漆黒のモレンド 第13章
作:Gahal様
3月11日(日)午前5時 コナンは、まだ誰も目覚めていない時間に起きだし、服を着替え顔を洗った。 そして犯人追跡メガネを作動させ、毛利探偵事務所をそっと抜け出した。 前日仕込んだ発信器で、ベンツの男を追跡するために… メガネのレンズには発信器の点が表示されている。 それはベンツの男が半径20km以内にいるということを意味している。 尤も、ベンツの男の狙いが守である以上、この町から離れることは考えにくいのだが。 コナンはその発信器によって示されている場所に向かってゆっくりと歩きはじめた。 米花駅に到着した始発の電車から一人の乗客が降りてきた。 肩にかかるくらいの赤髪でハイヒールにスーツにコートを着た女性、年は30歳ぐらい。 それは、大阪で平次と出会い米花町まで一緒に来た女性、池羽鈴子だった。 彼女は米花不動総合病院で平次達と別れてからどこかへ行った後、再び米花町へ戻ってきたところだった。 始発列車から米花駅で降りた乗客は彼女一人だった。 彼女は駅を出た後、米花不動総合病院に向かって歩き始めた。 コナンが米花駅前を通りかかったのはそのわずか30秒後のことだった。 発信器の点は米花不動総合病院の方向を指し示していた。 まさか、守を狙ってもうすでに病院の中にいるのか? そう思ったコナンは急いで米花不動総合病院へと走っていった。 途中、コナンは鈴子を追い抜いたが、その女性が池羽鈴子だとコナンが気づくことはなかった。 なぜなら平次から鈴子のことを聞いてはいたものの本人の顔などは知らなかったからだ。 鈴子の方もコナンのことは知らないので、まだ薄暗い中を走っている子どもを、ただ少し不審に思っただけだった。 やがてコナンは発信器が示す場所に到着した。 が、発信器の位置は米花不動総合病院ではなかった。 そこは米花不動総合病院からさらに1kmほど進んだところにある交番だった。 その交番は交通量の少ない交差点の角に位置し、近くには何もない場所だった。 発信器は間違いなくその交番の中を指していた。 交番は無人でドアは開いており、センサーや防犯カメラは破壊されていた。 電話線も切られているようだ。 コナンはそっと中に入った。 交番には、正面から見えている部屋だけでなく奥にも部屋がある。 奥の部屋にも誰もいない。しかし発信器の反応は確実に近くなっている。 コナンはそっとドアを開け、入ってみた。 発信器があった。一番奥の壁に発信器が貼り付けられていたのだ。 コナンがベンツの男に貼り付けたボタン型発信器だ。 つまりベンツの男は自分に発信器が仕掛けられたことに気づいていたのだ。 次の瞬間、コナンは後頭部を強く殴打され、意識を失い、その場に倒れ込んでしまった。 その後ろにはベンツの男がコナンを見下ろしながら立っていた。 右手に拳銃を持ち、残忍な笑みを浮かべながら… 午前10時 一方、速水玲香と沖野ヨーコの船上パーティが行われた豪華船の中では、金田一が速水玲香、沖野ヨーコ、一條彌瑠、二橋絵理迦、 三枝利巫の5人をレストランに集め、密室状態だった船室の中で畠山戸螺夢が殺害された事件の真相解明を始めようとしていた。 その他レストランには剣持警部、中村刑事、佐木竜二の3人も集まっていた。 佐木竜二だけは、他の8人からはなれ、レストランのテレビに自分のビデオカメラをつなげる作業をしていた。 金田一「今から、この船で畠山戸螺夢さんが殺害された事件の真相をお話しします。」 一條「真相って、犯人が分かったってこと?」 金田一「ええ、犯人はこの中にいます。」 