奇術師の死闘 6
作:Gahal様


屋根の上には、2人の少女を抱える小さな男の姿があった。

左腕で青子の首を、右腕でブルーを首をしめつけていた。
そしてその右手の先には拳銃が握られていた。

ブルーと青子はトイレに行くためにホールから出ていた。
そのためキッドも気づかず、この男に捕まる羽目になってしまったのである。


レッド「その声、さっきの…通信機でオレと話をしていた。」
レッドは屋根に立つ男を見上げながら言った。
4階建てだったホテルは、爆破の衝撃により1階と2階がくずれ、元の半分の高さになっていた。
それでも屋根の高さはまだ6メートル以上だったのである。

声「そうさ、オレはコードネーム・グリーン、お前らの監視役さ。」
レッド「グリーン?監視役だと?」
グリーン「作戦終了までの監視役、そして作戦狩猟後の始末役さ」
レッド「始末?」
グリーン「もう用済みなんだよ、お前らは。」
レッド「じゃあ作戦が終わればオレたちを自由にしてくれるという約束は?」
グリーン「ああ、自由にしてやるさ…あの世でな。お前も、ブルーも…そうそう、あの守ってガキも一緒にな。」
レッド「貴様!!」
そういってレッドは持っていたマシンガンをグリーンに向かって構えた。

グリーン「おーっと、その位置から撃てばこの娘どもにあたっちまんじゃないのか?」
レッド「クッ」
ブルー「嘘だったのか…守を解放するというのも、」
グリーン「ああん?なんか言ったか?」

ドッ!!

怒ったブルーはグリーンの胸をひじで思いっきり殴った。
グリーン「ぐはっ」

一瞬グリーンの腕がゆるんだ。
その隙にブルーは青子を捕まえている腕をふりほどき、屋根から下へ落とした。
ブルー「逃げて青子さん。」
青子にそう言い、今度は下の人質たちに向かっていった。
ブルー「誰か、青子さんを」
が、その声より早く6メートルの高さから落ちてきた青子はしっかりとキッドの胸に受け止められた。

グリーン「このアマ!!」
激昂したグリーンは屋根から身を半分のりだし、青子の無事をみて安堵しているブルーの背中に向かって銃を発砲した。

ドンドンドンドン!!

発射された4発の銃弾はすべてブルーの背中に命中し、ブルーは背中から血の柱を立ち上らせながら雪の上に転落した。
立ち上っていた血の柱も一瞬遅れて降り注ぎ、白かった雪面は真っ赤に染まった。

中森「何だ?今の音は?」
白馬「銃声!?、ホテルの裏の方から聞こえてきたようです。行ってみましょう。」
ホテル正面側にいた中森たちにも銃声がとどいた。
中森、白馬と数人の警官は急いでホテルの裏へと回った。
その目に映ったものは、屋根から拳銃を構える男、その下には少女の死体。そしてそのそばにいる大勢の人たちの姿だった。


レッド「ブルー!!」
レッドはブルーの元へ駆け寄った。
レッド「ブルー!! しっかりしろブルー!!」
レッドはグリーンをにらみ、マシンガンを構えた。
レッド「貴様!!」
中森「や、やめるんだ!!」
中森はレッドがマシンガンを撃つのを制止しに入った。
しかしすでにマシンガンは発射されてしまった。


ドドドドドドドドドドドドドドド…


グリーン「ひゃははははははは…」
撃たれているというのにグリーンは笑っている。いや、撃っても撃ってもグリーンには一発も当たっていなかった。
レッド「ど、どういうことだ?」
グリーン「ひゃははははははは…いくら撃ってもオレには当たらない。」
レッド「何?」
グリーン「貴様らの銃はすべて空砲だ。弾なんて入っちゃいない。」

カチッ…カチッカチッ…

トリガーを引いても弾が出ず、カチカチ言うだけになってしまった。弾切れだ。
レッド「くそっ!!」
グリーン「さあどうした?オレを殺すんだろ?やってみな、ひゃーはははは。」
グリーンが笑いながら銃口をレッドに向けた次の瞬間…

パシュ!!

