奇術師の死闘 14
作:Gahal様
8982「さあ入りたまえ…赤島君。」 レッドは促されるままに隠しドアを開け、8982の個人研究室に入った。 そしてあまりの光景に言葉を失った。 8982「気に入ってくれたかな?私のラボは。」 レッド「こ、これは…貴様!!いったい何をした!?」 8982「何を?ただの研究だが?」 レッド「ふざけるな!!これがただの研究だと?」 レッドは怒り狂っていた。 なぜなら今彼の目の前にあるのは、変わり果てた姿になった研究員たちの"山"だったからだ。 レッド「彼らに一体なにをしたんだ!!」 8982「ああ、私の実験に少々協力してもらったんだ。実験は失敗し、こんな残念な結果になってしまったがね。」 8982は鼻でフンと笑いながらいかにも楽しそうにそう答えた。 8982「まあそんなことはどうでもいいとして、そろそろ本題に入ろう。君をここに招待した理由だが…」 8982はここで一旦言葉を区切り、いきなり隠し持っていた銃を出してレッドを撃った。 レッドは本能的にそれをかわしたが完全には避けきれず、左肩に命中してしまった。 銃から発射されたものは普通の銃弾ではなく、先端に張りがある太短い矢のようなものだった。 レッドは崩れるようにその場に倒れこんだ。 レッド「貴…様…」 8982「安心したまえ。それは麻酔銃だから。」 レッドは間もなく意識を失った。 そのとき、研究室にあるもう一つのドア(さらに奥の部屋へつながるドア)が開き、一人の女性が入ってきた。 8982はその女性に気づくと、彼女に向かって話しはじめた。 8982「ああ5010君か。ちょうどいい、たった今新しい実験体が手に入ったんだ。」 8982はレッドを指差し、さらに続けた。 8982「奥へ運びたいのだが大丈夫かね?」 5010「ええ、準備は整っています。」 2人はレッドを奥の部屋へと運び込んだ。 青子と紅子が乗った列車は、真っ暗な地下トンネルをしばらく疾走した後、だんだんスピードを落とし、 どこかのプラットホ−ムに停車した。 紅子「どうやら着いたみたいね。」 青子「うん。」 あたりを見回すと、ドアのようなものが一つだけあることがわかった。 近づいてみるとそれはエレベーターの扉だった。 そのエレベーターはプラットホームとB6階の間を移動するためのもののようで、階数ボタンはB6階とプラットホームの2つだけだった。 B6階のボタンを押すとエレベーターは上昇を始めた。 2人はB6階に到着した。 エレベーターを降りると、そこは薄暗いまっすぐな廊下で、その両側にはいくつかドアが並んでいた。 紅子「何かの研究所かしら?」 2人は廊下の両側の部屋を一つずつ調べながら進んでいた。 青子「なんか理科室みたい。」 ほとんどの部屋は無人の研究室だったが、たった一つだけ他とは違う部屋があった。 ドアを開けるとそこは2平方メートルほどの小さな部屋だった。 正面の壁は一面ガラス張りで向こう側が見渡せるようになっていた。 左右の壁にはモニターがずらりと並び、左の壁と正面のガラス壁との境のところにはマイクが設置されていた。 正面のガラスをとおして見えているのは巨大な迷路だった。 紅子「何これ?」 青子「遊園地の巨大迷路?」 紅子「まさか…」 と言って紅子はモニターの方に視線を移した。それにつられるように紅子もモニターの方を見た。 青子「あ、あれって…」 偶然、青子が見た一つのモニターにある人物の姿が映っていた。 青子「白馬君」 紅子「え?」 ほかのモニターなどを調べていた紅子もその声に反応し、そのモニターをのぞき込んだ。 それはまぎれもなく白馬探の姿だった。 青子「白馬君!!白馬君!!」 青子はとっさにマイクに向かって呼びかけた。 そのマイクに入れられた声は迷路内の数カ所に設置されたスピーカーから再生され、迷路内に鳴り響いた。 白馬「この声は?まさか青子さん?」 恐らく迷路内にもマイクが設置してあるのだろう、白馬の声が青子たちのいる部屋にも聞こえた。 白馬「どこにいるんですか?」 青子「そこの上にある部屋よ。窓から迷路が見下ろせるから。それに、白馬君も見えてるよ。テレビ画面に映ってるから。」 白馬「テレビ…?」 そう言って白馬は辺りを見回した。 すると、近くの天井から小さなカメラがこちらをのぞいているのが見えた。 白馬はそのカメラに向かって再び呼びかけた。 白馬「このカメラですか?青子さん?」 モニターの中の白馬がまっすぐ自分の方を向いたのを見て青子は返事をした。 青子「うん、そうみたい。」 