ラン〜RAN〜

ザ・ドクター様

第40話 ハイウェイ

 
  
  ◆く……工藤よ……まさかオマエまでもかァ!!?
  
  新一の動きが止まった。全てが動かない。手も。足も。
  それを見た蘭はダッシュで新一の元に駆け寄り 新一を抱きかかえる。
  「う……嘘でしょ?新一?目を開けてよ………お願いだから………」
  「お願いだから目を開けてよ 新一ィィ〜〜〜〜〜〜〜!!!」
  蘭がそう叫びながら泣いた。体の水分を全て出し尽くすような勢いで。
  平次は長刀をダランと持ちながら言った。
  「スマン………工藤のねーちゃん………」
  「工藤のノドを突き仮死状態にし意識を取り戻そうとしたが…………失敗やったようや」
  その時であった。蘭の涙が新一の頬に伝い落ちたのは。
  その感触で……新一の感覚が呼び覚まされ 新一の目が開いた。
  新一が気づいたのを知った蘭は元気を取り戻し その顔に笑みを取り戻した。
  それを見た平次は呟いた。
  「失敗したと思ってはったが………成功してたんか………オレが分かるか?工藤?」
  「………………レオナルド・ディカプリオ………?」
  その言葉を聞いた平次は満足げに言った。
  「よし OKや 大丈夫やで……じゃ……後は任せたで 工藤のねーちゃん」
  「ちょ……ちょっと………大丈夫じゃないわよぉぉぉ!」
  そう絶叫する蘭。そこにヘルガが近づいて来た。
  「予想以上のデータを見せてもらった……礼を言う」
  そう言いながらヘルガが頭を下げた。
  「………一つだけ聞かせて?これは貴方の総統のスコルピオンの差し金なの?」
  「それはありません……我等のスコルピオン総統は卑怯な事を最も嫌うお方です……今回の事は私の独断で勝手にやった事……」
  「ネオナチスドイツの党員全員があの人のカリスマ性に惹かれて集まったのです」
  「スコルピオン総統のためなら命を捨てられる……ネオナチスの者達は誰もがそう思っているハズです」
  「……そして……それはこの私でさえも………」
  それを聞いた蘭は思っていた。
  (な…なんと言うカリスマ性を持っているの!!?スコルピオンという女性は!!?)
  「今日は この場で退散させて戴く……しかし 次に会った時には………負けない」
  「それは こっちのセリフよ」
  そう言った蘭はヘルガの後姿を見送った。
  蘭は新一の顔を見ながら言った。
  「ね……新一……大丈夫?アタシが分かる?」
  「あぁ………分かるに決まってるじゃないか………」
  「嬉しい………新一………」
  「次郎」
  その言葉を聞いた蘭は顔を引きつらせながら言った。
  「アタシ……女………」
  「花子」
  「違うわよッッ」
  「蘭………心配をかけてゴメン……これからは ずっとオマエの傍にいてやる……」
  「うん………新一……」
  そう言いながら2人はお互いを抱きしめた。

  東名高速道路。
  バイクに乗ったスコルピオンが走っていた。かなりのスピードを出している。
  このスピードで追突されたら吹っ飛ぶ………。そう言うスピードだ。
  その時だった。スコルピオンの後ろから 1台のバイクが迫って来た。それには少年が乗っていた。
  スコルピオンのスピードを越えるスピードで接近して来た。スコルピオンは それに気づいたのかスピードを緩める。
  それを見た少年もスピードを緩めた。
  「何者?」
  スコルピオンが接近してくる少年にそう問い掛けた。
  「ザナドゥ・スコルピオンだな」
  「そうよ?で 貴方は?」
  「黒ずくめの組織からの刺客……といえば分かるだろ?」
  「黒ずくめ!!?なるほど………」
  その時だった。少年の蹴りがスコルピオンのバイクにヒットしたのは。
  「ドカァッ」
  それを食らったスコルピオンはバイクを乗り捨てて軽やかに着地し ヘルメットを脱いだ。
  「フ……………この私の愛車を破壊して……タダで済むと思っているの?」
  「もちろん………タダで済むと思っているに決まってるじゃないか」
  そう言いながら少年はヘルメットを脱ぎ捨てた。その下から出現した顔は………。
  「オレの名は天草 銀……通称……アマギン」
  「アマギン…………その名前……覚えて置こう………」
  そして 2人の横を次々と車が過ぎていく。通常のスピードの車は この2人なら軽くかわせるだろう。
  しかし 高速道路を走っている車は勝手が違う。まさに走る凶器と化す。
  銀は呟いた。
  「さぁ 行くぜ スコルピオン……死を賭けた闘いの始まりだ」
  その時だった。銀がダッシュしてきたのは。ダッシュしてくる銀の顔めがけてヒザを放つ。
  それをかわした銀はスコルピオンの顔を掴み 車が走り込んで来るところに投げた。
  スコルピオンは手から着地し そのまま飛び退いた。
  そして 車が過ぎ去った瞬間 車の陰から飛び出て来た。
  スコルピオンの跳び蹴り…………!それを銀は体を反らせてかわした。
  「おっと………そうはいかない……付き合ってもらうわよ」
  そう呟きながらスコルピオンは腕を銀の首に引っ掛けた。
  そのままの勢いで銀を車に激突させる気だ。
  「クッ」
  走り込んで来る車が否応にでも視界に入る銀。
  次の瞬間 銀は首にかけられているスコルピオンの腕を軸にバック転して車との激突を防いだ。
  「へぇ」
  スコルピオンが 賞賛の意味を含めてそう言った。
  「今度は こっちの番だな」
  そう言いながら銀が蹴りを放ってきた。スコルピオンの顔狙いのハイキック。
  流れるように自然な蹴りだ。
  それをスコルピオンは紙一重でかわそうとする。しかし それが命取りだった。
  銀の靴の踵についている滑車がスコルピオンの右頬を削った。
  「ジャッ」
  「な………!」
  スコルピオンは頬から出て来た血を拭きながらそう言った。
  その顔に驚きの表情は隠せない。
  その瞬間 銀がさらに追撃して来た。
  銀のパンチ………!
  それを スコルピオンはかわし銀の顔に拳を叩きこむ。
  銀は それをくらって吹っ飛んだ。しかし すぐに体勢を立て直した。
  「ザッ」
  銀がスコルピオンに歩みを進めながら呟いた。
  「オレってさ―――――……人の―――――………」
  
  ◆高速でのスコルピオンとアマギンの激突!この究極の闘いに勝利するのはどちらだ!!?
    
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