ラン〜RAN〜

ザ・ドクター様

第29話 やりたかった

 シルヴィアが仰向けに倒れていた。その横には葵も。
 「ふぅ………負けたのよね…………そっか………敗北ってこういう感じだったのね………」
 「………シルヴィアさん」
 「ナイスファイトだったわ 葵……貴方と最後にナンデモアリルールで闘えたのなら もう心残りは無いわ」
 「エ……最後って………?」
 そして シルヴィアはゆっくりと立ち上がりながら言った。
 「葵………このアタシに勝ったんだ………負けるなよ?」
 「ハイ シルヴィアさん……」
 「だが………せめて……せめて……最後に真っ当なプロレスをやりたかった」
 そう言うシルヴィアの眼には涙が浮かんでいた。それを見た葵は思った。
 (そうか……この人は 強すぎたためにまともなプロレスが出来なくなってしまったんだ……
 そのために自らを敗北させる手段としてナンデモアリの世界に身を投げ出した………
 強過ぎてもこういう悲劇が起こるのね……)
 「真っ当なプロレス……?それはどう言う事かね………?」
 そう言いながら2人の男性が出て来た。

 明智と京極。明智が言葉を続けた。
 「もし こっちが叶えられる望みであったなら実現させてあげよう 多分素晴らしい闘いになるハズですからね」
 「真っ当なプロレス…それは八百長無しの真剣勝負ッ プロレスのルールの中での真剣勝負ッ 
  そんなプロレスを最後にやってみたかった」
 それを聞いた明智は呟いた。
 「なるほど……そう言う勝負が出来る人間に心当たりがあります……やって見ませんか?」
 「やらせてくれると言うの?」
 シルヴィアはキョトンとした顔つきでそう言った。
 「えぇ もちろんですよ……しかし 簡単に勝てるとは思わない方がいい……
 日本でも有数の力を持つプロレスラーですから……」
 明智は不敵な笑みを浮かべながらそう言った。
 「京極くん 連絡して下さい 貴方ならそっち系に太いパイプがあるハズです」
 「分かりましたよ 出来るならあの男には頼みたくないんですがね 凄い見返りを要求されるし………」
 「そんな堅い事を言わないで下さいよ 京極くん」
 明智はニッコリと笑みを浮かべながら言った。それを見ながら京極は思っていた。
 (…どっちにしても 被害が及ぶのはオレなんだけど……所詮この人にとっちゃ他人事なんだろうな………)
 京極は不満顔で『あるところ』に電話をかけた。

 「あぁ……もしもし……」
 「ハイ こちら新日本プロレスですが………」
 「京極だ 社長をお願いしたい」
 「社長……ですか?」
 「そうだ 京極からだと言えば すぐに取り次いでくれるハズだ」
 「ハイ……しばしお待ち下さい」
 「オゥ 京極 どうした?」
 電話の向こうからドスの効いた声が聞こえて来た。
 「あ……社長さんですか?実は………」
 京極の言葉を聞いた社長と呼ばれる男は笑っていた。
 「ハッハッハ そんな事か お安い御用だ……幸いなことに今日はあそこも空いているみたいだしな」
 「今すぐ ウチの若い衆を行かせよう……時間は……2時間も有ればいいか」
 「よろしくお願いします 社長」
 そう言って京極は電話を切った。
 「話はついた……あとは2時間後にその場所に向かうだけだ……
  相手のレスラーは誰か分からないが 大体予想はつく」
 「京極さん……それってまさか………?」
 「あぁ アイツさ」
 そう言いながら京極はニヤリと笑った。

 2時間後。京極達は東京ドームにいた。
 「ここか………」
 京極がそう呟いた。
 「もしかして ここでやるんですか?京極さん?」
 「そうだ 葵……そして覚悟はいいな?シルヴィア………?」
 「アタリマエだわ……」
 そして京極は葵達を連れ立ってグラウンドに出る。そこには特設のプロレスリングがあった。
 「リング………?」
 葵がそう呟いた。
 「よぉ 京極」
 リングの下にいた人が手を振りながら葵達に近づいて来た。
 「久しぶりですね アントニオ猪狩さん」
 京極はそう言いながら猪狩と握手を交わした。
 「キミの言うとおり セッティングして置いたぞ この報酬は………分かってるな?京極くん?」
 「えぇ………分かってますよ 猪狩さん」
 京極はイヤそうな顔をしながらそう言った。
 「えっと………京極さん………?」
 葵がドギマギしながらそう言った。
 「あぁ 葵 紹介してなかったな こちらは新日本プロレスの総帥であるアントニオ猪狩氏だ」
 「いえ……紹介してもらわなくても……知っています……初めまして 松原 葵です」
 そう言いながら葵は手を差し出した。
 「アントニオ猪狩だ」
 猪狩はそう言いながら葵の刺しだした手を握りしめた。大きな手だ。
 「で………闘うのはもしかして貴方なんですか?」
 「いや……闘うのはオレじゃ無いさ……アイツだよ」
 そう言いながら 猪狩はリング上にいる人物を親指で指差した。そこには1人の女性が居た。
 その女性を見た葵は叫んだ。
 「北斗さんッッッ」
 「久しぶりだな 葵………」
 リングの上にいた女性。それは北斗 晶であった。『プロレスの荒獅子』北斗 晶。
 「まさか 北斗さんが闘うの?」
 葵は目を丸くしながら言った。
 「不満かい 葵?」
 「いや……そう言うワケじゃ無い………けど………」
 その瞬間 シルヴィアが無言でリングの下からジャンプし リングに着地した。
 「さ 始めましょうか」
 北斗は言った。
 「今から プロレスを始めるのよね?」
 「そうよ」
 北斗の問いにシルヴィアは短くそう言った。
 「じゃ始めましょう……時間無制限でいいわね?」
 「えぇ………」
 次の瞬間 ゴングが鳴り 両者が組み合った。
 「ガシッ」
 その瞬間 北斗の蹴り。下から振り上げる蹴りがシルヴィアを襲った。

 次の瞬間 シルヴィアは組み合った手を離し バックステップ。
 北斗の蹴りをかわし懐に飛び込みさまの右回し蹴り。
 北斗はそれを顔にマトモに喰った。と 同時にシルヴィアの右脚を掴む。
 アキレス腱――――――………。
 「ぐちりっ」
 次の瞬間 北斗の顔にシルヴィアの左ヒザが入った。北斗の顔から鮮血が流れ 顔が歪む。

 ◆プロレスでの激突!北斗VSシルヴィアが今 始まった!


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ザ・ドクター様の格闘小説29話
そして新たな闘い北斗VSシルヴィアとのプロレス対決!!
さっきの闘いの後で・・・ハードな・・・・・・・蘭ちゃんの登場はもっと後なんかな?by あっきー

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