この言葉により、速水玲香、沖野ヨーコ、一條彌瑠、二橋絵理迦、三枝利巫の5人は騒然となった。 そんなとき、ふいにレストランのドアが開いた。 明智警視が入ってきたのだ。 剣持「明智警視!!」 明智「私もその事件の真相を聞かせてもらおうと思いましてね。」 金田一「ああ、構わないけど」 剣持「休暇の方はよろしいのですか?」 明智「ええ」 明智が空いている席に座ったのを確認し、金田一は話を始めた。 金田一「まずは、畠山さんが遺したダイイング・メッセージからお話ししましょう。」 剣持「あのひらがなの『け』てやつか?」 金田一「ああ。けどあのダイイングメッセージは『け』なんかじゃないんだ。」 剣持「じゃあ何なんだ?他に考えられるのは『1+』とか、カタカナの『ノナ』とか、漢字の『土』か『士』か『干』を回転させたものくらいだが。」 三枝「???どれだとしてももサッパリ分かんないわ〜」 金田一「分からなくて当然さ。そのダイイングメッセージはまだ完成していないんだからね。」 剣持「何!?どういうことだ?」 金田一「畠山さんがダイイング・メッセージとして残そうとしたのは犯人の名前をだったんだ。 かといって名前をそのまま書いたり、イニシャルにしたり、名前の頭についてる数字を書いてもすぐ犯人に気づかれ消されてしまう可能性があった。 だから畠山さんは、犯人の名字の2つ目の漢字を遺そうとしたんだ。ひらがなでね。」 剣持「名前の2つ目の漢字だと!?」 金田一「ああ」 一條彌瑠 →『條』→『じょう』 二橋絵理迦 →『橋』→『はし』 三枝利巫 →『枝』→『えだ』 一條「ちょっと、それって…」 金田一「そう、犯人はあんただよ。二橋絵理迦さん。」 その言葉により、佐木竜二、速水玲香、沖野ヨーコ、一條彌瑠、三枝利巫、剣持警部、中村刑事は一斉に二橋絵理迦の方に顔を向けた。 だれもが動揺を隠せないようだった。 金田一「畠山さんはあんたの名前を表す『はし』という言葉を残そうとしたんだ。しかし一文字目の『は』すら書き終わらない内に息絶えてしまったんだ。」 中村「そうか、『は』を途中まで書いたものが『け』に見えたんだ。」 金田一「そうさ」 二橋「ち、ちょっと待ってよ!!私が犯人ですって!?冗談言わないでよ!!」 金田一「冗談なんて言わないさ。あんたは事情聴取のとき、こう言った。」 ―― 事情聴取の回想(from 12章金田一編) ―― 二橋「アリバイなんてあるわけないです。畠山さんが殺された時間って、みなさん部屋で寝てる時間じゃないですか。 そんな時間にアリバイなんてある方が変です。」 ―――――― 回想・ここまで ――――――― 金田一「あの時はまだ死亡推定時刻は分かっていなかった。 あの時わかっていたのは、俺たちと別れた夕食後(10時頃)から畠山さんの死体が発見された今朝8時の間に殺害されたって事だけだった。 その時間帯には“夜寝る前の時間”も“朝起きてからの時間”も含まれてるんだ。 犯人じゃないならなぜ“部屋で寝てる時間”だとわかったんですか?」 二橋「犯人にしか分からないことを口にした、っていいたいの?そんなの、他の人がみんな寝てる時間がいいって、誰だってそう思うでしょ!? それに、密室の中にいた畠山さんを、どうやったら殺せるっていうの!!」 二橋は今まで物静かだった女性とは思えない勢いでまくし立てた。 金田一「…あんたは昨夜、何食わぬ顔で畠山さんの部屋を訪ねて、部屋の中に入ったんだ。同じステージで演奏したあんただ。 畠山さんも何も疑いもせずに部屋に招き入れただろう。」 速水玲香、沖野ヨーコ、一條彌瑠、三枝利巫の4人は心配そうに2人のやりとりを見守っていた。