コナン&金田一final
漆黒のモレンド 第8章〜平次編〜
作:Gahal様


2月14日(水)午前9時

平次・小龍・鈴子の3人は、米花不動総合病院に到着した。
本当ならば、米花駅で平次と鈴子は他のところ(毛利探偵事務所)へ行く予定だったのだが、こんなに早く行っても仕方がない
(コナンは学校へ行っているので会えない)ということで、平次たちも病院に来ることになったのだ。

とはいえ、金田一の病室がわからない。なのでまず、受付で金田一の病室が何号室か聞くことにした。

3人が受付で、病室を訪ねようとした時、ちょうど1階に下りてきたエレベーターに乗っていた人物が、病院の外に出ようと、
受付のそばを通ったとき(受付は、正面入り口に入ってすぐのところにある。)立ち止まって声をかけた。

??「小龍!?」
小龍「え?」
突然名前を呼ばれた小龍は、一瞬驚いたが、その声が聞き覚えのある声だったため、ゆっくりと後ろを振り返った。
小龍「…ハジメ?」

そこにたっていたのは、金田一一だった。両肩にスポーツバッグを1個ずつ(合計2個)掛けている。
金田一「やっぱり小龍だったか。どうしてここに?大阪で公演があったんじゃないのか?」
小龍「公演ハ昨日で終わりダ。それより、ハジメの方こそ、入院しているンじゃなかったノカ?」
金田一「ああ、ちょうど今退院したんだ。」
小龍「…ソウカ」
金田一「で、日本にはいつまで居られるんだ?公演が終わったならそんなに居られないんじゃないのか?」
小龍「今日までダ。」
金田一「今日までって、帰りのチケットはあるのか?」
小龍「アア、日本航空、成田発上海行 午後7時10分発の便のチケットを予約してアル。」
金田一「JAL?」
小龍「それが(成田発で)一番最終ノ上海行(直通)なんダ。できるダケ長く日本ニ居られるようにナ。」
金田一「小龍…」

そのとき、病院の玄関前に一台の車が停車し、軽くクラクションを鳴らした。
金田一「わりい、ちょっと待っててくれ」
そう言うと、金田一はその車に向かって駆けていった。その車は、母の迎えの車だった。
助手席には一の母がちゃんと乗っている。そして運転席に乗っていたのは…

金田一「いつきさん!!」
いつき「よぅ金田一。退院おめでとう。」
金田一「いつきさんが来てくれたんだ。」
いつき「ああ、ちょうど暇だったんでな。」
金田一「ありがとう。」
いつき「いいってことよ。」
一の母「はじめ、さっさとしなさい。」
金田一「ああ。でも今、友達が来てるからあとで帰るよ。荷物だけ持って帰ってくんない。」
一の母「そう?ま、分かったわ。でもあんまり無理しちゃだめよ。」
金田一「分かってる。」
一の母と金田一の荷物を積み、いつきの車は、走り去っていった。


小龍が居るところに戻ったとき、金田一は初めて、小龍が一人ではないことに気がついた。
小龍のほかにあと2人いる。
一人は金田一も知っている。服部平次である。

金田一「あれ?服部?」
平次「久しぶりやな。」
金田一「どうして東京に?というか学校はどうしたんだ?」
平次「ま、まあいろいろあってな。」
金田一「ところで…そちらの女性は?」
もう一人は初めて見る女性だった。
小龍「こちらハ、大阪で知り合った池羽鈴子さんだ。」
鈴子「よろしく。」
金田一「ど、どうも…」

平次「で、このあとどうするんや?」
金田一「ああ、まずは…」

4人はエレベーターに乗り、5階へと上がっていった。
そして5階の廊下をある病室へ向かって歩き出した。
4人は、まず守の病室を見舞うことにしたのだ。

平次「確か、関崎守(かんざき まもる)やったっけ?その子。」
鈴子の新聞のスクラップブックに貼られた記事には守のことも書かれていたのだが、神崎守の字が間違えられて“関崎守”と印刷されていたのだ。
だが音だけで聞いた金田一には、それがミスプリだと分かるはずもなかった。

金田一「ああ」
平次「一緒に撃たれたってことは、知り合いなんかその子と?」
金田一「いいや…あ、でも、確かあのコナンって子の友達だったはずだけど。」
平次「へ〜工藤の友達ね〜。」
平次が何気なくつぶやいたその言葉に金田一は鋭く反応した。

金田一「工藤?」
平次「あ、いや…工藤やのうてやな、その…、小僧!! そう、小僧の友達って言うたんや。ははは」
大量の冷や汗を流しながら否定する平次
金田一「ふ〜ん」
一方の金田一は表面上納得したフリはしたのだが…
金田一(工藤って工藤新一のことなのか?確かにあのコナンって子はどこか工藤に似てる気もするな…)

