コナン&金田一final
漆黒のモレンド 第5章
作:Gahal様

「キッドだ!!キッドが現れたぞ!!」

上空にキッドのハンググライダーが確認された。
警察のサーチライトに照らされ、ヘリコプターに追われ、だんだんと米花ジョイシティへと近づいてきていた。

しかし、コナンたちに近づいていたのは、怪盗キッドだけではなかったのだ。
茂みに隠れるコナンたちのさらに20メートルほど後ろに、一人の男が近づいていたのだ。
左右に細いちょびひげを生やし、かなり太った背の低い男で、丸いサングラスをかけている。
学校の帰りに、守のことを捕まえようとした男だ。

男「見つけた…ついに見つけた。」
男は足音を立てずにゆっくりと守の方へと近づいていった。
キッドに気を取られているため、コナンでさえまだそのことに気づいていない。

その男の両手が、守の体に向かって、静かに伸ばされていった。

男は、両手で守を抱き上げ、素早く左手で守の口を塞いだ。
その瞬間、コナン・歩美・元太・光彦は異変に気づき、一斉に後ろを振り返った。

「あっ」
その眼に飛び込んできたのは、男に捕まった守の姿だった。

守「ん〜っ、ん〜っ」
声にならない音を口からだし、両手足をバタバタ動かし、守はもがいた。
男「こっ、こら、あばれるなや。」
必死で男の手から逃れようとする守を逃がすまいと、男も必死だった。

コナン「守をはなせ」
最初に動いたのはコナンだった。
コナンは男に飛びかかり、そして守を捕まえている手の指を開き、守を何とか逃がそうとした。
続いて、歩美・元太・光彦も男に飛びかかった。

歩美「守くんを離して!!」守の口を塞いでいる手を引っ張り…
光彦「逃がしませんッ」逃げようとする男の片足を必死に押さえ…
元太「離せ、離せ、このー」男の背中に飛びつき、守の体をつかんでいる男の手をゲンコツで殴った。

子供たちの総攻撃を受け、男はたまらなくなり、両手を振り回しながら子供たちを追い払おうとした。
男「何すんにゃ。離せ!!」

その結果、男に捕まっていた守と、腕に飛びついたコナンが振り落とされた。
コナンは地面にたたきつけられた後体勢を立て直し、麻酔銃を男の方に向けた。
男は逃げようとするが、元太が片方の足を、歩美と光彦がもう片方の足を押さえてしまったので逃げることが出来なかった。
その男に向けて、コナンが麻酔銃を撃ち込もうとした、その時…

あたりが突然ものすごく明るくなった。それも目を開けていられないくらいのまぶしさだ。黄金の地球儀
コナン・歩美・光彦・元太・守は思わず手で眼を覆った。
男は、その隙にその場から逃げ出してしまった。
サングラスをしていた男には、その程度のまぶしさは何でもなかったのだ。

やがて、あたりが元の暗さになったとき、走り去っていく男の後ろ姿が遠く小さくなっていた。
コナン「逃がすかっ!!」
コナンはキッドを追跡するために用意していたスケボーで、逃げた男を追跡した。

一方「黄金の地球儀」では…
突然の閃光がやっと静まり、あたりが再び暗闇に戻ったとき、その異変は起こった。

警官A「な、何だったんだ?今のは…」
警官B「さ、さあ」
警官C「キッドは?」
警官D「い、いない」
警官B「た、大変だ!!宝石がないぞ」
警官A「何?どうしましょう、中森警部…あれ?中森警部?」
警官C「警部?どこですか警部!!」
警官D「あれ?警部もいないぞ。」

そして、米花ジョイシティ上空では、まんまと宝石を盗んだキッドがハンググライダーで悠々と飛行していた。
やっぱ、一仕事終えた後の夜間飛行は最高だぜ。にしても変だなぁ…今日はいつもに比べてあんまり高度があがらねえぞ。
そんなことを考えながら、キッドは今盗んだばかりの宝石をポケットから取り出した。

キッド「ちょろいぜ。」
キッドは手に取った宝石を眺め、思わず笑いながらつぶやいた。
キッド「中森警部だけじゃ手応えなさすぎだよなー」
そのときだった…いるはずのない人物の声が聞こえてくるはずのない方向から聞こえてきたのは…

