「あの、キルシュ様。我々の目的は、『シェリー』の捕獲ではなかったのですか?」
その言葉にキルシュはやや我に返った。
「そうね。『シェリー』が傷ついたら、我々も現場に向かうわ」
他の黒服たちが、忠言した黒服に対し、(余計なことを!)と思う中、キルシュが笑みを浮かべながら現場の方を見ていると、現場に向かって空を飛んで近づいていく新たな一つの影を目撃した。
魔法少女 マジカル☆哀 黒の組織の罠再び!? 伝説級モンスターとの戦い!! 後編
哀がヒュドラにてこずっている中、空を飛んでこちらに近づいてくる少女の姿があった。少女の近くには、小さな犬のような生物もいる。
「ヒュドラだと! ヒョウレンめ。なんてモノを逃がしたんだ!!」
「灰原さん!! 大丈夫!?」
魔法少女プリティ♪歩美と、そのマスコット、オオカミのフェンバルである。
現れた歩美とフェンバルに対し、ヒョウちゃんが叫ぶ。
「フェンバル!! 協力するんだ!!」
「なんだと?」
この意外なヒョウちゃんの言葉に、フェンバルは驚いた表情を見せた。
いつもふまじめで適当な言動をするヒョウちゃんが、珍しく真剣な顔でフェンバルに話しかける。
「俺だってオマエと協力するのはムチャクチャイヤだけど、今回は緊急事態だ! だから、協力するんだ!! フェンバル!!」
いつもと違う真剣なヒョウちゃんの頼みに、フェンバルは力強くうなずいた。
「ち、しかたないな」
常に反目しあっているヒョウちゃんとフェンバルが、協力してヒュドラを退治しようとする。
この異例の事態自体が、現在の状況が普通ではない危険なモノであることを示していた。
「行っくよー!! プリティ・ハート・イリュージョン!!」
プリティ♪歩美が呪文を唱えて杖を振ると、七色の光線が発射される。
七色の光線は、ヒュドラの首のひとつに直撃した!
ちゅどーん!
ヒュドラの首が千切れ飛び地面に落ちるが、すぐさま新たな首が再生し、元に戻ってしまう。
「ヒュドラには、無限に近い強力な再生能力があるんだ! 単純な攻撃じゃ意味ないぞ!!」
ヒョウちゃんが、ヒュドラの能力について説明する。
キマイラを超える火炎を吐く能力、鋼鉄のような肌、無限に近い強力な傷に対する再生能力。
こんなマジカルモンスターとまともに戦うのは、無謀の言葉がふさわしい。
「ヒュドラの弱点は?」
哀が冷静にヒュドラの弱点について聞く。
「えーと? うーんと?」
ヒョウちゃんが考え込む中、フェンバルが叫ぶ。
「アレだ!! あの一頭の頭にある小さな角がヒュドラの弱点だ!」
フェンバルが小さな指で指し示した。フェンバルが指差した一頭にだけ、小さな角があるのが確かに見える。
「アレね」
しかし、たくさんの首が暴れ回る中、たった一つの、それも、小さな角に攻撃を与えるのは並大抵の苦労ではない。
「吉田さんが後ろから攻撃して。ワタシが突っ込むわ」
「うん。でも、大丈夫? 灰原さん」
歩美が心配する中、哀はクールに言ってのけた。
「ええ。なんとかしてみせるわ」
ヒュドラの首たちが、こちらに向かって火炎を吐く。
それらをなんとかかわしながら、哀は弱点の角を持つ一頭目掛けて、突っ込んでいく。
「プリティ・ハート・イリュージョン!!」
後方から、プリティ♪歩美がプリティ・ハート・イリュージョンを唱え、七色の光線がヒュドラの首に向かって飛ぶ。
ヒュドラの首がその七色の光線によって破壊されていく中、弱点の角に向かっていくマジカル☆哀。
やがて、哀はヒュドラのやや真上の付近に到着する。
「ふっ!」
どっかーん!
