追いつき 迎えた4回裏。

 再び 氷室の打席を迎えた。
 前打席でホームランを打っている氷室の打席を。

 「源さん 交代や……快斗!!」
 平次はそう叫んだ。
 勝つためにはこれ以上の追加点を許すワケにはいかないから…………!!
 「なんだよ 平次……」
 快斗が軽く駆け足をしながらマウンドまで来た。

 「自分がピッチャーや………頑張って抑えたりぃな」
 そう言いながらサードに戻っていく平次。そして源はセンターに向かった。

 (ち……ちょっと 待てよぉ! ピッチャーやったこと無いんだぞ?オレ!!?本当にいいのか?)
 快斗のその思いを悟ったかのように平次が振り返って笑みを浴びせた。OKらしい。
 (そんな無責任な〜〜〜………)
 そう思いながら快斗はうなだれていた。しかし 次の瞬間 考えを改めた。
 「ィよしッ いっちょ やるかァ」

 快斗の投球練習。
 右のアンダースロー。下手投げだ。
 「ビシュッ」
 130km前半。次々とストライクゾーンに決まる。
 「ズバァン……ズバァン………ズバァン………」

 真壁が氷室に語りかけていた。
 「あの球………どう見る?氷室?」
 「あぁ……打ち頃の球だ……あれならばいつでも打てる………!!」
 そう言いながら氷室はニヤリと笑った。
 そして 氷室が打席に立った。
 「さぁ 覚悟しろよ?」
 そして 快斗が振りかぶり 左足を上げ 大きく踏み込んだ。
 と 同時に 球が放たれた。外角低めのストレートだ。

 「ボゥオッ」
 「ズバンッ」
 「ストライーク!!」
 ボールがミットに入ったのを見て氷室は思った。

 (今……アイツ……球を投げたか!!!?)
 (明らかに投球動作中だったのに アイツは投げてきた………)
 (開き気味に立ってアイツの球を見極める………)
 そして 快斗がまたもや投球動作に入った。
 (投球動作に入った………ここで足を踏み込み!!!)

 「ボッ」
 またもや投球動作中にボールが放たれた。
 (!!?)
 「バシィッ」
 (投げてない!! 投げてないのに投げられた!!足の踏み込みと同時ぐらいに球が飛んできた)
 (腕を振ってたか!!?いつ投げたんだ??分からない………)
 (もう投球動作に入ったらバット振らなくちゃ間に合わない!!)
 快斗が投球動作に入った。
 思いっきり右腕を引き その反動で投げる。

 (スィングだ!!)
 しかし ボールは一向に飛んでくる気配を見せなかった。
 (なんで!!?なんで まだ球が来ないんだよ!!普通なら ここで 球が離れるはずだ!!)
 (え???まだ持ってる!!!!)
 あまりの球離れの遅さに 氷室はバランスを崩して背中から落ちた。不格好なスィングのためだ。

 「ドォォッ」
 「ズバン」
 「ストライーク!バッターアウト!!!」
 (た……球が……投げているハズなのに投げてない………!)

 氷室は立ち上がってベンチに戻った。彼に真壁が語りかけた。
 「なにやってんだよ 氷室ぉ?あんなのが打てないなんてなァ?」
 「なんか変なんだよ……投げてないのに投げてるし……投げてるハズのに投げてないんだ………」
 「オマエの言い訳は分かった」
 (い………言い訳……)
 そして 真壁が打席に立った。この男も前打席でホームランを打っている。
 「さぁ来い 小僧………」
 「ストライークッッ!!」
 (いつ投げたんだ!!?)

 その時 氷室が呟いた。
 「わ………分かった………リリースポイント(球を離す場所)が極端に違うんだ………」
 「普通ピッチャーは一番速く投げられ一番コントロールのつく場所でボールをリリースするけど………」
 「あのピッチャーは極端に速くリリースしたり………極端に遅くリリースすることが出来るんだ………」
 「普通と違うリリースポイントで投げられるから………」
 「リリースポイントを速くした時は……投げているのに投げていないように見え………」
 「リリースポイントを遅くした時は……投げていないのに投げているように見える……」

 「ズバン」
 「ストライクバッターアウトッッッ!!」
 快斗は笑みを浮かべながら言った
 「チェンジアップじゃないよ…………」
 「変化球でもない………」
 「同じスピードの球を違うタイミングで投げる…………」
 「時間差だ」
 そのピッチングはまさにマジシャン(奇術師)。怪盗キッドの本領発揮である。

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ザ・ドクター様の小説第6弾!!
うわっすごいテンポいい!!!快斗がかっこいいやんかぁっ(もはや人間業ではないっ)(爆)
怪盗キッドの本領発揮・・・(笑)あれ?平次は・・・?(汗) by あっきー

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