しかし、哀は気づいていなかった。暗闇のせいで哀は見過ごしていたのだった。

用具入れの部屋の天井にへばりついていたその影は、用具入れの地面へとぬるっとした音を立てて降りる。

そして、その影は声にならない音を上げると、その白い体を動かしはじめる。

やがて、その白い影はゆっくりと哀たちの後を追いかけていったのだった。


魔法少女 マジカル☆哀 幽霊を捕まえろ!! 中編


「次はここか」

二階の女子トイレを離れ、五人は幽霊が出たと言われているもうひとつの場所、三階にある音楽室へとたどりついた。

「で、女子トイレの方は何も怪しいものはなかったんだよな?」

「ええ。そうね。特に怪しいものはなかったわ」

コナンの問いかけに哀が答える。それを聞いてコナンは、真剣な顔になった。

(なら、こっちの方に何かあるかもしれねーな)

女子トイレを調べられなかったこともあって、少し探偵としての魂がうずいたのか、コナンは音楽室を徹底的に調べるつもりでいた。

「おーし!じゃ、入ろうぜー!」

元太が音楽室のドアに手をかける。

だが……

「あれ? 開かねーぞ?」

音楽室のドアはガタガタという音を立てるだけで開こうとはしなかった。

「当たり前よね。カギが掛かってるんだから」

哀が冷静な口調でつぶやく。

「そういや、普通使った後はカギをかけるよな」

「よく考えてみればそうですね」

コナンと光彦が納得したような顔になる。

「なんだよ。それじゃ、入れねーじゃん!」

「まあカギなら職員室にあるでしょうけど、」

哀の言葉が途中にも関わらず、音楽室のカギがある場所を聞くやいなや、

「おっしゃ! 職員室だな!」

元太は職員室に向かって一直線に突っ走っていった。

「もっとも職員室もカギが掛かってるでしょうけどね」

元太の姿が見えなくなってから哀は呆れたように言葉の続きを言った。

「どうします?コナンくん。元太くんを追いかけますか?」

「いや、入れ違いになるのもまずいからな。ま、職員室にカギが掛かってるって分かれば引き返してくるだろ」

光彦の質問にコナンが冷静に返す。

「あ、あのコナンくん」

「ん? どうした? 歩美ちゃん」

今まで黙っていた歩美がコナンに話しかける。その様子はモジモジしていてとても言いにくそうだった。

「あ、あのね……」

「だから、どうしたんだよ。歩美ちゃん」

コナンは不思議に思って歩美に問いかける。だが、なかなか歩美は答えようとはしなかった。

「あの、あのね」

「だから、なんなんだよ? 歩美ちゃん」

コナンがじれてきたところで、哀がコナンに向かって呆れたように言い放った。

「あなたも察しが悪いわね」

「は?」

コナンがその言葉にあっけに取られたところで、ようやく歩美は恥ずかしそうに言った。

「ト、トイレ行きたいの」

「あー、トイレ。トイレね」

コナンが間の抜けた声を出す。その間に、光彦が不思議そうに歩美に聞いた。

「なんでさっき行って来なかったんですか? ちょうど女子トイレを調べていたんでしょう?」

「だ、だって、あの時は大丈夫だったんだもん!」

歩美が恥ずかしさのあまり、やや大きな声で言い訳する。

「じゃあ行ってくればいいよ。歩美ちゃん」

コナンが歩美にトイレに行ってくるよう促す。

「うん。でも、一人だと怖いの。誰かについてきてもらわないと……」

「それなら、ワタシがついていくわ」

歩美の不安そうな言葉を聞いて、哀が名乗りを上げた。

「こういう場合は女の子同士のほうがいいでしょうしね」

「うん。ありがと。灰原さん」

歩美がほっとしたような顔になる。

「それじゃ、行きましょう。吉田さん」

「うん。行ってくるね。コナンくん。光彦くん」

哀の促す言葉に応えると、歩美はコナンたちにあいさつをしてから、哀と一緒に同じ三階にある女子トイレへと向かって行った。

そして、哀と歩美が女子トイレの中に入るのを見届けると、コナンと光彦の二人は音楽室の前にぽつんと残された。

「ヒマだな」

「そうですね」

コナンがぽつりとつぶやき、それに光彦が答える。手持ちぶさたになってしまった二人は、ついつい時間を持て余していた。

「コナンくん」

