ラン〜RAN〜

ザ・ドクター様

第27話 プロレスの強さ

 
 シルヴィアが葵目掛けて勢いよく階段を上って来た。そして次の瞬間 シルヴィアは葵の腕を掴んだ。
 それを見た葵は思った。
 (関節技!!? これは脇固め!!?)
 「シュザッ」
 強引に脇固めのかけ始めに抜け出す葵。と 同時にシルヴィアのパンチが葵の顔を襲う。
 「ブンッ」
 屈んでかわし シルヴィアの脚を掴みに行く葵。そこに来た。シルヴィアの跳びヒザ蹴りが。
 「ボォッ」
 身体を仰け反らせてかわした葵は左腕を大地につき それを軸にしてシルヴィアの後に回り込む。
 そして葵がシルヴィアの背後を取った瞬間 シルヴィアのヒジが葵の顔面を襲う。
 葵は それをも屈んでかわす。しかし それがまずかった。
 よく考えてみよう。ヒジが空振りした時 次には何が来る?答えは当然 手だ。
 シルヴィアの手が葵の髪を掴んだ。
 「捕まえたわ」
 シルヴィアがそう呟いた瞬間 もう一方の手で葵の脚を持ち上げる。そして 踊り場から下めがけて跳んだ…………!
 変形のボディスラムである。葵の後頭部に床が勢いよく迫る。
 (受け身ッッッッ)
 葵はそう思った。しかし このスピードでは受け身も何もできない。ただ 1つを除いては………!
 両手で頭を防護する。それしか方法はない。
 「ドガァァァッ」
 葵の頭と床が勢いよく激突した。その技をかけたシルヴィアが先に立ち上がっていた。
 そして 葵がよろめきながら立ち上がった。その瞬間 シルヴィアの拳が葵の腹を捉えた。
 「グワァキィッ」
 その威力で葵の身体が宙に浮いた。
 (な…………ッッ)
 そして またシルヴィアの拳が来た。叩きつけるような拳が…………!
 「ドガァッ」
 「ダンッダンッ」
 そのパンチを喰らった葵は階段に激突し 跳ね返った。1度 2度とバウンドする。
 「まだよ」
 そう言いながらシルヴィアは葵の髪を掴み 無理矢理立ち上がらせた。
 そこから葵の腹にボディを放つ。
 「ドボォッ」
 葵の身体が宙に浮く。そこに またもやボディ。
 「ズドッ」
 その時だった。葵の蹴りが放たれたのは。その瞬間 シルヴィアは掴んでいた葵の髪を離した。
 そのため わずかだが葵の攻撃の命中位置が下がった。顔面から肩に。
 次の瞬間 葵の脚を掴んだシルヴィア。そのまま階段の角目掛けて葵のヒザを叩きつける。葵のヒザを破壊する気だ。
 「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ」
 葵がそう呻いた。このピンチから逃れる事は出来ない。
 「ドガァッ」
 為す術もなく叩きつけられた。葵はヒザを押さえながら叫び声をあげていた。
 「アアアアァァァァァッ」
 「どう?ニー・クラッシャーの味は?プロレスのリング下にはスプリングが仕込まれているから衝撃と痛みは緩和出来る……」
 「しかしッ 外では別ッ 衝撃を逃がすスプリングが無いから100%の威力が相手の身体に伝わるッ」
 「しかも堅いと言う事もあって……その威力は倍増だッ」
 「やはり地上最強の格技は……………プロレス……それは紛(まが)いも無い事実…………!」
 「そしてプロレスには路上で使えば それが殺人と結びつく技が存在する………!受けてみる?葵?」

 葵がその問いに答えもしないうちにシルヴィアは葵を担ぎ上げた。
 葵の首と脚を固め担ぎ上げた。葵の腹が天を向いていた。
 (タワーブリッジ!!?)
 葵がそう呟いた。しかし その技の予想は外れた。そのまま シルヴィアは回転した。エアープレーンスピン。
 回転の遠心力その物が威力となる………!!しかし それは通常のエアープレーンスピンでは無かった。
 通常のエアープレーンスピンは遠心力を利用して投げる技だ。
 しかし シルヴィアの頭の中にはそんな簡単な技は無かった。
 エアープレーンスピンを更に応用させた技…………!!

