夜の闇の中、カミソリのような切れ味鋭い容貌の黒づくめの男が、黒のポルシェ356Aを走らせていた。

助手席に座っている、ガタイのいい黒づくめの大男が聞く。

「魔法、超常現象研究? 何ですかい? 兄貴、それは?」

「組織が行っている研究のひとつだ」

カミソリのような容貌の黒づくめの男、ジンは助手席に座っている黒づくめの大男、ウォッカに対してそう答えた。

ジン、ウォッカ。工藤新一が追っている謎の組織の一員である。

「組織の目的を達成するためにあの『シェリー』と別の分野からのアプローチとして『あのお方』の命令で研究を行っている」

「しかし、兄貴。魔法ってのは……」

ジンの説明に対して、ウォッカは戸惑った表情をした。

「ああ。『あのお方』の考えることはよくわからん」

ジンも表情にこそ出しはしなかったが、魔法というモノを研究させていることに若干の疑問を覚えているようだ。

「それで、『キルシュ』がどうかしたのか?」

ジンがその魔法、超常現象研究を行っている女科学者『キルシュ』についてウォッカに聞いた。

ウォッカが『キルシュ』についての話題を持ち出して、その結果、冒頭の質問をジンにしたのだった。

「あ、そうでやした。いや、あくまで噂なんですが、なんでもその『キルシュ』のやつがですね」

と、言うとウォッカがジンに噂の内容を告げる。

「ということ、なんです。ジンの兄貴」

「ふん……」

ジンは、ウォッカが告げてきた内容を聞いて頭をめぐらせた。

「わかった。ウォッカ。お前は−」

やがて、ジンはウォッカに一つの命令を告げたのだった。


魔法少女 マジカル☆哀 黒の組織の罠再び!? 伝説級モンスターとの戦い!! 前編


一方、そのキルシュはというと……

「ふふふふ……」

カーン!!カーン!

キルシュが打つ甲高い音が夜の闇に響く。

木々が立ち並ぶとある公園。そこで、メガネをかけた黒服の女が金づちを振りかぶっていた。

木に五寸釘で打ち付けられたわら人形。人形の頭には18歳の姿をした哀の写真。

丑の刻参りと言われる呪術である。

しかし、あんた科学者だろう。こんな非科学的なことしてていいのか?

「そうよ。そうよ。シェリー。呪われるがいいわ!!」

キルシュは金づちでわら人形の中心にある五寸釘を打ち抜いていく。

すでにその顔は知性ある科学者の顔ではなく、恨みに燃える女の顔であった。

がすっ!

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

手元をミスって手に金づちを打ち付けてしまったキルシュは声にならぬ悲鳴を上げたのであった。

 

 

「呪われているみたいだな」

「何を言っているの?」

キルシュが金づちを自分の手に打ちつけた翌日。不意につぶやいたヒョウちゃんの言葉に哀はパソコンのキーボードを打つ手を止めた。

博士の家の地下室でいつものように作業していた哀。そこに小さな黒ヒョウは唐突にそんなことをつぶやいたのだった。

「ああ。哀に呪いがかけられてるぞ」

「ワタシに、呪い?」

と、言われても哀としては普段と変わった感じはしない。

呪いなど信じていない哀は、別段気にせずにヒョウちゃんに言った。

「気のせいじゃないの?」

「いや、確かに哀に呪いがかけられてるぞ。なんかケガしたりとか変わったことはなかったか?」

「呪い……ね」

自分が呪われているらしいが、あまり哀には自覚症状はない。

(そういえば、何もないのに転んだけど、あれかしらね)

しかし、そんなことは誰にでも起き得ることである。

哀がそんなことを考えていると、ヒョウちゃんが言った。

「まあ哀の魔力が強いからそんなに実害がないんだろうな。あんまり強い呪いじゃないみたいだし。まあ、でも一応呪いを返しておくな」

ヒョウちゃんがゆっくりと目をつぶる。そして、おもむろにこんな呪文を唱えたのだった。

「なむなむ。ねむねむ。くるりんぱっ!!」

場を沈黙が支配する。間の抜けた呪文とは裏腹に、ヒョウちゃんは真剣な顔だった。

「よし、これで呪いは返したぞ」

「ほんとかしらね……?」

呪文を唱えたことで、何が起こるわけでもない。自分の体調が元気になったわけでもない哀は、疑いを抱かざるを得なかった。

「まあいいわ。それより、マジカルモンスターの騒ぎはいつ終わるのよ?」

気を取り直すと、哀はヒョウちゃんにそんなことを聞いた。

哀は遅々として進まないマジカルモンスター騒ぎに焦りのようなものを感じていた。

哀としては、早急にこのマジカルモンスターの騒ぎを終わらせたい。しかし、マジカルモンスターが現れるのを待って、ちまちまと退治していくだけではいつ終わるかわかったものではない。