なんとか哀は弱点の角にマジカル・ハート・アタックを決めることに成功した。
「やった?」
哀が動きを止め、ヒュドラの様子をうかがう。
「危ない! 哀!!」
ヒョウちゃんの叫び。
ヒュドラの首の一つが激しい横薙ぎに動く! そのまま哀にぶつかろうとしてきた!
危険を察知した哀は、すぐさま上昇する。
そんな哀の真下をヒュドラの首が大きく激しい音を立てながら通り過ぎていった。
ヒュドラの首たちが激しく動き回り、頭上に居る哀を追い払おうとする。
ヒュドラの弱点の角に確かにマジカル・ハート・アタックはダメージを与えたはずだった。だが……
「効いてないじゃない」
ヒュドラは効いた様子も見せずに健在だった。
「ヒュドラの弱点の角は、ヒュドラの中で一番硬い部分だ!! その攻撃単体じゃ威力が足りないんだ!!」
フェンバルがマジカル・ハート・アタックだけではダメージを与えられないことを告げる。
「どうするのよ……」
哀はつぶやいた。
マジカル・ハート・アタック単体では、ヒュドラの弱点の角にダメージを与えられない。プリティ♪歩美のプリティ・ハート・イリュージョンも(おそらく)同程度の威力だろう。
これでは、ヒュドラを倒すことができない。
「むう。よーし、こうなったら! マジカル☆哀、パワーアップだああああああああああ!!」
唐突にそう叫んだのは、これまで言葉が少なかったヒョウちゃんだった。
「……パワーアップ?」
ヒュドラの首の猛攻撃をかわしながら哀はつぶやいた。哀の表情が疑いの物になる。
哀の脳裏に浮かんだのは、そんな簡単にパワーアップできるのかというもの。
しかし、それ以上考える余裕はなかった。今、ヒュドラの嵐のような攻撃に晒されている真っ最中だからだ。
「なんでもいいわ! とにかくこの状況を打開できるのなら、早くそのパワーアップとやらをなさい!」
「でも、このパワーアップをするためにはちゃんとした重要な儀式をする必要があって……」
「今のこの状況でそんな余裕はないわ! 早くしなさい!」
哀がいつものクールな表情をかなぐり捨てて叫ぶ。
「むう。でも、重要な儀式なのに……こうなったら、それーーーー」
ヒョウちゃんが、おもむろにヒュドラの方を見て呪文を唱える。
「?」
不意に哀に向かっていた嵐のような攻撃が来なくなった。ヒュドラの首は、何もない空間に向かって、火炎を吐いたり、体当たりをしようする動作をしている。
「何をしたの?」
「ヒュドラに幻覚をかけた。あまり長い時間は持たないけどな。これで、儀式のための時間が稼げるぞ」
ヒョウちゃんの妖精としての能力に幻覚がある。おそらくそれを使ったのだろう。
「というか、早めに使って欲しかったところね」
「こっちでは、あまり魔法は使えないんだ。この幻覚だってあまり長くは続かないぞ」
「なら、早くそのパワーアップとやらの儀式をやりなさい」
ヒョウちゃんが説明する中、哀がクールな顔で儀式とやらを促す。
「おっと。そうだった。じゃ、哀、行くぞ!!」
哀がやや身構える中、ヒョウちゃんは高らかに宣言した。
「ヒョウちゃーーんアイテム!!」
ヒョウちゃんの手に杖のようなものが現れる。
「さあ哀! 新しい杖だぞ。これでパワーアップの儀式は完了だ!!」
と言うと、ヒョウちゃんが哀に新しい杖を渡した。
その新しい杖を哀はマジマジと見ていたが、おもむろにつぶやいた。
「前のと変わってないけど?」
そのとおり。前のマジカルロッドと、長さ、形状ともにまるで変わっていない。
「あとパワーアップってどういうこと?」
哀がいぶかしんでいると、ヒョウちゃんがおもむろに言った。
「新しい杖になったらパワーアップするのは、魔法少女の常識だぞ?」
「どういう根拠なのよ……」
「あとは無意味にくるくると回転して攻撃すればパワーアップってのもあるけど?」
「これでいいわ……」
哀は、魔法少女の常識とやらに頭を抱えつつも新しい(能力は全く同じ)マジカルロッドを手に取った。
魔法少女の常識にもとづき、マジカル☆哀はパワーアップした。ぱっぱらぱー!!
