ラン〜RAN〜

ザ・ドクター様

第23話 策略

 「だから話せェェェッ!」
 警視庁の取調室に剣持警部の叫び声が響く。その叫び声の相手はシェラザードだった。
 シェラザードの両手には手錠が填められている。警察の取り調べとしては異例の出来事である。
 普通 手錠を填めての取り調べは認められていないのだから。そして剣持にガーレンが付き添っていた。
 ガーレンは腕を組み 壁にもたれていた。
 「何を?」
 「だから言ってるだろッッ G−5の関係ッ 仲間の居場所ッ その他諸々ッッ」
 「…………居場所……知るワケ無いじゃない?もっとも知っていたって話す気は無いけどね」
 「知っているのかッ 知らないのかッ どっちなんだッッ」
 剣持は机を叩きながらそう叫ぶ。
 「そんなに知りたいんだったら私の頭を分解して解剖して見たら?面白いモノが出て来るかもよ?」
 「ぐ…………ぐぅぅ〜〜〜〜〜………ちょっと水を取ってくる……ガーレン 頼んだぞ」
 「分かりました ガスパディン ケンモチ」
 その声を聞いた剣持は安心して取調室から出た。

 水を取りに戻りに行こうとしながら剣持は思っていた。
 (ふぅ……何なんだ アイツ………逮捕されたというのにそれを悪びれてない……)
 (まるで まだ余裕があるかのように…………何を考えてやがる……あのヤロウ……いや アマだ……
   そうだよな うんうん)
 変なところで冷静な剣持であった。

 取調室。シェラザードが笑っていた。
 「クックックックックックッ………2人っきりになったわねぇ………」
 シェラザードの声に反応しガーレンの腕組みが解ける。
 「な………!!」
 「貴方と2人っきりになるのを待っていた……その気になれば こんな手錠などいつでも外せた」
 そう言いながらシェラザードは両手首を逆の方向に捻った。
 「コキッ」
 その音と同時に手錠の鎖がちぎれた。
 「しかし……今の立場としてはそっちが有利だわね」
 「あぁ……そうだな……」
 ガーレンが立っている。シェラザードが座っている。
 そう言う互いのポジションに対してシェラザードは口にしたのだ。
 無論 この場で闘いが始まった場合の事を言っているのである。

 その時 ドアの向こうから足音が聞こえて来た。
 「人か……」
 ガーレンはシェラザードのその声に反応して意識をそっちに向けた瞬間 スッとシェラザードが立ち上がっていた。
 急な動きではない。かと言って 緩慢な動きでもない。
 完全にガーレンのタイミングを外した絶妙の間の取り方だった。
 このタイミングでシェラザードが攻撃に来たら 恐らく打撃を当てる事なく叩かれてしまうだろう。
 ガーレンの呼吸が読まれている。
 「これで 対等になったわね」
 シェラザードが笑った。冷めた笑みであった。

 次の瞬間 シェラザードの右足が跳ね上がり 机が宙に浮いた。と 同時に跳ぶシェラザード。
 「ドガァッ」
 机越しにガーレン目掛けてドロップキックを浴びせた。
 「ぐ…………!」
 ガーレンはブロックをして直撃だけは避けた。そして机が音を立てて落下した。
 周りを見回すガーレン。しかし そこにシェラザードは居なかった。
 (き……消え………!!?)
 次の瞬間 ガーレンの顔を影が包んだ。
 「グシャァッ」
 3つの蹴りが全てガーレンの顔を捉えた。そしてガーレンが足を掴みに行くが空振りした。
 シェラザードは呟いた。
 「先程 新宿で対戦したが あの時の私の力を私の本当の力と見込んでいるのなら気の毒と言う他無いわ」
 「あの人数の者達を相手に闘い負けぬまでも私は無傷で済まないでしょう」
 「実力を隠し通すという擬態もまた……甘美な敗北を堪能するためにはまた必要」
 そう言いながらシェラザードは笑みを浮かべていた。
 「………いい機会だから学んで行きなさい………私の本当の強さを………」
 そう言いながらシェラザードが構えた。
 「スゥ〜〜〜〜〜〜………」
 シェラザードが息を強力に吸い込む。そして勢いよく吐き出した。ガーレンの目目掛けて。
 「プッ」
 そして それはガーレンの目に突き刺さった。目を押さえながら転げ回るガーレン。
 「ウギャァァァァァッ」
 「これが真の“猛毒”――――……“猛毒”シェラザードの本当の意味よ……私にとって蛇とは 
   ほんのお遊びに過ぎないわ……」
 「そして 私はG−5の中で最高の策略者…………貴方達はこの私の策略にハマッた………」
 そしてシェラザードはガーレンの頭を掴み 首をがら空きにさせた。そこ目掛けて自分の両腕を巻き付ける。
 「裸絞め―――――……この技からは逃げられない―――――……」

 その瞬間 ガーレンがシェラザードの腕を掴んだ。そして強引に裸締めを外そうとする。
 「ブンッ」
 ガーレンの腕力に裸締めが強引に外された。
 しかし それはシェラザードの策略だった。腕による裸締めが外されたとなれば―――――……。
 腕の3倍の力を持つと言われる脚―――――……脚による裸締めに移行―――――……。
 「ガキッ」
 (このまま絞め落とすッッッ)
 (う……ヤ……ヤバい………!お……落ちる……………!!?)

 そして数秒後。ガーレンの手がコトリとなった。気絶したのである。
 「ふぅ……後は ここから脱出ね………………」
 そう言いながらシェラザードはドアから通路に出た。正面切って脱出する気か。
 シェラザードが普通に歩く。歩いて警視庁を出ようとする。
 「カッ………カッ………カッ………」
 歩くシェラザード目掛けて幾多の警察官が襲いかかるが 彼女はそれを問題にしなかった。
 次々と―――……次々と叩き伏したのだ。
 そしてシェラザードは無事に警視庁から脱出。後に残されたのは血の海であった。

 その夜。街灯のない通路を1人の少女が歩いていた。
 「カツ………カツ……カツ………」
 その後を2人の女性の影が追って来ている。常に一定の距離を保って尾行をしている。
 少女がピタリと足を止めて言った。
 「……誰?私に何の用かしら?」
 「私達の尾行に気がついていたとは……これはこれは凄いお嬢さんだわ……申し遅れました……私は……」
 「ネオナチス総統・ザナドゥ・スコルピオン!こっちはヘルガ!」
 「ネオナチス………確か ヒトラーを崇拝しユダヤ人惨殺を復活させようとしている組織だったかしら?」
 「えぇ………ですが それは既に過去の事……今は世界平和を目指す組織です」
 少女の質問にヘルガが そう答えた。
 「それで…………?私に何の用かしら?」
 「貴方に私の左腕になっていただきたい……この話……断る理由はないでしょう?」
 「ねぇ……?シェリーこと灰原 哀さん?」

 ◆スコルピオンが灰原に急接近!果たして灰原の返答は?

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ザ・ドクター様の格闘小説23話
へ????哀ちゃんが・・・・・・敵に落ちる??
それってある意味・・・・・・危険なんじゃ・・・・・
・・・・・・いいえ・・・敵が・・・・(爆)by あっきー

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