特にキルシュがマジカルモンスターがらみで絡んでいるのは確認済みである。黒の組織の手がいつ歩美に及ばないとも限らなかった。

それを考えると、焦りを感じて当然だった。

しかし、ヒョウちゃんはそんな哀の思いに気づくこともなくあっけらかんと答えた

「前にも、説明したと思うけどわからないぞ」

前にも述べたことがあるが、マジカルモンスターの出現時期は特定不能である。それは、マジカルモンスターが次元の狭間とも言うべき、この世界と魔法世界の間にいるからだ。

そんな状態のマジカルモンスターに干渉も探知もできるわけがない。それで、マジカルモンスターが現れてから退治しているのだ。

「まあすぐになんとか米花町近辺に出現位置は制限したけどさ。現れる時期まではやっぱりわからないし」

「そう。なら、後、退治するべきマジカルモンスターは何匹なのよ」

せめてそれくらいは知りたい哀はヒョウちゃんにそうたずねるが、ヒョウちゃんの回答はこうだった。

「わかんないぞ!!」

「なんでわからないのよ……」

哀がジト目でヒョウちゃんを見る。ヒョウちゃんが頭をかきながら告げた。

「いやあ、魔法世界レインダムでもペットを捨てる人が多くてさあ。いちいち管理するのが面倒だったんだよね。なんで、逃げた正確な数はわからないんだなあ」

「いいかげんな管理ね」

まあヒョウちゃんの性格を考えれば、当然という感じだが……

「まあでも、捕まえた数からいって大分進んでいると思うぞ」

「そうね。そうだといいわね」

哀はため息をつく。結局、マジカルモンスター退治に関するたいした情報は得られなかった。

(それにしても、問題はキルシュね)

そう別にマジカルモンスター退治に関することはどうでもいい。哀の懸念は、それに関係している黒の組織の魔法科学者キルシュのことだった

(この生き物に相談してみようかしら?)

そう。マジカルモンスター退治に黒の組織が介入していることを告げるのだ。そして、組織のことを告げ、対策を一緒に考える。

そんなことを一瞬考えた哀だったが、すぐにあきらめた。

(まあこの性格じゃね。相談するだけ無駄だわ)

ヒョウちゃんも池田安二郎の事件やカーバンクルの事件で、何者かが介入してきていることは知っている。が、特に障害だとは感じていないようだった。

(何としてでもマジカルモンスターを早急に捕まえていくしかないわね)

哀はそう結論付けると、ヒョウちゃんに言った。

「とにかくマジカルモンスターが現れたら、すぐにワタシに知らせなさい。すぐに、よ」

「お。魔法少女としての自覚に目覚めたんだな。感心。感心」

感心するようにヒョウちゃんが上下に首を振る。そんな中、哀はマジカルモンスターをなんとしてでも急いで捕まえることに決意を新たにした。

 

 

哀がそんな決意を固めた翌日。

キルシュは、研究所の一室でイスに座り黒服と話し合っていた。

左手の指には包帯が巻かれている。他にも、かけているメガネのフレームが歪んでいたりした。

ややイライラしたような顔をしているキルシュに立ったままの黒服が聞く。

「どうかしたのですか? キルシュ様」

「どうかしたかじゃないわよ!!全く!!」

キルシュは不満を黒服にぶつける。

「左手の指を金づちで打ち付けたのよ!! 他にもなぜかわからないけど、何もないところで5回は転ぶは、
そのせいでメガネを落としてしまって踏んづけるは、それだけじゃなく足の小指を3回もぶつけたのよ!!」