やったね! マジカル☆哀!
「それじゃ、哀!! パワーアップしたマジカル・ハート・アタックを決めるんだ! ほいっ!」
ヒョウちゃんが哀に新しい爆弾を渡す。
「何なの? このハートの形の爆弾は……」
今までの無骨な丸型爆弾と違って、形状がハート型だった。
「いやあ。やっぱり魔法少女なんだから、かわいい感じにした方がいいかなあ、と思って」
哀が呆れる中、ヒョウちゃんが元気よく叫ぶ!
「さあ! 哀! パワーアップしたマジカル・ハート・アタックの力を見せるのだあ!」
ヒョウちゃんがヒュドラに向かって、小さな指を指す。
「………」
哀は呆れた表情のまま、幻覚の力もあってか、ヒュドラの弱点の角に、今度はあっさりとパワーアップしたマジカル・ハート・アタックを決める。
どっかーーーーーーーーーん!
「パワーアップしたから、爆弾の爆発力も1.5倍増しだあ!!」
「初めからそうしなさい」
ヒョウちゃんの叫びに、哀が呆れきった顔でつぶやく。
やや(というかかなり)マヌケなやりとりはあったものの、哀はヒュドラの弱点の角にパワーアップしたマジカル・ハート・アタックを叩き込むことに成功した。
しかし……
「ああっ! パワーアップしたマジカル・ハート・アタックでもダメか!!」
ヒョウちゃんが叫ぶ。
ヒュドラに効いた様子はなく、未だ苛烈に暴れまわっていた。
「フェンバル!」
「なんだ!!」
さっきのマヌケなやり取りの中でも、周りの被害を減らそうと歩美に指示を出していたフェンバルに向かって、ヒョウちゃんが呼びかける!
「サンドゴーレムの時の攻撃を弱点の角に!」
「! わかった!」
フェンバルがうなずく。
「まずいぞ! そろそろ幻覚が切れる!!」
ヒョウちゃんのその言葉通りに、あさっての方向に攻撃していたヒュドラの攻撃が不意にやむ。
どうやら急に幻覚が切れたことで、攻撃の対象を見失い、攻撃を一時中断したようだった。
やがて、そのたくさんの頭でマジカル☆哀とプリティ♪歩美を見つけ出したヒュドラは攻撃を再開しようとする。
「今だ!! マジカル☆哀!!」
「歩美!! 今だ!!」
ヒョウちゃんとフェンバルがそれぞれの魔法少女に攻撃の指示を出す。
「行くわよ!!」
「プリティ・ハート・イリュージョン!!」
ちゅどっかーーーーーーーーーん!
サンドゴーレムを倒した時の、マジカル・ハート・アタックとプリティ・ハート・イリュージョンの同時攻撃。それをヒュドラの角に叩きこむ!
