バリバリバリ!!

5人のいる辺りから右手のやや遠くでプラズマのような音が響き渡る。

「な、なんや!?」

平次が驚いてプラズマのような音がした辺りを見る。和葉と蘭もそれぞれ驚愕の表情で平次の見ている方向に視線を送った。

哀とコナンは、それぞれ気を引き締めた顔になる。

空間が歪み、マジカルモンスターがその姿を現した!


魔法少女 マジカル☆哀 東都タワーの激闘!! 平次と和葉来たる!! 中編


東都タワーを背にして、道路の右手で次元の裂け目が出現する。

その次元の裂け目から出てきたのは、巨大なニワトリといった感じの生き物だった。

灰色のトサカに灰色の羽をした全身が灰色のニワトリ。しかし、その羽はドラゴンの翼であり、尾はヘビの尾であった。

周りに居た人々はあっけにとられていたが、どうやら本物の怪物らしいと事態を把握すると我先にと怪物から逃げ出す。

「な、なんやアレ!?」

平次が目を驚愕に丸くしてア然とする。

「江戸川くん!! 3人を逃がすわよ!!」

「ああ。そうだな!」

哀がこの事態に対応して、コナンに叫ぶ。コナンもそれに応えた。

「平次!! 和葉ねーちゃん!! 蘭ねーちゃん!! 早く逃げるんだ!!」

「いや、工藤!? せやけど、あいつはいったい何なんや!?」

未だに平次は混乱しているのか、事態を受け止めきれないでいるようだった。コナンに対する呼び方も「工藤」になっている。

「そんなことはいいから、早く逃げろ!!」

コナンがそう叫んだ時、マジカルモンスターが動きを見せた。

バササッ!!

ニワトリの怪物が羽ばたき、空を飛んだ!!

そのまま低く飛びながら、哀たち5人の方へと向かってくる!!

「くっ!!」

平次が怪物と反対方向へ逃げる。それに蘭も続いた。和葉も遅れて走り始める。

その後を、やや遅れて哀とコナンが追いかける。

5人の方へ、怪物が羽ばたきながら向かっていく。

「大変だ!! 哀!! マジカルモンスターが現れた!!」

そんな緊迫した状況下で、マジカル哀のマスコット、ヒョウちゃんが走る哀のそばに出現してそう叫んだ。

「遅いわよ。というか、もう遭遇済みよ」

哀がヒョウちゃんに冷静にツッコミを入れる。ヒョウちゃんが振り返ってマジカルモンスターを確認した。

「おおー! ホントだ。さっすがマジカル哀!!」

「ただの偶然だけどね」

哀が走りながら呆れた表情になる。

「で、あのモンスターは何?」

哀の質問にヒョウちゃんがお気楽に答えた。

「あのマジカルモンスターは、コカトリスだなあ」

「コカトリス?」

哀がオウム返しに答えたその時だった。

「あっ!!」

和葉がつまずき地面に転ぶ。

「和葉!?」

「和葉ちゃん!?」

先頭を走っていた平次が和葉の叫び声に思わず止まる。蘭も足を止めた。

「い、痛っ!」

和葉が足首を押さえてうめき声を上げる。どうやら足首を痛めたらしい。

コカトリスが転んだ和葉の方へと向かっていく。

「しょーがねー。ここはオレが食い止める!」

「ムチャよ! やめなさい!!」

転んだ和葉の盾となるべく、怪物の方へと向き直るコナンに対して、哀がそれを止める。

「んなこと言ってもよ! なんとかするしかねーだろ!!」

コナンがキック力増強シューズのメモリを上げる!!

そのまま、サッカーボール射出ベルトからサッカーボールを射出すると、怪物目掛けて蹴り飛ばした!

「行っけーーーーーーーーーーーーーー!!!」

しかし、素早い急激な飛行技術でサッカーボールをかわしたコカトリスは、そのまま哀とコナンの頭上を飛び越える。

「何っ!?」

コナンと哀が見上げる中、コカトリスは二人の上を通過していき……

転んでいる和葉の直前に着地した。

 

 

哀とコナン、和葉とコカトリス、平次と蘭という位置関係でその場は凍り付いていた。

和葉は目の前にいる灰色のコカトリスを見上げる。その大きさはダチョウ並み。思わず和葉は後ずさりしようとして、足首に痛みが生じて顔をしかめた。

コカトリスがゆっくりとこちらに近づいてくる。

「あ、あ……ああ……」

和葉は呆然とする。どうしても足が動かない。

「和葉ちゃん!!」

「和葉!!」

振り返れば、蘭と平次が血相を変えてこちらに走り寄ってくる。

カッ

コカトリスは大きく和葉に向けて目を大きく見開いた。それだけだった。

しかし。

「な、なんや。これ」

和葉の体が灰色の衣で覆われていく。手が、腕が、足が、灰色に染まり、身動きができなくなっていく。

「へ……い……じ……」

駆け寄って来る平次を見たのを最後に和葉の意識は途切れた。

 

