ラン〜RAN〜

ザ・ドクター様

第58話 終幕

  「そろそろ 幕を下ろしましょうか シュトロハイム」
 高松が膝をついているシュトロハイムを見下ろしながらそう言った。
 シュトロハイムは顔に付着した鼻血を拭き 視力を回復させていた。
 「ゴシゴシ………」
 「まさか こんな行動に出るとは思わなかったよ……鼻血を目潰しとして用いようとは………」
 「未だかつて無かった事だ………」
 「まさしく 前代未聞…………」
 シュトロハイムが立ち上がろうとしたその瞬間 高松が蹴りを放った。
 「ドゴッ」
 それはまともにシュトロハイムの腹に入った。
 「おっと」
 シュトロハイムはそう言いながら高松の蹴り足を両手で掴んだ。
 「ブォンッ」
 シュトロハイムが高松を振り回す。なんと言う怪力。その外見からは想像出来ぬ程の力。
 1回転。2回転。3回転。4回転。5回転。6回転。7回転。
 回転の勢いが止まらない。それどころか 更に増していく。
  「ギュンギュンギュンギュン」

  それを見たグンマは呟いた。
  「視(み)………視(み)えない――――――――…………」

  「ドブォッ」
  次の瞬間 高松が投げられた。そのスピードはいささかも落ちない。

  「高松ぅぅぅっ!」
  グンマがそう叫んだ。

  「グワシャァァッ」
  パトカーに激突した高松。パトカーの前部がグシャグシャになる程の破壊力。
  それをまともに食らってタダで済むハズが無い。
  しかし 高松は立ち上がって来た。ボロボロになりながらも。
  何が高松を立たせるのか………。
  何がここまで高松を駆り立たせるのか…………?
  「グンマ様………」
  高松は息も絶え絶えながらそう呟いた。
  「私は………貴方を………護り……………」
  その最中にシュトロハイムの拳が高松の顔めがけて放たれた。
  「グワァキィッ」
  グンマの蹴りがシュトロハイムの顔を捕らえ シュトロハイムの拳はわずかに高松に届かなかった。
  「グンマ様………」
  高松がそう呟いた。
  「手伝うよ高松………いや………そこで見ていてくれ 高松………」
  グンマは高松を見下ろしながらそう呟いた。
  (お………おぉぉ………グンマ様………)
  (立派になられた………)
  (今までで………一番立派なグンマ様が………ここにいる)
  「ガコォッ」
  シュトロハイムの顔にグンマのパンチがヒット。
  そのままシュトロハイムは吹っ飛ぶ。
  (へぇ…………)
  そう思いながら。
  足から着地し 態勢を整えるシュトロハイム。そこにグンマの蹴りが襲い掛かる。追い討ちだ。
  「ドゴォッ」
  押すような蹴りがシュトロハイムの腹に入った。
  間を置かずに蹴。
  突。
  叩。
  払。
  相手に攻撃をするヒマさえも与えぬ猛攻。
  蹴。
  突。
  打。
  叩。
  相手との差を詰めていく。
  全ての差を徐々に。
  詰めていく……………。
  
  打。
  打。
  打。
  打。
  蹴。
  蹴。
  蹴。
  蹴。
  叩。
  叩。
 殴。
 殴。
 殴。
  
  グンマの打撃を受けつづけながらシュトロハイムは思っていた。
  (強くなっている ………)
  (あの医者を傷つければ とある感情により その強さが引き出される………)
  (その通りの成果だ………)
  (しかし 残念ながら…………)
  (私には遥かに力及ばぬ)
  その思いと同時にシュトロハイムの拳がグンマの顔を叩いた………。
  そして吹っ飛ぶグンマ…………。




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