緋色の爆発と七色光線による衝撃波が辺りを揺さぶった。
「よし、これなら!」
ヒョウちゃんが快哉の言葉を叫ぶ。
サンドゴーレムを倒した時と同じ合体攻撃。しかも、マジカル・ハート・アタックの威力はパワーアップの効果もあって上がっている。
当然、サンドゴーレムの時より合体攻撃の威力は上がっているはずである。
しかし。
爆発の煙幕が晴れた後には、攻撃を加える前とまるで変わらないヒュドラの姿があった。
「まずいわね……」
哀の顔色が曇る。
さっきの合体攻撃が効かないのなら、もはや打つ手がなくなってしまう。
哀があきらめかけたその時、ピキッという何かにヒビが入ったような音がした。
「効いているぞ!! アレを見ろ!」
フェンバルが指を指す。
見れば、ヒュドラの弱点の角に大きくヒビが入っていた。
「もう一息だ!! もう一回、あの同時攻撃を加えれば、なんとかなるはずだ!」
フェンバルがそう叫んだのと同時にヒュドラが苛立ったようにおたけびを上げる。
ヒュドラが頭上にいるマジカル☆哀に襲い掛かった。やや遠くにいるプリティ♪歩美より、頭上でちょろちょろと動き回るマジカル☆哀の方が気に障るようで、苛烈な攻撃を仕掛けてくる。
「くっ」
首をぶん回したり、噛み付いてきたり、火炎を吐いたりといった攻撃をそれぞれの首が行ってくる中、なんとか哀はそれをかわすので精一杯だった。
「哀! なんとかもう一度マジカル・ハート・アタックを決めるんだ!!」
「そんなこと言われてもね」
ヒョウちゃんがもう一度弱点の角に攻撃を与えるよう促すが、猛烈なヒュドラの攻撃のせいもあって、なかなかマジカル・ハート・アタックを使う機会がない。
幻覚の力もあって、なんとか二回ほど弱点の角にマジカル・ハート・アタックを決めることに成功したものの、やはりヒュドラの首が暴れまわる中、弱点の角にダメージを与えることは並大抵のことではない。
哀がヒョウちゃんに聞いた。
「幻覚の力は使えないの?」
「無理! 幻覚を使う魔力が残ってない!」
「ホント役に立たないわね」
というか、それだけ貴重なら使うタイミングを考えてほしかったところだった。
「プリティ・ハート・イリュージョン! プリティ・ハート・イリュージョン!!」
歩美がプリティ・ハート・イリュージョンを連続で唱えた。
七色の光線が2つ飛び、ヒュドラの首がそれぞれ破壊される。そのおかげもあり、ヒュドラの哀に対する攻撃の圧力がいくらか弱まった。
「哀!! いったん退くんだ! 態勢を立て直そう!」
たしかにこのままヒュドラの攻撃に哀がさらされているだけでは、マジカル・ハート・アタックを決めることもできない。
なんとかして、もう一度マジカル・ハート・アタックとプリティ・ハート・イリュージョンの同時攻撃を決めなければならないのだ。
「わかったわ」
ヒョウちゃんの言葉に哀はうなずくと、すぐさま後ろに一直線に飛び、ヒュドラから距離を取る。
ヒュドラから大きく下がった哀は、すぐさま振り返りヒュドラの隙をうかがった。
と、そこで。
ヒュドラのたくさんの頭が一斉に大きく口を開けた。それぞれの口の奥に炎が集まっていく。
「まずいぞ。あんな一斉に火炎を放たれたら、どれだけの被害が出るかわかんないぞ!」
ヒュドラの一つの首から放たれる火炎でも危険なのに、九つもの首から火炎が放たれればどうなるかわかったものではない。
「くっ」
「哀!?」
すぐさまマジカル☆哀が動いた。ヒュドラに向かい一直線に向かっていく。
「あなた。爆弾をありったけ用意しなさい……」
「え?」
「いいから早く!」
哀の言葉に一瞬戸惑ったヒョウちゃんだったが、その意味に気づき納得したような顔になった。
「おお!なるほどなあ。それじゃ、ほいっ」
掛け声と共に6つの爆弾がヒョウちゃんの手元に現れる。
と、それを宙に浮かせながらマジカル☆哀の周囲に展開させた。
その態勢のまま、哀はヒュドラに突っ込んでいく!
「行くわよ」
哀が両手で周囲に浮いているハート型爆弾を一つずつ手に取る。
「いっけー!!」
ヒョウちゃんの掛け声と共に、哀はすばやく両手に掴んだ爆弾をヒュドラの首たちに投げつける。
そして、その動作を3連続で行った!!
