「まあ信じるか、信じないかはおぬしらの勝手じゃがの?」

エステアがそう言った。その時だった。

バリバリバリ!!

辺りにプラズマのような音が巻き起こる。周りにいた人々が一斉に何事かと驚いた顔になった。

歩美たち3人も驚いた表情になり、哀とコナンが顔を引き締める。

空間が裂け、マジカルモンスターがその場に姿を現した。


魔法少女 マジカル☆哀 女王陛下がやってきた! 後編


同時刻、ヒョウちゃんは空を飛びながらレインダムの女王陛下を探していた。

「ほんと、どこ行ったんだかなあ。女王陛下」

何でもちょっと不意をついていなくなってしまったらしい。

「まあ女王陛下のことだから、身に危険はないはずだよなあ」

まがりなりにも魔法国家レインダムの女王である。魔法も最上級な魔法を使いこなせるし、瞬間移動も朝飯前である。身の危険はおそらくないだろう。

「だけど、ここは異世界だからなあ」

こちらの世界では魔法世界と比べて魔力濃度が極端に低い。当然、魔法を使うのに制限がかかるのである。

そんな小さな黒ヒョウが探していた中、偶然小さなオオカミと遭遇した。

「む、ヒョウレンか」

「フェンバルっ! げ!」

フェンバルに会ったヒョウちゃんは嫌なうめき声を出す。

そのまま気まずい雰囲気になるヒョウちゃんとフェンバルだが、フェンバルが気を取り直したかのように真面目に聞いてくる。

「女王陛下は見つかったか?」

「フェンバル。お前も探してるのか」

「今、聞いているのはこちらだ。見つかったか? ヒョウレン」

「いいや」

このヒョウちゃんの言葉に、フェンバルは落胆した顔になった。

「そうか……」

「お前の鼻で女王陛下見つけられないのか?」

ヒョウちゃんがフェンバルに聞く。フェンバルは首を振った。

「イヤ、ムリだな。範囲が広すぎる。探知魔法を使おうにも、この町は魔力濃度が異様に高すぎるところもある上に、女王陛下は隠蔽魔法を使用しておられるらしい」

何せレインダムネットワークでも探知に失敗するくらいである。この米花町は魔力濃度が異様に高すぎるところもある上、その上に隠蔽魔法まで使われれば探知しようがない。

「つまり、地道に探すしかないってことかあ」

「そうだな」

ヒョウちゃんとフェンバルがお互い同意した時、ヒョウちゃんの脳裏に連絡が入ってきた。

(ヒョウレン! 緊急事態だ!!)

(どうしたんだ? シーレス?)

脳裏に話しかけてきたのは、レインダムネットワークの管理者、シーレスだった。

「む! 何だと!?」

一方、フェンバルも誰かから脳裏に連絡を受けたらしい。何やら顔色を変えている。

シーレスがヒョウちゃんの脳裏で叫ぶ。

(レインダムネットワークで強い魔力反応を探知した!! マジカルモンスターだ!!)

「げ! こんな時に!!」

ヒョウちゃんは思わず大声を上げたのだった。

 

 