しかし、そんなはじめの思考は、しばらく記憶の奥底に封印されることになる。

4人は守の病室に到着した。
金田一「着いたぞ。」
金田一は病室の前の“神崎守”と書かれているネームプレートを確認して言った。
平次「え?でも名前違てるやん。」
小龍「アア、新聞ニ載ってイタ字と違ウ」
新聞で見た“関崎守”が正しいと思っている平次達には、病室のネームプレートの名前の一文字が違うだけでまるで別人の名前に見えてしまったのである。
しかし、同じ新聞を見ていても、鈴子の反応だけは違った。

鈴子は、驚きを隠せない表情でそのネームプレートを食い入るように見ている。
鈴子(…この名前、まさか…)

金田一「何言ってんだ?ちゃんと“神崎守”って書いてあるだろ。」
平次「…確かに…“かんざきまもる”って読めるな。そんならあの新聞は間違いやったんか?」
金田一「新聞?」
平次「ああ、俺らが見た新聞の字が違とったんや。なあ、あの新聞見せてんか。」
鈴子「え、ええ…」

その時“別の事”を考えていた鈴子は、突然名前を呼ばれたかのようにあわてた動作で例の新聞のスクラップブックをカバンから取り出した。
問題の記事が貼ってあるページを開く。

その記事には“関崎守”という名前が書かれているのだ。
それをみて金田一が言った。

金田一「ひどいミスプリだな。」
小龍「名前ヲ間違えるナンテひどすぎるナ」


金田一「それじゃあ、中に入ろう」
平次「ああ」
小龍「アア」

ベッドには一人の少年が横たわっていた。
ただ眠っているのではなく昏睡状態なので、かろうじて胸が上下しているくらいで体が動くことはほとんどない。
それでもシーツにはしわがある。床ずれを防ぐため、または着替えなどのために看護師さんが定期的に体勢を動かしてるからだろう。

鈴子(…やっぱりこの子…)



それから4人は守の病室を後にした。
再びエレベーターに乗り、1階へと降りる。
これからの行き先を決めながら正面入り口まで向かっていく。

平次「2人が撃たれた現場に案内してくれへんか?」
という申し出を受け、惨劇の現場となった場所―米花ジョイシティのBJCタワーへ行くことが決定した。

しかしちょうど病院を出たときだった。
最後尾を歩いていた鈴子が急に立ち止まったのだ。

鈴子「ごめんなさい平次君。大事な用事を思い出したの。だからいっしょには行けないわ。」
平次「俺はええけど…東京支部と本部を探すんはどうすんのや?」
鈴子「なんとか一人でやってみるわ。」
平次「そうか…」
鈴子「さよなら」
そして鈴子は、そのままタクシーに乗り、走り去っていった。

金田一「結局なんだったんだ、あの人は?」
平次「0717って憶えてるか?」
金田一「ああ。」
平次「あの人はその0717達の組織を追ってるんみたいなんや。」
金田一「組織?」
平次「ま、おんなじ奴らを追ってんのならどこかでまた巡り会えるやろ。」
金田一「ああ、そうだな。」
平次「さて、じゃ、行くで」

3人は、ゆっくりと、(米花不動総合病院の向かいにある)米花ジョイシティのエントランスゲートへと向かっていった。



BJCタワービルに着いた3人は、エレベーターで22階へとあがった。
現場となったコンサートホールは今なお閉鎖されていた。
中に入ることはできない。それでもこのフロアーには多くの客が訪れ、花を手向けていた。

そのため、コンサートホール入り口の前には、手向けられた花束が積まれている。
そしてエレベーターホールには血痕と思われるシミもわずかに残っていた。
キッドと犯人が割って転落した窓には、まだ新しいガラスは入っておらず、あおいビニールシートで覆ってある状態だった。
ただ、それだけでは危険すぎるので、窓には近づけないよう、ポールとロープで封鎖されていた。
その場所で金田一は詳しいことを平次に聞かせる。

続いて3人は、窓から転落した犯人とキッドが着地したと思われる場所へと行った。
ところが、そこには何かが22階の高さから落ちたような後は残っていなかった。
それはつまり転落した2人が地面には着地していないことを表していた。

平次「そのアブナイ男、ピンピンしてるかも知れへんな…」

その後3人は、一旦事件のことは忘れ、せっかく来たのだからと2時間以上かけてアトラクションを回った。

正午を回ったので、3人はBJCタワービル29階にあるイタリアンレストランで食事をすることにした。
金田一「やっぱ、遊園地に男3人で来るもんじゃねえな。」
アミューズメントパークに男3人、というのは目立つのか、アトラクションを回っている間多くの人が金田一たちをチラチラと見ていたのだ。