金田一は先を続けた。 金田一「そしてあんたは隙を見て畠山さんを殺害し、部屋を密室にして逃走した。」 二橋「それで?私はどうやってあの部屋を密室にしたのかしら?」 金田一「あんたは畠山さんが持っていた“161号室の鍵”を持ち出し、代わりに“偽物の鍵”を部屋に入ってすぐの所に残し、 本物の“161号室の鍵”を使って部屋を施錠し、立ち去ったんだ。」 二橋「あの部屋の中に落ちていた鍵が偽物だったって言うの?」 金田一「ああ、だからあんたは俺たちが鍵を見つけた直後にドアノブを爆破したんだ。 ドアノブの鍵穴にあの鍵を差し込まれたら、あっという間に偽物だってバレてしまうからね。」 剣持「そ、それじゃあここにあるこの鍵は偽物だというのか?」 そういいながら剣持は背広の胸ポケットからビニール袋に入った“161号室の鍵”を取り出した。 金田一「いや、その鍵は本物だよ。」 剣持「なんだと〜!?」 ここで金田一は、ビデオの準備をしていた佐木に声をかけた。 金田一「準備はいいか、佐木?」 佐木「OKですセンパイ!!」 佐木がTV画面に映したのは、金田一の部屋に入ってきた剣持が証拠品の鍵を胸ポケットから落とした所の映像だった。 佐木はそこで映像を止め、証拠品の鍵を画面いっぱいに引き延ばした。 金田一は、TVの横に場所を移動してさらに話を続けた。 金田一「剣持のオッサンが持ってる“161号室の鍵”とビデオに映ってる鍵をよ〜く見比べてみてくれ。何か気づくことはないか?」 佐木「う〜ん・・・あっ!!鍵が逆に付いてますよ。」 金田一「そう、このビデオに映ってるのは畠山さんの部屋に残された“偽物の鍵”なんだ。 この鍵は、部屋番号が刻み込まれたプレートの左側に鍵がくっついている。 それに対してオッサンが持ってる“本物の鍵”の方は、部屋番号が刻み込まれたプレートの右側に鍵がくっついている。」 剣持「確かに。」 数秒間の沈黙の後、金田一は自分のポケットから何かを取り出して、再び話し始めた。 金田一「これは、俺の部屋の鍵だ。」 その鍵のプレートには340という数字(金田一が泊っている部屋の番号)が刻み込まれていた。そしてそのプレートの右側に鍵がくっついている。 金田一「この客船の船室の鍵は、すべて部屋番号が刻まれたプレートの右側に鍵が付いている。 ところがビデオに映っている偽物は、プレートの左側に鍵が付いている。 ちょっと考えてみてくれ。 その偽物を、プレートの右側に鍵が来るように置いたら・・・何号室の鍵になると思う?」 二橋「それは・・・」 三枝「えっと〜161をひっくり返したら・・・・」 一條「191ね。二橋さんの部屋の番号だわ」 金田一「そう。二橋さんは、“161号室の鍵”に見せかけるため、自分の部屋、つまり“191号室の鍵”を使ったんだ。 見てのとおり(読者の皆様は12章金田一編の[ヒント]をご覧下さい。)この船の鍵は番号の『1』はただの棒、 『9』はちょうど『6』を180度回転させた形になってるからね。」
剣持「しかし、この鍵は事件現場でお前から受け取ってから今までずっと肌身離さず持ってたんだぞ?いつの間にすり替えられたんだ?」 二橋「そうよ。その刑事さんがずっと持っていた鍵をすり替るなんて無理だわ。」 金田一「それが可能だったんだよ。」 二橋の顔はどんどん曇っていく。 金田一「確かに、普通に考えたら現職の警察官が持っている証拠品を気づかれずにすり替えるなんて不可能だろう。 そこであんたは睡眠薬でオッサンを眠らせることを考えたんだ。」 