2人のプレイボール(9)
修羅聖斗(ザ・ドクター)




 「ザッ……ザッ……ザッ……ザッ…………」

 向こうから歩いてくる2人組が居た。その2人は野球をやる者なら誰でも知っていた。


 「あ……あれは……元巨人軍……落合 博満(おちあい・ひろみつ)………」
 「またの名を“平成の打撃の神様”!!」

 「久しぶりだなァ 真壁 氷室……元気そうじゃねェか………?」
 落合が2人にそう話しかけて来た。

 「ンで?」
 「………は?」
 「ンで なんでだよ?こんな苦戦の原因は?」
 「オマエ等は仮にも元プロだろ?なんでこんな苦戦してンだよ?アァ?」

 「相手が強かったとか……調子が悪かったとか……………そう言うことはどうでもいいことだ……」
 「分かっていることは ただ1つ………」
 「素人にプロ野球が舐められているという事実だけだ……」
 「なぁ そう思うだろ?キヨ………」
 その言葉を聞いた氷室は思った。

 (キヨ………?オレの知る限り今のプロ野球界で“キヨ”と呼ばれる男はただ1人………まさか―――ッッ)

 「久しぶりやな 氷室……真壁……」
 「や……やっぱり………アンタは……ッッ!!」
 「現巨人軍!!“プロ野球界の番長”清原 和博(きよはら・かずひろ)………!!」
 落合が言葉を続ける。

 「氷室……オマエは思い違いをしている………バッターは3回に1回 打ってこそ一流だが……」
 「ピッチャーは0点に抑えてこそ一流なんだよ」
 落合がそう言い放った。

 「………しかし…………オマエ等が苦戦している相手……オレ達も闘いたくなったのは事実だ……」
 そう言う落合の顔は喜びに打ち震えていた。


 7回表。

 氷室と平次の3度目の対決の時が来た。
 「来たか 関西人………」

 「それを言うならこっちのチーム 快斗以外は関西人やで?誰に言ぅとるんや?」
 「……これは失礼した……褐色の関西人……」
 「名前で言えや…名前で!」
 「小僧……オマエの名前は?」
 「服部……平次や」
 平次はそう言いながらグリップを握る手に力を入れ 構えた。

 「いくぞ 平次!!」
 そう言いながら足を上げた氷室。大きく足を踏み出し 勢いよく球が投げ出された。

 「ビシュッ」

 (この時点では分からへん………)
 次の瞬間 平次の頭にボールが飛んできた。

 (頭!!?)

 平次が避ける準備をした。が その想像を裏切り ボールは急激に曲がりミットに収まった。

 「ズバァァァン」
 「ストライ――――――ク!!!」
 「フッ……」
 そう笑みを浮かべながら 氷室は真壁からの返球を受け取った。

 「パシィッ」
 (フン……平次……よ……オマエにオレの球は打てん………)


 2球目。

 外角低めのストレート。しかし それに平次はヤマを張っていた。
 (ドンピシャやぁぁ!)
 しかし ボールが落ちた。フォークだ。

 「な…………!!?」
 平次はそのまま空振りする。

 「ブンッ」
 追い込まれた。平次が追い込まれた。


 「ニ……」
 氷室は笑っていた。

 平次を簡単に追い込むことが出来た。そのためだ。
 「フ…………最後だ 平次!!」
 氷室はそう叫び 投球を開始した。その左腕から剛球が繰り出される…………!!

 「ビシュゥゥゥゥッ」
 これも平次の頭めがけて飛んできた。しかし 平次には確信があった。この球を打てるという確信が。

 (最後……アイツは 確かにそう言いはった………なら この球でキメに来る!!そして その球種は紛れもなく……!!)
 (ブラッシング・カーブ!!!)

 平次の洞察力が爆発した。平次はストライクゾーンしか目に入っていなかった。

 氷室の投げたボールは平次の頭の直前で曲がり 斜めに落ちて来た。
 それは勢いよく 平次の見ているところに。ストライクゾーンに飛び込む――――――!!!
 (来たぁ!ブラッシング・カーブ!!)

 「ヒュ」
 平次のバットが最短距離で振られた。そしてバットとボールが衝突し 高い金属音が響く。
 「キィ――――――――――――ン」


 平次のチームメイト達は叫んだ。
 「いったぁ」
 「ホームランだァ」
 「1点追加だァ」

 「バシィッ」
 氷室がジャンプ一番 そのボールを取った。

 「アウト アウトォォォ」
 主審のその叫び声がこだまする。

 「な…………!!」
 平次は驚きながらそう呟いていた。

 平次は思っていた。
 (確実に捕らえた)と。また こうも思っていた。
 (確実に入る……ホームランだ…)とも。
 しかし その打球が氷室にもぎ取られた。

 追加点が難しくなった。氷室がブラッシングカーブを出し その力を全開にしてきた。
 快斗と平次でも点を取ることが。いや。打つことすら出来ない………!!

 主砲の三振。それは少なからずとも チームに大きな影響を及ぼす。
 後続を断たれ チェンジ。

 平次は守備に就こうとしている快斗に語りかけた。
 「気づいてるか……快斗……?あのチームのベンチの後ろ……?」

 「あぁ……気づいてるよ……とんでも無い大物が後に控えている……」
 「せやな……そろそろ あちらさんもオマエの球に慣れてくる頃やろからなァ」
 「………ここはオレに任せてくれへんか?」
 「………いいぜ」

 快斗は そう言いながらニッコリと笑ってセンターに向かった。


 7回裏……………!!

 ピッチャー黒羽 快斗に代わり 服部 平次……………!!!

 遂に平次がマウンドに立った。果たして平次はどんな球を投げるのか?



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ザ・ドクター様の小説第9弾!!
プロがいっぱい・・・・・・・平次と快斗はひょっとして・・・・プロからお誘いがくるんじゃ・・・
7回裏。平次のピッチングはいかにっっっ by あっきー

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