平次「そうやな」
金田一「なあ午後からどうする?」
平次「俺は、もう出てもいいけど」
小龍「俺モ」
金田一「じゃあ少し早いけど帰るか。小龍は、俺んちまでくるだろ?」
小龍「アア」

食事が終わり3人は米花ジョイシティから外に出た。
金田一と小龍の2人は平次と別れ、不動山市にある金田一の家へ帰っていった。



一方、一人残された平次は…

平次「今は…1時か。さてどないしよ?」
ぶつぶついいながら平次はひとりとぼとぼと毛利探偵事務所に向かって歩いていった。
その途中、その道は(帝丹小学校とは別の)小学校に面していた。その学校から何人も帰宅する児童が出てくる。
平次「そうか、1年なら早う終わってるかも知れへんな。」
そうや、携帯で確認したろ。そう思って携帯電話を取り出した平次、そのときとんでもないことに気がつくのだった。
平次「しもた、電池切れや」
いろいろあって金曜日以来初めて携帯を確認することになった平次は、とっくに電池が切れていたのに気づいていなかったのだ。
(なので、和葉が電話してもつながらなかったのである。ちなみに電池が切れたのは12日の月曜日、
それまでは地下に監禁されていたので電波が届いていなかったのである。)

平次はとにかく毛利探偵事務所に向かって歩き続け、その途中で見えたコンビニに飛び込み、携帯電話の使い捨て充電器を買い、
それで携帯を充電した。
そして充電器を差したままコナンの携帯に電話をかけようとしたそのとき…

一人の少女が平次に声をかけてきた。

??「すみませ〜ん、米花不動総合病院の場所を教えてもらえますか?」
平次「ああ、それやったら…」
平次は自分が歩いてきた道のりをその少女に教えた。

その途中、一人の少年が遅れてやってきた。
???「何やってんだよ青子」
どうやら平時に道を聞いてきた少女は青子という名前らしい

青子「いま病院の場所を教えてもらったとこなの。あ、どうもありがとうございました〜」
2人は歩いていってしまった。

???「まったく、青子のトイレが長いせいでバスに乗り遅れたんだぞ。」
どうやら、米花駅からの直通バスに乗りおくれて、歩いて病院まで行こうとして迷ったらしい。
青子「何よ?あのまま次のバス待ってたら、迷うことなんてなかったじゃない。“歩いていこう”なんて言った快斗のせいよ。」
快斗「なんだと、アホ子のくせに!!」
青子「何よ、バ快斗!!」


結局平次が毛利探偵事務所に到着したのは病院を出てから1時間後だった。


午後2時
毛利探偵事務所にたどり着いた平次は、そのまま誰かが帰ってくるのを待つことにした。
歩きつかれた平次は、探偵事務所の前に腰を下ろし、そのまま眠ってしまった…



どれくらい眠っただろう。
そんなこともわからないくらいに平次は熟睡していた。

しかし、突然の大声により目を覚まされてしまった。

和葉「平次ぃ!!!!!」
気がつくと、目の前には怒りに震える和葉の姿があった。
平次「か、和葉?ど、どうしてここに?」
和葉「あんたを探しに来たんや!!5日も家空けるなんて、も〜みんなどんだけ心配した思てんの?」
平次「す、すまん、そやかてこっちもいろいろあったんや。」
和葉「ま、ええわ。あんたのおっちゃんとおばちゃんにミッチリ説教してもらわなな、さ、帰るで」
そいういって、和葉はぐいっと平次の襟首をつかみ、びっぱって帰っていった。
平次「ちょ、ちょっと待て、俺はまだ用事が…あ〜」

そしてコナンと話すこともできないまま、平次は大阪まで和葉に連れ帰されることになった。
そのあと、両親にミッチリ叱られたのはいうまでもない。


同じ頃、小龍も金田一たちと別れ、上海へと帰っていった。




2月15日午前0時
平次たちと別れた鈴子は、ホテルに宿泊していた。ただしそのホテルがあるのは米花町ではない。
彼女はあるファイルを片手に、窓際に立っていた。
夜景を見ながらそのファイルに目を通す。そのファイルにはなぜか守の顔写真が貼られていた。

鈴子(やっと逢えたわね…神崎守<こうざきまもる>君…)



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Gahal様の小説第8章平次編☆
もう平次のこのノリ大好きです(ぇ
工藤が・・小僧!(爆笑)でもさすが金田一君・・・・・見ぬいてる・・・・・
今回は平次視点と和葉視点の2部構成が凄いです!なんで和葉がここに?!と思われた方、すぐに和葉編へダイブしましょう♪byあっきー

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