漆黒のモレンド
作:Gahal様
正月の北海道で起こった地下研究所爆発炎上殺人事件、あれから1ヶ月がすぎた今でもまだニュースやワイドショーで取り上げられている。 地下研究所爆発炎上殺人事件――とある組織の地下研究所にて“人体実験”と称された大量殺戮が行われた。 しかし、怪盗キッドの活躍によってこの地下研究所は崩壊した。 そのとき、キッドたちによって救出された一人の少年がいた。 少年の名は神崎守。 彼は、この組織の人間によって、生まれたときから(ずっと同じ場所ではないが)監禁されていたのだ。 キッドに救出され、現在は東京の養護施設で暮らしている… 2月9日(金) キーンコーンカーンコーン… ここは帝丹小学校1年B組、すでに今日の授業が終わり、みんな帰る準備を始めていた。 元太「おう灰原」 すでにランドセルを背負った元太が、まだランドセルに荷物を入れている灰原に声をかけた。 灰原はピタッと手を止め、ゆっくり元太の方を向いて静かに答えた。 灰原「何か用?」 元太「明日からのことだけどよ。ちゃんと阿笠博士に伝えてくれたか?」 元太がそう言い終えたとき、歩美と光彦も灰原の席の周り集まってきた。 灰原「ああ、あの事ね。大丈夫、ちゃんと伝えておいたわ。」 光彦「そ、それで博士は何て?」 翌日からは3連休(2月10日土曜日・建国記念の日・振替休日)である。 元太、歩美、光彦は、その3連休の初日である2月10日にオープンする日本最大のアミューズメントビルに行く計画を立てたのだ。 そして阿笠博士に保護者として一緒にいってもらおうと考えた。 歩美「お願い哀ちゃん。博士に頼んでくれない?米花ジョイシティに連れてって…て」 灰原「分かったわ…今夜、博士に聞いておいてあげる。」 その返事を聞くために元太たち3人は帰る準備をしている灰原を呼び止めたのだ。 灰原「おう、ええぞ。ワシが連れてってやろう、って。そう言ってたわ。」 その瞬間、3人の表情がパーッと明るくなった。 歩美「よかったぁ〜」 光彦「本当に明日行けるんですね?」 元太「明日は遊びまくるぞ〜」 3人の喜ぶ様子を見て、灰原の表情も少し和らいだ。 コナン「ったく、くっだらね〜。たかが遊園地ぐらいでそんなにさわぐなよ。」 帰る準備をとっくに済ませ、元太たちの横で話が終わるのをずっと待っていたコナンが半分呆れた顔をしながら言った。 しかしその瞬間、元太、歩美、光彦はものすごい剣幕でコナンに言い寄っていった。 光彦「たかがとは何ですかたかがとは!!?」 歩美「それに全然くだらなくなんかないよ。コナン君だって行けばきっと楽しくなるよ。」 元太「そうだぞ!!」 コナン「あ、わ、わるかったよ。」 3人の剣幕に押され、コナンはあわてて謝った。そのとき、ふいに誰かが自分たちを呼ぶ声が聞こえてきた。 「お〜い、少年探偵団のみんな〜」 その声に5人は聞き覚えがあった。、5人は一斉に振り向いた。 すると、教室入口のドアの所でコナンたちに向かってにこやかに手を振っている一人の少年がいた。 光彦「君は確か…」 元太「兄ちゃんがいなくなったから探してくれって依頼してきた…」 歩美「A組の俊也君!!」 俊也君、灰原が転校してきた日、行方不明になった兄を捜してくれと少年探偵団に頼んできた1年A組の俊也君だ。 元太、歩美、光彦はすぐに俊也のところへ駆け寄って行った。コナンと灰原もあとからゆっくりと近づいてきた。 光彦「どうしたんですか?ひょっとしてまた何か依頼ですか?」 俊也「うん、でも頼みたいことがあるのはぼくじゃなくてぼくの友達なんだ。」 コナン「友達?」 俊也「うん、だから悪いけどまたA組の教室まで来てくれるかな?」 というわけでコナン達5人は俊也と一緒にA組の教室へ行くことになった。 歩美「ねえ、お兄さんは元気?」 俊也「うん、とっても元気だよ。」 あっという間に6人はA組の教室に到着した。(A組とB組は隣である) 同じころ、大阪 そこはほとんど真っ暗に近かった。 