コナン&金田一final
漆黒のモレンド 第7章
作:Gahal様

2月14日(水)
  小龍によって救出された平次と、平次に泊まっていたホテルまでの道を案内してもらうことになった小龍の2人だったが、
その夜小龍がホテルニューオークニへ戻ることも、平次が自宅へ帰ることもなかった。

和葉は、前日決めたとおり、朝一番の飛行機で東京へと向かっていった。

一方、小龍と同じ雑技団の団員である達民は、朝になっても帰らない小龍を心配し、朝の4時からホテルの周辺を探し回った。
それから午前8時になるまでの間、後から起きてきた他の団員たちも次々に加わって、探し続けたのだが、やはり小龍は見つからなかった。

団員たちは一旦ホテルのロビーに集まり、これからどうするのかの相談をはじめた。
帰国を延期するべきか、警察に届けるべきか、話し合いを続けていたちょうどその時、ホテルのフロント係が団員たちのところへやってきた。
それは小龍からホテルに電話があったことを知らせるものだった。

その知らせを聞き、達民はあわてて電話の受話器をとった。他の団員たちも、電話の声をよく聞こうと達民のまわりに集まった。

達民「小龍!今どこにいるの?」
小龍「東京だ。」
達民「東京!?」
小龍「ああ。昨夜の寝台特急で来たんだ。」
達民「もう、心配したじゃないか」
小龍「心配かけてすまない。でも俺は大丈夫だ。」
達民「そう。」

達民をはじめ、電話のまわりに集まった団員たちは心底ホッとしていた。
達民「じゃあ僕達は予定どおり上海へ帰るよ。」
小龍「わかった。」
達民「金田一さんによろしく。」
小龍「ああ…」





―回想―

それは前日の夜、平次と小龍の2人がホテルニューオークニへむけてしばらく進んだ時のことだった。

大阪城に沿ってしばらく歩いていき、ちょうど大阪城公園の入り口にさしかかった。
平次「ここからやったら…大阪城公園を突っ切った方がはやいで。」
平次のその言葉によって2人は大阪城公園に足を突っ切るように歩いていった。

大阪城公園のちょうど真ん中くらいまで進んだときだった。
男「ちょっと待てや!!」
平次達の近くから突然、大きな怒鳴り声が聞こえてきたのだ。

怒鳴り声がした方向をみると、何人もの男が一人の女性を追いかけまわしているところだった。。
しかもただ追いかけているだけでなく、男達は女性の服の袖をつかんで捕まえ、木刀で女性を殴ろうとしているのである。
さきほど聞こえた怒鳴り声は、その男たち中の一人が女性に向かって発したものだった。
女性は捕まるたびに体を大きく降って、男達の手をふりほどき、振り下ろされる木刀からも紙一重のところで避けながら逃げていたのだ。

平次「あいつら」
しかも、女性を追いかけている男たちは、さきほど平次を監禁していた男たちだったのだ。

女性「あっ!」
そのとき、女性のハイヒールのヒールが地面に埋まっている小石に引っかかってしまった。
ヒールは折れ、女性はそのままバランスを崩してその場に倒れてしまった。
丁度そこは外灯の真下だったため、いままで見えにくかった女性の顔がはっきり照らし出されたのだ。

小龍「アノ女(ひと)ハ…」
その女性は、廃工場の前で小龍に道を教えてくれたあの女性だったのである。

考えるよりはやく小龍の体は動いていた。
倒れている女性を木刀で殴ろうとしている男の下に素早く回り込み、左腕で振り下ろされた木刀を止める。
さらにその場に崩れるように体を沈ませ、男が一瞬気を緩めた次の瞬間には、酔拳によってその男は倒されていた。

他の男達も、小龍の酔拳や平次の剣道の前にあっさりと敗れ、まだ動けるものが動けないものを引っ張って全員逃げてしまった。

女性「ありがとう。助かったわ」
そういうと女性は立ち上がり、そして2人の顔を見た。
女性「あなたは?」
小龍の顔を見たとき、女性が何かに気づいたようにそう言った。彼女も小龍のことを覚えていたのだ。
小龍は頭をペコリとさげた。