これだけキルシュが不幸な目に遭っているのも、キルシュのかけた呪いが跳ね返ったためであった。

呪いというものは、跳ね返るとより強力になって呪いをかけたものを襲うのである。

人を呪わば穴二つ。

「まったく!! いったい何で私がこんな目に!!」

「すみません!! 報告の方をいいでしょうか!?」

このままだと不満が全部自分に向かう。そう悟った黒服は話をそらすべく、キルシュにいつもの定期報告をしようとした。

「ま、いいわ。じゃあ、報告をお願い」

「はい」

黒服はうなずくと、報告を始めた。

シェリーの捜索の方は、『進展していない』の報告であった。

相変わらず変わらない報告に、キルシュが2、3小言を言うが、気を取り直して黒服に報告の続きを求める。

対して、マジカルモンスターの方の探索についてだが、徐々にであるが進展しつつあった。

世界各地には、昔、魔法世界との交流があった時に暴れていた怪物が封印されていて、当然日本にもある。

キルシュは、そんな昔の伝承を元に怪物が封印された祠(ほこら)などを暴いていった。

あのカーバンクルの時に暴れさせた大百足(おおむかで)もそんな怪物のひとつである。

カーバンクル自体は、偶然遭遇したところを黒服を使ったりして捕獲したものだが、大百足はそんな経緯からキルシュの手にあったものである。

「それで、ですね。何やら今までとは違う感じのものが見つかりまして」

「ほんと!? その祠の形状は!? 封印されているお札(おふだ)にはなんて書かれているの!?」

黒服の報告に、キルシュが目の色を変える。興奮しきった様子で立て続けに質問をする。

黒服は、自分に分かる祠の形状など判明したことをキルシュに伝えていった。

「そんな感じです。お札には、何やら文字が書かれていますが、我々では……。なので、キルシュ様に来ていただきたいと」

「なるほど。それは、伝説級のモノに違いないわね」

聞いた限りでは、明らかに今までのモノとは大違いの様子である。おそらく封印されている怪物も今までのモノと桁違いのはずであった。

「うふふふふ」

キルシュが嬉しそうに含み笑いをする。魔法の研究が進むことに対する歓喜の感情によるものであった。

「わかったわ。すぐにその現場に向かうわよ」

キルシュは立ち上がると、黒服にそう告げたのだった。

 

 

その数日後の休日の昼−

哀とヒョウちゃんは、博士の家のリビングでTVを見ていた。

『犯人はあなたですよ。女主人』

TVの中の黒づくめの探偵がおもむろにそう告げた。

『ふ、何を根拠にそんなことを言うの?』

対して、犯人呼ばわりされた女主人は顔色一つ変えずにそう探偵にたずねる。

『なぜ? なぜなら……』

と、そこで探偵は一呼吸置くと、胸を張って宣言したのだった。

『この私が犯行現場を目撃したからだ!!』

ばばーーん!!

「な、なんだってーーー!!」

「………」

ヒョウちゃんがおおげさに驚く中、哀は冷めた目でTVを見つめた。

今、哀とヒョウちゃんが見ているのは、昼ドラ「探偵kは見た!あんたが犯人だ!」である。

犯人が殺人を犯すところを探偵が目撃してあっさり解決するという推理もサスペンスもないコンセプトのドラマであり、
視聴率3パーセント台という低視聴率でありながらも、なぜか打ち切られることもなく続いているというわけのわからないドラマであった。

(ほんと何が面白いのかしら?)

ヒョウちゃんに「面白いから一度見てくれ」と頼まれて見ている哀だが、どこが面白いのかさっぱりわからない。

今、TVの中では、黒づくめの探偵が自分で撮った犯行の瞬間の証拠写真を出し、女主人が崩れ落ちているところであった。

その様子を興奮しながら見ているヒョウちゃんに、哀は呆れ果てた表情でTVを見ていたのだった。

 

 

「準備は完了した?」

キルシュがそばにいる黒服の男にたずねる。黒服はうなずいた。

今、キルシュたちがいるのは米花中央公園。哀たちが小学校の遠足で行った公園である。

「ふふふ」

黒服の返事に満足すると、キルシュが懐からお札(おふだ)のついた玉を出した。

「キルシュ様。近くにマスコミのTVカメラがあるようですが?」

黒服がキルシュに言った。見れば、レポーターらしき女性とTVカメラを持った集団がこの近くで何やら準備していた。たぶん、昼のニュースか何かで使われるのだろう。

「それは、ちょうどいいわね。大騒ぎになるわ。あのシェリーもすぐ駆けつけてくるでしょうね」

キルシュは愉しそうな笑みを浮かべると、玉についていたお札を引きちぎると呪文を唱える。

「現れなさい!!」

魔法の玉の中に封印されていた怪物が姿を現した。

 