中森「わるかったなあ、手応えがなさすぎて。」
その声はキッドの頭上から聞こえてきた。

キッド「なっ?」
キッドがあわてて頭上を見上げると、中森がキッドのハンググライダーにしっかりとぶら下がっていたのだ。
中森「もう逃がさんぞ、キッド!!」

そう言いながら、中森は両手をキッドの首に回した。
キッドの首はもろに絞まり、呼吸が出来なくなったキッドは、だんだんと意識が薄れてきてしまった。
そのため、ハンググライダーは左右にフラフラ揺れはじめ、やがて突然の突風にあおられ、ハンググライダーの機首は瞬時にして約60度持ち上がった。
中森はその急激なうごきに耐えられず、とうとうキッドの首に回していた腕を放してしまった。
そのため、キッドは何とか呼吸をすることが出来るようになった。

中森「うわぁぁぁぁぁ」
うっかり手を離してしまった中森は、必死にハンググライダーの翼をつかもうとした。しかし…

ビリビリビリビリ…

中森が直接布をつかんでしまったため、ハンググライダーの片方の翼は完全に破けてしまった。
さらに悪いことに、このとき中森はとっさにハンググライダーの骨組みのパイプをつかんだのだが、その際、
パイプが1本はずれ落下してしまった。
そしてハンググライダーは完全にコントロールを失い、急降下を始めた。

キッド「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…」
中森「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…」

現在の高度約400メートル



再び、黄金の地球儀近くの茂みの中。

そこにはまだ元太・歩美・光彦・守の4人が取り残されていた。
歩美「大丈夫、守くん?」
光彦「立てますか?」
守「うん、大丈夫だよ。」
歩美と光彦は、守が起きあがるのを手伝った。
元太「どーすんだよ、あいつら行っちまうぞ。」
光彦「追いかけましょう。」
歩美・守「うん。」
4人は、遠くの方にかろうじて見えるコナンの姿を追い、走っていった。


一方コナンたちの方は…

男は必死に走って逃げ、コナンはスケボーでそれを追跡していた。
コナン「待てっ!!」
その声に男は後ろを振り返った。
男「な、なんなんやあれは?」
両者の距離はどんどん狭まり、もう10メートルを切っていた。
男は再びコナンの方を振り帰った。
男「そ、そんなんありかー」
男はさらに懸命に走った。
やがて、男の目の前に、ジェットコースターのレールが現れた。
そこは、コースターのレールがもっとも低い場所なのだ。
地面からの高さ約1メートル。もちろん事故が起きないようにその回りにはフェンスが張られていた。
男はフェンスをよじ登り、その中へ入っていった。
コナンがフェンスのそばに到着したとき、男は丁度そこを通過したジェットコースターにしがみついて行ってしまった。
コナン「しまった!!」
その間にもジェットコースターはどんどん走っていく。
男「ひぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」

コナン「くそっ!!」
コナンの身長でしかもスケボーを片手に持った状況でこのフェンスを越えるのはかなり厳しい。
フェンスが高いので先にスケボーを投げ入れるのも無理のようだ。
その間にも男がしがみついたコースターはどんどん進んでしまっている。

このまま逃げられてしまうのか?
コナンは一瞬そう思ったが、次の瞬間、あることを思い出した。
コナン「待てよ、確かこのジェットコースター…」
コナンは再びスケボーを走らせ、ある場所へと急いだ。

遊園地の中、アトラクションや客の間をすり抜け、コナンが到着した場所はジェットコースターの降り場だった。
本来上ってはいけない階段を逆に上り、係員の制止を振り切ってコナンはスケボーでレールの上を走り出した。

このジェットコースターは、ビル屋上から地上まで下るとすぐゴールなのである。
従ってゴールから逆送すればすぐにビル屋上まで上ることが出来るのである。
コナンのスケボーがビル屋上への上りへと差しかかった。
はじめは緩やかな上りだったのが、だんだん角度が急になり、そして最後は約150メートルの垂直な壁だった。
コナンのスケボーは限界まで加速し、そして一気に150メートルの壁を駆け上がった。