「ん? なんだ光彦?」

光彦が急に真剣な声色でコナンに話しかける。コナンがいぶかしがりながらもそれに答えたとき、光彦がたずねてきた。

「前から聞きたかったんですが、コナンくんは灰原さんのことどう思ってるんですか?」

「は?」

予想外の質問をされて、コナンが戸惑いの顔になる。

「どうって、どういう意味だよ?」

「決まってるじゃないですか! 恋愛感情があるかどうかという意味ですよ!」

「れ、恋愛感情!?」

コナンの声がすっとんきょうなものになる。光彦が神妙な顔で聞いてくる。

「なんか灰原さんとコナンくんってよくボクたちに隠れて話し合ったりしてるじゃないですか。妙に仲がいいように感じるんですよね。それってやっぱり……」

「な、なに言ってんだよ。オレは灰原に対してそんな感情はねーよ!」

光彦の疑いに対してコナンは慌てて否定した。

(そ、それにオレは蘭が好きなわけで……)

コナンが心の中でそうつぶやく。だが、光彦は疑わしげな顔で言った。

「ホントにですかー?」

「ああ。ホントだっ……!?」

そのとき、コナンは気配を感じて後ろを振り返った。

「なんだ。灰原か」

振り返ったその先に居たのは、さきほど話題にも上がっていた見知った赤みがかった茶髪の少女だった。

なぜかそばにいるはずの歩美はおらず、哀は一人でじっとコナンを見つめている。

「どうした? 灰原。歩美ちゃんはどうしたんだよ?」

コナンが近づいて、哀に歩美のことを確認する。

しかし、哀はそれには答えず、コナンに近寄ると予想外の行動を取った。

にこっ

赤みがかった茶髪の少女が笑う。その笑顔は無邪気で明るく、太陽のようにまぶしいものだった。

そんな哀の笑顔を見せられて、コナンは思わず目を丸くした。

「は、灰原……?」

いつもの様子とかけ離れたまぶしい笑顔。それを見たコナンはなぜか心臓の鼓動が速くなるのを感じた。

その動揺も冷めやらぬうちに哀はさらにコナンを驚愕させる行動に出る。

ぎゅううう!

哀がコナンに抱きつく。さきほどの満面の笑顔を浮かべながら、哀はコナンにうれしそうに抱きついた。

「は、灰原!? お、おい!」

コナンが激しく動揺する。女の子特有のやわらかい感触がコナンの体に伝わり、コナンの心臓を大きく高鳴らせた。

「な、なにしてるんですか! コナンくん! は、早く離れてください!」

光彦が強引にコナンの体を引っ張り、哀の体から引き離す。

哀はコナンから引き離されたことに残念そうな顔をした後、くるっと振り返り、あっけにとられているコナンや光彦を置いて、足音もたてずに走り去っていく。

やがて、哀の姿が見えなくなったところでコナンは大きく息を吐いた。

「な、なんだったんだ? 今のは?」

「なんだった、じゃありませんよ!!」

光彦がコナンに激しく食って掛かる。

「お、おい。光彦?」

コナンが光彦のそんな様子に少し驚いた様子になる。しかし、光彦はそんなコナンのことは構いもせずに激しくコナンに迫る。

「なんで、灰原さんがコナンくんに抱きつくんですか!! しかも、あんな笑顔までするなんて! まったく、うらやまし、じゃなくて不謹慎ですよ!」

あまりの光彦の剣幕にコナンがたじたじになる。

「い、いや、あのな。光彦。オ、オレだって、なんで灰原のやつがあんな真似したのかなんてわかるわけがないだ……」

「あら? ワタシがどうかしたのかしら?」

「うわっ!」

わかるわけがないだろ、とコナンが言い掛けたところで、後ろからクールな大人びた少女の声が響いてきた。思わずコナンが驚いて叫び声を上げる。

「なによ? どうしてそんなに驚くのかしら?」

「お待たせー。コナンくん。光彦くん」

コナンが振り向くと、そこには不思議そうな顔の哀と明るい笑みを浮かべた歩美の姿があった。

ついコナンと光彦はまじまじと哀の顔を見つめる。

「どうしたの? ワタシの顔に何かついてるのかしら?」

「いや、あのな。灰原。あんなことしといて、何を……」

と、コナンがそこでおかしいことに気づいた。

(そうだ。なんかおかしいと思ったが、よく考えてみれば、さっきの灰原はトイレとは逆方向から現れてたじゃねーか!?)