ヒョウちゃんが大声を上げたその時、哀たちはマジカルモンスターに遭遇していた。

空間の裂け目から現れたのは、巨大なカラスといった感じの生き物だった。その大きな翼を広げて、宙に浮いている。

片方の翼の長さは3メートルくらいはあり、両方の翼を合わせた横幅の全長は8メートルくらいはありそうだった。とても巨大なカラスである。

そして、その巨大なカラスの足は3本あった。

歩美たち3人が驚き、哀とコナンも身動きが取れない中、その現場に二つの影が瞬間移動して現れた。

「哀!! マジカルモンスターが現れた!!」

「歩美!! マジカルモンスターだ!!」

宙を飛ぶ小さな二匹の黒ヒョウとオオカミ。ヒョウちゃんとフェンバルである。

と、そこでヒョウちゃんとフェンバルが巨大なカラスのようなマジカルモンスターがこの場にいることを確認した時、二匹に声をかけた者がいた。

「おお。ヒョウレンにフェンバルか。ちょうどよいところに来たの」

二匹に声をかけたのはエステアであった。ヒョウちゃんとフェンバルはぎょっとした顔をして、水色お姫様ドレスの女の子を見つめた。

「こ、こんなところにおられたのですか!! エステア様!!」

フェンバルが驚いた様子でエステアに声をかけるが、銀髪の女の子は平然とフェンバルに告げた。

「そんなことより、早くあのモンスターをなんとかするがよい」

一方、光彦と元太はヒョウレンとフェンバルの姿に驚いていた。

「宙を飛ぶ小さな黒ネコ!?」

「あっちは、小さなイヌだぞ!?」

マジカルモンスターに遭遇して驚いていたところに、妖精であるヒョウちゃんとフェンバルの姿を見て、混乱している二人。

そんな二人に背後から近寄る人影が一人。

人影は何やら元太と光彦の背後で呪文を唱えた。

『うーーーーーん!!』

すると、元太と光彦の身体がくたっと崩れ落ちる。

「元太!! 光彦!!」

慌ててコナンが二人に近寄る。

『むにゃむにゃ。すーすー』

二人は眠っているようだった。穏やかな寝息と、寝言が聞こえてくる。

哀たち3人が驚いていると、二人を眠らせたエステアが言った。

「邪魔者は眠らせたぞ。さあ、あのマジカルモンスターを退治するがよい」

すでに、周りの人間は巨大なカラスのようなマジカルモンスターに驚いたのか、逃げている。近くには、哀たちしかいなかった。

「わかりました!! 哀!! マジカル☆哀に変身だ!!」

「了解です!! 歩美!! プ、プリティ♪歩美に変身だ!!」

ヒョウちゃんがやや固い言葉でエステアに返事をし、哀に魔法少女に変身するよううながす。フェンバルも同じ様に歩美にうながした。

「と、言われてもね」

哀はとまどった。変身するのはいいが、問題は目の前のマジカルモンスターがそれをする時間を許してくれるかである。

「後、あのエステアの前で変身してもいいの?」

ヒョウちゃんに哀が聞く。

「それは気にしなくていいぞ! 哀、早く変身するんだ!!」

「あの目の前のマジカルモンスターがそれを許してくれれば、ね」

目の前にいる巨大なカラスのようなマジカルモンスターは、未だ動きを見せていない。だが、やや興奮した状態で哀たちの方を見ながら、宙にとどまっている。

これでは、いつ襲い掛かってくるかもわからない。そうなれば、変身するどころではなくなるのだ。

「時間が必要なのじゃな。わかった。なら、わらわがその時間を稼ごう」

「エステア様!! エステア様がそんなことをする必要は!!」

フェンバルが真面目な表情で忠言する。エステアはにべもなく言った。

「そんなことを言う時間はもうないぞ。さあ早く変身するがよい」

エステアが手を振ると、その手の中に杖が現れる。その杖は、まるで一国の王様が持つような装飾が施された杖で、長さは小さな子供のエステアに合わせた長さだった。

「キェーーーーーーー!!」

巨大なカラスのようなマジカルモンスターが奇声を上げながら襲い掛かってくる。目標は、歩美だった。

「きゃああああっ!!」

歩美が悲鳴を上げる。

と、そこに横合いから大きな氷の弾丸がマジカルモンスターにぶつけられる。マジカルモンスターはひるんだ。

「さあ!! わらわがなんとかしておる間にさっさと変身するがよい!!」

大きな氷の弾丸をぶつけたのは、エステアだった。杖を向けた状態でマジカルモンスターに鋭い視線を送っている。

