奇術師の死闘 10
作:Gahal様


 階段を下りた白馬たちは、1メートル四方くらいの踊り場についた。
床にB3と書かれており、正面の壁には大人の目の高さだけにガラスがはめられたドアがあった。

そのガラス部分には"受付・ロビー"と書かれていた。

そのドアを開けると、中は20メートル四方くらいの部屋(ロビー)だった。

右側の壁にはドアが一つ、左側の壁には廊下が1本、後ろの壁(入ってきたドアがある壁)の反対の隅にはエレベーターの扉が、
部屋の中央には受付の台がある、まるで"バイ○ハザード2に出てくる警察署のロビー"のようなところだった。
(尤も、壁の色や部屋のデザインは"バイ○2の研究所"に近いが…)人が一人もおらず、真っ暗で灯りもついていない。

おそらく使われなくなった研究所だろう。エレベーターも動かなかった。


3人はロビー左の廊下を進んでいった。真っ暗なので中森のライターを灯りにした。

 その廊下は15メートルほどの一直線の廊下で、その突き当たりにはドアが1つついていた。
そのドアには"警備員室"と書かれたプレートがついており、カギがかかっていた。

鍵穴がないのでおそらく電子ロックだろう。


 次に3人はロビー右のドアへ向かった。このドアには"動力室"と書かれており、カギは開いていた。
 その部屋にはいると、そこには変わった装置や機械がずらりと並んでいたが、それらすべてが動いていないので、
あたりは不気味なほどシーンとしていた。

 部屋の中をくまなく歩きまくった3人は上へ上るハシゴと下へ下りるハシゴが並んでいる所に到着した。

中森「おい、上と下どっちに行くんだ?」
白馬「そうですね…まず上に行ってみましょう。」
そのときだった。

シュボ!

北浦がライターを点けながら言った。
北浦「ぼくもライターを持ってますから二手に分かれませんか?その方が手っ取り早いですし。」
中森「…そうだな。では俺は上の階に行く。お前達は下の階を頼む。」
白馬「分かりました。」
北浦「了解」
中森「それはあ、調べ終わったらまたここに集合だ。」

そして、まず白馬と北浦がハシゴを下りていった。それを見届けてから中森もハシゴを上っていった。
 下の階の白馬と北浦は、部屋をぐる〜っと時計回りに調べていた。そして部屋を半周したあたりに大きなレバーが一本あり、
そばには紙切れが一枚落ちていた。白馬が拾ってみると、それはメモ帳の切れ端で、何か文字が書いてあった。
<動力室>
この施設の電力はすべてB3階・動力室にて管理されている。
 ここに、非常時の電力回復措置について記す。
 下→上→中


さらに、メモと一緒にカードが一枚落ちていた。

北浦「何でしょう?"下→上→中"って?」
白馬「…おそらく僕たちが今いるところが"下層"中森警部が上っていったところが"上層"そしてその中間に当たるフロアー、つまりこの上の入り口があったところが"中層"なのでしょう。ということは、まずこのレバーを…」
といいながら白馬はレバーを入れた。
それまで静かだった機械がカラカラ…という音とともに一斉に動き出した。どうやら歯車で動く仕掛けのようである。
その直後、一瞬で周りが暗闇に包まれた。北浦のライターが消えたのだ。

白馬「北浦刑事?どうしたんですか!北浦刑事!?」
北浦「ああ、ライターのオイルが切れたみたいです。」

その直後、ドカッという鈍い音につづきウッという悲鳴、さらに何かが倒れるようなドサッという音が続いた。

白馬「北浦刑事?」
しかし何の反応もない。

その直後、白馬の後頭部に激しい衝撃が走った。
白馬の意識は急激に薄れていき、たっていることも出来なくなり、そしてついにその身体はドサッと倒れ込んでしまった。


青子「快斗…」
キッドや白馬たちがホテルをあとにしてからすでに10時間が経過していた。
青子はその間ずっとホテルの前の階段でレスキュー隊員の捜索活動を見ていた。
そんな青子の姿を見かねたレスキュー隊員の一人が青子のそばに近づき、声をかけた。

レスキュー隊員「こんなところにいたら風邪をひきますよ。お友達のことは発見し次第お知らせしましから、どうぞ中でお待ちください。」

しかし…
青子「大丈夫です。青子ここにいます。」
青子は手や顔を真っ赤にし、肩を小刻みにふるわせながら答えた。
レスキュー隊員はそれ以上何も言えず、現場へと戻っていった。




 動力室中層では、白馬が下層の機械を操作したことによって変化が起きていた。
 そのフロアーにたった一つだけあるランプが赤く点灯したのである。
 一方中森のいる上層では、たくさんある機械のうちの一つだけが動き出していた。
 その機械にはハンドルがついていて、ウィーンという音とともにそのハンドルが手前にせり出してきていた。
 この音によって中森は初めてハンドルの存在に気づいた。数秒でハンドルは停止し、再びあたりは静かになった。
 中森は首をかしげながらもそのハンドルに手をかけ、回そうとした。

