―――あんなこと、しなければよかった
そう思った時には、もう遅かった
―――あんなこと、言わなければよかった
そう思った時には、もう手遅れだった
もうその時、
自分は―――人を傷つけていた
もうブレーキが効かなかった
そんな自分が悪魔みたいに思えて
そんな自分が嫌になる―――・・・
僕は・・・私は・・・ もう一度やり直す事ができますか―――?
聞こえる 〜怪盗との出会い<2>〜
byみさき様
歩み寄る 手に手に花を
歳月こえて壁越しに 「歓喜の歌」が聞こえる
夢を 夢をください
12月23日―――
人通りが少なくなった夜の通りを、家のベランダから、私は見下ろしている。
私は・・・風越奈緒。中学一年生。世間でいう『不良』だ。
どうして不良になったのかは、覚えていない。
少なくとも、小学生の時はもっと素直で、思いやりのある人間だったと思う。
でも、気がつけば私は道を踏み外していた。
そんな私が小学校4年から同じクラスだった、戸村千春をイジメはじめたのも中学に入って2ヶ月ほど経ってからだった。
イジメの理由は、大したものではなかった。それなのに、私は千春をいじめた。
原因は、全部私だった。
千春の友達に、千春を裏切るようにそそのかしたのも。
体育の授業中に保健室に行くという言い訳で授業を抜け出して、千春の筆箱を隠していたのも。
先輩に、千春の親が犯罪者だという噂を流したのも。
誰とも付き合いがよくて、先輩にも可愛がられて、誰からも信じられていた私にとって、それは驚くほど簡単なことだった。
簡単過ぎて―――気付けば取り返しがつかなくなっていた。
千春は、気付いていたみたいだった。
嘘の噂のことは、千春は知らないみたいだったけれど、千春は、私がいじめの主犯だって感じ取ってるみたいだった。
それでなのかは、よく分からないけど、
千春は時々、私に寂しそうな目線を送るようになっていた。
『どうして?』
澄んだ瞳に、そう問い詰められた気がして―――私は目をそらしてしまった。
そらしてはいけなかったのに。
よく、新聞とかでイジメ原因で自殺か〜?なんていう記事が載っているけど、小学生の頃は『どうしてイジメなんてあるんだろう』
『イジメなんて、最低だ』なんて、よくクラスで力説してた。
でも―――今の私はイジメの主犯だ。
小学生の時とは、全く違う。
そして・・・その小学校時代の自分は正しかった。
私は―――最低だ。
一昨日もそうだった。
千春の友達と、私の仲間を集めたのも、『もうやめにしよう』って言うためだった。
でも、気付けば口が動いていた。
私の口から飛び出したのはイジメを止めさせる言葉ではなく、イジメをエスカレートさせる言葉だった。
そして・・・その言葉を言った瞬間、教室の入り口で聞き耳をたてている千春を見つけて、一瞬目が合ってしまって―――・・・
次の瞬間、千春はそのまま走り去ってしまっていた。
そして結局私は、このイジメを終わらせる事ができないまま、2学期を終えてしまった。
と、その時、窓を叩く風の音が強くなった。今夜は冷え込みそうだ。
「・・・そろそろ寝よ。寒すぎて死ぬ・・・」
私がそう言って振りかえり、窓の取っ手に手をかけた時、
「こんな遅くまでどうしたのですか、お嬢さん?」
・・・今、後ろからものすごくキザな声がしたような気がしたのは気のせいでしょうか?
「・・・・・・空耳?」
「・・・ではないですよ」
「・・・うわぁぁぁぁぁ!!!」
私は思わず叫んでいた。
振りかえると―――さらに悲鳴を上げそうになって私は思わず手で口を塞いだ。
そこには白いマントと身にまとった怪盗キッドの姿があった。
「・・・な、何でコソ泥がここにいんだよ!!!」
「コソ泥ですか・・・;」
「何か間違いあんのかよ!怪盗は泥棒だろれっきとした・・・ってそうじゃなくて!何でキッドがあたしんちのベランダに居るんだっつの!」
キッドは『よくぞ聞いてくれました』と言わんばかりに話しはじめた。
「あなたにこれを渡したいと思いましてね」
そう言ってキッドは、ポケットから宝石(黄色くて小さな宝石を明るい赤の宝石で包んでそれをに四つに切ったうちの一つのような感じだ)
と一枚の紙を取り出して私に手渡した。
「・・・何コレ」
これはキッドに渡された物を見た私の素直な感想だ。
「見た通り、宝石です。もう一つは見てみれば分かりますよ」
いや、見た通りだと困るんだけど。私は宝石泥棒の共犯は御免だ。
と、まあそんなことを考えながら私はその紙を裏返した。
『貴女を奇跡の夜のマジックショーにご招待します。
東都タワー近くの廃ビルの屋上に12月24日PM11:00に、お渡しした宝石を持ってお越しください』
・・・奇跡のマジックショーねぇ・・・
「私は奇跡なんか見なくていい。私が今起きて欲しい奇跡は・・・私のやってるイジメを止めることだよ・・・」
「もし・・・その奇跡も起こせるとしたら・・・・・・どうですか?」
・・・・今この男何て言った?!