巨大なカラスのようなマジカルモンスターは、この攻撃を受けて襲う標的をエステアに変更したようだった。

エステアにマジカルモンスターが襲い掛かる。エステアは杖を振りかざし、炎の固まりや、雷撃を繰り出し、マジカルモンスターを迎撃していた。

「今のうちに少し下がって、魔法少女に変身しましょう」

「うん!!」

エステアの戦いぶりに少し驚きながらも、哀は歩美に変身するよううながす。歩美は元気よく返事した。

「オレはあの女の子をサポートするからな!!」

コナンが哀に叫ぶ。コナンは変身しなくても、キック力増強シューズで戦える。おそらくそれでエステアを助けるつもりなのだろう。

哀と歩美が少し後ろの方に下がると、哀は魔法の試験管を取り出した。歩美も魔法のステッキを取り出す。

「……レイ……マジカル………トランス……ミューテーション……」

「レイ!! プリティ、ラインド、リリューション!!」

哀の棒読みの呪文と、歩美の元気の良い呪文が辺りに響く。

七色の光が辺りを包み込み、哀と歩美は魔法少女の姿へと変身した。

 

 

マジカル☆哀とプリティ♪歩美が宙を飛んで、マジカルモンスターとエステアが戦っている現場に近づく。

「うむ!! 上手く変身できたようじゃの?」

エステアが二人に声をかけてくる。エステアの着ているお姫様ドレスはまったく傷ついておらず、身体も無事なようだったが、どうやらかなり疲労しているようだった。肩で息をついている。

「後は任せたぞ。さすがにわらわもこれだけ魔法を使って疲れたからの」

と、言うと、エステアの身体がかき消えた。

「消えた?」

「エステアちゃんはどこ!?」

哀と歩美が突然その場から消えたエステアを気にかける。

「大丈夫だ。あそこにおられる」

フェンバルが小さな指を差した。見れば、やや後ろの方にエステアの姿が見える。小さな銀髪の女の子は、疲れを感じさせながらも興味津々といった感じでこちらの方を見ていた。

「来るぞ!! 気をつけろ!!」

コナンが警戒を二人にうながす。エステアがいなくなったことで、マジカルモンスターの標的はこの場にいる哀たち3人になっているようだった。

「キェーーーーーーーー!!」

奇声を上げながら、哀に襲い掛かってくるマジカルモンスター。

哀はたくさんのナイフを掲げ持つと、身をかわしながらナイフを投げつける!!

シュッ!! カカッカカカッ、カカカカッ!!

たくさんのナイフを放つが、かわされてしまう。巨大ながらかなりすばやい動きであった。

哀は振り返りマジカルモンスターを睨み付けながら距離を取る。

「あなた。あのマジカルモンスターの弱点は?」

「………」

哀がヒョウちゃんに戦っているマジカルモンスターの弱点について聞くがヒョウちゃんは答えない。

「ちょっと聞いているの?」

「ん。 ああ、何だって?」

ヒョウちゃんが今気づいたかのように聞き返す。哀は、疑問に思った。

(何なのかしら? 何かいつもと態度が違うわね)

いつもなら明るく元気よくマジカルモンスターについて答えるはずが、今回は気もそぞろといった感じだ。

「あのマジカルモンスターのことについて聞きたいのよ」

「ああ。あのマジカルモンスターか。あれは八咫烏(ヤタガラス)だな」

「ヤタガラス?」

哀はヒョウちゃんの言ったマジカルモンスターの名前を聞いて、頭の中を思い巡らせた。

八咫烏(ヤタガラス)。日本神話において初代天皇である神武天皇を道案内したとされるカラスである。特徴は、足が3本あること。

前に、色々と神話のことについて調べたので知っている。知ってはいるのだが……

「何であんなに巨大なのよ?」

伝説の八咫烏(ヤタガラス)の寸法は当時の長さで3尺二寸。現在だとほぼ1メートルの大きさである。現在、町中で見かけるカラスより少し大きい程度だ。

「ああ。それは、こっちの世界に来る際に巨大化したせいだな。よくあることだぞ」

「はあ……。で、弱点は?」

なぜかこっちの世界に来る際に巨大化してしまうという理屈を考えるのは後にして、哀はヒョウちゃんに聞く。

「いや、弱点らしい弱点はないぞ。まああまり強いマジカルモンスターじゃないから、巨大化しても問題ないぞ」

「やれやれね……」

そんな哀とヒョウちゃんが会話している間、巨大な八咫烏(ヤタガラス)は、じっとこちらの様子を見ながら宙を飛んでいたが、再び哀の方に襲い掛かってくる!