キッドのトランプ中がグリーンの手から銃をはじき落とした。
飛んでいった銃は中森の目の前に着地した。
すぐに中森の部下がその銃を回収した。

キッドはふわりと宙に舞い上がった。風に舞っていたマントがハンググライダーになり、さらに上昇し、グリーンのいる屋根に着地した。
ハンググライダーは再びマントに戻る。
キッドはグリーンの足下に次々トランプ中を撃ち込んでいった。

グリーン「ひゃっ、ひゃ、ひゃー、ひゃ…」
それをよけながら逃げていたグリーンだがついに屋根の角に追いつめられた。
くるりと振り向くと目の前にはトランプ銃をグリーンの顔面に向けているキッドの姿があった。

グリーン「助けてくれ、い、命だけは…」
キッドは照準をグリーンの足下に向けて撃った。
グリーン「ひゃっ」
グリーンはバランスを崩し、6メートル下の雪面に転落した。
落ちた場所はまたしても中森の目の前だった。

「うぉ〜っ、キッド〜〜〜!!」
どこからともなく歓声が上がった。

グリーン「ひゃっ…ひゃっ…」
変な声を出しながら伸びているグリーンのポケットから何かがこぼれ出てきた。

白馬「これは、サイレンサー、そうか、あのときあの少女が撃ったと思われた弾はこいつが屋根の上からサイレンサー付きの拳銃で
撃ったものだったんですね。」

レッド「ブルー」
血まみれのブルーを抱きかかえ、体を揺する、するとブルーは少しだけ反応した。

ブルー「レッド…お願い…守を…助けて。そして…これを…守に…」
そういってブルーはレッドに写真入りペンダントを託した。
そこにキッドが降りてきた。
するとブルーはキッドにも話しかけた。

ブルー「キッド…」
キッド「何ですか?」
ブルー「こ、これを…」
そういってブルーが差し出したものはエンシェントブルーだった。
キッド「どうしてこれを?」
ブルー「私…見てたのよ…あなたが…キッドに変身するところを。」
そのキッドめがけて中森が一目散に走ってきた。

中森「キッド!!逮捕だ!!」
青子「お、お父さん」
中森「青子、おまえどうしてここに?」
青子「白馬君とスキーに来たの。」
その中森にキッドはエンシェントブルーを渡した。

キッド「お返ししますよ中森警部。」
ブルー「ゴホッ…ゴホッ…」
青子はあわてて駆け寄った。

青子「千枝ちゃん、しっかり千枝ちゃん」
ブルー「青子さん…ごめんなさい。」
そしてブルーは息を引き取った。
それとほぼ同時に激しく降り続いていた雪がやんだ。
レッド「ち、千枝ちゃん!!」
青子「千枝ちゃん…うっうっ…」
青子はブルーこと青川千枝の遺体に寄りかかり泣き崩れた。
中森、白馬、キッドもその様子を黙ってみていた。

レッド「キッド、頼みがある。オレと一緒に来てくれないか。千枝ちゃんの弟を助け出したいんだ。」
青子「私からもお願い。守君を助けてあげて。」
キッド「…わかりました。私も協力しましょう。」
中森「キッド!!」
キッド「なんです、中森警部?」
中森「これを持っていけ。」
中森がキッドに渡したものはエンシェントブルーだった。

キッド「これは…ん?」
キッドは仕込まれている発信器に気がついた。それは、その発信器のある場所に我々警察も駆けつけるという意味なのであろう。
キッド「フッ…ありがたくちょうだいしますよ。」
キッドはそれを胸ポケットにしまい込んだ。

中森「今回だけだぞ、今回の件が終わればすぐにでも逮捕してやるからな!!」

キッド「では出発しますか。」
キッドはレッドと一緒にハンググライダーで飛び立っていった。






第7章に続く

あとがき
「娘」という字が出てきていますが、きっどのせりふの「あの娘」は「あのこ」と読んでください。
一方グリーンのせりふの方の「この娘」は「このむすめ」と読んでください。
Gahal様の新作マジック快斗小説!!
な・・中森警部が一時休戦・・・・面白くなってきたぁ(笑)千枝ちゃん・・青子ぉ・・・・・(意外な展開でびっくり)
キッドが警察公認で動くなんて初めてなんで楽しみ〜!!!あ!!もちろん白馬もこのあと登場するよね???
そして第7章へ!!byあっきー

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