ラン〜RAN〜

ザ・ドクター様

第38話 アマギン

 
 
 平次が構えながら新一を睨んでいた。この眼は本気だ。両手で長刀を握っている。
 上段の構え―――――………。
 「工藤……本気で行くで………」
 次の瞬間 平次が一歩を踏み込んだと同時に新一が平次の懐に飛び込んだ。
 首目掛けて叩きに行く平次。それを新一はかわしつつ 平次の顔に拳を叩き込みに行く。
 「………ッと」
 平次はそう言いながら身体を仰け反らせてギリギリでかわし そのまま長刀で薙払いに行く。
 「よッ」
 そう言いながら新一も紙一重でかわす。
 その様子に平次はおかしいと気づいた。いや。いち早く気づいたのは蘭か。
 (おかしい―――――……おかし過ぎるで―――――………)
 (確か工藤は空手なんぞやっていた事は無かったハズや―――――………なのに―――――……)
 (どうして ここまでオレと対等に闘えるっちゅうんや?)
 
 平次の疑問―――――……。それはもっともであった。
 何故ならば 剣道と空手の対決の間には暗黙の言葉が存在するから。
 剣道3倍段―――――………。これが その言葉である。
 簡単に言うならば 空手家が剣術家に勝つためには3倍の力量を必要とするという事。
 例えば剣術家が初段だった場合 空手家は4段と同等の力でなければ勝てない………。
 そういう意味である。
 もっとも 例え2段でも4段と同等の力を持っているなら勝ちに最も近いのだが。
 いわゆる 空手家が剣術家に勝つための目安である。
 だからこそ 素人のハズの新一が平次と対等に闘えているのがおかしいのだ。

 「オイ そこの外人……工藤に何をしやがった?……っと……名前なんちゅうんや?」
 「ヘルガよ ヘルガ」
 蘭がそう呟いた。
 「ヘルガか……もう一度聞く 工藤に何をした?」
 「ちょっとパワーアップさせただけですよ 薬でね……ま……その分 肉体は耐えきれないかも知れませんが」
 「へぇ………」
 そう呟きながら平次が笑っていた。いや。笑うと言うよりは薄い笑みを浮かべていたという方が正しいだろう。
 その瞬間 平次が上段から斬り込んだ。
 「覇ァァァァァッ」
 それを新一はかわし 平次の懐に飛び込む。
 その瞬間だった。振り下ろされた長刀が新一目掛けて跳ね上がったのは。
 「ドガッ」
 新一の左脇腹に平次の長刀が命中した。
 「ぐ………!」
 新一が左脇腹を押さえ うずくまった。
 「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ」
 それをしばらく見守っていた平次と蘭。
 2人は これで戻ってくれれば……… と思っていた。

 都内のとあるところ。
 「ジンよ」
 闇の中から声が聞こえてきた。それにジンは受け答えする。
 「ハッッ」
 「スコルピオンの件――――……どうなっている?」
 「ハイ……今しばらくお待ちくだされば………」
 「たわけっ! そう言ってから既に一週間も経っている……おまけに部隊を一つ失った……」
 「この落とし前――――……どうつけるつもりだ ジンよ?」
 「申し訳ありません……この落とし前は必ず………」
 「ただ……最後にチャンスを下さい」
 「チャンスとな………?」
 「既にスコルピオンに対してヒットマン(刺客)を差し向けました……」
 「刺客とな?」
 「そう……裏の世界ではナンバーワン、ツーを常に争っている男………その名は………」
 「天草 銀(あまくさ・ぎん)―――――……通称・アマギン―――――……」