哀たち二人がトイレに入るところは、コナンはしっかりと目撃している。なのに、さっきの哀は、トイレとは逆方向から現れたのである。

「そうです!! なんでなんですか!? 灰原さん! コナンくんに抱きつくなんて! しかも、あんな笑顔まで見せるなんて!」

しかし、光彦はおかしいことに気づいてないのか、目の前の哀に対して大きく詰め寄った。

「はあ? 抱きつく? 笑顔?」

そんな光彦に対して哀はわけがわからないといった顔で肩をすくめた。

「何を言っているの? 光彦くん。抱きつくとか、笑顔とかよく言っていることが分からないのだけど?」

「とぼけないで下さい! さっき、灰原さんがコナンくんに抱きつくところをこの目で見たんですからね!」

光彦が自分の目を指差すしぐさをする。そこで、歩美が光彦に向かって言った。

「さっきってなんのこと? 灰原さんなら、今までわたしと一緒にいたけど?」

「え?」

光彦が歩美の言葉を聞いて耳を疑う。そこで、哀も異変に気づいたのか、真剣な顔になった。

「どういうことかしら? 詳しく説明してくれる?」

「ああ。なにかおかしいことが起きてるみてーだな」

コナンも真剣な顔になると、哀たちと情報交換をした。

哀にコナンがさっき哀そっくりの人物が現れて、笑顔を浮かべてコナンに抱きついてきたことを説明する。対して、哀の方もずっと歩美と一緒にいたことを証言した。

「ふーん。満面の笑顔をしてワタシが江戸川くんに抱きついた……ね」

哀の複雑そうな声。そんな哀にコナンが聞く。

「で、灰原はそんなことはしてねーんだよな?」

「まさか。なぜそんなことをしなければならないの?」

コナンの質問に哀が肩をすくめる。哀の答えを聞いて、光彦が思いついたように驚愕の顔になる。

「ま、まさか、さっきの灰原さんは、ほ、本物の幽霊!?」

沈黙があたりを包む。やがて、コナンがその沈黙を振り払うかのように言った。

「バーロー。さっきの灰原は実体があったじゃねーか。この体で灰原の体の感触を確かめたからな。柔らかかったが、たしかに実体があったぜ」

コナンが哀の体の感触について話すと、

「江戸川くん?」

哀が言葉の後ろ尻を上げて、コナンの名前を呼ぶ。その声は、平坦な口調であったが、どこか怒りの感情の色がこめられた口調でもあった。

哀のコナンを見る目線も若干怖い。

「あ、いや、それはともかくだな」

コナンが哀の視線にいいつくろうかのように言うと、そのまま言葉を続ける。

「実体がある存在は、幽霊じゃねーだろ?」

「じゃあ! さっきの灰原さんはなんだったって言うんですか!?」

光彦が混乱しているような口調で叫ぶ。それに対して、コナンはあごに手をあてて、考えるような口調でつぶやいた。

「わからねー。ただ、灰原の顔をした別の何者かが、この校内にいるのは間違いねーみたいだな」

コナンがそう結論づけて締めくくった。

再び、沈黙が辺りを支配する。と、そこで、歩美が声を上げた。

「ねえ! 元太くん。大丈夫かな!?」

「そうですね。元太くん。遅くないですか?」

歩美の言葉に光彦が同意する。

「そうだな。まずは、職員室に行ってみよう。そこの前にいるかもしれねーしな」

コナンがそう提案し、四人は三階の音楽室から一階にある職員室に向かって行った

 