 一回し、二回し…回すたびにシューッという音が大きく聞こえてきた。
 その機械から伸びているパイプの中を蒸気が通っている音であろう。
 パイプは動力室中層中の機械へとつながっており、中森がハンドルを回すたびに蒸気の音は部屋全体へと広がっていった。
 そのとき、ある人物がハシゴを上って上層に入ってきた。その人物は長い棒のようなものを持っており、それを振り上げながら中森へと近づいていった。
 ハンドルを回し続けている中森はまだ気づかない。そしてその人物は中森の背後にたつと、持っていた棒を中森の頭めがけて思いっきり振り下ろした。
 と同時に、中森はハンドルを回しきった。ハンドルがそれ以上回らなくなり、部屋中から蒸気がプシューッっと吹き出した。
 その音に驚いたため手元が狂い、中森の頭めがけて振りおろされた棒はそばにあったライターをかすった。

 やっとその人物の存在に気づいた中森は慌てて振り向いた。そしてその人物の顔の方に目を向けた瞬間…ライターの火が消え、真っ暗になった。

直後、中森の頭に激しい痛みを感じた。さっきの棒が振り下ろされたのである。中森はその場で意識を失った。





白馬「う〜ん…」
謎の人物によって気絶させられていた白馬が意識を取り戻した。
まだ少々頭がぼんやりしていたが、なんとかフラつきながらも立ち上がることができた。

白馬「僕は一体…」
そしてまだフラフラする頭を手で押さえながら自分のみに起こったことを思い出そうとした。

白馬「そうだ、僕はだれかに殴られて…」
直後、白馬はハッ!と息をのんだ。すべてを思い出したのだ。

白馬「北浦刑事!! 北浦刑事!!」
北浦刑事が自分より前に襲われていたことも思い出したのだ。白馬は北浦の名前を呼びながら部屋中を走り回った。

白馬「北浦刑事!!返事してください北浦刑事!!」
 そんな様子を上から見下ろしている人物がいた。
その人物はつい先ほど気絶させられた中森を引きずり下ろし、そして先に気絶させた者を連れて上がるためにちょうど下層へのハシゴを下りようと
したところだったのである。

「チッ!まさかあのボーヤがこんなにも早く目を覚ますとは…計算が狂った。」

その人物は、足下で気絶している中森と下層を走り回っている白馬を交互に見て(周りはまだ暗いため、ほとんど見えないのだが…)再びつぶやいた。
「まあいいさ。楽しみは後にとっておこう。」
そういうとその人物は中森を引きずって動力室を出て行った。


白馬「北浦刑事!!うわっ!!」
真っ暗なところを走っていたため、足下が見えず、何かにつまずいて倒れてしまったのだ。

この時、白馬の手が何かに触れた。
それは手のひらにすっぽりと収まるくらい小さく、細く、またギザギザした丸い部分があり、その近くには平らな部分もあった。
またギザギザした丸い部分から反対の方は少し熱かった。それは北浦が持っていたライターだった。

こんなに暗くては何もできない。とはいったもののこのライターはオイル切れ…こうなったら先に電源を回復させるしかない。
そう思った白馬はライターをポケットに入れ、立ち上がり、なんとか手探りでハシゴを見つけて注そうまで上がった。



中層に上がった白馬の目にまず飛び込んだのは、部屋の中にたった一つだけ灯っている黄色いランプだった。
近づいてみるとそのランプのそばにはモニターとキーボードがついていた。
(白馬は知らないことだが、中森が上層の機械を操作したことによって赤く灯っていたランプが黄色に変わり、そばにあった鉄板のフタが開いて
中のモニターとキーボードが外に出たのだ。)

モニターには、『非常用電源起動・管理プログラム』という文字、その下に複雑そうなプログラムが表示されており、
さらに画面の一番下には"OK""CANCEL"の文字が並んでいた。

白馬はキーボードでカーソルを"OK"に合わせてEnterキーを押した。

部屋中の機械が動き始めた。

各機械の表面にたくさんついているスイッチやランプがいろいろ切り替わったりついたり消えたりしはじめた。
どうやら白馬が操作したモニター一つで全てを制御しているらしい。そのモニターには大量の文字がどんどん現れていた。
やがてその文字の打ち出しも終わり、最後にComplete!(完了)の文字によって締めくくられたと同時に黄色のランプが緑にかわり、部屋の灯りがついた。

白馬は再び下層に下り隅々まで探したが、やはり北浦は見つからなかった。さらに上層にいるはずの中森の姿も消えていた。


白馬「北浦刑事どころか中森警部まで…」
こうなったら自分一人で先に進むしかない。白馬は動力室を後にした。



11章へつづく

Gahal様の新作マジック快斗小説!!
こ・・これはっっっ
バイオハザードに近い(笑)のですごく(個人的に)判りやすいっっ
動力室・・・・ライター・・・・うわうわっ←一人叫ぶ図(笑)
白馬や中森警部が・・・いったい影にひそんでるのは誰だ!!そしてキッドの活躍!!
それにしても・・・非常用電源起動・管理プログラム・・・(笑)目に浮かぶようです(笑)byあっきー

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