「マジカル・ハート・アタック六連発だあああああ!!」
ヒョウちゃんが叫ぶ。
どかどかどかどかーーーーーーーん!
火炎を吐くために時間がかかっていたこともあり、ヒュドラの首たちは一斉に破壊される!!
(よし、今なら……)
ヒュドラの首の大部分を破壊し、スキができた今なら弱点の角にマジカル・ハート・アタックを叩き込むこともできるはずである。
すぐさま弱点の角を持つ首を探し出した哀は、マジカル・ハート・アタックを決めるべく接近していく。
「吉田さん!! 今よ!!」
プリティ♪歩美に合図を出し、哀は自分も弱点の角にマジカル・ハート・アタックを決めようとする。
「哀!! ダメだ!! 避けるんだ!!」
「!?」
ヒョウちゃんの叫び。気づいた時には遅かった。
爆弾の爆発による煙のせいだった。そのせいで、残ったヒュドラの2つの首がこちらに突進してくるのに気づかなかったのだ。
(まずいわ。避けられない!)
すでに哀はマジカル・ハート・アタックを仕掛ける体勢に入っている。このままでは避けられない!
ヒュドラの丸太のような首が横から体当たりする。その首たちが近づいてくるのを見つめるしかない哀。
と、そこにヒュドラの首たちと哀の間に小さな影が割って入った。
「任せろ!!」
割って入った小さなオオカミ。その小さなオオカミは大きく息を吸い込んだ。
ウォーーーーーーーーン!
その小さなオオカミから放たれたとは思えない巨大な咆哮。その咆哮にヒュドラの首たちがビクッと動きを止める。
ヒュドラの首の攻撃を止めたフェンバルに感謝しながら、哀はマジカル・ハート・アタックをプリティ♪歩美が放った七色の光線と同時に弱点の角に叩き込む!!
ちゅどっかーーーーーーーーーん!
爆弾の爆発による衝撃、魔法力による七色光線による衝撃、それぞれの衝撃が同時に叩き込まれたことで、ついに弱点の角は耐えていた限界を超えた。
ピシッ。バリーーーーーン!!
その小さな角は粉々に砕け散った。
同時にヒュドラは、その巨大な体躯を大きい音を立てながら地面に横たえたのだった。
「ふう。なんとかなったわね」
哀が大きく息をつく。今までの緊張のせいか、全身が汗でびっしょりだった。
哀のその言葉を受けて、フェンバルがヒョウちゃんの近くに現れると糾弾するように言った。
「まったくだ。しかし、何とかなったからいいものの、あんなモノまで逃がすなんて。ヒョウレン! 何を考えているんだ! いくらオマエがズボラな性格でもモノには限度と言う物が……」
フェンバルが長々とヒョウちゃんに説教をしていると、ヒョウちゃんがぽつりとつぶやいた。
「逃がしてないぞ」
「なんだって?」
ヒョウちゃんのつぶやきにフェンバルが疑問の顔つきになる。
「あんなもの俺は逃がしてない。ヒュドラなんて自分が管理していたペットの中にはいなかった。そもそも、あんなもの飼える人間いないだろ?」
マジカルモンスターはマジカルペットが捨てられたことにより野性化したものである。当然その危険度はかなり低いのだ。(と言っても危険なことに変わりなく、トップレベルのモンスターと比べればであるが)
「オマエが逃がしたのでないなら、このヒュドラはいったいどうして現れたんだ?」
「わからないぞ」
ヒュドラの巨体が横たわる中、場が沈黙に包まれる。そして、哀はこの騒動にキルシュの陰を感じていた。
一方、キルシュはヒュドラが倒されるまでの顛末を見届けた後、やや驚いたようにつぶやいた。
「魔法少女が二人?」
黒髪の魔法少女の姿を遠目に見る。その黒髪の魔法少女は、なにやら元気そうに魔法少女服姿のシェリーと会話していた。
まさか魔法少女が二人いるとは思わなかった。全てシェリーが退治していたものだと思い込んでいたのだが……
「キルシュ様。これからどうします?」
