ラン〜RAN〜
ザ・ドクター様
第57話 血
「ユラァ…………」
シュトロハイムがゆっくり立ち上がった。
スローモーションのビデオを見ているかのように ゆっくり ゆっくりと。
そしてゆっくりと高松に近づいていく。
「それ以上動かない方がいいですよ」
高松がそう呟いた。
「………何故?」
シュトロハイムがそう訊ねた。
「貴方の周りに鋼線を張らせて戴きました」
「1ナノミクロンにも満たぬ程の細さの鋼線………」
「常人に見切れるハズが無い」
その時だった。シュトロハイムが右手を振り上げ 勢いよく振り下ろしたのは。
「ピキィン」
「………な…………!!?」
高松は目を見開きながら驚いていた。
「な………?あの鋼線を斬るとは………?しかも手刀で………」
「ザッ」
シュトロハイムが再び 高松めがけて歩みを進める。
「ッドンッ」
高松が踏み込んでの正拳をシュトロハイムのボディに放った。
「がふぅっ」
シュトロハイムが胃液を吐いた。そこに追い討ちをかける高松。
「ガコッ」
高松の蹴りを拳でブロックしたシュトロハイム。
観客達が叫んでいた。
「すっげぇ〜〜〜ッ」
「あの蹴りを拳で止めやがったよッ」
「………なるほど………大方の攻撃の対策は出来ていると言う事か」
「ならば………」
そう言いながら高松は自身の白衣を掴んだ。
「これはどうですか」
次の瞬間 シュトロハイムの視界が白一色になった。高松がシュトロハイムに白衣を投げつけたのだ。
「!!!?」
驚くシュトロハイムに白衣越しの打撃がヒット。
ヒット。ヒット。ヒット。
続けざまにヒットする。
高松の白衣が赤く染まって来た。しかし高松は手を休めない。
「ドドドドドッ」
そして………シュトロハイムが崩れ落ちた。
「ドォ……ッッ」
その時 シュトロハイムが立ちあがり 高松の白衣で顔をゴシゴシと拭いていた。
それを見た高松は思っていた。
(き………効いていないと言うのか)
(あの猛攻がッ 全く効いていないと言うのかァァァッ)
(バカなッ)
その思いと同時に高松がダッシュした瞬間。
白衣が高松の視界を包んだ。
…………と同時だった。
シュトロハイムのドロップキックが高松の顔を粉砕したのは。
「ドチュゥッ」
その衝撃で高松は吹っ飛び パトカーに激突した。
「ガ―――――――ンッ」
「ドシャァァッ」
高松は背中からパトカーにぶつかり そのまま跳ね返って大地に突っ伏した。
ブライトは口を開いた。
「シュトロハイムと言う男にとって強者と言うのは全て玩具と同じなんだよ」
「飽きるまで……本当に飽きるまでそれを使って楽しむ………遊ぶんだ…………」
「そして 飽きられた玩具の末路は……………」
高松にシェラザードが徐々に接近する。
「ザッ……ザッ……」
そして高松の服を掴み 無理やり立ち上がらせた。
「ふむ…まだ辛うじて意識はあるようだ……しかしトドメを刺させてもらおうか」
そう言いながらシュトロハイムは左手を思いっきり引いた。
パンチでこの勝負に決着をつける気だ。
その時 明智はグンマの近くにいた。
「グンマ………これを読み上げるのですッ」
そう言いながら明智はグンマに一枚の紙を渡した。
(意識がまだあるのならば聞こえるハズッ……それに賭けるしかありません)
シュトロハイムが高松めがけて拳を振り下ろした。
ブライトは叫んだ。
「破壊(こわ)される!!!」
グンマが短く呟いた。
「高松 大好き」
その瞬間だった。
「オッケ――――!!グンマ様ッッッッ」
高松が勢いよく鼻血を出したのは。
鼻血がシュトロハイムの目に入った。
「うぉ……っっ!!?」
シュトロハイムは地を拭い去るべく顔を覆った。
高松はグンマをチラリと見ながら呟いた。
「グンマ様……有難うございます……私を助けて頂いて……」
そして 視線をシュトロハイムに向け………。
「さァ シュトロハイム……そろそろ幕を下ろしましょう」
◆グンマの思わぬ加勢で形勢逆転!いけェ!高松ぅぅっ!
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