その建物は鉄筋コンクリートでできていたが、あちこちヒビが入り、ばしょによっては焦げて真っ黒になっていた。 ここは廃墟だった。 正月真っ只中に突如爆発炎上した、ここは化学繊維(ポリエンチレン・ナイロンなど)の加工工場だった。 炎はナイロンを伝ってあっというまに工場すべてに燃え広がり、工場に隣接する50世帯以上の人が避難する騒ぎになった。 火は40時間燃え続け、やっと火が消えたときには工場とそれに隣接する住宅30棟以上が全焼するという大惨事になっていた。 (住民は避難していたので死者やけが人は出なかった) 平次はその工場の通路を歩いていたのだ。 その爆発炎上からすでに1ヶ月が経過していたが、不況による資金不足のためがれきの撤去も行えず、工場はそのときのままの状態だった。 平次は懐中電灯で前を照らしながらゆっくりと進んでいたが、地下1階に下りてからは太陽の光も届かず、懐中電灯がなければ真っ暗だった。 どうして平次が焼け跡なんかを探っているのかというと、その工場の爆発炎上と同じ日に北海道のある雑居ビルが爆発炎上したからである。 しかも1000キロも離れたところにある2つの建物を結びつけるものはそれだけではなかったのだ。 その2つの建物に同じ人物が出入りされているのが目撃されていたのである。 さらに、爆発した2つの建物の地下にはどちらも謎の研究施設があったのだ。 平次「おっ、あれやな、地下研究所への入り口は」 それは地下1階からさらに下へ下りる階段だった。 平次はその階段の1段目に足をかけた。 そのとたん、階段はくずれ、平次は真っ逆さまに落ちていった。 平次「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・」 再び帝丹小学校1年A組の教室。 授業もとっくに終わり、みんなが帰ってしまった教室にたった一人残っていた少年に俊也は声をかけた。 俊也「お〜い、守君。連れて来てあげたよ。」 守「俊也君、ありがとう。」守はそういいながら俊也の所に駆け寄ってきた。 俊也「みんな、紹介するね。こちら神崎守君。守君は先週引っ越してきたばかりなんだ。」 まずはお互い自己紹介をした。 守「よろしくね。」 コナン「ボクは江戸川コナン」 歩美「私、吉田歩美」 元太「オレは小嶋元太。探偵団の団長だ。」 灰原「灰原哀よ。」 光彦「僕は円谷光彦です。よろしく」 元太「それでよ、頼みたいことってのは何なんだ?」 守「実は…探してほしい人がいるんだけど…」 コナン「探してほしい人?」 守「うん。実は…怪盗キッドを探してほしいんだ。」 コナン・歩美・光彦・元太「怪盗キッド!?」 光彦「怪盗キッドってあの怪盗キッドですか?」 元太「あの怪盗キッドってどのキッドだよ?」 光彦「あ、だからそれは…」 コナン「とにかく、守君は怪盗キッドに会いたいわけだ。」 守「うん。」 コナン「問題なのは、あいての住所も電話番号も、顔や名前さえも分からない事だ。」 光彦「そうですよね〜そんなの探しようがないですよね。」 コナン「いや、一つだけ方法はあるんだけど…」 歩美「方法って?」 俊也「分かった。キッドの予告状だね。そこに書いてある場所に先回りして、キッドが来るのを待ってればいいんだ。」 元太「おおっ!」 コナン「でも…」 コナンが何か言いかけたが、先に灰原がそれを言ってしまった。 灰原「でも、今は出てないはずよ。キッドの予告状。」 コナン「そうなんだ。予告状が出てなければ先回りのしようがない。」 それを聞いて元太・歩美・光彦・俊也そして守はがっくりと肩を落とした。 守「もういいよ。キッドに会うのはあきらめるよ。ありがとう、みんな。」 守がキッドに会うのをあきらめたので、コナンたち5人は帰っていった。 さらに俊也も帰っていったので教室には守一人になっていた。守もランドセルを背負い、校舎を出てグランドを校門に向かって歩いていった。 