「灰原さん!!」

歩美が心配そうな叫びを上げる中、哀は巨大八咫烏(ヤタガラス)と激しい空中戦に入った。

逃げ回りながらナイフを投げつけて牽制する哀に、執拗に襲い掛かる巨大八咫烏(ヤタガラス)。

その激しい動きのせいで、歩美の方はプリティ・ハート・イリュージョンを中々撃てないでいる様子だった。

「灰原!」

コナンも地上から哀に向かって叫ぶ。空中を激しく動き回っている哀と巨大八咫烏(ヤタガラス)に手出しができないでいるようだった。

巨大八咫烏(ヤタガラス)が哀の方に向かって体当たりをかけてくる。

「!」

哀がその体当たりをかわした時、いつもならしっかりとついてくるはずのヒョウちゃんが、その場に残っていることに気がついた。

巨大八咫烏(ヤタガラス)の体当たりの直線上に残ってしまったヒョウちゃんは、迫ってくるその大きな影に目を見開いた。

「ま、まずっ!」

何やら気を取られていたらしいヒョウちゃんは、その場に硬直する。

哀がそのまま見つめる中、八咫烏(ヤタガラス)の巨大な黒い影がヒョウちゃんにぶつかっていった。

と、後ろの方から白銀のロープ状のような光が飛ぶと、巨大八咫烏(ヤタガラス)に向かっていく。

そのロープ状の光は、巨大八咫烏(ヤタガラス)にぶつかると、その大きな身体を空中に拘束した。

「どうしたのじゃ? ヒョウレン!! オマエらしくもない!!」

エステアがヒョウちゃんに向かって叫ぶ。その手は、杖を巨大八咫烏(ヤタガラス)に向けていた。

「吉田さん!! 今よ!!」

「うん!!」

哀が合図を送り、巨大八咫烏(ヤタガラス)に近づく。歩美も杖を握り締めた。

「ふっ!!」

「プリティ・ハート・イリュージョン!!」

マジカル☆哀がハート型爆弾を投げつけ、プリティ♪歩美が呪文を唱えて大きく杖を振る。

ちゅどっかーーーーーーん!

巨大八咫烏(ヤタガラス)に二人の魔法少女の同時攻撃が炸裂した。

 

 

