コナン&金田一final
漆黒のモレンド 第19章
作:Gahal様

佐藤のパトカーは巨大な火の玉と化した。
佐藤刑事を中に乗せたまま…


消防隊員「すぐ、消火を始めるんだ!!」
到着してすぐ、消防隊員たちは消火の準備を始め、ほんの数秒で消火用ホースがセットされた。
ホースから勢いよく吹き出した水が、今や火の玉と化したパトカーに注がれる。しかし炎はまるで衰えない。それどころか逆に勢いを増していく。
佐藤刑事はまだその炎の中にいる…
消防隊員や野次馬、誰もが佐藤刑事の死を確信した。



その時


???(3・・・2・・・1・・・)


ボン!!
という音と共にパトカーが大量のピンクの煙に包まれた。
その煙が引いたときには炎は完全に消えていた。

パトカーは熱で原型をとどめない位に変形してしまったが、佐藤刑事は気を失っているのと軽い火傷と怪我だけのようだ。

消防隊員「一体…何が起こったんだ?」
ちょうどその時、その上空を白いハンググライダーが通過した。






公園では、やっとの事で到着した救急隊員によって平次たちが搬送されるところだった。
それを確認したあと、コナンはすぐ阿笠の家へと行き、預けてあるターボエンジン付きスケートボードでヘリの追跡を開始した。

住宅地の道から大通りへそして国道へ、スケボーは道路を疾走していく。
空を見上げると、右上前方に逃走していく小型ヘリが見える。

コナン「確か向こうは…そうか、東京湾に出る気か!!」
コナンはスケボーを90度右に向け、国道から横道へと入っていった。
コナン(逃さねえ!!)


だが、空と地上では勝手が違う。
空では目的地に向かってほぼまっすぐに進めるのに対し、地上では交差点や三叉路などに出るたびに右へ左へ曲がらなければならない。
その上、出せるスピードも全然違う。
コナンは小型ヘリからどんどん離されていった。

コナン(くそっ!)
この時コナンはまだ気付いていなかった。

自分の後方約100メートル、高度約500メートルの上空を飛行している白いハンググライダーのことに。



そのハンググライダーからは2208も道路を疾走しているコナンの姿もよく見えている。
ハンググライダーを操る人物は口元に不敵な笑みを浮かべ、地面ギリギリまで一気に急降下した。
そして後ろからコナンに近づき、その体を抱え再び上昇した。

コナン「な?」
いきなり自分の体が宙に浮き、コナンは半分パニックに陥った。

わけもわからずキョロキョロとあたりを見回す。

その間にも都心の高層ビル群、高速道路、新幹線、鉄道、モノレールなどが後ろへと遠ざかっていく。



ようやく、誰かに抱えられながら飛んでいることに気付いた。
ハンググライダーを操る人物=佐藤刑事を救出した人物・・・白いシルクハット、そしてモノクル・・・
その人物の名は・・・


コナン「怪盗キッド!!」

その時、2208の小型ヘリとキッドのハンググライダーは、東京湾の上空にさしかかっていた。










午後6時、米花警察署

目暮「な、何ですって!?」
それは岐阜県警からの電話だった。

目暮の叫び声は、部屋の反対側で部下達に無線で指令を送っていた松本警視の耳にも届いた。
そのただならぬ様子に、松本は指令を中断して目暮の所へ近づいていった。そして目暮が受話器を置いたのを見計らって何があったのかを尋ねた。

松本「どうしたんだね?」
目暮「2001を護送していた岐阜県警の車が、東京に入ったあたりで消息を絶ったそうです。」
松本「何だと!?」
松本はすぐ、署に残っていた刑事達に2001の捜索を命じた。




同時刻、警視庁

TRRRRRRRRRR… TRRRRRRRRRR…
捜査二課の電話が鳴り響いていた。

中森「はい、こちら捜査二課・・・・ああ君か。」
その電話は白馬探からのものだった。

白馬「実は、守君ついて新たに分かったことがあるんです。」
中森「ああ、守君の祖母がすでに亡くなっていたっていう事なら知ってるよ。」
白馬「いえ、そのことでは無いんです。実は…」