同じころ、男がしがみついたジェットコースターも、地上のコースを走り終え、ビル屋上への上りに差し掛かった。
高速モーターの力で、スピードを落とすことなく垂直な壁を上ることが出来るこのコースターは、屋上まで上りきった時点で急激に右にカーブする。
男はそこで力尽き、コースターからとばされ、屋上にゴロゴロと転がるように落下した。

コナンのスケボーはビル屋上よりも高く飛び出し、約20メートル滞空した後、車輪と地面の間で火花を散らしながらコンクリートの
地面をしばらく滑っていった。

コナン「うわっ」
スケボーが地面の段差に引っかかった。
その衝撃でコナンの体は弾き飛ばされ、スケボーは段差の手前で煙を立ち上らせて止まった。

男が再び走り出したのと、コナンが起き上がったのはほぼ同時だった。
コナン「待て!!」
コナンはスケボーを脇に抱え、走って男を追跡した。
コナン「逃がすか!」
少し追跡した後、男が行き止まりに向かって走っているのを見計らい、コナンはどこでもボール射出ベルトを作動させた。
ベルトの先からボールが飛び出した。
今度は、キック力増強シューズを作動させ、コナンは男めがけてそれを蹴飛ばした。
コナン「行っけー!!」

コナンの足から蹴りだされたボールは、まっすぐ男の後頭部めがけて飛んでいった。
その距離は徐々に狭まり、残り2メートルをきった。そのとき・・・
中森・キッド「うわぁ〜」
バランスを崩し、キッドと中森が絡まりながら落ちてきた。そして・・・

バッコ〜ン!!

2人は、丁度ボールと男の間に落ちてきてしまった。
さらに悪いことに、コナンがキック力増強シューズで蹴ったボールは、中森警部の顔面に命中してしまった。
中森はそのまま気絶し、落ちてしまった。
キッドもなんとかビル屋上に着地した。


その間に男はその場から逃げ去ってしまった。
コナンはあわててその後を追っのだが、完全に姿を見失ってしまった。
コナン「くそっ!」

キッド「よう」
ふり向くと、エレベーターホール近くまでキッドが歩いてきていた。
コナンは男を追跡するより、守をキッドに会わせてやろうとおもった。
屋上は午後7時に閉鎖されるため、コナンとキッドと、気絶している中森の3人しかいない。

キッド「まさかこんな所で会えるとは、奇遇だな。」
コナン「ああ」
キッド「今日も相変わらず、やっかいごとに巻き込まれいるわけだ。」
コナン「うっせー、大きなお世話だ。まあ丁度いいや。ちょっと一緒に来てくれねえか?お前に会わせたいやつがいるんだ。」
キッド「会わせたいやつ?」
コナン「ああ、実は…」
コナンはキッドに守が来ていることを説明し、探偵バッジで光彦たちに連絡を取った。

歩美・光彦・元太・守は、コナンが行ってしまった後、何とか走ってコナンを追いかけていったのだが、
スケボーのスピードにはやはり追いつけず、完全にコナンたちの姿を見失っていたのだ。

4人は、エレベーターに乗り、屋上へと上がっていった。


エレベーターには4人しか乗っておらず、また途中の階で乗ってくる人もいなかった。
もうすぐキッドに会える。
そう思ってわくわくしていたのは守だけではなかった。
何しろ光彦と元太は生でキッドに会うのは初めてなのである。
歩美ももう一度キッドに会いたいと思っていた。
そして守は…命を救ってくれたお礼を言うため、キッドを探しつづけていた。
もうすぐ…キッドに会える!!

ピンポーン
1階から調子よくノンストップで上がりつづけていたエレベーターが、初めて停止した。
そこは22階のコンサートホール前。

扉が開いた。
エレベーターの真っ正面に、コンサートホールの入り口が見えた。
その様子は異常なものだった。
コンサートが行われているはずなのだが、ホールのドアは開いており、中からは喧噪しか聞こえてこない。
しかも、廊下にいる人はたった一人を除いて、全員血を流して倒れていた。
そしてその『たった一人』は、エレベーターの扉の前に立っており、その右手には銃が握られていた。

その男は口元に不気味な笑みを浮かべながら、銃口をゆっくりと守に向けた。
子供たち4人はあまりの恐怖に固まってしまい動けない。
男は引き金を引く指にゆっくり力を加えた。

ドン!