  東京・池袋。
  その周辺を1人の少年が大型のバイクに乗り、走っていた。
  その少年は若かった。外見は18、19くらいだろう。頭は白髪の長髪。
  しだけた眼をしていた。美形といってもいいだろうか。
  靴の後には滑車がついていた。
  この少年の名を天草 銀と言った―――――………。
  銀の視界に歩道一杯に座っている4人の男子高校生が目に入った。
  「邪魔だな……アイツ等……」
  そう呟きながら 銀はバイクを少年達の目の前で止めた。
  「オイ オマエ等……天下の往来で通行の邪魔すんなよ」
  銀がそう言った。その言葉を聞いた学生達が一斉に立ち上がった。
  「何だよ オマエ……誰にも迷惑かけてるワケじゃないだろ?」
  「迷惑してんだよ……速く散っちまいな……」
  そう言いながら銀は犬を追っ払うかのように手をシッシッとやる。
  「オレ達ャ 犬や猫じゃねェぞ」
  それを聞いた銀は笑みを浮かべながら言った。
  「あぁ 分かっている オマエ等を犬や猫と一緒にしたら犬や猫に失礼だもんなっ」
  「こ………この……」
  そう言いながら学生達は拳を握り締める。
  「へぇ……キミ達……オレとやろうっての………?」
  銀はそう言いながら 不思議な顔をする。
  コイツ等 自分の事がわかっていないのか?とでも言いたげな顔だ。
  「当たり前だ ここまでなめられちゃ男が廃る」
  学生の1人がそう言った。それを聞いた銀は息を大きく吐き出し 更に低音で言葉を吐き出した。
  「身の程知らずがっ」
  次の瞬間 学生の1人が吹っ飛んだ。何をされたのかも分からぬまま…………!
  そのまま 学生は車道まで吹っ飛んだ。
  「死になっ」
  銀が そう呟いた。
  学生は気絶しており 動けない。そこにBMWが走りこんで来る。
  「あぁぁっ!!!」
  残りの学生達がそう叫んだ。
  「ギギギギギギギギギギィッ」
  BMWが急ブレーキをかけた。ブレーキが強烈にタイヤに歯止めをかける。
  タイヤがあっという間に磨耗し 学生の寸前で止まった。
  「運が いいねぇ〜…………」
  銀がヒューと口笛を吹きながらそう言った。それと同時にBMWから1人の女性が降りて来た。
  「久しぶりね アマギン―――――……」
  その女性は来栖川 綾香だった。
  「これは これは……綾香さん お久しぶりで………」
  その言葉を聞いた綾香はフッと笑って言った。
  「……敬語を使う貴方じゃないでしょう?何を企んでいるの?」
  「アマギン………貴方が再び表に姿を現したと言う事は……また誰かから依頼されたの?」
  「そうだ 綾香……つかぬ事を聞くが ザナドゥ・スコルピオン と言う女性を知っているか?」
  銀の その言葉に綾香はピクリと反応を示す。その反応を目ざとく見つけた銀は言葉を続けた。
  「どうやら知っているようだな 教えてくれないか?」
  「名前だけはね……」
  「名前だけ?そうじゃないだろう?少なくとも最近会った事があるハズだ」
  「あぁ……会ったわよ……しかし 居場所は知らないわ……ただ ひとつ言える事は……」
  「スコルピオンは この日本にいる」
  綾香がそう言った。それを聞いた銀は ニコッ と笑みを浮かべながら言った。
  「有難うよ 綾香 助かったぜ」
  そう言いながら銀はバイクに飛び乗り その場を去った。
  そして BMWの運転手席からセバスチャン(執事)が 慌てて出て来た。
  「い……今のは誰ですか?綾香お嬢様?」
  「セバスチャン……私は過去に3回敗北した事があります…………そのうちの1人は 紅 栞」
  「……そして……残る2人のうち1人が……天草 銀―――――………」

  橋の下。
  新一が立ち上がって来た。その顔には笑顔が浮かんでいた。
  しかし 次の瞬間 その笑顔は“牙”に変わり 平次に襲い掛かって来た。
  「くッ これでもダメなんかッッ」
  新一のパンチが平次の顔を襲う。と 同時に平次は新一の拳を叩き落しに行く。
  「ビシィッ」
  長刀が新一の拳を叩いた。こぶしを押さえながら呻く新一。
  「あれでも ダメとなりゃ 正気に戻すにはたったひとつしか方法があらへんわなぁ……なぁ……
    工藤のねーちゃん……」
  「はい?」
  蘭が平次にそう尋ねる。
  「工藤を―――――………殺しても構わへんか?」
  思いもよらぬ平次の言葉に蘭は驚愕の表情を隠せなかった。
  
  ◆へっ……平次……!!何を………!!?
  
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ザ・ドクター様の格闘小説38話
あほたーーーーーーーーん!!!(おいおいなんて事を)
新一殺すて・・・・・・・主人公がおらんようになってまうやんかぁぁぁ(違)
新しいキャラ・・・・・・アマギン???(どっかで聞いたような)
そしてもうすぐ40話!!!おおっすごいぞ!!!そして平次には何か策があるのか?! by あっきー

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