 

「探偵kは見た!あんたが犯人だ!」の2話目の途中で(この昼ドラは2話構成だった)、急に画面が切り替わった。

『ここで番組の途中ですが、臨時ニュースをお伝えします』

「あ! せっかくいいところだったのに!なんでだー!!戻せー!!」

「……」

ヒョウちゃんがTV画面の目の前まで行って文句を言う中、哀が呆れた顔でいると、TVの中のキャスターが奇妙な顔をした。そのまま、大きく間が流れる。

『し、失礼しました。それでは、臨時ニュースです』

そのままTVの中でこんなテロップが現れた。

『米花中央公園に怪物出現!?』

そのテロップを見て、哀が思わず気を引き締める。一方、ヒョウちゃんはまだ文句を言っていた。

『米花中央公園に怪物が現れたとのことです。その現場に偶然、わがTVの取材班が居合わせました。それでは、現場です』

TVの中の画面が切り替わり、米花中央公園の中にいるレポーターを映し出す。

『はい!! こちら現場です!! 怪物です!! 怪物なんです!!』

興奮冷めやらぬと言った感じのレポーターが怪物という言葉を連呼する。

TVの中では、たくさんの首を持った怪物が見えた。

『それにしても! アレはいったいなんなのでしょうか!?』

と、そこでTVの中の画面がピカッと光った。

さらに、ドッゴーンという轟音。

『わああああ!! 逃げろ!! 逃げろ!!』

突如、画面があちらこちらに激しくブレた。そのまま、激しく画面がブレたまま移動しつづけて、突然画面は消えたのだった。

「マジカルモンスターね」

「こらー!! 早く戻せー!!」

哀が緊張した顔になる。一方、まだヒョウちゃんはTV画面の目の前で文句を言っていた。

「それじゃ、行くわよ。あなたもついて来なさい」

「ん? 行くって?」

哀が魔法の試験管を取り出しつつ、ヒョウちゃんに声をかける。ヒョウちゃんは不思議な顔をした。

「見てなかったの? 米花中央公園にマジカルモンスターが現れたのよ。だから、行くわよ」

「え!? なら、「探偵kは見た!あんたが犯人だ!」は……」

「そんなモノ見ている暇はないわ。ほら、さっさと行くわよ」

「そ、そんなあああ!!」

哀は魔法の試験管を持つと、魔法の呪文を唱えた。

「……レイ………マジカル…トランス……ミューテーション……」

棒読みの呪文に魔法の試験管が反応し、七色の光が哀を包み込む!!

哀は魔法少女マジカル☆哀に変身した。

「それじゃ行くわよ」

「あううう……」

こうしてマジカル☆哀は、マジカルモンスターを退治すべく、米花中央公園へと向かったのだった。落ち込むヒョウちゃんを引き連れて……

 

 

魔法少女マジカル☆哀が空を飛び、米花中央公園へと向かう。

「うーん……」

そんな中、ヒョウちゃんは何やら困ったようにうなっていた。哀がたずねる。

「どうしたの? まだあのくだらない番組が気になるの?」

「いや、そうじゃないんだけどさあ……」

ヒョウちゃんが哀に戸惑うように告げた。

「今回のマジカルモンスター、レインダムネットワークに引っかかっていないんだよね。何か前にもこんなことあったよなあって」

レインダムネットワークとは、マジカルモンスターが現れた際の魔力を探知するネットワークである。どうやら今回のマジカルモンスターはそれに引っかかっていないらしい。

それを聞いて、哀の顔が緊張の色に染まる。

(まさか今回のマジカルモンスターはキルシュの仕業?)

そう前にもこんなことがあった。マジカルモンスター、大百足(おおむかで)の時にカーバンクルを餌に誘いこまれピンチに陥った時が……

そんなことを考えながら、空を飛んでいるとやがてマジカルモンスターが暴れている現場が近づいてきた。

暴れているマジカルモンスターは、巨大な胴体から9本の蛇の首が生えていた。

大きさは、ちょっとした小山ほどもある。そして、蛇の口からは大きな火炎を吐いていた。

ヒョウちゃんがそのマジカルモンスターを見て愕然とする。

「ヒュドラ……だって!?」

見るからに強そうなマジカルモンスターである。その姿を見た哀は、早急に倒すことを決意した。

(もし、てこずれば歩美が来てしまうわ。そうなったら、歩美を危険にさらすことになる)

そして、明らかにキルシュの陰が見え隠れしている。そうなったら、歩美がどうなるかわかったものではない。

そう考えた哀は、すぐさままっすぐにヒュドラに向かって突っ込んでいく!