中森「な、なんだって!?それは本当なのか!?」
“その事実”は、中森を驚嘆させるには十分な内容だった。

白馬「ええ、間違いありません。だから赤島探偵は、神崎俊継氏との契約が終了した後も組織について調べ続けていたんですよ。」





東京港より南南東約100キロメートルの海上に1隻の客船が停泊していた。
それは『速水玲香&沖野ヨーコジョイントコンサート』が行われた客船だった。


その客船の機関室の入り口付近で、金田一一、佐木竜二、と速水玲香の3人が何かを待つように立っていた。
数分後、機関室のドアが開き、中から剣持警部が姿を現す。

金田一「どうだった、オッサン!?」
剣持「ああ、見たところ単なる燃料切れのようだ。」
佐木「燃料切れですか。」
剣持「ああ。ちなみに予備燃料もほとんど底をつきかけてる。このままじゃあと1時間もせんうちに電気も消えちまうぞ。」
金田一「そうなったら、乗客は大パニックだな。」


金田一たちが乗っている客船は2208に航行装置の操作部を破壊され、解除できなくなった自動操縦による航行を強いられていた。
しかし約30分ほど前に船のエンジンが突然停止したため、その原因を調べようと剣持が機関室に入っていったのだ。

沖野ヨーコは、まだ意識が戻らない小五郎の看病のため、小五郎の客室にこもっている。



中村「警部〜」
金田一たちのところへ、中村刑事が息を切らしながら走ってきた。
中森「(はあっはあっ…)ダメです。乗客全員の携帯を調べてみましたが、どれも全くつながりません。」

2208のせいで船が航行不能に陥ったことは、すでに乗客全員の知るところとなっていた。
救命ボートが一艘も残っていないことも、無線が破壊されてしまったことも、船を動かす(止める)ことができる乗員がすべて殺されてしまったことも。

陸と連絡を取るため携帯電話を使おうと考え、中村が乗客全員分を調べていたのだが、どのメーカの携帯でも全くつながらないことが判明したのである。
八方ふさがり、万事休すだった。


そのとき、突然上のデッキから大きな歓声が上がった。
「船だ!!船が来たぞ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
「た、助かった。」



剣持「船だと!?」
剣持を先頭に金田一、中村、佐木、玲香の5人はデッキへの階段を駆け上がり、近づいてきている船を確認した。
救助艇が6隻、客船へと近づいてくる。

玲香「私たち、助かったのね」
玲香は、感激の涙を浮かべる。

金田一「ああ…そうみたいだ。」
金田一は、先頭の救助艇の舳先に立っている人物を見ながら答えた。
金田一「明智さん…」

先頭の救助艇は客船の左に、2隻目は客船の右に横付けし、タラップを架けてきた。
残り4隻は後方で待機している。

明智がタラップを上り、客船へと渡って来た。
金田一達もすぐに明智の元へ駆け寄った。

金田一「明智さん!!」
中村「明智警視!!」
剣持「ど、どうしてここに!?」

明智はフッと笑みを浮かべ、乗船を許可された理由を話し始めた。




――― 明智の回想 ―――
そのとき明智は自宅のマンションの一室で午後の紅茶を楽しんでいた。
その時突然、窓に物がぶつかったような大きな音が聞こえてきたのだ。

窓の方に目を向けると、そこには1羽の白いハトが羽ばたいていた。
ハトは明智の部屋の中に入りたがっているらしく離れない。よく見ると足に何かをつけている。
明智が窓を開けると、ハトはスーッと部屋の中に入りテーブルの上に着地した。

足につけられているのはどうやら手紙のようだ。
足から手紙が外してやると、ハトはすぐに飛び立っていった。
手紙の差出人は怪盗キッドとなっている。

明智(なるほど。キッドの手掛かりを残さないよう、すぐ飛び立ったわけですか。よく仕込まれたハトです。)
暫しハトを見送った後、再び手紙に目を落とす。

明智「これは・・・」
その手紙には、客船で2208が速水玲香を襲ったこと、その船が操縦不能に陥ったこと、その場に金田一はじめが居合わせたこと、
キッドが明智になりすましていたこと、キッドが飛び立ったときに客船があった地点の緯度と経度、
船に発信器を仕掛けたこととその周波数や波長などが記載されていた。

