コナン&金田一final
漆黒のモレンド 第6章
作:Gahal様


惨劇…まさにそう呼ぶにふさわしい出来事だった。
コンサートホール内にいた人々の証言、そして少年探偵団の証言からその惨劇の全容が明らかになっていった。
 
 あの時、コンサートホールでは、人気アイドル速水玲香のコンサートが行われていた。
チケットは全て完売していたので客席は満席、コンサートは4部構成で、丁度第2部がスタートしたときだった。

 速水玲香は大量のスモークとともに10人のバックダンサーを従えて登場した。
スモークで舞台が全く見えなかったその時…突然舞台の上から銃声が轟いた。
このとき、観客によると客席から舞台へ上がった人物はいなかったらしい。つまり、男は舞台袖から舞台へ出たものと思われた。

 次第にスモークが晴れていくと、ステージ上にバックダンサーたちが次々倒れていくのが見えるようになった。
そのとき、最前列に座っていた一人の少年が舞台へと上がり、速水玲香をかばったという。

その少年とは金田一のことである。

バックダンサーが全て撃たれ、残るは速水玲香と金田一の2人だけになったとき、反対側の舞台袖から警棒を持った警備員たちがなだれ込んできた。

 男は客席に降り、追って来る警備員たちを撃ちながら逃走していった。
 男がコンサートホールから出て行ったとき、20人いた警備員たちは全て撃たれていた。
 舞台に上がった少年はマイクを使って客席の人々を落ち着かせたあとすぐ男を追ってコンサートホールから出て行ったという。
 ここまでがコンサートホール内にいた観客の目撃証言だった。

 そして、そのとき運悪くコンサートホール外のエレベーターホールにいた人々は全員男に撃たれてしまった。
しかもその中の一人がたまたまエレベーターのボタンを押していたため、少年探偵団と守が乗ったエレベーターのドアが開いてしまったのである。
そして…エレベーターに乗っていた守と、男の後を追ってコンサートホールから出てきた金田一も撃たれてしまったのである。

 男はキッドとともに窓から転落してしまったのだが、キッドの姿も男の姿も、警察が到着したときには消えていた。
 さらに、警察が舞台袖から非常階段へ通じる通路を調べたところ、そこにも撃たれた人たちがいたのだった。





その惨劇から2時間が過ぎた。
2月10日 午後9時ごろ

男に撃たれた守と金田一は米花不動総合病院に搬送されていた。
他の被害者達もそれぞれ近くの病院へと搬送されたのだが、搬送された時点ですでに死亡していたり、手当を施されても回復しないまま次々に息を引き取っていった。
死者の数は50人を超えた。

何とか命を取り留めたのは守と金田一の2人だけだったのである。


それでも金田一の方は、守に比べて傷も浅く、体力もあったため、意識を失うこともなく、手術もすでに終了していた。
一方の守はまだ手術室の中だった。

その2時間後、時刻が午後11時をまわった時、守の手術は終了した。
「助かるかどうかは…五分五分です。」
それが医者の言葉だった。






2月13日
すでに連休も終わり、普通どおりに学校も始まっていた。
コナン・歩美・光彦・元太・灰原の5人は授業が終わった後、そのまますぐに米花不動総合病院へとむかった。守の見舞いに行くためである。
まだ守の意識はもどっていないので、見舞いに行っても話すことも出来ないのだが、それでも5人は守たちが病院に搬送されてから毎日お見舞いに来ていた。

コナンたちは、エレベーターで5階へ上がり、まっすぐ守の病室へ向かった。
5人は静かに病室のドアを開け、中へと入っていった。
守は静かにベッドの上に横たわり、その小さな体には点滴などのチューブがたくさんつながれている。
前日までと何ら変わりはない。

一つだけ違ったのは、誰かが花を持ってきていた事だけだった。
それも大きな花瓶にたくさんの花が生けられている。

コナン「ん?」
コナンが見つけた物は四角い白い紙切れで、その花の中に挟まっていた。
その紙には、あの怪盗キッドのマークだけが書かれていた。

5人はしばらく守の様子をみた後、金田一の病室を覗き、それぞれの家へと帰宅した。


しかし、コナンだけは探偵事務所には戻らず、帰宅する灰原と一緒に阿笠博士の家へと向かった。
家の中にはいると、阿笠博士はちょうどコーヒーを片手にパソコンの前に座ったところだった。

