ラン〜RAN〜

ザ・ドクター様

第22話 死闘V

 シルヴィアの両手から光るモノが流れるように出て来た。細長い鋼線……みたいなモノだろうか。
 それが キッドの右ヒジの辺りに巻き付いた。その感触をキッドは感じなかった。

 そして次の瞬間 キッドの右ヒジから下がキッドに別れを告げた………!
 それは重力に逆らえず 落下する………!!血を振りまきながら………!
 「ボタッ」
 それを見た園子は叫んだ。
 「イヤァァァァァァァァァッ」

 そして 次の瞬間 鋼線がシルヴィアによって回収された。
 「…………鋼線を使わせてもらったわ……先程と同じように……」
 「有史以来人類はより以上の存在を求め 創造し 結果として生み出し…………今日まで歩んで来た……」
 「より強く より速く より重く より軽く より大きく より小さく より遠く………」
 「そして 私がこの鋼線に求めたモノ……より細きにして見えにくく より頑丈に切れにくく………」
 「少年(キッド)の右ヒジにかかった鋼線は恐らくクモの糸程の感触も与えていなかったハズだわ」

 キッドは演説を聞きながら右脇の下を左手で押さえていた。その結果 右ヒジからの血が止まった。
 「見事だわね……上腕内側を走る動脈を圧迫し見事に止血が完成している………」
 「まだ続ける?少年………?」
 「あぁ……続けるさ……ガッカリさせないでくれよ………」
 そう言いながら キッドがダッシュ。左正拳突きに行く。キッドのスピードは速い………!
 (ふむ…………)
 そう思いながらシルヴィアが動いた。
 キッドを迎撃に行く腹………!
 「ブァッ」
 キッドの肩を掴み そのまま跳んで背後に回ったシルヴィア。そのためにキッドは急停止し 左拳での裏拳に行く。
 「ゴァッ」
 それを屈んでかわしたシルヴィアはキッドの足を払いに行くが見越したキッドは前転し左手のみでの逆立ちを敢行。
 そこから蹴りを放つ。
 「ボッ」
 キッドの蹴りがシルヴィアの身体にまともに入った。しかし シルヴィアは微動だにしなかった。
 「………ただの怪盗風情がここまでやるとはね………」
 「ただの……じゃ無いさ……表も裏も知り尽くしているンだよ……このオレは……」
 「……そして オレの名前は怪盗キッド…………!またの名を魔術師………!」
 その瞬間 キッドは目にも止まらぬスピードで走った。瞬時にシルヴィアの懐に飛び込む。
 「ドガァッ」
 左拳がまともに入った。と 同時に右ヒザがシルヴィアのミゾオチに入る。
 「ドボッ」
 次の瞬間 シルヴィアの眼にあるモノが入った。それは右拳………。
 切断したハズの………右拳―――――………。
 (な……なに……これ………?何で……ここにあるの……?)
 それは寸分違わずシルヴィアの顔を捉えた―――――………。
 「ガコォッ」
 「ズダァンッ」
 シルヴィアは吹っ飛び レッドサイクロンの鉄柱に強烈に激突した。
 「な……?何……?何で………?」
 「魔術(マジック)……」
 キッドはそう呟いた。
 「オマエが切断したのはロウで出来た腕だった……」
 「じ……じゃぁ……あの血は……?まさか………!」
 「そう……人間(ヒト)の血に最も近いと言われる鶏の生き血……まんまと騙されたワケです」
 「……なるほど……そう言うトリックか………!」
 そう言いながら立ち上がったシルヴィア。シルヴィアを見ながらキッドは笑みを浮かべつつ言った。
 「………よく覚えておけ……オレは魔術師(マジシャン)なんだよ」