その直後、カメラに向かってさらに何か言いかけた白馬を突き飛ばして誰かが割って入ってきた。 中森(銀三)「青子〜っ、本当に青子なのか?」 青子「お、お父さん。」 中森「何でこんな危ないところに来たんだ!!」 青子「快斗が…ここに来てるみたいだから…」 中森「何?快斗君が!?し、しかしだな、快斗君のことはやっぱり捜索隊の人に任せた方が…」 青子「その捜索が明日の朝まで中断されちゃったから…だから…」 中森「…そうだったのか。」 一瞬の沈黙の後、白馬が口を開いた。 白馬「ところで、どうやってここまで来たんですか?」 青子「それは、ホテルの近くの地面に大きな穴が開いてて、その穴の底に降りたら電車が止まってたの。 穴のそばには快斗の手袋が落ちてたから、快斗もきっと電車に乗ったと思って…」 白馬「…それで黒羽君は見つかったんですか?」 青子「ううん、まだ…」 白馬「…それじゃ、僕たちもここを脱出し次第手伝いますので、待ってて下さい。」 青子「うん、ありがとう。」 そのとき、ほかのモニターや戸棚などを調べていた紅子が、青子のもとにある物を持ってきて、言った。 紅子「ちょっと、これを見て。」 それは業務日誌のようなもので、その中の一部分にこの大迷路のことが少しだけ書かれていた。
青子はここまで読んだと同時にバッと立ち上がり、マイクに向かって 青子「ねえ聞こえる?そこから脱出する方法が分かったから、ちょっとだけ待ってて」 とだけ言い、"モニター横の黄色ボタン"を押した。 すると天井の一部が横にスライドし、70センチ四方の空間が出現した。さらにその空間から折りたたみハシゴが下りてきた。 青子はそのハシゴをかけ上がり、急いで3つのハンドルの所へと向かった。 その隠し部屋のつくりはこうだ。 大迷路側の壁はガラス張りで、下の監視モニター室同様に迷路を見わたす事ができた。 そしてそのガラス壁に接するように何かの機械が設置されていた。 それとは反対の壁の所には3つのハンドルを差し込むための四角形の穴が開いていた。 しかし、3つのハンドルはどこにもなかった。残りの2つの壁のうちの一つに面するように、下からのハシゴがついていた。 最後の一つの壁の所には何もなかった。 青子「紅子ちゃん、どうしよう?ハンドルがないよ!!」 紅子「何ですって?」 紅子も急いでハシゴを上がってきた。やはりハンドルはない。 紅子「どうして?」 その部屋だけでなく下の監視モニター室の中の隅々まで探したがやはり見つからず、 今度は業務日誌のほうに見落としがないかを調べはじめた。 紅子「あっ」 それは別のページに書かれていた。
ここまで読み終えた紅子はすぐに隠し部屋へ駆け上がり、クレーンがあることを確認した (ガラス壁に接するように何かの機械が設置されていた。) そして再びはしごを駆け下りて、一つの監視モニターに注目した。 それには他のモニターとは違い、迷路の映像は映し出されていなかった。 その代わりに迷路の地図と思われるものが表示されていた。 しかもその地図にはすべての監視カメラの位置が緑の点で表示されており(モニターにありつけてある番号と緑の点の番号が対応している) さらにもう一つ赤い点が表示されていた。 紅子は上にいる青子に向かって叫んだ。 紅子「ねえ、ちょっとクレーンを動かしてみてくれない?」 青子はクレーンの機械を動かそうとしてみたが… 青子「紅子ちゃ〜ん、動かし方分かんないよ。」 紅子「じゃあ私がやるから中森さんはこっちでモニター見てて。」 そう言うと紅子はハシゴを上り、入れかわりに青子が下りた。 紅子はクレーンの前に立ってから下の青子に呼びかけた。 紅子「いい?そこに地図を映してるモニターがあるでしょ?」 青子「え〜と…うん、あったよ。」 紅子「その地図に赤い点があるでしょ?」 青子「うん」 紅子「今から私がクレーンを動かすから、それと一緒にその赤い点が動くかどうか見てほしいのよ。」 青子「うん、わかった。」 紅子「OK、じゃ、いくわよ。」 と青子に言いながら、紅子はクレーンのレバーを動かした。と同時に迷路内のクレーンも動かした。 青子「動いてる。動いてるよ紅子ちゃん」 モニターの赤い点が動いたのを確認して青子は言った。それを聞いた紅子はクレーンを止め、再び青子に言った。 紅子「いい中森さん?迷路の中にいる人たちを助けるには、迷路内にある3つのハンドルをこの部屋にある装置にはめて回すしかないの。 そのためには中の人たちにハンドルを見つけてもらって私がクレーンで回収するしかないの。 