コナン「よう、阿笠博士!!」
灰原「ただいま。」
阿笠「おお新一か。哀君と一緒じゃったのか。」
コナン「ああ。博士に頼んでおいた、黒いベンツの男や、一緒に乗っていた5010という女、太った男、狂った殺し屋、
それに1月2日に爆破された北海道の雑居ビルと0717の関連について何か分かったのか聞きに来たんだ。」
阿笠「おお、それならいくつか分かったことがあるぞ。」
コナン「本当か?」
コナンと阿笠博士が話を始めるとすぐ、灰原は地下へとおりて行った。

阿笠「ああ、北海道の雑居ビルの爆発とよく似た事件が他に2つあったんじゃ。」
コナン「2つ…」
阿笠「1つは、大阪にあった化繊の加工工場じゃが、北海道のビルが爆発した同じ日に爆発していたんじゃ。」
コナン「同じ日に?」
阿笠「それも、その工場地下にも北海道のビル同様の研究所が発見されたそうじゃ。」
コナン「…」
阿笠「もう一つの爆発事件は1年前に起こっておる。」
コナン「1年前…」
阿笠「博多の繁華街にあったテナントビルでな。1年前に謎の火災が発生したんじゃ。それにビルのオーナーも姿を消したらしい。」
コナン「そうか…で、他に分かったことはないのか?」

阿笠「あとは、その0717という奴が、さっきいった大阪の工場で何度か目撃されていた。ということじゃ。
それと最後に、0717ではないが、1月2日、爆発があった前後に、北海道のビルと大阪の工場で同じような男が目撃されておる。」
コナン「他には?」
阿笠「すまん。今の所わかったのはこれだけじゃ。」
コナン「そうか…でもこれだけじゃまだ何とも言えねえな…」
阿笠「まあ、あせらず地道に調べるしかないじゃろう。」
コナン「…そうだな。」
一瞬、2人の間に沈黙の時が流れた。が、その沈黙を破ったのは、コナンの方だった。

コナン「それにしても…」
突然コナンが呆れた顔をしたため、阿笠博士は驚いた様子で尋ねた。

阿笠「ど、どうしたんじゃ、いきなり?」
コナン「ああ…守を襲った小太りの男が大阪弁だったし、北海道のビルと同じ日に爆発したのも大阪の工場だ。」
阿笠「確かにどっちも大阪じゃのう。」
コナン「だからもし、アイツがこのことを知ってたらすぐにでも工場に潜入するだろうな…って思ったんだよ」
灰原「そうね。誰かさんとおなじで、彼ならすぐにでも調べに飛んで行くでしょうね。」
丁度地下から出てきた灰原が皮肉のように言った。

コナン「ほっとけ」
阿笠「もしかして大阪の服部平次君のことかのう?」
コナンの推測どおり平次はすでにその工場内に潜入していた。
しかし平次がその工場内に潜入して以降、行方不明になっていることはコナンも知らなかった。





そして大阪では…

和葉「平次・平次・平次…」
朝から和葉は走り回っていた。 
服部平次が姿を消してから4日、和葉は毎日のように心当たりを探し回っていた。
しかし、平次の姿はどこにも見当たらない。

この日も和葉は朝から平次を探し回っていた。
梅田・心斎橋・道頓堀・難波・天王寺…
半日で大阪を一回りしそうなくらい歩き回っていた。
それでも足りないと午後には神戸や京都にまで足を伸ばした。

和葉「平次…一体どこ行ったんや?」
そう言うと和葉はとぼとぼと阪急四条河原町駅へ向かって歩き始めた。
和葉「こんだけ探しても見つからへんなんて…あと平次が行きそうなとこいうたら…」
ふと足を止める和葉。

和葉「そうや!!こうなったら明日朝一で東京へ行くで〜!!!」
と、和葉が叫んだ場所は新京極の通りのど真ん中だったため、ほかの通行人がいっせいに驚いてしまった。



2月13日 午後9時
大阪城公園の北側に位置するその大ホールでは、中国は上海から来日した雑伎団のショーが丁度終わったところだった。
ステージに幕が下り、客席を埋め尽くしていた観客達も家路へと急いでいた。
それから1時間後、全ての片づけを終え、雑伎団の団員たちは大阪公演の間泊っているホテル ニューオオクニへと向かっていった。