金田一「俺の部屋で俺とオッサンと佐木の3人が集まっていたとき、あんたはドアの下の隙間から睡眠ガスのような物を注入し、俺たちを眠らせた。 そして俺たちがぐっすり眠ったのを確認して部屋に入り、証拠品の“偽物の鍵”を本物の“161号室の鍵”とすり替えたんだ。 その証拠にあんたは事情聴取が終わって部屋に戻った時、鍵を開けずにいきなりドアを開けた。」 ―― 事情徴収の帰り道の回想(from 12章金田一編) ―― 三枝「それじゃ〜またあとでね〜」 三枝は鍵を回しながら2人にそういった。 一條もまだプリプリ怒りながらバッグから鍵を取り出し、部屋へと入っていった。 ただ一人残された二橋も自分の部屋へと着くとドアを開け、中に入っていった。 ―――――――― 回想・ここまで ――――――――― 金田一「あんたの部屋の鍵は、“161号室の鍵”として剣持警部が持っていた。だから事情聴取に行く時に鍵をかける事が出来なかったんだろ?」 二橋「鍵は…たまたまかけ忘れただけよ。それにそんなトリック、そういう偽物の鍵を作っておけば私じゃなくても出来るじゃない!! それでも私が犯人だって言いたいんだったら、証拠を見せなさいよ!!」 金田一「…昨日着ていた服、どうされました?」 二橋「えっ?」 それは金田一の言葉の意味が理解できない“えっ?”ではなく、意表を付かれて思わず発した“えっ?”だった。 顔には表れていないが少しは動揺しているのだろう。 金田一はかまわずに先を続けた。 金田一「昨日の夕食の時、着てた服ですよ。今すぐ、ここに持ってきてくれませんか?」 今の金田一の言葉により、動揺が激しくなったようだ。顔色が目に見て取れるほどに青ざめている。が、それでも彼女は未だ敗北を認めなかった。 黙ったまま金田一をにらんでいる。 剣持「あーちょっといいか?金田一?」 金田一「何だよ?オッサン」 剣持「言ってることがよく分からんのだが…服と事件と何の関係有るんだ?」 当然の反応だろう。おそらく意味が分かっているのは金田一と二橋と明智くらいだろう。 金田一「ああ、今から説明するよ。まず二橋さんは昨日畠山さんの殺害現場に袋かカバン(長いので“袋”と省略します)を持っていったはずなんだ。」 剣持「何で袋を持っていたなんて言えるんだ?」 金田一「なぜって、いくら夜中だとはいえナイフや爆弾を裸で持ち歩く訳にはいかないだろ?」 剣持「ああ、なるほど。」 金田一「だから二橋さんは凶器のナイフと、ドアに仕掛けるための爆弾、それから着替えを袋に入れて畠山さんの部屋まで持っていったんだ。」 一條「ナイフと爆弾は分かるけど着替えって…」 金田一「返り血を防ぐためさ。 畠山さんの部屋の前に着いた二橋さんは持ってきた袋をドアのそばの壁に立てかけておいた。 そして呼び鈴を鳴らし、畠山さんの部屋に入った。 隙を見て、袋とは別にポケットに忍ばせておいた睡眠薬を嗅がせ、畠山さんを眠らせた。 畠山さんが眠ったのを確認し、廊下に置いた袋を部屋の中に入れた。 袋からナイフを出し、袋に返り血が飛ばないよう注意しながら畠山さんを刺した。 そして返り血が付着した服を着替え、鍵のトリックと爆弾を仕掛けて部屋を出たんだ。 袋には返り血が付着した服とナイフと重りを入れ、密封して海にでも捨てたんだろ。 さあ、もしあんたが犯人じゃないというのなら持って来れるはずだ。昨日着ていた服を。 もっと証拠が欲しいっていうのなら、ルミノール検査をすればいい。 出てくるはずだぜあんたの顔から、畠山さんの返り血によるルミノール反応が。」 ついに二橋は地面に膝をつき、そしてゆっくりと口を開いた。 