だからあなたには誘導役をやってもらうわ。」 青子「誘導?」 紅子「まず、中の人たちに今のことを伝えて。そしてハンドルを見つけたら近くの監視カメラのところに来てもらうの。 その地図上の緑の点が監視カメラの位置よ。 あなたはモニターの映像と地図上の点でその場所を特定して。 そして私が操作するクレーンの赤い点をそこまで誘導するの。出来るわよね。」 青子「うん、やってみる。」 紅子「じゃあ中の人に伝えて。」 そして青子は今のことを中の3人に伝え、3人はそれぞれハンドルを探すために分かれた。 それから30分 白馬「青子さん、ありました。」 白馬が1つ目のハンドルを見つけた。 紅子「さ、行くわよ。中森さん」 青子「うん…まず、まっすぐ、それから右へ…左…あ、ちょっとだけ右…」 どうにかクレーンは白馬の元へたどりついた。 青子「白馬君、クレーンにそのハンドルを固定して。」 そして紅子が再びクレーンを動かし、ハンドルは監視モニター室の真下に落とされた。 さらに中森、北浦が見つけた残り2つのハンドルも集まった。 しかし迷路から取り出すことが出来ないので、あくまでガラスの向こう側に集まったのである。 しかも、迷路側の床のほうが3メートルほど低いので青子や紅子の所からは死角になっていた。 もちろん壁を何枚も隔てたところに居る白馬たちのところかはも見えなかった。 紅子「これで3つ集まったわ」 青子「ねえ、どうするの紅子ちゃん、見えなくなっちゃったよ?どうやって取り出すの?」 紅子「まかせといて、私に考えがあるの。」 そして紅子ははしごを降り、さらに監視モニター室のドアをあけて廊下に出て、そのドアを閉めながら青子に言った。 紅子「私が取ってきてあげるからちょっと待ってて。」 パタンッ ドアを閉め、紅子は行ってしまった。 紅子は3つほど隣の部屋に入ってドアを閉めて誰も居ないのを確かめ、胸元から"あるもの"を取り出しながらつぶやいた。 紅子「…やっぱり、これしか方法はなさそうね。」 それから紅子は胸元から取り出したペンダントを握り、まぶたを閉じてなにやら呪文のようなものをつぶやきそのあとに 紅子「3つのハンドルよ我が元へ」 と続けた。 カタッ、カタッ… 3つのハンドルがカタカタと動きはじめた。やがてそれは少し宙に浮いて壁を一つすり抜けた。 (青子のいる監視モニター室の床の下の岩盤に入った。) そして90度方向を変え、横へと進んでいき、ちょうど紅子の真下の位置までいき静止した。 今度は上昇を始め、岩盤を抜け、最期に紅子の手にすっぽりと収まった。 紅子はペンダントをしまい、3つのハンドルを持って監視モニター室へと急いで戻った。 紅子「取って来たわ。」 ドアを開けざまにそう言い、紅子は急いでハシゴを駆け上がった。 そして3つのハンドルを機械に差し込んだ。 紅子「手伝って」 青子「うん」 2人は手分けして3つのハンドルを回した。 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ… 3つ目のハンドルを回し終えた時、迷路内に突如轟音が響き渡った。 と同時に迷路の壁が回転やスライドを始め、そしてそれは1本の道になった。 さらに迷路全体が上昇し、隠し部屋の高さと同じになった。 最期に隠し部屋の最期の1つの壁(監視モニター室からのハシゴが面している壁ではなく、迷路の中が見えるガラスの壁でもなく、 3つのハンドルの機械が並んでいる壁でもない壁)が上にスライドし、迷路への出入り口が現れた。 その後、紅子と青子の誘導により、白馬、中森、北浦の3人はようやく迷路から脱出することが出来た。 15章(最終章予定)へつづく
あとがき
なんと、この小説を書き始めてから1年も経ってしまいました。(2002年1月21日からなんで)
しかもこの奇術師の死闘は本当は全3回で終わる予定だったんです。
それが修正を加えていくうちに5倍の長さになってしまいました。
期間で言うと12倍ですが…
ところでこの小説は次の15章で完結する予定です。
1月中には終わらせたいな…
Gahal様の小説奇術師の死闘14!!
えええっ?!次が最終章・・・・(挿絵書いてもいいかな・・・)
ほんとは3回で終わる予定だったんですか???(笑)
でもそうなってたら紅子ちゃんとか出て来なかったのかな・・・(涙)
今回紅子が大活躍で・・・爆笑!さすがです。原作を見ているようでした(笑)
それにやっぱりバイオハザードを思い出し、イメージがかなり膨らんで楽しかったです←えbyあっきー