 

「和葉あああああああああ!!」

平次が走りながら絶叫する。

和葉は、そこにいた。まるで生きているかのような石の彫刻として。

「コカトリスの石化能力だ」

ヒョウちゃんが、説明する。

コカトリスは目で見開いて見た物を石化する能力を持っているのだ。

「はああああああああああ!!」

蘭が走りながら裂帛(れっぱく)の気合を込めて吼えた。コカトリスへ猛然と突進する!

「蘭!?」

コナンが驚愕の顔になった。

「ハアッ!!」

蘭の渾身の上段回し蹴りが風を切り裂いてコカトリスに迫る!!

ヒュッ

コカトリスが身体を後ろにそらした。蘭の蹴りが空を切る!

一瞬驚いた顔をした蘭だが体勢を立て直すと、右の拳を繰り出した!!

バッ!

コカトリスが、跳ぶ!!蘭の拳を躱して頭の上を飛び越えていった。

すぐさま振り返り、蘭はコカトリスを追いかける。

「マジカルモンスターと互角に闘ってる!?」

ヒョウちゃんが蘭とコカトリスの戦闘を見て、驚きの声を上げる。

そのまま蘭とコカトリスは、絡み合いながら戦闘状態に入った。

その戦いは、常人には理解できないほど激しいものだった。

人間の能力を超えたマジカルモンスターと互角に戦えるとは……

(蘭……クマにでも勝てるんじゃねーか?)

コナンは呆然とそんなことを思ったのだった。

 

 

蘭とコカトリスの戦いは続いていた。

ドラゴンの羽で低く飛び回るコカトリスを、蘭が執拗に追いかける。

しつこく近づいて来ようとする蘭に対し、苛立ったような奇声を上げるコカトリス。

カッ!!

コカトリスが目を見開くのと、蘭が左に避けながら右手の拳を繰り出すのはほぼ同時だった。

ドゴオオ!!

蘭の右手の拳がコカトリスの頭にヒット!コカトリスが砂埃を上げながらふっ飛ばされる!すごいぞ!蘭!

すぐさま追撃をかけようとした蘭だったが、

「え?」

蘭は右手を急に重く感じた。いつもと感覚が違う。

気になって右手を見た蘭は声にならない叫びを上げた。

右手首から上が拳の形のまま石と化している。まるで美術で使う石膏の手のようだ。

一方、コカトリスの方は飛び上がって起き上がると、翼を羽ばたかせた。

そのまま浮き上がると、身体を上昇させて空を飛ぶ。

そのままコカトリスは東都タワーの上層部の方へと昇っていった。

 

 