二橋「私の…負けね…畠山さんを殺したのは…私よ。」 剣持「しかし金田一、その推理だと、着替えの代わりにレインコートを入れておくことも可能だが…刺してから着替えるんじゃなく、 レインコートを着て刺し、脱いで袋に詰め込めば…」 金田一「確かに、でもレインコートの場合水を弾くように出来てるから脱いで袋に詰め込むときに着ている服に血痕が付着する可能性がある。 だからレインコートは使わなかったんじゃないのかな?」 二橋「違うわ。レインコートを使わなかったのは、ただレインコートを用意していなかったから… この船に乗った時はまだ畠山を殺そうなんて考えてなかったから…ナイフも客室に備え付けてある果物ナイフを使ったわ。」 剣持「“殺そうなんて考えてなかった”だと?ならどうして爆弾なんて持ってたんだ?」 二橋「爆弾は最初から畠山の部屋にあったのよ。」 剣持「なんだと?」 二橋「あの男、殺し屋を雇って玲香さんを殺そうとしてたのよ。」 玲香「そんな…畠山さんが?」 二橋「ええ、畠山はそういう男なの。」 金田一「殺し屋って、米花ジョイシティで玲香ちゃんを殺そうとしたあの…」 二橋「そうよ。昨日、畠山がボイスチェンジャーを使って女のフリをして殺し屋に電話してたのを偶然聞いてしまったの。 殺し屋にわざわざステージを狙わせているのも、畠山自身のアリバイを確実にするため。畠山も私に気づいたわ。 それであの男、殺し屋に私も殺すように依頼したの。」 剣持「しかし、なぜすぐに我々に相談しなかったんだ?」 二橋「もちろん刑事さん達がドウシテこの客船に乗っていたのかは知っていたから、殺し屋から守ってくれるよう頼むつもりだったわ。 でもあの卑劣な男だけは自分の手で葬らなければ気が済まなかった!!」 金田一「そうだったのか。」 玲香「あの畠山さんが、そんな人だったなんて…」 その時、突然小さな爆発音と振動共に船内の全ての場所で停電が起こった。 昼間なので真っ暗にはならなかったが、船内は騒然となっている。 剣持「停電か?」 明智「それだけじゃないようですよ。」 レストランの窓から外を見ていた明智が言った。 明智「どうやらこの船は…航路を外れているようです。」 剣持「な、なんですって?」 明智「航路や到着時間からいって、この船はすでに東京湾に入っていなければならない。なのに周囲に陸地がないんです。」 剣持「ど、どういうことですか?」 明智「おそらく…この船は航路を外れているようですね。」 剣持「それはつまり…この船は漂流していると?」 中村「これはただごとじゃないですよ。」 剣持「ああ、操舵室へ行ってみた方が良いな。」 そう言って、剣持と中村と金田一は操舵室へと走っていった。 このとき剣持と中村は急いでいたため、二橋を逮捕することをすっかり忘れていた。 そして二橋は2人の刑事と金田一がいなくなった隙にどこかへと走っていってしまった。 ヨーコ「二橋さん!!」 明智「私が…」 追いかけようとしていたヨーコを制止し、明智が二橋を追って行った。 操舵室に着いた剣持、中村、金田一は、そこでとんでもない光景を目の当たりにした。 操舵室の中は死体の山だった。 船長を始めこの船に乗っていた全ての航海士が殺害され、操舵室に押し込められていた。 さらに、操舵室内の全ての機器が破壊されている。つまりこの客船はすでに操縦不能に陥っていた。 剣持「何てこった…」 その横では中村刑事が警視庁に連絡を取ろうと携帯電話をかけようとしている。 中村「クソッ、ダメです。通じません。どうやら我々は圏外にいるようです。」 剣持「なら無線だ!!この船の無線を使うんだ!!」 