銀がスコルピオンに歩み寄りながら呟いた。 「オレってさ―――――……人の―――――………人の痛みはおろか――………」 「自分の痛みさえも感じねェんだよ………」 「悪魔体質とでも言うと聞こえがいいかなッ」 「本当かどうか確かめてあげる」 そう言いながらスコルピオンがダッシュ。そこからスコルピオンは銀の顔にパンチを放つ。 パンチが当たる直前に銀がわずか移動した。ほんのわずか。 またもや スコルピオンのパンチが銀の顔にヒット。しかし 銀は平然としている。 「どうしたい?ザナドゥ・スコルピオン――――………?」 銀がそう言い終わるか終わらないかのうちにスコルピオンがダッシュ。そこから顔目掛けてパンチを放つ。 「ゴッ」 銀の顔にスコルピオンのパンチがヒット。しかし 銀はわずかに吹っ飛んだだけであった。 「効かねェなァ」 スコルピオンは思った。 (この男……無痛症なんかじゃないわね……完全にアタシの動きを見切ってヒットポイントを確実にズラしている……) (それも完璧に避けてしまうのではなく……拳の当たる感覚だけは相手に与えて効いていない自分を見せつけ精神的にも追い込む……) 「なるほどねッ」 スコルピオンがそう言った。 「何がなるほどなんだよッ」 そう叫びながら銀がダッシュし、パンチを放つ。 「なぁに―――――……アンタが嘘をついている事が分かっただけさ」 そう言いながらスコルピオンは蹴りを放った。 「ビシィッ」 銀の顔が苦痛に歪む。 なるほど。『無痛症』というのは早い話がハッタリ―――……ブラフだったのか―――……。 「ドシュッ」 次の瞬間、銀の腕が何かに貫かれた。 『何か』。それはナイフ?銃?ボウガンから放たれた矢?いや。どれも違う。 そして、その『何か』とは、六星竜一を再起不能にした時に用いられたモノと同じだった。 「ぐぁぁぁぁぁぁッ」 銀は左腕を押さえながら呻いている。 「さて…聞かせてもらうわよ…………黒の組織の誰に頼まれたの?」 そう言いながらスコルピオンが銀に歩み寄った。 来栖川邸。 綾香は呟いた。 「あのアマギン……本当に誰を狙っているのかしら?」 「心配ですか 綾香お嬢様」 「心配だわ……G−5……そして仲間達がやられてやしないかと思うと………」 「あのアマギンとか言う者はどういう男なのですか?」 「………そうね………セバスチャンはどう思うの?」 「そうですね………第一の印象では危険な男と……そう言う感じでしょうか………?」 「当たってるわね」 そう言いながら綾香は長い髪をさらりと掻き上げた。 「あの男………アマギンは―――――………」 「な………なんですと?無痛症!!?」 「えぇ………でも………そんな無痛症なだけの男にこのアタシが負けると思う?セバスチャン?」 「いいえ……思いません………お嬢様……あの男には何があるのですか?」 「アマギンの持つ最大の強さ……それは―――――………」 銀が背中から日本刀を取り出し、スコルピオンに斬りかかった。 「ブォッ」 乱雑に振り回し、スコルピオンに飛び込む隙を与えない。 何故、刀如きの前に飛び込まぬのか?と思うのならそれは大間違いである。 何故ならば、日本刀とは―――――………見かけによらず重いのである。 模造刀や飾り刀を見た事のある人、触っている人にとっては、この言葉は疑問符がつくだろう。 まぁ、それも当然だ。何故ならば、それは実戦用の刀では無いから。 この重い日本刀が身体に触れればどうなるのか…………? 皮膚は破れ、裂ける。 肉は切れ切れに飛び散る。 骨は粉々に砕かれる。 切れ味は鋭く、破壊力もバツグン。それが日本刀である。 スコルピオンは、それを避けながら思っていた。 (………………とりあえず、あの日本刀をなんとかしなきゃ………さて どうする?) スコルピオンは周りに何があるかを確認し、次の瞬間にダッシュした。 前では無い。真横に。 そして何かを掴み取り、銀の顔目掛けて投げた。それは銀の被っていたヘルメットだった。 「甘いッ」 そう叫びながら銀は、それ目掛けて日本刀を振り下ろした。 「ピシィッ」 次の瞬間、その音が銀の日本刀から聞こえて来た。 「日本刀とは鋼と言っても打ち付ける角度によっては意外に刃こぼれしてしまう………」 「しかし、今の私の攻撃で刃こぼれするとは大した日本刀でも無かったみたいだわね」 その時、銀の日本刀が柄元から崩れ落ちた。 そう言いながらスコルピオンは笑みを浮かべた。余裕の笑みだ。 「……さて、聞かせてもらいましょうか?黒ずくめの組織の事―――……」 そう言いながらスコルピオンは銀に歩みを進める。 迫り来るスコルピオンを見ながら銀は思っていた。 (バカなッ!!?わざわざ関の刀匠に鍛えて貰った数打ち物だぞ!!?そんなのが破壊されるのか!!?) (バカなッッ) スコルピオンが銀の寸前まで迫っている。 来栖川邸。 セバスチャンが言った。 「アマギンの最大の強さは刀などではないのですか?お嬢様?」 「えぇ、そうよ……アマギンの武器がただの日本刀だったら、アタシに倒されているわ……軽くね……」 そう言いながら綾香は笑みを浮かべた。 高速道路。 スコルピオンがダウンしていた。 スコルピオンは立ちながら思っていた。 (バ……バカな…あの技は…ッッ) ◆な………何をしたァ!!?アマギンッッッ! 続きへ
がーんスコルピオンがっΣ(=□=;)