 東京都内・公園。
 竜一の右足に穴が空いていた。何かで穿(うが)たれた穴が。
 「く………そ………そうか………それがオマエの得意技か………!ナルホド 名前と同じような闘い方をしやがる」
 「お褒めに与り光栄です」
 その声と同時にスコルピオンの拳が竜一を襲った。
 「しかし ここが便所だと言うことを忘れてもらっては困る」
 竜一の右手が洗面所の手洗い場の貯水槽に浸されている。そして勢いよく右手を振り上げる竜一………!
 「ビシャァッ」
 (水ッッ!!?)
 水がスコルピオンの顔にかかり一瞬だが視界が塞がれる。
 「残念だったな スコルピオン……ここを戦場に選んだのがオマエの敗因だよ……」
 「ドスッ」
 細長いモノが竜一のノドを貫いた。じわ、じわと何かが流れ出す。鮮血………。
 しかし竜一の頭の中では感覚が違う。鮮血という何かでは無い。
 (熱い………熱い何かが…………じわじわと熱さがノドから広がっていく………)
 (熱い……とても熱い……オレは………死ぬのか………?)
 (こ………この……この目の前の敵を倒さずして…………!)
 竜一の意識が朦朧(もうろう)となり 目の前が霞(かす)み始める。
 (あ……あぁ………オレは………オレは まだ負けるワケには………死ぬワケには………)
 「バシャァ」
 竜一が紅い水たまりの上に前のめりに倒れた…………。


 東京・新宿。ガーレンの腕に何かが巻き付いていた。それは蛇。1匹や2匹ではない。
 十数匹を超える蛇であった。
 「なるほど……これが猛毒の正体か………」
 「そう……と言っても それが全てではないけどね………」
 「しかし……オレには通用しない……大人しくオレに倒されろ」
 「そう?簡単に倒されるワケにはいかないけどね………」
 「ギャキッ」
 ガーレンが蛇を振り払い シェラザードに組み付いた。
 「な……………!!?」
 「ブンッ」
 勢いよく後方に投げる。地面と平行にシェラザードが飛んでいく。
 「ドガァァァンッ」
 そのまま シェラザードはビルに叩きつけられた。
 「よし 今だ 逮捕しろォォォッ!」
 剣持がそう叫んだ。
 「逮捕じゃ無い……捕縛ですよ」
 そう言いながら明智が銃を構えた。普通の銃よりはるかに大型。俗に言う捕縛銃だ。
 筒から捕獲網が発射され 敵を捉える。この場合の敵はシェラザードだが。
 「シュバッ」
 (ぐ………!!?捕獲網!!?まさかッ 日本の警察がこんな装備を備えているとは―――――ッッ)
 「捕獲網で動きが鈍くなった所に攻撃―――――……」
 そう言いながら明智が手を挙げた。と 同時に明智の後から銃を構える男達が出現した。
 全ての銃口はシェラザードを向いている。
 「ち……ちょっと………やめ………」
 シェラザードがそう懇願する。しかし 明智はそれを冷徹に見ている。そして 手が振り下ろされた。
 全ての銃口が火を噴く。シェラザード目掛けて。
 「ドンッドンッッドンッドドンッ」
 銃弾を連続で喰らったシェラザードは前のめりに倒れた。
 「………麻酔弾……やはり 効果がありますね」
 明智がそう言った。それを見た瑠璃は呟いた。
 「素晴らしい……やはり日本の警察は優秀だ……凶悪犯に対する対処の仕方を心得ている……」
 「……また逢おう……そこの死体な……路上にあったモノを利用させてもらった……決して私が殺したワケでは無い」
 そう言いながら瑠璃は跳んだ。高い跳躍で警察官の大群を越え 着地。そのまま走り去った。
 その後ろ姿を見ながら明智は言った。
 「逃げられましたか……」


 長島スーパーランド。

 いきなりピーターソンとシルヴィアの持っている携帯が鳴り出した。
 「ビ―――――ッビ―――――ッビ―――――ッ」
 「な………何……?」
 蘭がそう言った。
 それを無視してピーターソンが呟いた。
 「誰かが敗れたか……悪いがこの場はお預けだ……首を洗って待っててね……」
 シルヴィアがそれに言葉を続ける。
 「少年……今日は面白かったわ……また闘いましょう」
 「あ……待て………」
 キッドのその言葉も虚しく2人は去った。

 そして この出来事が後に大惨事を生む事になるとは誰も知る由も無かった……。


続きへ

ザ・ドクター様の格闘小説22話
いやもうほんと・・キッドの腕が無事なだけであとはOK←またんか!!
誰かが破れた??・・・・いったい誰が???ちくしょーっいいとこで終わりやがる(爆) by あっきー

戻る

E-list BBS Search Ranking Playtown-Dice Go to Top