「哀!?」

その行動に、ヒョウちゃんが驚く中、哀は一直線にヒュドラに向かって突進していく。

そんな哀の突進を見て、ヒュドラの首のひとつが哀の方を向く。

ヒュドラの首の口の奥が光を発し、哀に向かって大きな火炎を吐いた。

その火炎をマジカルロッドで切り払いながら、突っ込んで行こうとした哀だったが、ヒョウちゃんが叫ぶ!

「やめるんだ!! 哀!!」

その言葉と、とっさに身の危険を感じた哀は火炎をなんとかギリギリでかわす。

「っ!?」

哀は目を見張って持っていたマジカルロッドを見た。

火炎が当たったマジカルロッドがドロドロに融けている。柄のやや先の部分が融けてしまって使い物にならなくなっていた。

ヒョウちゃんが叫ぶ。

「ヒュドラの炎の威力は、キマイラの比じゃないんだ!!」

炎を弾くマジカルロッドすら融かす火炎の威力。当たれば、骨すら残さないだろう。

その炎の威力に哀は戦慄した。

たくさんのヒュドラの首が哀の方を向く。どうやら哀を敵だと認識したらしい。

ヒュドラのいくつかの首が火炎を吐いた。幾条かの火炎が哀に向かって放たれる。

それらをなんとかかわしながら、哀はヒュドラに向かって接近を試みた。

「ふっ!」

牽制のために、マジカルフラッシュ(ナイフ投げ)を行いながら近づいていく哀。

キィン! カキィン!!

しかし、投げたナイフはヒュドラの首に当たると澄んだ音を立てて弾かれる。

「ヒュドラの肌は鋼鉄のように硬いんだ! ナイフなんか効かないぞ!!」

「なら、これしかないわね……」

哀は爆弾を持つとヒュドラに突っ込んでいく。

やがて、哀はヒュドラの首の一つに爆弾を投げ込むことに成功した。

どっかーん!

爆発の影響を受けた首が千切れ飛び、地面に落ちた。

しかし、すぐさま千切れたところから新しい首が再生して、元に戻ってしまう。

「くっ」

哀は、この強力なマジカルモンスター、ヒュドラに手をこまねいていた。

  

  

ヒュドラに哀がてこずるところを遠くから眺めていたキルシュは狂気乱舞していた。

「あはは! そうよ! もっと暴れなさい!!」

そのまま狂ったように笑いつづけるキルシュ。そばにいた黒服たちは、ため息をついた。

しかし、キルシュの目的は、『シェリー』を捕まえて魔法のテクノロジーを吐き出させた上で始末するというものである。

その目的を忘れたかのように、ただヒュドラが暴れていることを喜んでいるキルシュに黒服の一人が忠言する。

「あの、キルシュ様。我々の目的は、『シェリー』の捕獲ではなかったのですか?」

その言葉にキルシュはやや我に返った。

「そうね。『シェリー』が傷ついたら、我々も現場に向かうわ」

他の黒服たちが、忠言した黒服に対し、(余計なことを!)と思う中、キルシュが笑みを浮かべながら現場の方を見ていると、現場に向かって空を飛んで近づいていく新たな一つの影を目撃した。


後編へ


あとがき

はっはっは!!探偵k、参上!!(ちゅどーん)

ということで、マジカル☆哀の新作、黒の組織ヒュドラ編をお送りします。

キルシュが手に入れた伝説級モンスター、ヒュドラ。封じられていた玉からヒュドラを解放し、米花中央公園で暴れさせるキルシュ。

哀はそのヒュドラをなんとかしようと戦いますが、苦戦します。

そして、キルシュがその様子を遠くから眺める中、現場に空を飛んで近づく新たな影が。

また、別のところでは、ジンが何やら動きを見せています。

と、いったところで後編に続きます。



探偵k様ぁ!!
いつも小説ありがとうございますっ
今回のキルシュはひときわ面白・・・・ごほごほっ・・・・・感情が出ててすごかったです!いろんな意味で(笑)
このヒュドラさん(さん?)は強いのでどう戦うのか後編が楽しみですね〜♪
ジンもどういう動きをするのか目がはなせませんっ by akkiy