守がちょうど校門のところにさしかかったとき、守は誰かに呼び止められた。それはコナンだった。 コナン「よっ!」 守「コナン君、帰ったんじゃ…」 コナン「いや、君に聞きたいことがあって。」 守「聞きたいこと?」 2人は歩きながら話を続けた。 コナン「どうして、そこまで怪盗キッドに会いたいんだ?」 守「そ、それは…」 一旦何かを言おうとした守だったが、すぐに口を閉じ、うつむいてしまった。 コナン「言いたくないなら、言わなくていいよ。」 守「うん」 コナン「でも、そんなに会いたいのにあきらめちまって本当にいいのか?」 守「・・・」 コナン「ん?」 守「どうかしたの?」 コナン「いや、なんでもない」 今確かに2人の後をつけてくる人影を見た気がした。しかしコナンと目があったとたんその人影は姿を消した。 2人はさらに歩き続けた。 守「実はボク、1ヶ月前まで北海道にいたんだ。」 守は静かに語り出した。 守「北海道のビルの地下牢にずっと閉じこめられてた。」 コナン「北海道のビルの地下牢って、ひょっとして正月に爆発炎上したあのビルか?」 守「うん。悪いやつらに閉じこめられてたんだけど、そのとき助け出してくれたのが怪盗キッドなんだ。 ボク、生まれたときから外に出たことなんかなかった。幼稚園や保育園にも行ってないし、6歳になっても小学校にも行けなかった。 だから友達もいなかったし、パパやママにも会ったことがないんだ。」 コナン「・・・」 守は目に涙を浮かべながら話し続けた。 守「さびしかった…」 コナン「そんな地獄から君を救い出してくれた…キッドは君にとって命の恩人なんだ…」 守「うん…」 コナン「ごめん、やなこと思い出させちまって」 守「いいんだよ。」 やがて2人は交差点にさしかかった。 守「ボクはこっちなんだ。コナン君は?」 守は交差点の左を指さしながらコナンに聞いた。その左への道は車1台が通れるほどの細い、しかしかなり急な下り坂になっていた。 コナン「ああ、オレはまっすぐだけど、大丈夫か、ひとりで?」 守「大丈夫だよ。じゃあまた学校でね。」 コナン「あ、ああ」 守は左の道を進んでいった。コナンも自宅(正確には毛利探偵事務所)への道を帰ろうとした。 しかし、そんなコナンの背後を一人の男がのろのろと守が行った道を下っていった。 コナンはたまたま振り返った。その男は手にナイフを持ち、まっすぐ守の方に向かっていた。 コナン「逃げろ守!!」 守「え?」 コナンに呼ばれて振り返った守にむかってその男は走って近づいていった。 コナン「くそっ」 コナンも守の方へ走っていった。 男は守を捕まえ、ナイフで刺そうとした。 守「うわああああ」 コナン「させるか!!」 コナンはボール射出ベルトのサッカーボールをキック力増強シューズで男の手めがけて蹴った。 ボールは男の手に当たり、その手からナイフが弾かれた。 コナンがさらに近づいていくと、男はナイフを置いたまま走って逃げていった。 コナン「大丈夫か?」 守「うん、大丈夫。」 だが、守の体はガタガタ小刻みに震えていた。 コナン「今の男は一体・・・。」
Gahal様あとがき
新小説「漆黒のモレンド」第1章!!
またまた、前小説「奇術師の死闘」の続きとなっております。
この謎の組織(黒の組織ではないよ)の話は「第三の予告状」→「after」→「奇術師の死闘」→「漆黒のモレンド」と続いているわけですが、
今回の「漆黒のモレンド」で完結させることにします。
まだ何章になるかわかりませんが、よろしくお願いします。
Gahal様のコナン&金田一final!!
うわーーーーい!奇術師の死闘の続編をありがとうございます!
守君の登場でコナンや平次までが出てきてくれてかなりワクワクしてます。ええ、出番が少なくても・・・(ぇ)
当然キッドも出てくることを予想しつつ・・・・そういえば金田一君も出てくるということは東西金(何)名探偵が揃うんでしょうか?
謎の組織が気になりつつ続き楽しみにしています〜♪byあっきー