明智はすぐにその手紙を持ち、警視庁へ登庁し、警視総監に進言した。
そして発信器の周波数と波長から客船の位置が割り出され、救助艇が出動することになったのだ。
――― ここまで ―――




金田一「怪盗キッドが!?」
明智「ええ。」

金田一たちが話している間に、乗客の救出活動は始まっていた。
救助艇の隊員たちと客船の客室乗務員の誘導のもと、乗客は次々と救助艇へ移っていく。

1隻の救助艇に1200人全員は乗れないため、200人ずつ6隻に分かれて乗ることになる。
そのため、200人が乗った救助艇から順に東京へと戻っていき、かわりに次の救助艇が横付けされる。


救助艇へと進む乗客の流れに逆い、金田一と剣持は客室へと向かっていた。
気絶したままの毛利小五郎を救助艇へと移すためである。沖野ヨーコ1人で小五郎を連れてくるのはむりであろう。

明智は乗客の誘導を手伝い、速水玲香は(まだ襲われる可能性があるので)中村の護衛付きで一足先に1番目の救助艇に移っていった。
佐木も、父と一緒に避難するため他の避難客の列に並び、金田一達より先に救助艇にわたることになった。

毛利小五郎の客室は365号室。デッキから3つ下の階にある客室である。
そこまで降りるのに、通常なら1分とかからないだろう。
しかし、避難のために並んでいる乗客たちの長い列が廊下や階段にできているため、思いもよらず時間がかかってしまった。
金田一達が3階に到着すると、小五郎の部屋の前で沖野ヨーコが右往左往しているのが見えた。

金田一達は365号室に飛び込み、ベッドで横になっている小五郎の脇を2人で両側から抱え、部屋を出た。
そして沖野ヨーコの先導のもとデッキへと引き返した。

彼らが再びデッキに戻った頃には、他の乗客たちは全員救助艇に移った後だった。
残っている救助艇は最後の1隻のみ。他の5隻の姿はすでに見えなくなっていた。
そして金田一、剣持、小五郎、明智、沖野ヨーコ達と最後に救助隊員たちがタラップを降りると、救助艇は東京へ向けて動き始めた。




客船はどんどん遠ざかり、やがて見えなくなる。
あたりは一面の大海原だ。
陸は全然見えない。

しかし、上空を何かが飛んでくるのが見えた。
遠くて小さいためハッキリとは見えないが、どうやらヘリコプターのようだ。
ローター音もしている。

それは次第に大きくなってきた。つまり近づいてきているのだ。


そのヘリコプターの姿がハッキリと識別できるようになったとき、救助艇にざわめきが起こった。
それは客船から飛び立った小型ヘリ、つまり客船を操舵不能にした2208のヘリだったからだ。
金田一たちもそれに気づいていた。


やがて小型ヘリは救助艇の上を通り過ぎ、さらに少し遅れて白いハンググライダーが飛んできた。


その直後だった。
救助艇が方向を変え始めたのは。

なんと、救助艇は180度方向転換し、客船の方向へと戻り始めたのだ。


剣持「Uターンだと?」
金田一「でも一体どうして?」
明智「とにかく、船長に何があったか聞いてみましょう」

明智を先頭に金田一と剣持が続く。
玲香とヨーコ(と小五郎)は、その場に残った。





キッドのハンググライダーが金田一たちが乗っている救助艇を通過して数分後、前をいく小型ヘリが高度を下げ始めた。
コナン「高度を下げ始めたぞ!!」
その視界に客船が入ってくる。
客船は救助艇のその6倍は大きかった。

キッド「間違いない『速水玲香&沖野ヨーコジョイントコンサート』の客船だ。」
その客船に向かって小型ヘリが降りていく。


コナン「船内に隠れる気か?」
その通りだった。だが、コナンの予想とは違い――予想では、甲板にヘリを止め、ヘリを降りて船内に降りていくだろうと思っていた
――2208は甲板にヘリを止めなかった。
2208は、いきなり割れた(割った)レストランの窓から小型ヘリごと船内に入っていったのだ。
キッドとコナンもすぐに後に続いた。


