ラン〜RAN〜

ザ・ドクター様

第24話 引き抜き

 「シェリーこと灰原 哀……貴方に 私の左腕になってもらいたい」
 スコルピオンがそう言った。
 「何で?」
 灰原は怪訝そうな顔をしながらそう言った。
 「キミのコトを探したんだよ……ヘルガが黒の組織にハッキングしてキミのデータを探し出そうとしても……」
 「消えていた……キミの存在そのものが……黒の組織のデータから消えていたんだ……」
 「そして世界中に網の目のように張るネオナチスのネットワークで探したんだ」
 「でも まさか……東京にいるとは思わなかったよ」

 その時ヘルガが脇に抱えていたノートパソコンを開いてキーを叩きながら言った。
 「灰原 哀―――……黒の組織在籍時のコードネームはシェリー……本名は宮野 志保……姉に宮野 明美がいる」
 「もう一度言う……貴方ならアタシの左腕になれる……もしネオナチスに来てくれると言うのなら……
  貴方の生活を保障しよう」
 「今でも貴方は黒の組織に狙われていると聞く……ネオナチスならば 貴方を保護する事が出来 
  最高の実験環境も整えられる……」
 「そう……今 世界に黒の組織と並ぶ力を持つ組織は我がネオナチスしかないのですから」
 ヘルガが そう演説する。

 「おぃおぃ せっかく見つけたウチのモノを持って行かれてはたまらないなァ」
 そう言いながら1人の男性が現れた。その男性を見たスコルピオンは呟いた。
 「久しぶりだわね ジン―――――………」
 「………そっちもな スコルピオン……3年振りか………」
 「えぇ そのくらいだわね………友好条約を結ぶために訪れたあの時以来だわ」
 「引き抜きは御法度(ごはっと)だろ?今の姿がどうあれ ソイツは まだウチの組織の人間だ……
  手を出さないでもらおうか」
 ジンの言葉を聞いたスコルピオンは頭を掻きながら言った。
 「ま………確かに ちょっと仁義に外れた事をしたみたいだわねぇ………今は………ね……」
 そう言うスコルピオン。一拍おいて呟いた。
 「いいかしら?灰原さん?いい返事を期待しているわ……じゃ……」

 その時 ヘルガは灰原に駆け寄り 小さな声で呟いた。
 「我がスコルピオン総統は貴方に大変な期待をしておいでです……これを……」
 そう言いながらヘルガは小さく折り畳んだ紙を渡した。
 「何をしているの ヘルガ……行くわよ」
 「ハイ スコルピオン様」

 その時だった。ジンが呟いたのは。
 「………待て……そこのメガネっ娘………」
 「ハ?私ですか?」
 呼ばれたと思ったヘルガは振り返る。
 「あぁ そうだ……オマエだ……よくよく見てみれば オレ達のブラックリストに載っているヤツじゃ無いのか?」
 「確か ドイツの天才ハッカー………ジョルジュ・フリードリヒ・ヘルガ…………!!」
 「そうですよ 以後お見知り置きを」
 そう言いながらヘルガは去った。

 後に残されたジンと灰原………。
 「さっき 何を渡された シェリー?見せてみろ」
 「え………こ……これは………」
 「いいから見せてみろ」
 そう言ってジンは灰原から小さく折り畳まれた紙を奪い取った。それをカサカサと開いて見るジン。
 「―――――なるほど」
 その顔には笑みが浮かんでいた。「ニィッ」と言う笑みが。

 横浜―――……本牧埠頭第三倉庫。そこに2人の女性がいた。
 「来ると思うか?ヘルガ?」
 「ハイ スコルピオン様……ここの市を書いた紙を渡して置きましたので……
  その気があるならじきにやって来るでしょう」
 「ふふッ…さすがに手抜かりがないわね ヘルガ」
 「おっしゃる通りです スコルピオン様……ただ 問題は…………」
 「……そうね……確かに貴方の言う通りだわ ヘルガ……招かれざる客が来たようだ………」
 そう言いながらスコルピオンがユラリと立ち上がった。
 「ヘルガ……例のモノをアタシに渡して上に避難して置いてくれ」
 スコルピオンのその言葉を聞いたヘルガは自身の持っていたファイルボックスから一枚の紙を取り出し 渡した。
 そして クレーンに片手で捕まる。脇にはパソコンとファイルボックスを抱えている。
 「いいですよ スコルピオン様」
 その声を聞いたスコルピオンは横にあったレバーを動かす。
 「ガコン」
 その音と同時にクレーンが上に引き上げられ 横に移動し 安全圏にヘルガが辿り着いた。

 それと同時であった。1つの集団が倉庫のドアを破壊し 入って来たのは。
 「ドガァッ」
 「これはこれは黒ずくめの組織の皆様……夜分遅くご苦労様です……しかし ノックもしないでどういう事かな?」
 「見つけたぞ スコルピオン 一緒に来てもらおうか」
 「何故……?互いに争わないと言う条約を結んだんでしょ?アタシの組織と貴方達の組織は?」
 「うるせェッ 先に条約を破ったのはそっちだろ?」
 「………あぁ……あの引き抜きを言っているのですか?その程度で破れる条約……と言うワケですか?」
 「……つけようと思えばもっともらしい理由をつけられるものですね……ねぇ ヘルガ?」