やがて一行はホテルの玄関前に辿り着いた。団員たちはヘトヘトに疲れていたため、まっすぐホテルに入っていったが、
ただ一人楊小龍だけはホテルにはいらず、そのまま歩いていった。
その様子に団員の一人、石達民(スー・タアミン)が気づき、あわてて声をかけた。
達民「どこへ行くんだい、小龍?」
小龍「ちょっとそのへんを散歩しようとおもって。」
達民「でも今日はゆっくり休んだ方がいいよ。だって明日は…」
小龍「大丈夫だ。それにベッドに入っても、今夜は眠れそうにない」
達民「そう…でも無茶はするなよ」
小龍「ああ」 


楊小龍(ヤン・シャオロン)は現在18歳、上海でも人気の雑伎団―楊雑伎団の若き団長である。
楊雑伎団は日本でも何度か公演をするほどの人気があり今日が大阪公演の最終日だった。

小龍はとりあえず近くに見えているツインタワーに向かって歩きだした。
小龍(いよいよ明日か…)
今回の日本公演は今日が最終日だったため、団員たちは明日、上海へ帰ることになっていた。
しかし、団員たちのはからいによって小龍はもう一日だけ日本に残れることになったのだ。

その一日を利用して、小龍は金田一はじめに会いにいくことにしいてたのだ。 
小龍(元気にしてるかな、あいつ…)
小龍は金田一が撃たれて入院していることなど、まだ知らなかった。

そんなふうに考え事をしながら歩いているうちに、いつの間にか目指していたツインタワーを通り越していた。
あわてて引き返したが、途中で道を間違え、通った覚えのない場所に来てしまった。
ツインタワーも全然違う方向に見える。
何とか方向修正しようとしたものの、時すでに遅く、小龍は工場地帯に紛れ込んでしまっていた。
もうだれかに道を聞くしかない。小龍は、人を捜すため、工場地帯を進んだ。

小龍「ん?」
ちょうど、廃工場の前にさしかかった時だった。
直感的に小龍はその工場がただの廃工場ではないと思った。
ほとんど全ての窓はガラスが破れ、壁も屋根も大幅に崩れている。なかには黒く焦げているものもある。
まるで爆発したようだ。
そんな人が近づきそうもない廃工場の前に、人が一人ポツンと立っていたのだ。
それも、ハイヒールにスーツにコートという、とても工場で働いているとは思えない女性だった。
年は40歳ぐらいであろう。肩にかかるくらいの髪を少し赤く染めている。

小龍「アノ…」
その女性が少し気になった小龍は、思わず声をかけてしまった。
女性は一瞬驚き、そしてゆっくり振り返った。
女性「な、何か?」

小龍はとまどってしまった。声をかけてしまったものの、まさかいきなり「こんなところで、なにをしているのか?」とは聞けない。そこで…
小龍「すみませんガ、ホテルニューオークニへはどう行ッたらイイでしょうカ?」
女性「もしかして、道に迷ったの?」
小龍「ハイ」
女性は、丁寧に道を教えてくれた上、地図まで書いてくれた。そのあと彼女は急いで工場地帯を去っていった。

彼女の姿が見えなくなった後、小龍はもう一度その廃工場の方を見た。
(この工場に何かあるのだろうか?)

そう思った瞬間
突然廃工場の中で何かが動いた。一瞬だったが、それは間違いなく人影だった。

(誰かがいる?こんな廃墟で一体何を?)

小龍はそっとその人物の後をつけた。右手にはナイフを持ち、口にはたばこをくわえ、あごには髭を生やしている…男だ!!
その男は爆破のショックで穴だらけになった床の上を明かりも使わずなれた足つきでどんどん進んでいった。

そして、地下へと続く階段を下り、さらに入り組んだ廊下を進み、たどり着いた所にあったのは、牢屋だった。

牢屋の中にも誰かが居る。

牢屋の中の人物「おいコラ!!一体いつまでこんな所に閉じ込めとくんや?」
牢屋の格子から顔を突き出して叫ぶその声は男の声だった。

牢屋の外の男「勝手にこんな所に忍び込むから悪いんや。少なくともボスが帰ってくるまでは出られへんと思え。」
外の男は、格子のすぐ前に置いてある机と椅子の椅子を思いっきり乱暴に引き、どかっと腰を下ろした。