レストランのほぼ中央に2208のヘリは停止していた。
コナンとキッドは、気づかれないようそっと近づき、小型ヘリの中を覗きこんた。

コナン「蘭!!」
中に乗っているのは、蘭ただ一人だった。2208の姿はない。ヘリを降りてどこかに隠れたらしい。
蘭はぐったりしており、すでに意識は無い。原因は血液不足だ。

銃で撃たれた足の傷からの出血が全然止まっていないのだ。このまま出血が続けば命に関わる。
キッド「すぐに医務室に運んだ方がいい。」
蘭の傷を見ながらキッドが言う。

すでに船医は避難した後だろうが、医療器具はある程度残されているはずだ。
そこで止血などの応急処置は出来るだろう。

コナン「ああ。」
2人が蘭の体をヘリから降ろし、医務室へ向かおうとしたその時、


ドン!!

3人の後ろから、一発の銃弾が飛来し、レストラン入り口そばの壁に着弾した。



コナンとキッドは振り向いた。
そこに2208はいた。
窓を背に、銃口を3人に向けながら…


2208「まさかこんな所まで追ってくるとはな…」

コナン「キッド…」
コナンは、2208に聞かれないよう、小声でキッドに話しかけた。
キッド「ん?」
コナン「頼みがある…」



話が終わった瞬間、キッドは蘭を抱え走って行った。
2208はすぐにそれに気づき、追おうとした。
だが、レストランの入り口にコナンが立ちはだかり、それを阻止した。




2208「どうやら只のガキじゃなさそうだが…お前一体何者だ?」
いつもなら口元に不敵な笑みを浮かべて答えるだろう。だが今回は蘭の命が脅かされている。

コナンは鋭い表情を崩さないまま答えた。
コナン「江戸川コナン、探偵さ。」
2208「探偵だと?」
コナン「ああ。だからもう全て分かってる。お前の正体もな。」
2208「何?」
それまで、半分笑みを浮かべていた2208の表情と口調が、怒りや憎しみといった物へと一気に変わった。


コナン「8982(爆発),5648(殺し屋),3281(密売),5010(強盗)、お前らのコードネームの内、すぐにわかったのがこの4つ。
だが2001と2208の意味はなかなか分からなかった。けど、パトカーのデジタル時計とモノレールを見たとき、分かったんだ。その意味がな。」



その頃、救助艇の操舵室に明智達が到着した。
その中では船長達があわただしく動いている。

明智「何かあったのですか?」
明智が声をかけると、船長はいったん手を止めて答えた。

船長「船の操縦が出来ないのです。」
明智「どういうことですか?」
船長「分かりません。自動操縦が入っているわけではないのに、どういう訳かコントロールを受け付けないのです。」
剣持「じゃあ今、この船はどうやって動いているんですか?」
船長「おそらく何者かが遠隔操作しているものと思われます。」
剣持「そんなことが可能なんですか?」
船長「情報機器に強い者であればあるいは…」


コナン「2208。ほかのコードネームと同じようにゴロ合わせで考えていたら永遠に解けなかっただろう。
けど、デジタル時計のおかげで解くことが出来たよ。」
2208は黙ったままだ。

コナン「2208をデジタル数字で書いて、それを鏡に映すと…BOSSになる。」
コナン「つまり、組織の本当のボスは…お前だ」
2208「なるほど。では聞こう。オレがボスだとしたら、ボスと名乗っている2001は何だというんだ?」
コナン「モノレールって、どうして"モノレール"っていうと思う?」
2208「知らん」

コナン「レールが1本だからさ。ラテン語で1のことをmono(モノ)って言うんだ。もっとも、語源はギリシャ語だがな。」
2208「・・・」
コナン「2001→2000+1→にせん+いち→にせん+モノ→にせんモノ→偽物」
2208「…そうか…そこまで分かっていたか…」

コナン「おそらく、歩美ちゃん達が米花ジョイシティの中で見つけた『東京支部』が『本部』で、岐阜県で見つかった『本部』が『東海支部』なんだろ?」
2208「ああ。その通りだ。」