 シルヴィアが そのまま階段の中程まで駆け上がった。そして 葵を担ぎ上げたまま宙を舞った。
 「死ね―――……」
 シルヴィアの何気ない言葉が葵の耳に届いた。
 このまま 腹からコンクリートに叩きつける気か。そして その衝撃の際 背骨も破壊される恐れがある………!
 いや。『恐れがある』では無い。実際に破壊される。
 「ドガァァァッ」
 そして立ち上がるシルヴィア。その顔は強敵を倒したという満足感で一杯だった。
 しかし 葵は立ち上がってきた。背骨を痛めながらも。
 (ぐ………!!せ……背中の感覚が無い!!?)
 背中に強烈な打撃……。いや。背骨に致命傷を与える程のダメージを受けたのだからムリも無い事だった。
 背中が麻痺していた。その感覚は葵にとって苦痛だった。

 後に判明する事になるが…この時 葵の脊椎はズレていた………!!

 しかし それでも立ち上がる葵。シルヴィアから勝利を得るために。
 「カ………カミカゼ!!?」
 シルヴィアはそう呟いた。かつてシルヴィアは こんな強敵に出逢った事は無かった。
 投げても投げても……。強烈なダメージを与えても立ち上がって来る。
 こんな敵とは出逢った事は無かった…………。こんなにしぶとい敵とは…………!
 そのまま倒れていれば背骨が悪化する事は無かった………。
 しかし立ち上がって来たのだから………!このままでは日本有数の格闘家の将来を失わせてしまう………!!!!
 そう考えたのだろう。今の葵の状態を悪化させないためにはこの闘いを速く終わらせるしかない。

 その瞬間 葵の正拳がシルヴィアの腹を貫いた。
 「ドボォッ」
 「がふ………!!」
 「何をそんなに焦っているの?シルヴィア?」
 葵は余裕の笑顔でそう呟いた。しかし この余裕の笑顔こそが 葵を破滅に導こうとしているのだ。
 闘いとは自分の体の状態を相手に悟られたらお終い。そこを敵につけ込まれるから………。
 つまり この余裕の笑顔の意味は実際とは全く逆!!!もはや葵に闘う力は全く残されていなかった。
 既に満身創痍。
 その時 シルヴィアがトドメとばかりにダッシュして来た。そして葵を掴む。そこから行く気だ。
 S・T・T。スクリュー・トルネード・タテオカ…………!!
 この技は 相手の頭に全体重をかけ そのまま床に叩きつける。そう言う技だ。
 プロレスラーの館岡が得意とする技でもある。
 しかし その技の正体は柔道で言う大外刈り………!!

 次の瞬間 葵が宙を舞い 頭から床に叩きつけられた。
 「ドガァッ」
 「プロレスじゃS・T・Tだとか何だとか騒いでいるけど…こんなのは誰にだって出来るわ……少し格闘の心得のある者ならね」
 そう言いながらシルヴィアは笑みを浮かべた。そして 再び葵を掴んで投げた。
 「ブンッッ」
 「ドッカァッ」
 葵が階段の上まで投げられ 踊り場の壁に激突した。終わらせる気だ。
 そして シルヴィアが階段をゆっくりと昇って来た。それを見た葵は思っていた。
 その顔には怯えの感情が見て取れた。
 (つ……強い………!!)

 ◆このまま 勝負は葵の敗北で終わってしまうのか!!?

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ザ・ドクター様の格闘小説27話
すごい闘い・・・・・ヒィィ
このまま葵が負けると・・・・・・ごふっ(><)
闘う余力がもう殆どない葵ちゃん。個人的に好きなキャラなので勝たせてやってよ先生!←おい by あっきー

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