ラン〜RAN〜

ザ・ドクター様

第11話 聖と悪

 夜の公園。1人の少女が走っていた。
 「タッタッタッ………」
 トレーニングの一端のランニングのようだ。この少女の名を 松原 葵(まつばら・あおい)と言った。
 「ふぅ……ずいぶんと今日は一段と気配が濃いわ……こういう日は何か出そうね……」
 「何かが…………」
 そう言いながら葵は一息ついていた。
 「よしッ!綾香さんを倒すために頑張らなくちゃッ!」
 その時であった。葵が人の影に包まれたのは。
 「エ?」
 その影から拳が繰り出される―――――……。
 その拳を葵はバック転してかわした。
 「なかなか やるわね」
 その人の顔を見た葵は言った。
 「た……確か………聖・ピーターソン………!」
 「覚えてもらって光栄だわ」
 そして 葵が構えた。それを見たピーターソンは構えを見せなかった。
 葵とピーターソン。今 ここに激突す!!

 構えて にらみ合う両者。その下では葵がジリジリと間合いを詰めている。
 そして 先手を取ったのは葵。ダッシュからピーターソンの懐に飛び込み 左正拳突きを放つ。
 「シャァッ」
 ピーターソンはそれをかわし 葵の腹にボディ―――――……拳を放つ。
 「ガキッ」
 葵は それをブロックしたが ピーターソンの拳の威力で宙に浮き上がった。
 「…………!」
 そこに来た。ピーターソンの上から叩き下ろすような拳が………!
 「ドカァッ」
 葵の顔に強烈にヒットした。と 同時に葵の衣服をつかんで さらに追い打ちをかけるピーターソン。
 その時だった。葵がピーターソンの腕を掴んだのは。
 「グィッ」
 (関節技!!?)
 “虎王”。それがその関節技の名前であった。両脚で相手の首を挟み そのまま大地に叩きつける。
 通常の技は それだ。しかし 闘技場ならいざ知らず ここは公園。
 凶器は腐る程ある………!
 (バカなッッ)
 「グワシャ」
 葵が叩きつけた。遊歩道と芝生の境目の石に………!!
 ピーターソンが呻く。
 「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッ」

 アメリカ・スラム。
 スラムの人達にピーターソンの事を聞いてみた。
 返って来た答えは以下の通りだった。
 「……は……?ピーターソン?アイツ また何かやったのか?」
 「アイツは……普段 自分を大人しくさせる事で平静を保っているんだよ」
 「無論 あの警察の騒ぎだって……アイツのおふざけに過ぎない」
 「ピーターソンを怒らせるな」
 「アイツはな 二重人格なんだよ」
 「表は普通の性格だ……それが聖・ピーターソンの名前に由来してるんだよ」
 「アイツは優しいんだ……一部に対して……正義をくじいて悪を助ける……て感じかな?」
 「そのおかげでオレ達はアイツにあだ名を付けていた」
 「聖(せい)・ピーターソンではなく……聖(セント)・ピーターソンと…………」
 ………セント……。それは「神聖な〜」を意味する………。
 神聖なるピーターソン………。
 「しかし アイツに強烈な打撃を加えちゃいけねェ」
 「人格が180度変わっちまう」
 「それまでの“聖”がウソだったかのように……な………」
 「おふざけのファイトが 100%何でもアリのファイトになっちまうんだ………」
 「そう………“聖”から“悪”に変わってしまうんだよ……性格が……」
 「そんなピーターソンに関わっちゃいけねェよ……殺されちまう」
 ピーターソン………。聖と悪が同居する女………!

 東京都内の公園。
 ピーターソンがユラリと起き上がって来た。手には石を持っている。
 そして 次の瞬間 ピーターソンは それを葵めがけて投げつけた。
 「ブンッ」
 それを屈んでかわす葵。そこにピーターソンのヒザが来た。
 「ガコォッ」
 葵の頭が打ち上げられる。
 「ぐ……あ……あぁ………」
 葵の鼻から血が流れている。鼻は確実に折れているだろう。
 「まだ終わっちゃいないよ………」
 そう言いながらピーターソンは葵を引き起こす。
 そしてボディに拳を入れた。
 「ドブォッ」
 「ゲフッッ」
 葵が呻いた。
 (バカな………!さっきとは拳の重さが違う………?なんで……ッッ!)
 「気づいたようね 拳の中に石を仕込む……そうすれば 拳に石の重さが加わり破壊力が増す……」
 「単純な理屈よ……分かってしまえばこれほど単純なモノは無いけど……」
 「これ程 簡単にダメージを増加させる方法もない………」
 「ひ………卑怯(ひきょう)よ………それは………」
 「卑怯……?何を言ってるの……?これはガキのママゴトじゃない………殺し合いなんだよ」
 殺し合い。その言葉で葵はこの闘いが今までと違う事を直感した。
 「今までのスポーツ的な闘いじゃない………と言うワケ………ね……」
 「……ならば遠慮なく使える」
 そう言いながら 葵はピーターソンの胸元に自分の拳を当てた。
 「トン………」

 次の瞬間………。
 「ドグァッ」
 相手に触れた状態での直突き………………。
 古代中国が生んだ超ベリーショートパンチ………。
 ワン・インチ・パンチだ。
 そして ピーターソンは吹っ飛ばされた。
 (追い打ちをかけたいところだが……いかんせんダメージが深すぎる………ここは逃げよう)
 ピーターソンが立ち上がった時 そこに 葵の姿はなかった。
 「ハハ………なんと面白い………」
 ピーターソンはそう呟いた。

 ◆さすが天才格闘少女!ピーターソンを煙に巻くとは!!

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ザ・ドクター様の格闘小説11話
葵ちゃんなかなかやるやんかー!!!ピーターソンを驚かせている・・・・
日本サイドの実力は世界に通じるのか???もう個人レベル越えてるってやつなんやね。(笑) by あっきー

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