弾丸は守の右胸に命中した。
守はそのままエレベーター内に倒れ込み、体からは大量の血が流れ出していた。
歩美「キャーッ!!」
歩美のその巨大な悲鳴は、屋上にいるコナンたちの元にも届いた。

コナン「今のは?」
気のせいかと思った。
ビルの屋上にいるコナンの耳には歩美の悲鳴もわずかしか届かなかったのだ。
しかし、一応何かあったのか確認を取ることにした。
通信機で歩美達のバッジに呼びかけてみる。
しかし応答はない。

22階エレベーターでは、男は銃口を少しずらしていた。
今は元太の方を向いている。
男は再び指に力を入れ、撃とうとした。

「やめろー」

それは金田一はじめだった。
銃声を聞き、コンサートホールから飛び出してきたのだ。

男は銃口を金田一の方に向け直した。
2人は数秒間、にらみ合いをつづけた。

その隙に光彦はバッジをとり、呼びかけてきてるコナンに返事をした。
光彦「大変です!守くんが、守くんが…銃で撃たれました。」
コナン「な、何?」

男はすぐに銃口を光彦の方に向け、撃った。

ドン!

だが間一髪、はじめが男に飛びかかったため、弾はそれ、誰にも当たることをなく壁に着弾した。

しかし、その銃声は探偵団バッジを通してコナンの耳にも届いていた。
コナン「今どこにいるんだ!!」
そう言ったとき、コナンはすでに走り出していた。
光彦「22階のエレベーター前です。」
コナンは3段とばし4段とばしで非常階段を一気に駆け下りていった。
そんなコナンに追い打ちをかけるように再びバッジから銃声が轟いた。

ドン!

コナン「おい大丈夫か?今の銃声は?」
光彦「金田一さんが撃たれました!!」
コナン「くそっ!」

男はゆっくりとエレベーターに近づいていた。
はじめ「ま、待て」
金田一はおびただしい血を流しながらも立ち上がった。
金田一「や、めろ」
男は振り返り、再び金田一を撃とうとした。

コナン「待て!」
非常階段から飛び降りるように到着したコナンは、すぐにキック力増強シューズのダイヤルをひねり、どこでもボール射出ベルトのダイヤルを回した。

しかし…

ボールは出てこない。
射出ベルトのボールはすでに屋上で使ってしまっていた。

男は銃口をコナンに向けた。
コナン「くっ!」

ガッシャーーーーン

エレベーターホールすぐ横の窓ガラスが割れた。
そしてそこから怪盗キッドが入ってきた。
キッドはすぐさまトランプ銃を取りだし、男めがけて発射した。

パシュパシュ!

そのうちの1発が男の銃に当たり、もう1発は肩に命中した。
男は銃を失い、肩も負傷した。
しかし、男は胸元から黒い球を取り出し、それを足下に投げつけた。

それは閃光弾だった。
そのまぶしい光にキッドもコナンも一瞬ひるんでしまった。
その隙をつき、男はキッドに体当たりした。
男とキッドは、割れた窓から外へと落ちていってしまった。

光がおさまり、コナンが窓際に駆けつけたときには2人の姿はもう見えなくなっていた。
コナンの目には、米花ジョイシティへと近づいてくる赤い回転灯の光が見えていた。



6章へ

<Gahal様のあとがき>
いや〜とんでもない男が登場しました。
この、“守と金田一を撃った男”は“守を狙う太った男”でも“黒いベンツの男”でもありません。
この章から登場の新しい人物です。 実はこの男を小説に出そうと決めたのは2年も前のことなんです。
いや〜長かった。
で、6章では冒頭から平次が…

Gahal様のコナン&金田一final!!
きゃぁぁっキッド様ぁぁ!!←見ているところがすでに違う!
カッコイイっハングライダーから落ちてもかっこいいっす!!(笑)
一瞬関西弁?!と思った時は某探偵かと思いましたが・・・
それにしても撃たれた守君は大丈夫なのか??
次は冒頭から平次登場???さ・・挿絵描いてもいいですかvvv?←平次待ちの自分(笑)

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