ラン〜RAN〜

ザ・ドクター様

第47話 トランプ

 
   大地に着陸したキッドは「にぃっ」と笑みを浮かべている。
  「噂には聞いていた…日本を暗躍する宝石専門の怪盗がいると言う事を…」
  「その名を怪盗キッド…キミの事よ」
  「外人にも俺の名前が知られているとは光栄だな」
  「フフ…」
  シェラザードがそう笑みを浮かべた。
  キッドは一旦俯き、その面を上げた。
  「さァ 始めようかッ」
  キッドはそう言うとダッシュし、瞬時にシェラザードの懐に飛び込む。
  (迅い…!)
  「ドムドムドムドム」
  キッドが瞬時にパンチを数発シェラザードに叩き込んだ。
  だがシェラザードは微動だにしない。
  次の瞬間……!
  「憤ッッ」
  シェラザードが連続で拳を放った。先程のキッドのパンチに当て付けるるように。
  キッドはそれを喰らってたじろいだが倒れなかった。
  「ほぅ かなりの耐久力…」
  シェラザードがそう言った瞬間だった。
  キッドの強烈なローキックがシェラザードの脚を叩いたのは。
  「ビシィッ」
  それを喰らったシェラザードの口から言葉が漏れた。
  「無理ですよ……君の力では私を敗北させるなど とてもとても……」
  「そう捨てたモンじゃねぇぜ」
  キッドはそう言った。余裕の笑みを浮かべつつ。
  「でもまァ…ある意味事実かもな…」
  「俺は他の奴等とは違う…格闘家じゃない……だからこそだ……」
  「だからこそ…勝てるんだよ…」
  「それは…どういう意味?」
  余裕の笑みを浮かべているキッドにシェラザードがそう問い掛けた。
  「…来てみれば分かるさ…来いよ…」
  「言われ無くても」
  シェラザードはそう言いながらダッシュ。
  そして拳を振り上げた。キッドを殴るために。
  「ガコッ」
  吹っ飛んだキッドはもんどり打ってダウン。
  そこから勢い良く立ち上がって拳を放つ。
  「バヒュッ」
  「!!!!」
  「ガコォッ」
  それを顔にまともに喰らったシェラザードは倒れた。
  「ドォ…ッ」
  「これでワカッたろう」
  「職業意識が違うんだよ」
  「格闘家は戦うのが仕事…そして魔術師は人を騙すのが仕事ッッ」
  「人を騙すのはお手のモノ―――」
  「ぐぅぅっ」
  そう呻きながらシェラザードは立ち上がろうとする。
  「おっと」
  そう言いながらキッドは蹴りを放った。
  その蹴りでシェラザードが立ち上がるのを阻止するキッド。
  「立ち上がらせはしないぜ」
  「立ち上がらせちまったら恐らく俺が不利になっちまう…」
  それを聞いたシェラザードはククッと笑った。
  「なるほど…今の状況を的確に判断しているわね…」
  「―――しかし―――……」
  そう言いながらシェラザードは大地に手を着き左の蹴りを放った。
  それをキッドがかわした瞬間に右の後ろ廻し蹴りがキッドを襲った。
  右踵がキッドの顔を襲う。
  「チッ」
  シェラザードの蹴りをかするだけに終わらせたキッドは驚いていた。
  シェラザードが立ち上がっている―――。
  何事にも変え難い真実であった。
  「バカな…ッッ」
  キッドがそう言ったのを聞いたシェラザードは笑みを浮かべていた。
  「まさか蹴りの勢いで立ち上がるなんて…ッッッ」
  「G−5はずば抜けた力を持つ者の集まり…全部の能力がずば抜けているがその中でも私の専門は……」
 そう言ったシェラザードはダッシュしつつパンチを放つ。
 それを見切り紙一重でかわすキッド。
 しかし完璧にはかわしきれなかった。
 切れていた。キッドの右頬が切れていた。
 「な……ッッ」
 「道具だッッッッ」
 そう言いながらシェラザードは右拳を開いた。
 そこには短いナイフがあった。柄を含め長さ4cmくらいの…!
 それを見たキッドは呟いた。
 「なるほどねェ」
 「まさか 卑怯とは言わないわよね?」
 「いや……その逆さ……道具を使ってくれてありがとう」
 「……これで…こっちも遠慮無く道具を使える」
 「エ…?」
 その言葉を聞いたシェラザードは目を丸くする。
 キッドは懐からトランプの束を取り出した。見た目は普通のトランプ…………。
 「フフフ…………」
 キッドの顔には笑みが浮かんでいた。
 「ピッ」
 次の瞬間 キッドの手からトランプが放たれた。
 それをシェラザードは紙一重で避けた。
 「………なるほど…恐らくそれは普通のトランプ………しかし 水平に勢いよく投げれば……」
 「………トランプの一辺一辺は………刃と化す……………」
 シェラザードは言葉を続ける。
 「思いもよらなかったわ………一般によく知られている遊具であるトランプをこんな風に使うとは………」
 「恐るべきはトランプ……いや…………怪盗キッドね………」
 それを聞いたキッドはトランプを投げ 突進する。
 「おしゃべりしている余裕なんてあるのかい?」
 そう言いながら。
 トランプに気を取られているシェラザードにキッドが激突した。
 「ドォッ」
 キッドの体当たりでシェラザードが吹っ飛び しりもちをついた。
 「……………クッ」
 そう言いながらシェラザードは自分の懐を探る。
 「!!!?」
 「!!!!?」
 しかし無い。いくら懐をまさぐっても目的のものが見つけられない。
 (な…無い!!?)
 「探しているのは………これかい?」
 そういいながら キッドが手に持っているビンを弄んでいた。
 「………ッッ……それは……ッッ」
 そして それをキッドは大地に投げつけた。
 「バシャァァァァァン」
 「忘れたのかい―――……俺は怪盗………盗むのも仕事なんだよ」
 それを聞いたシェラザードは声が出なかった………。
 「〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ」
 
 ◆さすが怪盗キッド!役者が違う!

 
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