二人の魔法少女の同時攻撃を食らった巨大八咫烏(ヤタガラス)は、大きく悲鳴を上げると地面へと落下していく。

そして、その巨大な黒い身体を地面に横たえたのだった。

「どうやら……何とかなったようね……」

哀がつぶやく。どうやら今回もなんとか巨大八咫烏(ヤタガラス)は退治できたらしい。

哀が地面へと下り立つ。歩美もそれに続き、ヒョウちゃんとフェンバルも近くに下りてきた。

地上にいたコナンがそれを見て、哀たちに駆け寄ってくる。

「それにしても、大丈夫なの? あなた? 何か気が散っていたみたいだけど……」

非常に珍しく、哀はヒョウちゃんを気遣うような言葉をかける。

「ああ、いや、それはだなあ」

ヒョウちゃんが歯切れの悪い言葉を返した時、別の方からも呆れたような声がした。

「まったくじゃ。そんなことじゃ、これから先のことを任せられんのう」

声をかけてきたのはエステアだった。水色のお姫様ドレス姿のままヒョウちゃんに呆れた目線を向けている。

「は、もうしわけありません! エステア様!!」

ヒョウちゃんがかしこまったような言葉を返す。それを横目に見ながら、哀はエステアに向かって声をかけた。

「エステア。あなた何者なの? まあ魔法世界の関係者らしいことはわかるのだけど」

哀の言葉使いにヒョウちゃんがとがめるような声を出す。

「こ、こらっ! そんな呼び捨てをしてはだめだぞ!!」

フェンバルも哀に向かって、説教した。

「まったくだ。女王陛下に向かって畏れ多い!」

フェンバルの言葉に哀、歩美、コナンの3人は大声を上げた。

『女王陛下!?』

「そうだ。こちらのお方は、魔法国家レインダムの女王、エステア・ラルフィール・クレイン・レインダム女王陛下だ」

フェンバルがエステアの身分を説明する。3人があ然としている中、魔法国家レインダムの女王は、何やらつまらなさそうにつぶやいた。

「なんじゃ。バラすこともなかろうに……」

(こんな子供がレインダムの女王陛下?)

哀は、困惑した顔でエステアの小さい身体を見つめる。エステアは、その幼い顔に威厳を乗せた表情のまま構えていた。

歩美も戸惑ったようにエステアに声をかける。

「エ、エステアちゃんって女王様だったの?」

「こらっ! 歩美っ! 女王陛下にちゃんづけはっ!!」

フェンバルが歩美をとがめるが、女王陛下は鷹揚にうなずいた。

「別によい。まあせっかくの呼び名じゃからのう。ちゃんづけで呼ぶことを許可するぞ」

「し、しかしですね。エステア様!」

フェンバルが不満そうな声で言うが、エステアは別に気にしてないのか、大きく手を振った。

「わらわがよいと言っておるのじゃ。別に構わんじゃろ」

「で、ですが!」

まだ不満そうなフェンバルに、エステアが声に力を込めて告げる。

「わらわの言うことが聞けんのかえ? フェンバル」

「はっ!」

フェンバルはかしこまってうなずいた。

「そんなことより、そろそろこの場を立ち去った方がいいんじゃない?」

哀が冷静な口調で提案する。巨大八咫烏(ヤタガラス)が現れたことで人の姿はいなくなっていたが、いつ戻ってこないとも限らない。

「おお。そうじゃのう。まあ話は後でもよかろう。」

哀の提案に女王陛下はうなずいた。

うなずいたのを確認すると、哀は魔法の試験管で巨大八咫烏(ヤタガラス)を吸収する。

「ね、ねえ。元太くんと光彦くん。どうしよう?」

歩美が哀たちに聞いてくる。未だ元太と光彦は、エステアの魔法で眠らされたままの状態だった。

「その二人じゃな。わらわが運ぼう」

エステアが杖を一振りすると、元太と光彦の身体が宙に浮く。そのまま二人の身体が宙に浮いたままエステアの近くまで移動した。

「エステア様! この世界でそんな簡単に魔法を使われては!」

フェンバルが女王陛下の行動をとがめる。この世界では魔法は存在しないはずのモノなのだ。それを簡単に使っては、魔法というモノの存在がばれてしまう。

「今はこの場から立ち去るのが先決じゃ、フェンバルよ。それじゃ、この場から退散するとしようかのう」

女王陛下の身体が宙に浮く。エステアが振り返り、残りの3人と2匹に告げた。

「では、行くぞ。わらわについてくるがよい」

エステアが宙を飛び、元太と光彦を連れてその場を去った。

「しかたないわね。女王陛下についていきましょう」

「うん。わかった!」

マジカル☆哀とプリティ♪歩美が宙を飛び、女王陛下を追いかけた。

 

 