四人は職員室の前についたが、元太の姿はどこにもなかった。

「げ、元太くん。どこ行ったんでしょう?」

光彦が不安そうにコナンに聞く。コナンは焦ったように叫んだ。

「ち、ドコ行ったんだ。元太のやつ!」

「手分けして探したほうがよさそうね……」

哀がクールな表情で提案する。それに、コナンも同意した。

「そうだな」

「それじゃ、探してくるね!」

歩美が一人、駆け出そうとする。それをコナンがあわてて止めた。

「待つんだ!歩美ちゃん!」

「どうしたの? コナンくん?」

呼び止められた歩美が不思議そうな顔をする。コナンが理由を説明した。

「一人じゃ危険だ。あの灰原の偽者が危害をオレたちに加えようとしているかはわからねーが、用心に越したことはないからな」

「そうね。その方が賢明だわ」

哀が納得したような声を出す。光彦がコナンに聞いた。

「じゃあ、どうするんです?」

「二人ずつ、二手に分かれよう。DBバッジは持ってきてるか?」

「ええ」

「うん」

「はい。持ってます」

コナンの質問に哀、光彦、歩美がうなずく。

「なら、それで連絡を取り合おう。それで、組み合わせだが……」

「ワタシと吉田さん。江戸川くんと光彦くんの組み合わせがいいでしょうね」

「それだと、そっちは女の子同士になるが、大丈夫か?」

哀たちを心配するコナンだったが、哀は冷静な口調で言った。

「別に大丈夫よ。それに、この組み合わせのほうが、さっきのようにトイレの時に、片方が一人にならずにすむわ……」

「そうか。そうだな。じゃ、手分けして元太を探そう!」

コナンの号令を合図に、四人は二手に分かれて元太を探しに走り始めた。

 