ちょうどそのとき、窓の外に船が近づいてくるのが見えた。
金田一達が乗っている救助艇だった。

救助艇は客船の約5メートル手前で、舳先をこちらに向けてピタッと停止した。


そこに突如人影が現れた。2001だった。
2001はマイクのようなモノを使い、コナンと2208の方に向かって話し始めた。



2001「聞け!!金田一一!!この救助艇は私が占拠した。人質達を助けたけ…」
そこで言葉がとぎれた。
2001は、コナンの方を見たまま固まってしまった。

2208と戦っているのは客船に乗っていた探偵・金田一一だとばかり思っていたのに、実際そこにいるのは、ただの子供(本当は違うが)だったからだ。


金田一「何だ?今の声は?」
2001の声は、金田一達にも届いていた。
その出所を確かめるため、金田一と剣持は(明智一人を操舵室に残して)甲板へ向かって走っていった。


2001は、一度呼吸を整えてから再びコナンに向かって話し始めた。
2001「まあいい。おいそこのガキ!!これ以上ボ…じゃなくて2208に手を出すと人質を殺す!!客船から避難した200人だけでなはい。
この船にはあと2人、お前の大切な…」
2208「もういい…」
2001の言葉を遮ったのは2208だった。コナンが止める間もなく、2208は2001を撃った。


ドン!!


2001「え?」
銃弾は2001の胸に命中した。

2001「なぜ…」
なぜ自分が撃たれなければならないか理解できない…という表情で2001はグラリと倒れていった。


2208「いつもお前が集めてくれる情報は本当に役立っていた。だがそれももう必要なくなった。“影武者”もな…」
2001「そんな…ボス…」
最後にそうつぶやき、2001の体はデッキにバタンとたたきつけられた。

その様子を一瞥すると、2208は銃口をコナンの方に向け直し、言った。
2208「さあ、次はお前の番だ。」
引き金にかけた指に力を込めていく。


ドン・・・ドンドン・・・・


2208が撃った銃弾を、コナンはイスやテーブルの裏に隠れてかわした。
銃弾により、イスやテーブルが穴だらけになっていく。


ドンドン・・・


それでも銃撃はやまない。
コナンは今度はサラダバーのワゴンの裏に回り込んだ。


2208はコナンの後を追いながら、銃を撃ち続けた。
コナンは、サラダバーの金属製のケースを一つ取り、それを持って今度は厨房へと駆け込んでいった。



救助艇では、金田一と剣持がちょうど甲板に到着したところだった。
そこには、胸から血を流しながら倒れている男(2001)の姿が…

剣持「な、何があったんだ?」
金田一(オレの大切な?…2人?)
そのとき、それまで動かなかった2001の手がゆっくりと動き、ポケットから何かを取り出した。

それはリモコンだった。
2001は黙ってそのリモコンのスイッチを押した。

そしてフッと笑ったかと思うと、そのまま力尽き、息絶えた。
力を失った手からリモコンがこぼれ、カランという音とともに甲板に転がった。


金田一「?」
甲板にいた者達は(金田一達を含め)、それを爆弾か何かのスイッチだとおもい、とっさに頭を抱え、床に伏せた。

しかし、爆発らしきことは起こらない。2001が押したスイッチは一体何だったのだろうか?
答えはすぐにわかった。救助艇が再び進み始めたのだ。前方に停止している客船に向かって…



再び客船のレストラン。
コナンに続き、2208も厨房に入って行った。
そしてさらに銃撃を繰り返す。

厨房は狭く、出入り口も一つしかない。
コナンはコンロなどの陰にかろうじて隠れながら奥へ行くしかなかった。


ドン!