哀と歩美が飛び去った後、ヒョウちゃんとフェンバルも追いかけようとしたとき、近くから声がした。

「お、おいっ! どうすんだよっ!オレは!!」

コナンだった。コナンが困ったようにこちらの方を見ている。

ヒョウちゃんは納得したようにつぶやいた。

「おお。そうだったなあ。」

そういえば、コナンは変身していないのだった。当然、空を飛ぶこともできない。

「マジカル☆コナンに変身すればいいんじゃないか? そうすれば、飛べるぞ」

「バーロー! そんなことできるかっ!! 第一、サッカーボール持ってきてねーよ!!」

ヒョウちゃんの言葉にコナンが怒鳴り返す。変身するためのアイテムであるサッカーボールは、今コナンは持っていないようだった。

「それじゃ、地上から追いかけるしかないんじゃないか?」

「おい、オレだけ置いてきぼりかよ!」

コナンが焦ったような顔になる。

「しょうがないなあ。フェンバル」

「む」

「コナンを運ぶぞ」

「しかたないな」

ヒョウちゃんがフェンバルに言うと、呪文を唱える。フェンバルもそれに応じ、呪文を唱えた。

「お、おわっ!」

コナンの身体を宙に浮かせる。身体が地面という確固たる物から解き放たれたせいか、コナンは足をじたばたさせた。

「それじゃ、哀たちを追いかけよう」

「そうだな」

ヒョウちゃんが哀たちを追いかけるべく空を飛んで急発進する。フェンバルも後をついてきた。

コナンの身体をヒョウちゃんとフェンバルの魔力で浮かせたまま、後をついてこさせる。

「おわあああああああああああああっ」

自分の身体を勝手に移動させられて、コナンは大きく悲鳴を上げた。

 

 

哀は空を飛んで追いかけ、女王陛下に追いついた。隣を飛びながら、女王陛下に話しかける。

「まさか、あなたみたいな子供が女王陛下とはね」

「何じゃ? 意外かえ?」

「まあね」

目の前にしていても、自分と同じくらいのこの小さな子供が女王陛下とは思えない。

エステアが面白そうに言った。

「まあ確かにこの姿ではそう思うのも無理ないかもしれんのう。じゃが、言ったじゃろ。わらわはおぬしらよりもずっと年上なのじゃよ」

「え!?」

エステアの言葉に哀はとまどう。

魔法世界は異世界である。そういえば、ヒョウちゃんは、エルフやドワーフと言ったファンタジー世界の住人もいるようなことを言っていた。

もし、そうだとするなら、姿と年齢が一致しないこともありえる?

哀は戦慄しながら話しかけた。

「エステア。あなたいったいいくつなの?」

エステアは愉快そうに笑うと言ってのけた。

「女に年齢のことを聞くのは野暮というものじゃよ。哀。たとえ、女同士でもな」

魔法国家レインダムの女王陛下は、おかしそうな顔で哀の顔をみやったのだった。


NEXT


あとがき

はっはっは!!探偵k、参上!!(ちゅどーん)

ということでマジカル☆哀の新作をお送りしました。

現れたマジカルモンスターは、巨大八咫烏(ヤタガラス)。まさに目の前に現れたマジカルモンスターに哀たちが身動きが取れない中、ヒョウちゃんとフェンバルが現場に現れます。

そんな2匹に話しかけるお姫様ドレスの女の子、エステア。
ヒョウちゃんとフェンバルが驚く中、エステアは哀と歩美が魔法少女に変身する時間を稼ぐべく、何やら魔法を駆使して巨大八咫烏(ヤタガラス)を迎撃します。

その間に、哀と歩美は魔法少女に変身。巨大八咫烏(やたがらす)と戦闘状態に。

ヒョウちゃんがピンチに陥りそうになるも、エステアの魔法の協力もあって、巨大八咫烏(ヤタガラス)は倒されたのでした。

そして、エステアの正体はなんと魔法国家レインダムの女王陛下であることがわかり、哀たち3人は驚きの声を上げたのでした。

それにしても今回の小説は時間がかかったような気がします。

残り後2話ですが、このペースだと終わるのが来年(2016年)の3月くらいになるかもしれませんね。まあできるだけ早くに終わらせようとは思ってます。

それでは、次回もがんばって書き上げます!



探偵k様
いつもありがとうございます〜!!
もう残すところ2話かあ・・・と思うとさみしい限り;;;
女王陛下が出てきたということはストーリーの進展が加速した証拠とかでしょうか先生・・・・
そして個人的にはコナンの変身も見てみたかったかも(笑)
何はともあれ今回の小説は時間がかかったということでほんとお疲れ様でした。
次回も楽しみにしています〜♪わーい by akkiy