「元太ー! どこだー!」

「元太くん! 居たら、返事してください!!」

走りながらコナンと光彦が声を張り上げる。しかし、その声は、夜の校舎にただ響き渡るだけだった。

「ち、ホントどこに行ったんだ! 元太のやつ!」

「ね、ねえ。コナンくん。元太くんってDBバッジを今持っているんですかね?」

「そうか。そうだな」

DBバッジを取り出したコナンが元太のDBバッジに連絡を取ってみる。

しかし、元太のDBバッジに対してつながりはしなかった。

「つながらねー。電源を切ってるか、家に置いてきてるみてーだな」

焦りばかりがコナンの心を支配する。さっきの灰原の偽者が元太に危害を加えるとは限らない。しかし、その可能性が否定できないのも事実だった。焦って当然だった。

「元太あああああ!!」

「元太くーーーーーん!!」」

コナンと光彦が大声で元太を呼び続ける。一階を調べ終え、二階を探そうと、二人が階段を駆け上ろうとしたそのとき、

「おう! コナン! どうしたんだ? そんなに怖い顔で……」

元太が二階から階段を下りてきたところだった。

「元太、無事だったか!!」

「元太くん。無事だったんですね」

コナンと光彦がほっとした顔になる。元太がそんな二人の様子に不思議そうな顔になる。

「ど、どうしたんだよ。オメーら」

「どうしたんだ、じゃ、ありませんよ! 今まで何してたんですか!!」

光彦が安心したことによる反動か、元太に激しく迫る。そんな光彦に元太はたじたじになる。

「な、なんだよ。光彦。何そんな怒ってるんだよ……」

「こんなに遅くまで連絡もなく離れていたら心配して当然でしょう!!」

「まあ、待て。光彦。それより、元太。お前は今まで何してたんだ?」

光彦を抑えて、コナンが元太に遅くなった事情を聞く。

「おう! カギを持って行こうと職員室に来たのは良かったんだけどよ。職員室にカギが掛かってて入れなかったんだよ」

「まあ当然だな」

「そうですね」

元太の言葉にコナンと光彦が納得する。

「で、カギが開かねーかなあと、ドアの前でいろいろしてたんだけどよ。そのうちにトイレ行きたくなっちゃってよ」

「だったら、なんで二階から降りてくるんですか? 一階にもトイレはあるでしょう?」

「おう!一階のトイレで用を足したぞ」

「だったら、なんで!!」

「で、そのあとどうしたんだ?」

要領を得ない元太の説明に光彦がすこし苛立つが、コナンは冷静に先を促す。

「そして、とりあえず三階のオメーらのところまで戻ってみたらオメーら誰もいねーんだもんよ」

「どうやら入れ違いになったようですね」

「そうだな」

「しばらく待っても戻って来ねーからよ。で、もしかしたらこっちのほうに来てるかもしれねーって思って戻ってきたんだよ」

「なんだ。まったく心配させないで下さいよ」

光彦が事情を把握して胸を撫で下ろす。

「よし、灰原たちに連絡を取るか」

「そうですね」

「え、なんだよ? どうしたんだよ? コナン?」

コナンが哀たちに連絡を取ろうとし、光彦が同意する。その間、なぜこんなに心配されたのかわからない元太が混乱したように頭をきょろきょろと動かしていた。

≪灰原か。元太が見つかったぞ!無事だ!≫

≪そう。良かったわ≫

コナンがDBバッジで哀に連絡を取り、元太が見つかったことを伝える。哀はそのことにクールな口調でありながらもほっとしたような感じの声で返事をした。

≪で、今どこにいるの?≫

≪ああ。一階の階段あたりだ。オメーらが探しに行った反対方向の階段だ≫

≪わかったわ。すぐ合流するわ≫

コナンが自分たちの居場所を告げると、哀はすぐさま合流する旨を伝えて通信を切った。

「なんかあったのか? コナン」

「ああ。元太にも説明しておいた方がいいだろうな」

コナンが元太に灰原の偽者が現れたらしいということを説明する。そして、その偽者が校内に潜んでいるらしいことも告げた。

灰原の偽者の話を聞いて元太は驚いた。

「灰原の偽者!?」

「ああ」

「で、コナンくん。灰原さんたちと合流したら、その後どうします?」

「そうだな。とりあえず、放っておけねーから、五人一緒になって校内にいる灰原の偽者を捜索し……」

しようと言い掛けたところで、ふとコナンは視線を感じ、そちらを向いた。

「なんだ。歩美ちゃんか」

物影から現れた歩美が、足音もたてずにコナンに向かって走り寄ってきたところだった。

「あれ、灰原はどうしたん……」

一人であることを不思議に思ったコナンが、歩美に灰原のことを聞こうとしたところで、

むぎゅうううう!!

走り寄ってきた歩美にコナンは思いっきり抱きつかれた。

「あ、歩美ちゃん!?」

「お、おい! 何してんだよ! 歩美!!」

「歩美ちゃん!? 何をしてるんですか!?」

コナンたち男三人が一様に驚く。歩美は抱きついたままにっこりと笑顔を見せると、目を閉じた。

「は?」

コナンの顔があっけにとられる。歩美は目を閉じたまま唇をゆっくりとコナンの唇に近づけていく。

驚きのあまり、コナンは黙って歩美の唇が近づいてくるのを見つめていた。

歩美の唇がコナンの唇に触れ合う。

寸前で、コナンと抱き合った歩美に対して鋭い声が浴びせかけられた。

「早く江戸川くんから、離れなさい!!」

「コ、コナンくんになにしようとしてるの!!」

コナンは、ハっとして声がかけられた方向を向いた。

そこには、哀と歩美の姿があった。二人とも険しい顔でコナンに抱きついている歩美を睨み付けている。

「あ、歩美ちゃんが二人!?」

光彦が、コナンに抱きついている歩美と、新しく現れた歩美を見比べて目を白黒させている。

コナンはこの状況下の中、頭をフル回転させた。

(この歩美ちゃんと新しく現れた歩美ちゃん、どっちが本物だ?)

どちらの歩美も本物かどうかは外見上からは全く分からない。まるで、双子のようにどちらの歩美も歩美そのものだった。

(いや、灰原が歩美から離れるとは考えられねー。なら、偽者はこっちの抱きついている方だ!)

ここまでの思考を短時間で行ったコナンは、抱きついている歩美を強引に突き飛ばす!

抱きついていた歩美が尻もちをつく。

5人が見守る中、歩美の偽者(?)は、すばやく立ち上がると、悲しそうな顔をして、足音も立てずに走りさっていく。

歩美の偽者は階段を駆けのぼり二階へと逃げていった。

「追いかけるぞ!!みんな!!」

コナンが歩美の偽者(?)を追いかける。あとの四人もコナンの後に続いて追いかけた。

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あとがき

はっはっは!探偵k、参上!!(ちゅどーん)

ということで、今回は、前、中、後の三部作です。書いていたら長くなってしまったので。

さて、コナンに抱きついてきた哀や歩美の偽者はいったいなんなのか!?

というところで、後編に続きます。


中編でもびっくりの展開!!とかモテモテコナン君!!
どうなる後編!!幽霊(?)思念体(?)宇宙人(?)いったい偽物の正体って何だ?!
そしてありがとー探偵kどの!!毎回遅くなってすみませ〜ん(^^;) by akkiy