平次「ケガないか?」
女性「ええ、大丈夫よ。」
小龍「それにしてモ、あなたモ同じ奴ラ二追われテいたナンテ」
女性「え、あなたたちも…」
平次「ああ、ちょっとな。」
女性「そう…」
小龍「ナゼ追われているンダ?」
女性「…あなたたちはなぜ追われているの?」
平次「俺は、あの工場の地下にあるあいつらの研究所に忍び込もう思たんやけど、地下への階段が崩れよってな、それで気ぃ失ってもうて、
気が付いたら地下牢に閉じこめられとったんや。」
小龍「それを俺ガ逃がしたカラ、あいつら二追ワレル事になったんダ」
女性「そう…。でもあの研究所は“あいつら”のものじゃないわ…」
平次「え…」
女性「あいつらはただのチンピラ。この間の爆発によって元の持ち主達がいなくなったから町のチンピラが棲み付いただけ…。
あの爆発の前まであの研究所を動かしていたのは3281という男。
尤も、さっきのチンピラのなかに、元3281の部下だったものがいるかもしれないけど…」
平次「3281やと…!?」
女性「ええ。そして爆発で全てを失った3281は、東京へ出て行ったわ。」
彼女は、ここで言葉を一旦遮り、1回大きく深呼吸をした。

女性「私があいつらに追われてる理由だったわね。実は私、ある事情から3281や8982達の組織を追ってるんだけど…
それで3281がいなくなったから組織を調べるチャンス、と思ったんだけど…」
平次「忍び込んだらそこはすでにさっきのチンピラだらけやったっちゅうわけか。」
女性「ええ…」
平次「ところで、その事情っちゅうんは何なんや?」
女性「…それは、言えないわ。」
平次「そうか…」

そこまで女性の話を聞いた後、今度は平次が自分のことを話し出した。
平次「俺は探偵やってるから、いろんな事件に巻き込まれたんやけど、以前0717っていう奴と2回対決したことがあってな…」(*)
女性「え?」
平次「今回、あの工場に忍び込んだんは、北海道で爆発した雑居ビルの事件(#) と何か関係あるんちゃうか思たからやけど…
まさか、0717の事件とも関係しとったなんてな…」

平次の話で、一瞬驚いた表情を見せていた彼女は、その後また穏やかな表情に戻り、そのまま数秒間沈黙した後、ゆっくりと話しだした。
女性「3281も8982も組織の支部長すぎないの。北海道の雑居ビルは8982が治めていた北海道支部。大阪の工場の方は3281が治めていた大阪支部よ。
0717は…その3281の直属の部下のコードナンバーが確か0717だったわ。
他にも九州支部と東京支部、そして日本のどこかにそれらを束ねる総本部があるはずなの。
九州支部には大阪に来る前に行って来たけど、すでに1年前につぶれていて、建物も残っていなかったわ。
でも東京支部と本部の場所はまだ分っていないの。」

平次「…何で、初めて会うたばかりの俺らにそこまで教えてくれるんや?」
女性「それは…あなたのことを同じ敵を追う仲間だと判断したからよ。」
そういうと女性は自分の腕時計を見た。
女性「最終の新幹線(東京行)って何時だったかしら?」
平次「9時18分やけど。」
すでに時間は午後11時過ぎである。

女性「どうしよう。」
平次「でもまだ寝台特急やったらあるはずやで。到着は明日の朝になるけどな。」
女性「ブルートレインか…」
平次「最終の新幹線よりは遅うなるけど、明日の朝一で行くよりは早う着けるで。」
女性「…そうね。じゃあそれにするわ。じゃあ私急ぐから、これで。さっきは助けてくれてありがとう。」
そういって彼女がそこから立ち去ろうとしたとき、それを平次が呼び止めた。

平次「ちょっと待ち。」
女性「何?」
平次「俺も一緒に行ったるわ。」
女性「え?」
平次「その組織のことも気になるし、それに…東京には会いたい奴もおるしな。」
女性「…分ったわ。」
平次「決まりやな。」
さらに、ここまでずっと黙っていた小龍も、口を開いた。
小龍「俺モ行ク。」
平次「小龍…」
小龍「ドウセ明日ノ朝一番二東京へ行くこと二してるんダ。早ク着けるナラその方ガイイ。」