牢屋の外の男「まあ、どっちにしろお前は、生きてここを出れへんで」
外の男はたばこの煙をプカーと吐きながらフフフとほくそ笑んだ。
中の男はそれを見てさらに怒りを増したようだ。

牢屋の中の男「こんなことしてタダですむと思うなよ!!」
そのあとも2人は言い合いを繰り返していた。

そんな様子に見とれていた小龍は、後ろから来た男に気づかなかった。
その男は木刀を振り上げ、小龍を殴ろうとした。
間一髪、小龍は木刀をよけ、反射的に酔拳で倒していた。

牢屋の外の男「な、なんだ?」
小龍が倒した男が地面に倒れた音と、カランカラン…と木刀が落ちた音で、牢屋の前にいた男に小龍の存在を気づかれてしまったのだ。
男はナイフを振りかざし、小龍に襲いかかってきた。
小龍は仕方なくその男も酔拳で倒した。
しかし、男は、倒れる際にポケットから何か機械を取り出しそれを地面に放り投げた。

ジリリリリリリリリリリリリリリ…
警報機だった。

「なんだ?」「何かあったのか?」などという声と、たくさんの足音が近づいてきた。
仲間に気づかれてしまったようだ。

そのとき、牢屋の中にいた男が小龍に言った。

牢屋の中の男「その机の中にここの鍵があるんや。取ってくれ」
中にいたのは、小龍と同じくらいの年齢と思われる男だった。
小龍「あ、ああ」
言われるままに机の引き出しから鍵を取り出し、それで牢屋の鍵を開けた。
男は牢屋から出ると、小龍を襲った男が持っていた木刀を拾いあげた。
牢屋の中にいた男「急いでこっから逃げるで」
小龍「あ、ああ」
2人が地上へ向けて走り出したとき、警報を聞きつけてやってきた追っ手が突然目の前に現れた。
さらに後ろからも現れ、2人は総勢20人の男に囲まれた。

とにかく地上への道をふさいでいる最小限の敵のみを倒し、2人はさらに走っていった。


地上へ出た2人は、工場からすぐに逃げ出した。
無我夢中で走った2人は、いつの間にか大阪城のそばまで来ていた
息も切れ切れの状態だった
牢屋に閉じこめられていた男「オレは服部平次や。あんたは?」
小龍「楊小龍だ」
平次「楊って…日本人やなかったんやな。」
小龍「アア、中国カラ来た。」
平次「ん?まてよ?楊小龍ってどっかで聞いたな…ああそうや、もしかして大阪城ホールで公演してる雑伎団の団長か?」
小龍「ああ、ソウダ」
平次「いや〜ホンマ助かったわ。ところで何であんなとこにいたんや?」
小龍「散歩ニ出たら、道ニ迷っテしまったンダ」
平次「どこにいくつもりやったんや?助けてもらった礼に、案内したんで。」
小龍「ホテル・ニューオークニだ。」
平次「ああ、すぐそこやな。ほんなら行こか。」
小龍「ああ」

2人はホテルニューオークニへむけてゆっくり歩き出した。



第七章へ

<Gahal様のあとがき>
あとがき というわけで、何とか6章も完成いたしました。
5章のあとがきでは、平次は6章も冒頭に登場…と書いてましたが、色々アクシデントが発生し、 結局6章の終わりでの登場となりました。
この章から「名探偵コナン」からは遠山和葉が登場し、「金田一少年の事件簿」からは楊小龍が初登場となりましたが…
“小龍”の字を何度“小狼”と打ち間違いかけたことか←おぃ
とりあえず第7章では「金田一少年の事件簿」側からもう一人(Aさん)登場します。

Gahal様のコナン&金田一final!!
出てきました平次ーー!!イラストは平次を描こうと決めてました(笑)
アップが遅くなってもうしわけありません;;;;Gahalさんに足を向けて眠れないですっ(ごふっ)
そして、コメントを見てから小龍を小狼と間違えそうに・・(実際イメージも似てしまってすいません;←画力のなさに反省;)
金田一少年の事件簿側からAさん!!そして小龍と平次が一緒に合流・・・次が楽しみです♪byあっきー
※酔拳は映画くらいでしか見たことがなく・・・描けてないし・・・ガク

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