コカトリスが逃げ去った後には、石の彫刻と化した和葉と、蘭と平次、哀とコナン4人が残された。

沈黙の空気が続く中、蘭がつぶやく。

「ねえ。これどういうことなの!?」

今になって状況の異常さが理解できたらしい。蘭の声が震えていた。

「あれはいったいなんや! 和葉が!! 和葉が!!」

平次も今起きた出来事に対して激しく動揺している。

「ふー……」

哀はため息をつくと、コナンに向かって言った。

「コカトリスを追いかけるわよ。このまま放っておいたら犠牲者がまた増えるわ」

「そうだな」

コナンも大きくうなずいてそれに賛同する。

「で、あなた。石化したあの女の子は治せるの?」

そばにいるヒョウちゃんに対して、哀がたずねる。

「ああ。それは大丈夫だぞ。コカトリスをやっつければ元に戻るはずだ」

「なら、問題ないわね」

哀が納得の表情になる。

コカトリスが逃げたことでその場は落ち着いたようだった。しかし、石の彫刻と化した和葉に対して興味を持った人々が、おそるおそるこの場に集まってきた。

「まずいなあ。見つかるとまずいから俺はこの場から消えるな。後で合流しよう」

と言うとその場からヒョウちゃんがかき消える。

「じゃあ、とりあえず東都タワーから上がって追いかけるわよ。工藤くん」

「そうだな」

哀がコナンを促してコカトリスを追いかけようと、東都タワーの中へ入ろうとする。

「ちょ、待て! 工藤!! ドコ行くんや!」

と、そこへ、平次が哀とコナンの近くに走りよってきてたずねた。

「あの怪物を追いかけるのよ。あいつをなんとかしない限り和葉さんは元に戻らないわ」

哀が淡々とした表情で平次に告げる。

「ハア!? いや、仮にそうやとしても、これは探偵の仕事やないやろ! 警察、いや、警察でもあのバケモンに対処できるかどうか……」

平次は戸惑いを見せている。そんな平次に対してコナンはあきらめたように言った。

「ああ。オレもそう思う。けど、関わっちまったしな。なんとかするしかねーだろ?」

「そやけどな」

「蘭ねーちゃん!! 和葉ねーちゃんを頼む!!」

蘭の方に向かってそう叫ぶと、コナンは東都タワーの中へと入っていく。哀も追いかけた。

「ああ。まったくなんちゅうこっちゃ!」

平次はしばらくの間、迷っていたが、

「くそっ! もう知らんからな!!」

哀とコナンの後を追いかけはじめたのだった。

 

 

東都タワーの地上施設フットタウン1Fの中に入った哀とコナン、平次は、ごったがえしている群集と遭遇した。

おそらくコカトリスを見たのだろう。逃げ込んできたであろう人々がおそるおそる入り口の方を見ている。

他にも、エスカレーターや階段で2階へと我先に逃げる人々もいた。

そんな中、3つある大展望台へと続く直通のエレベーターの1つが開き、中にいた人々が血相を変えて飛び出してきた。

その場にいた人が、飛び出してきた一人に聞く。

「どうした!? 何があった!?」

「怪物だ!! 怪物が大展望台のガラスを突き破って現れた!!」

その情報を聞いて、動揺する人々。その場にいた人々が我先にと、今度は外へ逃げようと群れとなって哀たちのいる入り口の方へと突進してくる。

突っ込んでくる群集を避けて、哀たち3人は中に入り込んだ。

「これは、大展望台へのエレベーターは使えないわね」

「そうだな」

哀の言葉にコナンが同意する。

この様子だと、大展望台のエレベーターの前は逃げようとする人々でごったがえしているだろう。

それに、いちいち悠長にエレベーターを待つ時間も惜しい。

「しかたないわね。直通階段で大展望台まで行くわよ」

「それしかねーみてーだな」

「お、おい! 工藤! それ、ドコにあるんや?」

あまり東都タワーの構造には詳しくないのだろう。平次がコナンに聞く。

「このフットタウンの屋上だ。そこに大展望台への直通階段がある。それじゃ、行くぞ!!」

哀と、コナン、平次は大展望台の直通階段のあるフットタウン屋上に行くべく、エスカレーターで上へと上がっていった。

 

 

東都タワーでは、土日祝日は、大展望台への直通階段が解放されている。

東都タワー地上施設、フットタウン屋上へとついた哀たち3人は、そこで大展望台の直通階段の下り口階段で人々が我先にと降りてくる光景を目撃した。

一方、上り口階段の方は全く人がいなかった。

「よし、昇るぞ!!」

「なあ工藤、昇るのはええんやけど、この階段どんなけあるねん?」

平次が上を見上げてつぶやく。それに哀が答えた。

「たしか約600段だったわね。パンフレットに書いてあったわ」

「600……」

平次がいやそうな顔になる。

「んなこと言ってる場合じゃねー。とにかく行くぞ!!」

コナンが直通階段を昇り始める。哀もそれに続いた。

「しゃーないな!!」

平次も気合を入れるかのように、自分の頬を叩くと哀とコナンの後を昇っていった。



後編へ


あとがき

はっはっは!探偵k、参上!!(ちゅどーん)

ということで、中編です。

現れたマジカルモンスター、コカトリスに和葉が石となってしまいます。

蘭の空手でなんとかコカトリスを退けることはできたものの、このままではずっと和葉は石化したまま。

なので、哀とコナン、平次の3人は、東都タワーの大展望台へと逃げたコカトリスを追いかけるべく、東都タワーの直通階段を昇ります。

といったところで後編に続きます!!




探偵k様!!!
小説ありがとうございましたっ!いやっはー和葉ちゃんがとうとう巻き込まれこれからどうなる!!
しかし・・・・蘭ちゃんの強さがだんだん映画と連動しているように人間離れしてきたのがひとつの見どころに
なってきました!(待て)今後も楽しみです♪
そしていよいよ後編へ・・・・敵を追い詰めていく哀ちゃん達・・・・和葉は無事に石化から戻れるのか! by akkiy