そのうちの一発がコナンの右足をかすめる。
コナン「うぁっ!」
やはり厨房が狭いため、うまくよけられなかったのだ。


2208は笑みを浮かべながら、コナンに近づいていく、1歩また1歩。
コナンは厨房の一番奥に追いつめられた。もう逃げられない。

2208「死ね!!」
コナンに向け引き金を引いた。
しかし、



ドォォォォォォォォン…



2208「?」
突然の衝撃とともに船が小刻みに揺れた。



2208が撃った銃弾はコナンから外れ、コナンの左約30センチの壁に着弾した。
コナン(今だ)

素早くキック力増強シューズのダイヤルを回す。
そして、コナンはサラダバーのケースを蹴った。
ケースは、蹴られた部分がへこみながら飛んでいく。中に少しだけ残っていた水菜のサラダをまき散らしながら…

2208「!!」
だが2208はギリギリのところでそれをかわした。


2208「このガキ!!」
すぐに撃ち返そうとした2208だったが、コナンはすでに2発目(冷蔵庫に入っていた
"六甲のおい○い水"2リットルペットボトル新品)を蹴っていた。

2208「何?」
かわす間もなく、ペットボトルは2208の腹部に命中した。
2208は、崩れるようにその場に倒れこんだ。


2208が動けなくなったことを確認すると、コナンは急いで窓から外の様子を確認した。
先ほどの衝撃の原因が何なのかを確認するためである。


原因は救助艇だった。
救助艇は客船に衝突した状態で、さらに前進を続けようとしていた。


2001が死の間際に押したのは、東京へ向かっていた救助艇をUターンさせた時にも使った、救助艇のコントロール装置のリモコンだった。


救助艇の事が気になったが、それよりも、まず蘭をこの船から避難させなければならない。
コナンは、キッドの元へと急いだ。







――― コナンの回想 ―――
コナン「キッド…」
コナンは、2208に聞かれないよう、小声でキッドに話しかけた。
キッド「ん?」
コナン「頼みがある…オレが奴の気を引きつけてる間に蘭を医務室に。応急手当を頼む。」
キッド「それならオレが奴を引きつけてオメーが彼女を連れてった方がいいんじゃないのか?」
コナン「いや、子供の体のオレより、お前が連れてってくれたほうが医務室に速くつける。その分早く治療してやれるだろ。」
キッド「・・・分かった」
そして次の瞬間、キッドは蘭を抱え走って行った。

コナン(すまない蘭。キッド、蘭を頼む)
キッド(心配しなくても、俺には、アイツにそっくりなこの子を放っとくなんてできねえよ。)
――― ここまで ―――



コナン「蘭!!キッド!!」
コナンが医務室にたどり着く。
ベッドの上に蘭は横たわっていた。キッドは奥の薬品庫にいる。

キッド「出血は止まったが輸血が必要だ。」
コナン「そうか。なら急いでここから脱出だ!!」


救助艇は客船に衝突した状態で前進を続けようとする。
その前向きの力は客船に遮られ、横方向の力に変わる。
救助艇の舳先は、徐々に右の方向へ向きを変えていた。

しかしなめらかに変わるわけではない。
摩擦により、ある程度ずつ力が解放されていくため、船体に断続的に何度も衝撃が走った。

その度に荷物が転がり、机やイスが倒れる。
そんな中、それを発見したのは中村刑事だった。

中村「け、剣持警部!!金田一!!」
剣持「どうした?」
中村「あれを」
救助艇の左舷に救命ボートが一艘浮いていた。

しかもそのボートは空ではなかった。
乗っているのは2人の女の子。それは…

剣持「な、何てこった…」
金田一「美雪!!フミ!!」


明智は、救助艇の操舵室の端末を操作していた。
そこから、船のコントロールしているコンピューターに逆に侵入し、止めようというのだ。
明智のハッキングテクニックはプロ顔負けである。
明智(よし、侵入成功。オートコントロールを解除するには…)


レストランの床の上で、2208はギリギリで意識を保っていた。
身動きできないが、頭だけははっきりとしている。
彼は最期の決断をした。

痛さをこらえながら右手を上着のポケットへ、そしてジッポのライターを取り出した。
このライターは、フタを閉めるまで火が消えないようになっている。

2208はこの客船に、すでに爆発させた乗客たちの足止め用以外に、船を沈めるための爆弾も仕掛けていた。
船の至る所に。今いるレストランにも。
2208はライターを、その爆弾めがけて投げた。
ライターはくるくる回転しながら宙を進み爆弾の上に着地した。

数秒後、爆弾に火が引火した。


ドォォォォォォォ…


爆弾は連動するようになっており、客船の至る所で爆発が起こった。

爆発は薬品庫でも起こった。
たちまち薬品庫が炎に包まれる。

コナン「キッド!!」
コナンはとっさに薬品庫に近づいた。

キッド「・・・」
返事は無かった。

コナン(まさか…)