「・・・それって、千春も来るってことか!?」
「それは来てからのお楽しみですよ」
そう言って茶目っ気たっぷりのウィンクをする。
さすが怪盗“キッド”。性格もイタズラっ子みたいだ。
「それでは、聖なる夜・・・またお会いしましょう」
そう言うと、キッドはバラの花を残して消えた。
「・・・何だ、怪盗のくせして結構イイ奴じゃん」
私はバラの花を拾うと言った。
できることなら 起こしてほしいもんだ
私と千春の間に 最高の奇跡を―――・・・
こだまして 木々が倒れる
追われて消えた野の人の悲しい笛が聞こえる
森を 森をください
12月24日―――
私は、塾からの帰り道を歩いていた。
現在時刻、10時00分。先生に居残りを言い渡されたせいで、随分遅くなってしまった。
私は守本藍子。ごく普通の中学一年だ。
不良とかそういうわけでもなく、ガリ勉でもなく。
それなりに勉強して、友達と話して笑って・・・そんな中学生のはずなのに。
私は・・・友達を傷つけてしまった。
私の親友・・・いや、元親友と言ったほうがいいかもしれない。
とにかく、私のクラスメイトである千春は、いろんな人にイジメられていた。
物を隠されたり、変な噂を流されたり。
それでも私は、千春の側に居た。
だって、千春は私の友達だ。とても大切な友達。
とても・・・大切な―――
でもある日、千春をイジメている主犯の女の子・奈緒に話しかけられた日から、それは一変した。
私は、奈緒にこう言われたのだ。
「あんた、千春と仲いいでしょ?千春から好きな人とか秘密とか、そーいうの教えてもらって来なさいよ」
私はその時、言えば良かったのだ。
『千春は私の友達だ、だからできない』と・・・
でも、私は怖かった。
奈緒の言ったことを断ることで、今度は私がイジメの標的になるのではないかと・・
・
だから、自分を守るために、私は千春を裏切った。
千春の好きな人も、私にしか話してない秘密も、全て奈緒に教えてしまった。
そしてそれ以来、私は陰で奈緒たちと時々つるむようになっていた。
でも、三日前、いつも通り奈緒たちと話しをしていて、奈緒たちの前でいつも言っている千春の悪口を口にした時、私は見てしまった。
教室の入り口に、千春がいるのを。
そして、千春が泣きながら走り去って行くのを見た時、私はとてつもない後悔と罪悪感に襲われた。
今度こそ、本当に、私は千春を裏切ってしまった。
そしてその夜に、イジメに関する新聞記事を読んでいた父親に言われた一言は、それを見事に肯定してしまった。
『藍子、人にはな、悪口を言われたりイジメられることより、もっと傷つくことがあるんだ。それは何だかわかるか?』
『・・・ううん』
『それはな・・・信じていた友達に裏切られることだ』
それ以来、私はずっと千春に電話さえしていなかった。
もし、私が千春の立場だったら、どう思っただろう。
きっと、私のことを憎んだに違いない。憎まれて当然だ。
と、そんなことを考えてまた罪悪感に沈みはじめた時、私の目の前に人影が現れた。
「こんばんは。美しいお嬢さんv」
そこに居たのは白いマントをまとい、白いシルクハットをかぶり、モノクルをつけた・・・・
「怪盗キッドォ!?」
「私のことを知っていてくださるとは、光栄ですね」
「そうじゃなくてなんでキッドがここに!!!」
「あなたに用があるからですよ」
「ハァ!?」
少々コントのような会話をした後、キッドは私の手にそっと一枚の紙と宝石(宝石は緑色の小さな宝石をもっと明るい赤の宝石で
包んでそれを四つに切ったうちの一つのようなものだ)を手渡した。
私は紙をひっくりかえし、そこにかかれている文字を読んだ。
『貴女を奇跡の夜のマジックショーにご招待します。
東都タワー近くの廃ビルの屋上に12月24日PM11:00に、お渡しした宝石を持ってお越しください。』
「きせきのよるのまじっくしょー?」
「その通りです」
「でも私、マジック興味無いんだけど」
「それだけじゃありません、このマジックショーでは、あなたの身にも奇跡が起こります」
・・・・・・キッドには悪いけど、私の頭脳では理解不能だ。
「それではお待ちしていますよ、心を痛めし姫君」
そんなキザ言葉を残して、キッドはハングライダーで空へと飛び立った。
・・・って・・・
「・・・マジックショーってあと30分後じゃないのよ!!!あのバカ怪盗!どうせ来るんだったら場所まで案内しなさいよー!!!」
そう叫んで、私は走り出した。
奇跡の起きるマジックショーの舞台へ・・・・・・
NEXT
*あとがき(なかがき・・・でしょうか;)*
あっきーさん!続き遅くなって申し訳ありません!!!
軽く9ヶ月投稿をほったらかしにしていた馬鹿を許してください・・・(汗
この9ヶ月間で私も大分キャラが変わりました(待てやコラ
今回のは少しギャグ入ってます。ちょっと前回の暗かったので、こんな感じで少し笑い(になっているのか不明ですが)を混ぜながら・・・
こんな阿呆の小説でも最後まで読んでいただければ光栄です(−−;。
よろしくおねがいします;