ラン〜RAN〜
ザ・ドクター様
第51話 決着
一が驚きながら口を開いた。
「い…生きていたのかよ…明智さん……」
「フフ…私は簡単には死にませんよ……」
明智の登場で一番驚いたのは殺したと思っていたシェラザードでは無いだろうか。
「で…でもどうして…?確かに遺体だって……」
「遺体…?果たしてそれは本当に遺体でしたか?」
「え?だ…だって…葬式やったんだろ?」
「フフ…葬式には必ず遺体が使われると言う事…それが思い込みなのですよ」
「まぁ…それは万能と思われる医学にも言える事ですがね…」
「あれは遺体では無く…本物の私だった…そんな私を定法通りに火葬したら流石の私も生きてはおれぬだろう」
「だから海葬だったのかッ」
一がそう叫んだと同時に明智は笑みを浮かべた。
「その通りです……海葬ならちょっと遠くまで出た後船か何かで戻って来れますからね…」
「で…でもっ…あの機械の反応は全然…ッッッ」
「それもトリックのひとつです」
「医学とは普通は人間が成長させていく物……………」
「しかし人間と言う物は厄介なもので自分の手に負えないと解ると自分以上の能力の物にバトンタッチしたがる…」
「脳波――――心拍数――――いずれも機械に分析してもらい判断をする――――」
「機械が反応を示さなければ死亡と簡単に判断する――」
「今の医学が『機械との会話』と揶揄される所以です」
「そして そこを私は衝いた」
「機械を騙すために脳波や心臓を自分の意志で止める事は不可能…」
「ならば どうすればいいか?答えは簡単です…」
「機械に反応させなければいいのです」
「反応…?」
「そう…こう言うと実際には難しいように思えるが実は簡単なのです」
「そもそもの原理は体内に流れている微量の電気を感じ取る事………」
「ならばその電気を通さなければいいだけの事……」
「そこでこれ…」
そう言いながら明智は何かを懐から取り出した。
「そ…それは………?」
何か。それは薄く3cm四方のモノだった。
それを見た高松は呟いた。
「なるほど……絶縁体ですか…」
「絶縁体……?」
「そう 絶縁体です…読んで字の如く電気を通さないッ」
「これを機械のコードをつなげている部分に挟む…そうすると反応しなくなる…」
「そ…そんなトリックが…」
一は驚きながらそう言った。
「見事です…明智さん…貴方の行動は機械に頼り切った医学界に一石を投じる事になるでしょう」
それを聞いた明智は呟いた。
「いえ………高松さん 貴方のおかげです」
「そのトリックをやろうとした私ではあったが………貴方には見抜かれていた」
「貴方の協力なしではここまで成し遂げられなかった………礼を言う」
そう言いながら明智は頭を下げた。
「………どうですか? 貴方の望む状況ですよ」
「確かに これは私の望んだ状況………これでやっと……借りを返せる」
そう言いながら懐から銃を抜く明智。
「ゾロ………ッ」
(拳………ッッ……銃………ッッ)
シェラザードは拳銃を見ながらそう思っていた。
それを見た一は思わず呟いていた。
「マ……マジかよ………明智さん………」
それを聞いた明智は呟いた。
「私は冗談が嫌いだ」
「……ッッ」
声にならぬ声をあげるシェラザード。
(ま………まさか………ッッ)
(まさか本気…………ッッ!!?)
(いや………日本の警察官がそう簡単に発砲できるワケが無い……ただのハッタリ…………)
「ハッタリではありませんよ」
明智がそう言った。シェラザードの心を読んだかのように。
「………まず………日本の警察の持っている銃は 暴発防止のために一発目は空砲になっている………」
そう言いながら明智は拳銃を上空に向けた。
「ダァ――――――――――――ン」
「今のが一発目…………もう空砲は無い………覚悟はいいですね?シェラザード?」
そう言いながら明智は銃口をシェラザードに向けた。
(コ………コイツ………ッッ………本気で………ッッ)
(本気で撃つ気だッッ この私をッッッッ)
次の瞬間 明智の銃口からそれは放たれた。
「ドンッドンッドドゥッドゥッ」
「やめてくれェェェッ 私の負けだァァァァッ」
シェラザードが泣きながらそう叫んだ。
そして 高松がシェラザードに駆け寄り抱き締めた。
「ご安心下さい………もう楽になっていいのですよ………グンマ様」
一が呟いた。
「まさか六発全てが空砲とはな………恐れ入ったぜ 明智さん」
「当たり前でしょう?私はまだ懲戒免職(クビ)になるワケにはいかないんですよ?」
「残り………3人…………彼等を捕らえるまでは」
「まぁ………これで………決着だ」
◆シェラザード 遂に敗北を知る………!
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