 そして スコルピオンは先程ヘルガから渡された1枚の紙を見せながら言った。
 「これがなんだか分かる?3年前 貴方達と結んだ条約書よ……その程度の事で破れる条約なら………
  こっちから………」
 そう言いながらスコルピオンは条約書に両手をかける。
 「破棄(はき)しよう」
 そう言うのと同時だった。スコルピオンが 条約書を破り捨てたのは。
 それを見た全身を黒で包んでいる男が言った。
 「そう来たか……まぁ それはこっちとしても好都合だがな……遠慮なく叩き潰せる」
 「やって見な」
 そう言いながらスコルピオンは不敵に笑っていた。

 「1……2………3………5……7……9…15………20………およそ300人と言ったところですか……」
 「それに加えて 恐らく胸元に“飲み込んで”いるみたいね……」
 そう言いながらヘルガがコンピュータを叩いていた。

 「なァ ヘルガ コイツ等をトレーニングだとすると どのくらいで倒せばいいんだい?」
 スコルピオンがヘルガを見上げながら言った。
 「そうですね スコルピオン様……7分もあれば十分でしょう?」
 「相変わらず厳しいわね……1人を1.1秒で倒せと言うの?まぁ 大丈夫だけど……」
 「では始めて下さい スコルピオン様」
 ヘルガがそう言った瞬間だった。スコルピオンが 集団の中に飛び込んだのは。
 瞬く間に4人。また4人と倒れていく。また4人……。

 1年前。ドイツ。
 ヘルガはスコルピオンに尋ねていた。
 「ねぇ スコルピオン様 どうしえ多人数と闘う時にそんなに強いの?」
 「あぁ その事?相手が1人の時は闘いを楽しむ事を第一に考える……だが相手が多人数の時は一撃で
  仕留める事を第一に考える」
 「つまり 1度に4人……同時に四方の敵を倒せれば作戦なんか関係ないわ」
 そう言いながらスコルピオンは笑っていた。

 低空の回転蹴りでまた4人仕留めるスコルピオン。
 「ビシビシビシビシィッ」
 そして立ち上がり 更にダッシュ。残りはもう5人しか居ない。
 「ドコォォォン」
 鉛弾が放たれた。誰かが懐から銃を抜き その引き金を引いたのである。それはスコルピオンの胸に命中。
 しかし さすがはスコルピオン。こういう事態を予測して軍服の下に防弾チョッキを着込んでいた。
 男達の銃撃は終わらない。次々とスコルピオンの防弾チョッキに穴が空いていく。
 「防弾チョッキを着込んでいるッ 胴体には通用しねェッ 狙いは頭だァァァッ!」
 誰かが そう叫んだ。それと同時に男達は狙いを切り替えた。
 スコルピオンの胴体から頭へ――――――…………。
 「ドンッ」
 スコルピオンの身体が弾け飛んだ。そして背中から強烈にダウン。その頭からは血が流れていた。
 「よっしゃァッ やったぜッ スコルピオンを倒したぜェェッ!」
 「まだだよ」
 スコルピオンが そう言いながら喜んでいる男達の背後に現れ 一瞬で4人を倒した…。
 「くッ」
 そう言いながら男はスコルピオンに銃を向ける。
 「遅い」

 次の瞬間 男がスコルピオンのパンチによって吹っ飛んだ。そしてヘルガが下に舞い降りた。
 「終わった………どのくらいかかった?ヘルガ?」
 「今 5分になったところです………」
 「……それにしてもコイツ等……人を殺した事が無かったのか?」
 「口径の大きい銃で人の頭を撃てば潰されたトマトのようにグチャグチャになると言うのに……」
 「はぁ……多分 雑魚だったんでしょうね」
 「そうか 雑魚か なら知らないわね……身体を仰け反らせて直撃を避ければ反撃は可能だと言う事を………」
 「そうですね スコルピオン様……手当を………」
 「ん?あぁ……」
 ヘルガはスコルピオンの傷口を消毒し ガーゼを当て 包帯を巻いた。
 「これで しばらく大人しくしていれば大丈夫なハズです」
 「ン………?」
 その時 スコルピオンが何かに気づいた。人の気配と言い換えてもいいだろうか。
 「誰?そこにいるのは?」

 「びっくりさせたようね」
 そう言いながら1人の少女が入って来た。
 「灰原…………」
 スコルピオンが そう呟いた。

 「まさか 返事をしに来たの?」
 「それ以外に何の用があるの?……スコルピオンさん お世話になります」
 そう言いながら灰原が頭を下げた。スコルピオンは喜びに打ち震えていた。

 そして この日から灰原の姿が消えた――――――………。


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ザ・ドクター様の格闘小説24話
おそるべしスコルピオン!!黒の組織も歯が立たない?!
でもとうとう哀ちゃんが敵側についてしまった・・・・・はたして真相はいったい・・・・
・・・・・・(絶対なんかあるはず・・・・いやたぶん・・・)(爆)by あっきー

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