そういうわけで3人はそのまま東京へと行くことになったのだ。

平次「そういやまだ名前言ってへんかったな。俺は服部平次や」
小龍「俺ハ楊小龍ダ。」
女性「私は池羽鈴子(いけば すずこ)よ。」

その際平次は家には帰らずに東京へ向かった。
小龍は一旦ホテルに戻りはしたが、(夜も遅いので)荷物を取ってきただけで団員に声をかけずに出てきてしまった。
そして3人は何とか切符がとれた 寝台特急サンライズゆめ で東京へ向かったのだ。

―回想・ここまで―





そこは東京駅にある喫茶店だった。
電話を終えた小龍はカウンターに設置してある公衆電話の受話器を置き、平次と鈴子が向かい合って座っている席へと戻った。
テーブルの上にはウエイターが運んできたおしぼりと水が3つずつ置かれており、すでにモーニングセットを3人分注文済みである。
あとは料理が来るのを待つだけだ。

小龍が席に座ったのを見計らい、平次が小龍に向かって話し始めた。
平次「連絡ついたんか?」
小龍「アア」
平次「そら、よかった。」

そのときちょうど、注文したモーニングセットが運ばれてきた。
食事をしながら、平次は鈴子に尋ねた。

平次「その本部とか東京支部の手がかりは全然ないんやろ?」
鈴子「ええ…」
平次「それやったら、その手がかり探す前に1ヶ所だけ行きたいとこがあるんやけど…ええやろか?」
鈴子「いいわ」
平次「小龍もええか?」
小龍「俺ハ、食事ガ終ワッタラ、一人でハジメを探スつもりダカラ、俺ノ事ハ気にしないでイイ。」
平次「一人で?大丈夫なんか?」
小龍「アア、詳しい住所までハ知ラナイガ、何トカなるダロウ」
平次「…」
それは大丈夫とは言わへんやろ…。平次はおもいきりそう思ったのだが、もう一つ別のことが気になり、それは吹っ飛んでしまった。
平次「ちょっと待て。今、ハジメを探すって言わへんかったか?」
小龍「ア、アア…確カニ言ったガ…」
平次「そのハジメって、ひょっとして金田一一か?」
小龍「知っているノカ?ハジメを?」
平次の言葉に小龍が詰め寄った。

平次「あ、いや・・・・」
鈴子「金田一一って…この間、銃で撃たれて入院した人じゃない?」
平次「なんやて?」
小龍「本当デスカ?」
鈴子「ええ。ニュースでやってたし、新聞にも載ってるわ」
そういって、鈴子は1冊のスクラップブックををカバンから出した。
平次「何や?新聞記事か?」
そのスクラップブックには、新聞記事を切り抜いたものがいくつも貼られていた。

鈴子「東京支部を探してるって言ったでしょ。だから東京で起きた大きな事件の記事は全部このスクラップに貼りつけてるの。あったわこのページよ。」
鈴子はその記事が貼られているページを開いたまま、平次と小龍に手渡した。

そこには、米花ジョイシティで起きた事件の詳細が書かれていた。

小龍「ハジメは米花不動総合病院に入院してイル…」
平次「…決まりやな。俺が行きたいところも実は米花町なんや」
鈴子「それじゃあ3人で米花市まで行きましょう。」

平次・小龍・鈴子の3人は、モーニングセットを食べおえ、そのあと電車に乗り、午前8時30分に米花駅に到着した。




第八章平次編へ

第八章和葉編へ

<Gahal様のあとがき>
7章もなんとか完成いたしました。そして
次の8章でようやく前半が終了します。9章から後半突入!!
とはいっても、前半8章・後半8章というわけではありません。
(奇術師の死闘でも前半(ホテル編)6章で後半(地下研究所編)9章でしたから)
ひょっとしたら、20章いくかも?

(*) 第3の予告状&第3の予告状after 参照
(#) 奇術師の死闘 参照

Gahal様第七章ありがとうございました☆
新しいキャラが登場・・・キーポイント的な仲間が出来、いよいよ八章であの方が出てきそうな予感ーーっ!(なぬ)
引き続き平次の出番が多そうなので嬉しいです(個人的なっ;)
それにしても金田一君を探しに東京まできた小龍には吃驚・・・・(いやむしろ天然?!)byあっきー

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