しかし、キッドのことを気にしている余裕は無かった。
爆発はなおも続き、破片がコナンや蘭に降り注いでいた。
コナンは蘭の元へいき、その肩を抱えて歩き出した。

ゆっくりと一歩ずつ。
爆発と炎をよけながらレストランを目指して…
コナン(レストランに行けば、2208のヘリで脱出できる。)



レストランに到着すると、そこには火ダルマになった2208の姿があった。
小型ヘリもすでに炎の中だった。
さらに爆発が続き、炎が柱となって襲いかかる。

コナン「うわっ!!」
すでにレストランの半分以上が炎に包まれた。
逃げ道は窓、そこから海に出るしかない…

コナン「蘭…」
蘭をぎゅっと抱きしめ、コナンはレストランの窓から海へとダイブした。
コナン「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ」


剣持「よすんだ金田一!!」
金田一「離してくれオッサン!!美雪とフミが!!」
2人が乗るボートは救助艇の左舷にいる。救助艇は、客船に接触しながら右に旋回しているのでこのままでは、ボートは客船と救助艇に挟まれてしまう。
剣持をふりほどき…
金田一は救助艇の甲板から飛び降りた。

金田一「美雪!!フミ!!」
2人の名を叫びながら…



バシャーーン


2人(3人)はほぼ同時に着水した。

程なく金田一は美雪とフミが乗る救命ボートにたどり着いた。

金田一「美雪!!フミ!!」
すぐに2人の名を呼びかける。どうやら2人は気絶しているだけのようだ。

ホッと胸をなで下ろしていると、海の中に後2人浮いているのが見えた。
コナンと蘭だ。

コナンも着水してすぐそのボートを発見していた。(ほぼ近くに着水していた。)
金田一「おーい。大丈夫か!?」
コナン「ああ。蘭を頼む」
コナンが下から押し、金田一が上から引っ張り、蘭はボートに引き上げられた。

その後にすぐコナンもボートに乗った。


明智「よし、後はパスワードを入力すれば…」
どうやら2001のコンピュータへの侵入に成功したらしい。
あとはパスワードを入力すれば、オートコントロールが止まる。

明智はマイ・ノートPCから、パスワード解析ツールを起動した。
パスワードは…



コナン「はぁっはぁっ…助かった」
金田一「いや、まだだ。」
今、5人の乗るボートは救助艇と客船の間にいた。

その間隔は、刻一刻と狭まっていく。
そこにとどまっていると、2つの船に挟まれ、つぶされてしまう。
コナン「それなら、このボートを動かせば…」
金田一「運転出来るのかよ?」
コナン「ああ、ハワイで親父に教わったからな」
金田一「?」
コナンはボートのエンジンを始動させた。

ボートは救助艇とは反対の方向にむかって走り出した。
しかし、もう客船と救助艇の間の距離は10メートルもない

5メートル、4メートル・・・


ドォォォォォ…

救助艇が客船に完全に平行に衝突した。
ボートは、ギリギリで2つの船の間から脱出した。
しかし、この状態では客船の炎が救助艇に移ってしまう。




・・・パスワード照合・・・
明智「オートコントロールを解除しました。もうここから操縦できるはずです。」
船長「よし、面舵一杯、全速前進!!」

救助艇は、右へ方向を変えながら、客船から離れていった。
炎が引火することは無かった。

客船は完全に炎の固まりとなり、海へと沈んでいった。
コナン(キッド…)





エピローグへ

<あとがき>
ようやく19章も終わりました。
物語もいよいよ終盤。残すはエピローグのみです。
Gahal様小説ありがとうございました☆
凄い展開です!!キッドがめちゃくちゃかっこいいーーーっコナン君をキャッチして飛ぶとことか明智警視のハッキング・・・
素敵・・・♪そして画像見てピンときたときには遅かった数字の謎・・・・
密売・・・・BOSS・・・思いつかなかった;
もうエピローグだなんて・・・・ちょっと残念ですが続きもすぐアップします〜
byあっきー

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