黒服の一人がキルシュにたずねる。
結局、シェリーは傷を全く負わず、マジカルモンスター、ヒュドラも倒された。しかし−
「撤収するわ」
キルシュは、悪魔的な笑みを浮かべた。その口元は、これから起こることを愉しみにするかのように歪められていた。
同時刻、黒い服を身にまとった男が黒いポルシェ356Aを走らせていた。
ジン……そのコードネームで呼ばれる黒づくめの組織の一員である。
「キルシュの動きが怪しい?」
携帯電話で連絡してきたウォッカの声を聞きながらジンは、黒のポルシェ356Aを走らせる。
ジンがウォッカに対して下した一つの命令。それは、キルシュの動向調査であった。
キルシュ。組織における魔法学研究者である。
かなりの期間、組織に所属し、ただ魔法の研究にのみ取り組んでいる。独自の調査を行うために部下も存在する。
そのキルシュが組織に隠れて、妙な動きをしているらしい。
「わかった。お前は引き続き調べろ。俺も別の面から探りを入れてみる」
ジンは、紫煙を曇らせていたタバコを灰皿に押し付けた。
キルシュの策謀は、ジンの事件への介入を引き起こした。
このジンの介入がどんな事態の変化を引き起こすのか、それは誰にもまったくわからないことだった。
あとがき
はっはっは!!探偵k、参上!!(ちゅどーん)
ということで黒の組織ヒュドラ編をお送りしました。
現場に近づいてきた新たな影は、魔法少女プリティ♪歩美とそのマスコット、フェンバルでした。
フェンバルとヒョウちゃんの共闘もあり、なんとかマジカル☆哀とプリティ♪歩美が協力した結果、ヒュドラを倒すことに成功します。
しかし、その様子を見ていたキルシュは、なにやら不気味な笑いを残して去っていきます。また、ジンもキルシュの妙な動きを察知して、新たな動きを見せるのでした。
と、まあそれはさておき。
とりあえず今後の展開について、一応述べておきます。
今年中(2015年)にこの小説を終わらせると宣言しましたが、なかなかそうはいかないようです。
この小説は、あと残り3話で終わらせる予定です。つまり、最終話は19話になる感じでいますが、どうなることやらといったところでしょうか。
まあ19話より長くなることはないと考えています。たぶんですが。
長くしようと思えば19話以上書くことも可能でしょうが、ここまで長い時間をかけた以上、(第1話を書いた時から15年も!)早めに終わらせるべきだと思っています。
で、今年も残り後2ヶ月くらいとなるとちょっと今年中に終わらせるのは間に合わなさそうですね。
一ヶ月で1話を書いたとしても、終わるのは来年(2016年)の1月か2月辺りでしょうか?
と、まあこの小説の今後の展開はそんな感じです。
今までこの小説を読んでくれた読者の皆様、このホームページにアップしていただいてる管理人のあっきーさんなどには本当に感謝しっぱなしです。
それでは、あと少しこの小説にお付き合い願いたいと思います。
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探偵k様
哀ちゃんに続き歩美も登場!!もちろんそれほど敵も強かったということですね…
哀ちゃんのパワーアップもみれて魔法少女好きの私は大満足です(聞いてない)
それにしても益々強くなる敵にこれからどうなるのか。そしてジンがいよいよ動いたーー!←まだわかんないけど(爆)
そして最終話が19話かあ・・・さみしさもあるけど読みたさもあるので頑張ってほしい〜
それにそれに感謝はこちらのほうですぞよ!あんまり更新してない我がHPもこんなにも盛り上げてくれるなんて〜本当にありがとう〜(T▽T)
17話はもしかしてかなりシリアスニナルノカモ・・・キルシュが気になって寝れないよ〜