ラン〜RAN〜

ザ・ドクター様

第39話 死

 
  
  「工藤を殺しても構わへんか?」
  平次は 構えながらそう呟いた。
  「……多分……それしか方法があらへん…………いちかばちか………やがな……」
  「ワン オア エイトってところね…………アタシも多分 その方法しか無いと思うわ」
  「………えぇんやな………」
  そう言いながら平次は新一を睨んだ。その瞬間 新一の姿が平次の視界から消えた。
  「!!!? どこや?工藤!!?」
  そう叫びながらキョロキョロと周りを見回す平次。
  「ここだよ」
  平次の耳元から新一の声が聞こえて来た。
  平次は驚きながらも振り向く。それと同時だった。新一の拳が平次の顔にめり込んだのは。
  吹っ飛ぶ平次だが 宙で一回転し 足から着地した。そこに新一が畳み掛けるように猛攻を開始する。
  「ドドドドドドドドドドドッ」
  打。
  叩。
  蹴。
  新一の打撃が次々と平次にヒットしている。平次はガードをし ダメージを最小限に抑えようとしている。
  「ク……ッッ!」
  平次がそう呻く。
  それを見たヘルガは呟いた。
  「シンイチ・クドウ……それでいい………!」
  ガードしつつ 平次は思った。
  (バ……バカな………!! 攻撃に転じる事が出来へん!!!)
  それを見ながら蘭は冷静に思っていた。
  (息も吐かせぬ程 迅速で強烈な連続攻撃………新一をここまで強く出来るとは大したモノね………)
  (そして それを耐えている服部君も…………!)
  「クッ……この打撃ッ 一発一発が重いッッ ダメージが体内に残るッッ」
  「かなりの強敵ッッ やはりあの技を出すに値するッッ しかし その技を出した場合………!」

  山梨・赤木の家。
  「久しぶりですね 赤木さん」
  「………瑠璃か……10年ぶり………だな……」
  「えぇ……赤木さんが面会に来てくれた瞬間から私は最強への道を志すようになったのです」
  「……して……KING……この度は何故私達を召集されたのですか?」
  「召集?そんなモノはした覚えはないが………」
  赤木が不思議な顔をしながらそう答える。
  意外な返答に瑠璃は手紙を見せる。
  「え……だって……これ………」
  「これ オレの筆跡じゃねぇわ……多分アイツだろうよ」
  「アイツ………て………?」
  「あぁ 話してなかったっけな オレはもうKINGじゃねぇんだよ」
  赤木がお茶をすすりながらそう言った。
  「な………なんで………?なんでやめたんですか?」
  「簡単に言えば……オレは所詮“狼”なんだよ」
  赤木がニィッと笑いながら そう言った。
  「“狼”………?」
  瑠璃が目を丸くしながら そう言った。
  「そう………狼は冬の間大きな群れを作り極寒を越す……しかし 夏になるとオスとメス2頭でそれぞれに暮らす……」
  「今のオレはまさしく“夏”なんだよ……それにオレはG−5の面々を全員男だと思っている…………」
  「雄の狼が……夏に群れてちゃ笑われる」
  それを聞いた瑠璃は呟いた。
  「………なるほど……実に貴方らしい理由だ………だからこそ……勝負してもらいたい」
  「………オレと………か………?」
  「えぇ………」
  そう言いながら瑠璃はゆっくりと立ち上がった。ここで仕掛ける気か?
  「やめときな………オレは弱い者いじめをするつもりは無い」
  「弱い者……いじめ………?そんな事言ったら 貴方はもう戦えないでしょ?」
  「それも そうだな」
  そう言いながら赤木は高らかに笑っていた。
  「じゃ………とりあえず………」
  そう言いながら赤木はゆっくりと立ち上がった。
  「お茶を………」
  そう言いながら赤木は台所に向かう。瑠璃の脇をすり抜けて。
  赤木は台所でお茶を洗っている。新しく入れ直すつもりなのだろうか?
  その時 瑠璃の目に一つの湯呑みが入った。それを掴んだ瑠璃は…………。
  「忘れ物ですよ 赤木さん」
  そう言いながら赤木の後頭部めがけて湯呑みを投げつけた。
  しかし 赤木微動だにせず それを手で受け止める。背面でのキャッチ………。
  まるで背中に目があるかのよう―――――………。
  そして赤木は振り返って言った。
  「ダメだろ 瑠璃?物は大切に扱わないと……なぁ?」
  赤木の中では今あった事が既に無かった事になっているようだ。
  少々の攻撃をも単なる悪戯と解釈できる神経………。それが今までの赤木を支えてきた。
  いや。今までではない。これからもだ―――――…………。
  
  橋の下。
  平次がダッシュッする。長刀を上段に構えたまま。
  新一めがけてダッシュする。その速さはまるで風のように。
  そこから 新一のノド目掛けて突きを放ちに行く。上段突きだ。
  「ズドッ」
  新一のノドが中にめり込んだ。長刀によって。
  それを喰らった次の瞬間 新一はノドを押さえ うずくまった。
  息が出来ないのだ。
  「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッッッッ」
  新一はノドを押さえながら苦しそうな表情で転げ回っていた。声にならぬ叫び声をあげながら。
  それを見ながら蘭は心配そうな顔をしながら呟いた。
  「し………新一………」
  
 突きとは恐ろしいモノだ。
  突きによって呼吸器官に衝撃を与え 一時的に呼吸不能にさせる…………。
  無論 “剣道”と言う“スポーツ”では禁じ手とされる技だ。
  この技の最も 恐ろしいところは一時的な呼吸困難だけで済めば良いが…………。
  突き所が悪かった場合………死に至る事も有る…………!!
  
  その時だった。苦しんでいる新一の手がコトリとなり全ての動きが止まったのは…………。
  
  ◆ま………まさか………新一までも…………死………!!?
  
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