3人は今度は無線室に向かって走り出した。 金田一「そんな…」 すでに無線機も全て破壊されていた。 一方… レストランから逃走した二橋は、あてもなく走り続けていた。 さっきの停電は絶対あの殺し屋の仕業だろう、死にたくない、と思いながら。 二橋はとにかく走り、いつの間にかデッキへと上がっていた。 そして真っ先に二橋の目に入ったのは、救命ボードだった。 これで逃げられるかもしれないと思った二橋は、救命ボードに手を触れた。 その瞬間、救命ボートが突然爆発した。 二橋を追っていた明智もその音に気づき、その場所に駆けつけた。 しかし、すでに二橋の体は黒こげになっていた。 それだけでは済まなかった。他の救命ボートも次々と爆発していたのだ。 そして、数分後には、客船に乗せられていた全ての救命ボートが使用不能になっていた。いや、一艘だけ、爆発せずに残っていた。 その頃… レストランにはまだ、佐木竜二、速水玲香、沖野ヨーコ、一條彌瑠の4人が残っていた。 救命ボートの爆発はここにも聞こえていた。 その爆発音で不安になった4人が避難使用可と考えたとき、 パン!パン! レストランに突如2発の銃声が轟いた。 金田一「今の音は?まさか!!」 銃声に気づいた金田一は玲香がいるレストランに向かって急いで引き返した。 剣持「どうした金田一?」 金田一「今、銃声が聞こえたんだ」 剣持「何?」 レストランでは、銃で撃たれた一條と三枝が床に倒れ、佐木、ヨーコ、玲香の3人は隅に固まって震えていた。 そして、その向かいには拳銃を持った船員が立っていた。 佐木「あ、あなたは確か、毛利探偵と一緒に船長室に入っていった…」 船員「ああ、見てたんだ。」 そういうと船員はゆっくりと佐木に銃口を向けた。 パン! 銃弾が発射された。が、それは佐木には当たらず、佐木の頭上の壁に命中していた。 しかしそれは殺し屋がうっかり外したのではなかった。 佐木「あ、明智警視!!」 そう、レストランまで引き返してきた明智が、殺し屋の銃に向かって銃を撃ち、狙いをそらさせたのだ。 しかしその明智の拳銃は普通の拳銃ではなかった。 剣持「何ぃ?あの明智警視が偽物だと!?」 剣持と金田一はレストランに引き返していた。 話しながら走りながら、気が付いたらいつの間にか明智の話になっていた。 金田一「ああ。明智警視が醍醐真紀さんと一緒に俺の所に来たとき、言ったんだ。『え?彼女のことを知っているのですか?』って。 本物の明智さんならそんなこと言うはずがないんだ。俺が“怪盗紳士の変装の醍醐真紀”に会ったのを知ってるからね。 おそらく奴は、変装する対象である明智さんのことは調べただろうけど、醍醐真紀のことまで調べられなかったんだ。」 剣持「で、誰なんだ?明智警視になりすましているのは?」 殺し屋の銃に突き刺さっているのは。一枚のトランプだった。 明智が撃ったのはトランプ銃だった。 金田一「あの明智警視は多分…」 明智は自分の顔をつかみ、ビリビリと破り始めた。 そして着ているスーツをバッ!と脱ぎ、正体を現した。 白いスーツ、シルクハット、マント、モノクル 金田一「怪盗キッドの変装だよ。」 14章につづく
来たーーーーーーーーーーーーーーー!!!←落ち着け(笑)
キッド!!
まさか明智警視に変装してたとは・・・うすうすそう感じつつも女に化けてると思ってたのでびっくりしました(爆)
そして、犯人は二橋さんでした!さあ君は当たってたかな?(二橋さんだったとは・・・←待て)
Gahal様小説ありがとうございます!私燃えてます←落ち着け(笑)
byあっきー