奇術師の死闘 12
作:Gahal様


(天国の門と地獄の門の間に絵がある。ということは、天国と地獄の間にあるものを描いた絵を選べばいいのか。)

とキッドは考え、10枚の絵の中からそれに該当するものを探した。

天国と地獄の間に山はない、海も違う、太陽でもない…その中でキッドが見つけたのが"日常の風景"を描いた絵だった。

キッド「そうか、"人間界"だ。天国と地獄と人間界。」
そしてキッドはその"人間界の絵"をカチッと音がするまで押し込み、絵が押し込まれたまま固定されたのを確認するとそのまま
"地獄の門"へと歩いていった。

キッド「でも、なんか引っかかるんだよな…」
地獄の門に片足をかけた瞬間、キッドはその引っかかりの原因に気がついた。

床が2つに割れた。キッドは間一髪で後ろに飛び退き、襲いかかってくるヤリを交わすため全速力で天国の門までダッシュした。

キッド「ハァッ、ハァッ…あぶねー、もうちょっとでひっかかるとこだったぜ。」
キッドの体全部が天国の門を通り抜けたとき、割れた床と生えてきたヤリが再びひっこんだ。
このときキッドが押し込んだ"人間界の絵"も元の状態に戻った。



一息ついた後キッドは再び10枚の絵のところへ向かった。

キッド「もし"人間界の絵"を選ぶなら、その3つの関係は"天地人"となる。だから"人間界の絵"は地獄門より先になければならない。」
ある絵の前についたキッドはその絵を押し込んでもう一度"地獄の門"へと向かっていった。

キッド「天国とは"天王星"を意味し、地獄とは"冥王星"を意味する。天王星と冥王星の間にあるのは…」
キッドは地獄の門を通過しさらに進んでいった。

キッド「海王星」
今度は床が割れることもなく、ヤリが生えてくることもなかった。
その代わりに、行き止まりになっていた壁が上へあがり、その先に下へ下りる階段が出現した。

キッド「正解は"海の絵"」
キッドは天国と地獄の廊下を無事突破し、B5階に到達した。


 B5階の廊下は階段を下りたところから真正面にまっすぐ続いていた。
その廊下の両側にはたくさんの部屋が並んでいた。どの部屋にもドアがなく、廊下から中が丸見えだった。
どの部屋にもベッドが4つ並んでいて、それぞれがカーテンで仕切れるようになっている、まるで病室のようだ。
相変わらず人は誰もおらず、ベッドやそのそばの小さな机の上にいろいろなものが置いてあった。
おそらくこれらの部屋を利用していた人たちのものであろう。

 キッドは廊下に落ちている一冊のノートを見つけた。それは研究員の日記だった。


<研究員の日記>
4月1日
今日から社会人としての生活が始まった。初めてのことでとまどってばかりだったがなんとか初日を乗り切ることができた。
明日もがんばるぞ。

4月10日
今日、僕らの研究室にはじめて所長がやってきた。
先輩たちの話では所長はこれまでにも何度かやってきて優秀な人をどこかに連れて行くらしい。
今日も一人先輩が所長に連れられていってしまった。ウワサではここ(北海道支部)での成績が優秀な者は東京支部の方に行けるらしい。
所長に連れて行かれた人はまさに選ばれた人物なのだそうだ。

5月2日
今日再び所長がやってきた。また先輩を一人連れて行った。おそらく東京へ。僕も東京へ行きたい。

6月11日
所長がやってくる間隔が短くなった。一度に連れて行く人数も増えてきた。そして今日ついに新入社員にも声がかかった。
これで僕にもチャンスが出てきた。

7月1日
今日は僕の同期で高校からのライバルである澤丘のヤツが所長に連れて行かれた。
あいつには負けたくなかったのに、悔しい。

7月7日
ついに今日、僕も所長に選ばれた。東京へ行けるんだ。
 
日記はここまでだった。
しかしキッドは腑に落ちなかった。
本当に東京へ行ったならなぜ荷物をおいたままなんだろうか?それに普通そんなに何人もいけるものだろうか?
その答えは4つ先の部屋にあった。

<メモ>
所長が今やっている実験はヤバいらしい。
所長に連れて行かれた研究員が帰ってこないのはその実験のせいらしい。
もう"東京へ行ける"なんて話はだれも信じていない。所長につかまったら終わりだ。気をつけなければ。

<メモU>
あれだけいた研究員も今や半分以下になってしまった。
所長に連れて行かれた者は一人として帰ってきていない。所長に逆らった者や逃げようとした者もつかまり、どこかへ連れて行かれた。
どうやらモルモットにされ殺されているらしい。俺たちは最初からそのために集められていたのだ。
俺たちにできることはただ死を待つことだけだ。


キッド「そうか、だから誰もいなかったんだ。」
所長とはもちろん8982のことである。守や千枝の家族、幸せを奪い、さらに大勢の研究員の命をもて遊んだ男。
キッドはあらためて怒りをかみしめた。






 天国と地獄の廊下のトラップによって、白馬はキッドと引き離された。
キッドは天国と地獄の廊下を突破して先に進んだが、白馬は床の割れ目から転落してしまった。
その穴はそこが見えない程深く、恐らく落ちたらまず命はないだろう。
しかし白馬はなんとか途中の壁につかまることができ、死だけは免れることができた。

その直後。
再び天国と地獄の廊下の床が割れ白馬の元に光が差し込んだがすぐに割れ目は元に戻り、あたりは再び暗闇につつまれた。
(キッドが"人間界"の絵を押して地獄の門に足を踏み入れたときのものである。)
しかし一瞬とはいえ光が差し込んだことにより、白馬は周りの様子を少しだけ見ることができた。
白馬が張り付いている斜面には横穴がたくさんあって、そのうちの一つがすぐそばにあることがわかったのだ。

 暗闇に目が慣れ、周りの様子がうっすら見えるようになってから白馬はその横穴を目指した。
その横穴はかなり奥深くまでつづいていて、突き当たりにはドアがついていた。
白馬はそのドアを開けてさらに進んでいった。そこはどこかの廊下だった。

 白馬は雑居ビルの1〜5階、そして地下研究所のB3〜B4階を通ってきたが、いまいる廊下はそれらのどれとも違った。
分かれ道・曲がり角・行き止まりがやたらと多く、そのかわり一つもドアがないのだ。

白馬「これは…ひょっとして!?」






同じころ…

北浦「中森警部!! 中森警部!!」
中森「ん?ここはどこだ?」
北浦「わかりません。どこかの廊下の突き当たりのようなんですが…。」
中森「確かワシは誰かに殴られて…」
北浦「私もです。その後のことは全然憶えていませんが、おそらく私たちを殴った犯人にここに連れてこられたのでしょう。」
中森「だろうな。しかし、犯人もいない上に縛られてもいないってのはどういうことなんだ?」
中森は自分の体を見回しながら言った。

北浦「わかりません。」
中森「とにかく、犯人がこの道を通ってワシらを運んできたのなら必ず外に出られるってことだ。」
中森は自分たちの目の前の通路を指さして言った。

北浦「そうとは限りませんよ。」
中森「なぜだ?」
北浦「上を見てください。」
北浦に促されて中森も上をみた。すると天井の部分に丸い穴があいていた。

北浦「もしかしたら犯人にあそこから落とされたのかもしれませんね。」
中森「なるほど、それなら犯人がいないことや縛られていないことも説明がつくな。」
北浦「でしょ。つまり、その通路を行っても外には出られないかもしれないってことです。」
北浦は自信たっぷりにそう答えた。

中森「縁起でもないことを自信たっぷりに言うな!!」
中森は大声で叫んでいた。





白馬「今の声は?」
空耳ではなく、確かに声が聞こえた。白馬はその声がした方へ走っていった。
いくつか角を曲がり、分かれ道を進み、やっとのことでその声がした場所に到着した。

白馬「中森警部、北浦刑事!!無事だったんですね。」
中森「白馬君!!ここは一体!?」
白馬「恐らくここは…巨大な迷路です。」
中森「迷路?」
白馬「ええ。ここの研究所のトラップの一つですよ。」
北浦「でもよかった。白馬君が入ってこれたのならそこから脱出できますね。」
白馬「僕が入ってきた入り口ならもう開きませんよ。」
北浦「え?」
白馬「誰かが外から開けてくれない限りね。」
3人の間に重たい沈黙が流れた。

白馬「落ち込んでいる場合じゃないですよ。他に出口がないとまだ決まったわけではありませんから。」
中森「そうだな。」
北浦「行きましょう。」

かくして白馬たち3人による巨大迷路攻略が始まった。



第13章へ続く

うわっ日記とメモがぁぁ!!!!←燃えすぎ(笑)
天国と地獄の謎を解いたキッドが先に進む・・・・・・さすが・・・・・
研究所内で繰り広げられる様々な謎解きが面白い!!ゲーム感覚の小説なので楽しく読めて感動してます!!
ああ・・白馬が研究所の外に・・・キッドと白馬は合流出来るのか気になって気になって←気になるのはそこじゃないだろ(笑)
巨大迷路・・・・中森警部が方向音痴でないことを願ってます(爆)←人事ではない(笑)byあっきー

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